13 / 185
第六話 「道華のもう一つの正体」
しおりを挟む
裏庭に着いた私達は、道華と美鈴ちゃんを捜した。
「道華ぁ、美鈴ちゃ―ん。」
「どこにいるんだぁ~?」
「返事してくださ~い。」
「授業、始まりますよぉ~。」
「隠れてないで、出てらっしゃ~い。」
全然、返事なし。
あ、あそこに女の子がいる。
ハートのワンピースを着ていて、髪の色は黄色で、毛先がふんわりしている女の子。どっかで見たような・・・・・・あ!
「美鈴ちゃん!」
私は美鈴ちゃんのところにかけよった。
「もう、どこ行ってたの?早くしないと、授業が始まるよ。道華は、どこ行ったの?一緒じゃなかったの?」
「・・・・・・。」
美鈴ちゃんは、だまりこんでる。
けんかでも、したのかな?
「おい、道華はどこ行ったんだ。」
「だまってないで、言ってください。」
「どこにいるんですか?」
「顔をあげて、話しなさい。」
美鈴ちゃんが、ゆっくり顔を上げた。
な・・・・・・なんか、様子がおかしい。
優しい瞳が、こわい目つきになってる。
「血・・・・・血・・・・・血!血をくれ!」
美鈴ちゃんが、口を大きく開けて、とんがった歯を見せた。
ヴァ・・・・・・ヴァンパイアになってる!
優しかった声が、急に低くてこわい声になってるし。
「あれを見て!」
リリアさんが、指をさした方を見ると、美鈴ちゃんの首の周りに、かまれたあとがあった。
「一体、誰にかまれたんだ?」
すると、美鈴ちゃんが、こわい目で、私の方を見た。
「あなたの血、おいしそうねぇ。」
ま・・・・・・まさか!
「あなたの血、おいしく吸ってやるわ!」
キャー!美鈴ちゃんが、私の方に向かって、走ってくるよぉ!
誰か助けてぇ~。
ガブッ!
・・・・・・あれ?
私、全然かまれてない。
ヴァンパイアにもなってない。
ポタポタポタポタ・・・・・・。
血が、地面に落ちてゆく。
「・・・・・・ぐっ!」
その声は・・・・・・。
「ジュンブライト!」
ジュンブライト、わたしをかばって・・・・・・しかも、首から血が出てる。
「ぐわぁぁぁぁぁ!」
「王子!」
「ジュンブライトお兄様!」
「ジュンブライト!バカなまねは、やめてちょうだい!」
みんなが心配してる。
「うわぁぁぁぁぁ!」
このままじゃ、ジュンブライトの首がちぎれちゃう・・・・・・。
「うわぁぁぁぁぁ!・・・・・・ふっ、残念でしたぁ~。」
ジュンブライトが、首の周りをかまれながら、ニヤリと笑った。
「俺はヴァンパイアだから、俺の血を吸っても、ヴァンパイアにはならねぇ―んだよ!」
「―!?」
美鈴ちゃんは、口をぱっと離した。
美鈴ちゃんの口の周りには、血がいっぱいついている。
そして、ジュンブライトが、かまれた首の周りを、右手でおさえながら、ズボンのポケットの中から、なにかを取り出した。
にんにくだった。
「俺の必殺技!にんにくフラ―シュ!」
「・・・・・・ゔ!」
美鈴ちゃんが、口をおさえながら、ばたりとたおれた。
「どうだ!俺の必殺技、にんにくフラッシュは!」
ジュンブライト!あんた、マスク、つけてないじゃない!
「ん?あ―!しまったぁ!こんなことがあるとは知らずに、マスクを忘れてしまったぁ~!」
バカだ、こいつ。
ルクトさん達は、マスクをはめているのに、マスクを持ってくるのを忘れるなんて、バカです。
てか、元々バカだし。
「おい、じいや!マスクくれ!」
鼻をつまみながら、ジュンブライトがルクトさんの方を向くと、ルクトさんは首を振った。
「ごめんなさい。もう、これで最後だったので、マスクはもう、ありません。」
「なんだとぉ・・・・・・ゔ!」
ジュンブライト!あああああんた、ここで吐くんじゃないでしょーね!?
「吐く。」
吐くなよぉ~!せっかくかわいいかわいい小学生が、一生懸命掃除をした、裏庭で吐くなんて、ありえません!
「オェー!」
自分の技を自分で受けるなぁ!
「オェー!」
向こうから女の子の声が聞こえた。
もう一人、被害者がいたの!?
でも、どっかで聞き覚えがある声・・・・・・。
ジュンブライト、ジュンブライト!
私が大きな声で呼んでも、ジュンブライトはなかなか起きない。
気絶しているから。
もう!
私は思いっ切り深呼吸して、大きな声でさけんだ。
「ジュンブライトぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」
「そんなに大きな声でさけぶなっ。」
あ、起きた。
「王子。向こうから女の子の声が聞こえたんです。」
「なんだとぉ!?・・・・・・ゔ!」
また吐くの!?
「ちがう!これだ!」
首の周りの傷、まだ治ってないみたいだね。
傷口がひどい。
「ヘタに動くと、危ないわよ。」
「無理しないでください、ジュンブライトお兄様っ。」
マドレーヌちゃんとリリアさんが、とても心配している。
「大丈夫。こーんな傷くらい、なんとかなるさ。」
ジュンブライトが、マドレーヌちゃんとリリアさんに向かって、二カッと笑った。
その作り笑い、とても大丈夫じゃなさそう・・・・・・。
私達が向こうに走って行くと、見覚えのある女の子がいた。
むらさきの髪の色に、『LОVE』という字がのった黒いお洋服は。
「道華!」
「お父さん、お母さん!」
なにしてるの?授業、始まるよ!
「真莉亜!道華の歯と、口の周りを見て!」
リリアさんが、道華の方を指さした。
道華の口の中にはなんと、とんがった歯があって、口の周りには、赤い絵の具がついていた。
こ・・・・・・これは、赤い絵の具じゃない!血だ!
「一体、どういうこと!?」
道華!これは一体、どういうことなの!?ちゃんと、説明して!
「道華・・・・・・。」
「道華・・・・・・。」
「道華・・・・・・。」
「道華様・・・・・・。」
すると、道華が、「はぁ。」と、ためいきをついた。
「・・・・・・わかった。説明するよ。実はあたし、ヴァンパイアと人間のハーフなんだ。」
「ヴァ・・・・・・ヴァンパイアと、人間のハーフぅ!?」
まるで、『おおかみ子どもの雨と雪』みたいですっ。
「お父様がおうじですからねぇ。」
「びっくりです。」
「だから、スッポンの生き血ジュースを欲しがってたのね。」
道華がこっくりとうなずいた。
「あたしね、半分ヴァンパイアだから、血を吸ったり、にんにくと十字架と銀が、苦手なの。未来のお母さんから、「人の血を吸ったらだめ!」って、三歳のころから言われてるの。それなのに、急に美鈴ちゃんの血が欲しくなって、つい・・・・・・。」
吸ってしまったんだね。
道華が泣きそうな顔で、うなずいた。
「あ・・・・・・あたし、未来のお母さんとの約束、破っちゃった。」
道華の目に、涙が出てきた。
泣くのを必死に、こらえている。
「じゃあ、なんでだまってたんですか?」
「み・・・・・・みんなに嫌われると思ったから・・・・・・。」
「そんな理由で、だまってたのかよ。」
ジュンブライト。
ジュンブライトが、道華のところにやってきて、道華をぎゅっと、だきしめた。
「ヴァンパイアと人間のハーフで、嫌われると思うか?」
「ううん。」
道華が首を振ると、ジュンブライトは二ヒッと笑った。
「だろ?人間の道華も、ヴァンパイアの道華も、俺は大好きだ!」
「お母さんも、マドレーヌおばちゃんも、ルクトも、リリアも、テレサも、紅葉も、クリスも?」
「あたり前だろ?み―んな、人間の道華と、ヴァンパイアの道華が大好きだ!だから、約束してくれるか?「もう二度と、人間の血を吸わない。」って。」
「う・・・・・・うん!」
道華がしゃくり上げそうな顔で、大きくうなずいた。
「あと、ちゃんと話してくれて、ありがとう。」
「う・・・・・・うわーん!」
道華が大きな声で泣き始めた。
「よしよし、さすが俺の娘だ・・・・・・いでででで!」
ジュンブライトが離したとたん、道華がはっとした顔で、ジュンブライトの首の周りの傷を見た。
「お父さん、その傷・・・・・・。」
道華がふるえながら、傷の方を指さした。
「大丈夫!だんだん、傷口がなくなってるからなっ。」
ほんとだ。もう、傷口は、そんなにひどいという、レベルじゃなくなってる。
☆
美鈴ちゃんを保健室に運んだ、私とジュンブライトは、運んだ後、道華の教室に入った。
「次は道華ちゃんです。」
道華はにこにこ顔で、教卓に立った。
そして、文章用紙を広げ、深呼吸して、口を開いた。
「あたしのお父さんは、優しくて、イケメンで、かっこいい人です。」
「そ、そんなに言われると、照れるなぁ~。」
おい。もじもじするなっ。
「す・・・・・・すみません・・・・・・。」
「けど、あたしと同じ、わがままで、自分勝手で、いっつもお母さんを困らせています。」
「真剣に書いてねぇ―じぇねぇーか!」
「え―?」
かわいい小学4年生達が、後ろを振り向いて、ジュンブライトの方を見た。
「振り向くな!」
「お父さん、子供みたいだねぇ。」
「先生が感心してどーする!」
「お母さんは、とってもかわいくて、勉強が得意で、お父さんみたいに優しい人です。」
そ・・・・・・そうかなぁ・・・・・・?
「けど、怒るとこわーい人です。」
し、失礼なっ!
「え―?」
かわいい小学4年生達が、後ろを振り向いて、私の方を見た。
君達!勉強に集中しなさいっ!
「うふふふふ。」
がくっ。他のお母さん達に笑われるなんて、恥ずかしいです・・・・・・。
このガキ、親をどんな目で見てるんだ?
「二人はラブラブで、いっつもキスしています。」
「よけーなこと、言うなぁ!」
「え―?」
かわいい小学4年生達が、後ろを振り向いて、私達の方を見た。
「振り向くな!」
「これで、あたしの発表を終わります。」
パチパチパチパチ。
「道華ちゃんの家族、おもしろいわねぇ。ラブラブで、いっつもキスしてるなんて。私の夫ったら、いっつもキスしてくれないのよ~。」
先生、全然感想になっていませんがなっ。
「新婚の時はラブラブだったけど、今は全―然、ラブラブじゃないわぁ~。」
「それはどーでもいいだろっ。その話は、女子会でやれっ。」
「道華ちゃんの家族が、うらやましいわぁ~。」
この先生、話が長すぎる・・・・・・。
保護者のみなさんも、『ど―でもいいだろ』という顔をして、あきれています。
「一回、だまろっか。」
ジュンブライトがつっこんだとたん、先生は話すのをやめた。
☆
満月荘に行った私達は、早速、道華がヴァンパイアと人間のハーフということを、テレサさん達に話した。
「なるほどぉ。」
「まるで、『おおかみ子どもの雨と雪』みたいねぇ。」
でしょ~?
「ジュンブライト様ぁ~♡あたしと、ヴァンパイアと猫娘のハーフ、つくりましょー♡」
「誰がおめーと子供をつくるか、バーカ。」
「道華ぁ~、スッポンの生き血ジュース、持ってきましたよぉ~。」
「あ・・・・・・ありがとう。」
どうしたの?元気がないよ。
「なにか、あったんですか?」
「教えて。」
ルクトさん達に心配されると、道華はごくんと、つばを飲んで、口を開いた。
「あたしが未来からやって来た理由、教えてやろうか?」
そのとたん、部屋の中が急に、しーんとなった。
道華はそれを気にせず、話を続けた。
「あたしの未来のお父さんとお母さん、離婚することになったんだ。」
へー、離婚、するのかぁ。
「びっくりしたぜぇ。」
「アハハハハハ~。」
「あんた達、なに笑ってんだい。」
「未来のあなた達が、離婚することになったのよ?」
・・・・・・。
「えぇ~!?」
「気づくの、おそ!」
「なんで離婚することになったのぉ!?」
「教えてくれ!」
「お二人とも、落ち着いて・・・・・・。」
「あたしのお父さん、あたしをヴァンパイア界の王女に、しようと言ったの。」
「道華をヴァンパイア界の王女にぃ?」
「それ、どーゆーこと?」
「あたしが半分、ヴァンパイアだからって。それを聞いた未来のお母さんは、反対して、そのあと、言い争いになって、離婚することになったの。それから、二人は仲が悪くなったんだ。あたしね、過去の二人に会って、仲良くさせようと、こっそりタイムスリップして、やって来たんだ。」
そうなんだ・・・・・・。
「なんで、仲良くさせようと思ったんだ?」
「二人がまた、仲が良い夫婦に戻って、また、楽しい生活を、二人と一緒に、送りたいから。過去の二人に会って、過去の二人を仲良くさせようと思ったんだ。」
道華、本当のこと、話してくれて、ありがとう。
「俺達のために、未来から来たなんて、うれしいぜ!」
私達、これから、仲良くするよう、がんばるから。
「うん!」
道華が笑顔でうなずいた。
私の予想通り、またやっかいなことになったよぉ~。
でも、ファンタジー石みたいに、人間界がほろぼされることじゃないし、お妃みたいに、こわくて、とても強い敵が現れないし。
もし、私達がけんかして、別れたら、未来の私達は、離婚しちゃうってこと!?
それはやだよ・・・・・・。
そのために、ジュンブライトと仲良くしなくちゃ!
私達の未来のためだもん!
自分達の未来は、自分達でつくらなくちゃ!
「道華ぁ、美鈴ちゃ―ん。」
「どこにいるんだぁ~?」
「返事してくださ~い。」
「授業、始まりますよぉ~。」
「隠れてないで、出てらっしゃ~い。」
全然、返事なし。
あ、あそこに女の子がいる。
ハートのワンピースを着ていて、髪の色は黄色で、毛先がふんわりしている女の子。どっかで見たような・・・・・・あ!
「美鈴ちゃん!」
私は美鈴ちゃんのところにかけよった。
「もう、どこ行ってたの?早くしないと、授業が始まるよ。道華は、どこ行ったの?一緒じゃなかったの?」
「・・・・・・。」
美鈴ちゃんは、だまりこんでる。
けんかでも、したのかな?
「おい、道華はどこ行ったんだ。」
「だまってないで、言ってください。」
「どこにいるんですか?」
「顔をあげて、話しなさい。」
美鈴ちゃんが、ゆっくり顔を上げた。
な・・・・・・なんか、様子がおかしい。
優しい瞳が、こわい目つきになってる。
「血・・・・・血・・・・・血!血をくれ!」
美鈴ちゃんが、口を大きく開けて、とんがった歯を見せた。
ヴァ・・・・・・ヴァンパイアになってる!
優しかった声が、急に低くてこわい声になってるし。
「あれを見て!」
リリアさんが、指をさした方を見ると、美鈴ちゃんの首の周りに、かまれたあとがあった。
「一体、誰にかまれたんだ?」
すると、美鈴ちゃんが、こわい目で、私の方を見た。
「あなたの血、おいしそうねぇ。」
ま・・・・・・まさか!
「あなたの血、おいしく吸ってやるわ!」
キャー!美鈴ちゃんが、私の方に向かって、走ってくるよぉ!
誰か助けてぇ~。
ガブッ!
・・・・・・あれ?
私、全然かまれてない。
ヴァンパイアにもなってない。
ポタポタポタポタ・・・・・・。
血が、地面に落ちてゆく。
「・・・・・・ぐっ!」
その声は・・・・・・。
「ジュンブライト!」
ジュンブライト、わたしをかばって・・・・・・しかも、首から血が出てる。
「ぐわぁぁぁぁぁ!」
「王子!」
「ジュンブライトお兄様!」
「ジュンブライト!バカなまねは、やめてちょうだい!」
みんなが心配してる。
「うわぁぁぁぁぁ!」
このままじゃ、ジュンブライトの首がちぎれちゃう・・・・・・。
「うわぁぁぁぁぁ!・・・・・・ふっ、残念でしたぁ~。」
ジュンブライトが、首の周りをかまれながら、ニヤリと笑った。
「俺はヴァンパイアだから、俺の血を吸っても、ヴァンパイアにはならねぇ―んだよ!」
「―!?」
美鈴ちゃんは、口をぱっと離した。
美鈴ちゃんの口の周りには、血がいっぱいついている。
そして、ジュンブライトが、かまれた首の周りを、右手でおさえながら、ズボンのポケットの中から、なにかを取り出した。
にんにくだった。
「俺の必殺技!にんにくフラ―シュ!」
「・・・・・・ゔ!」
美鈴ちゃんが、口をおさえながら、ばたりとたおれた。
「どうだ!俺の必殺技、にんにくフラッシュは!」
ジュンブライト!あんた、マスク、つけてないじゃない!
「ん?あ―!しまったぁ!こんなことがあるとは知らずに、マスクを忘れてしまったぁ~!」
バカだ、こいつ。
ルクトさん達は、マスクをはめているのに、マスクを持ってくるのを忘れるなんて、バカです。
てか、元々バカだし。
「おい、じいや!マスクくれ!」
鼻をつまみながら、ジュンブライトがルクトさんの方を向くと、ルクトさんは首を振った。
「ごめんなさい。もう、これで最後だったので、マスクはもう、ありません。」
「なんだとぉ・・・・・・ゔ!」
ジュンブライト!あああああんた、ここで吐くんじゃないでしょーね!?
「吐く。」
吐くなよぉ~!せっかくかわいいかわいい小学生が、一生懸命掃除をした、裏庭で吐くなんて、ありえません!
「オェー!」
自分の技を自分で受けるなぁ!
「オェー!」
向こうから女の子の声が聞こえた。
もう一人、被害者がいたの!?
でも、どっかで聞き覚えがある声・・・・・・。
ジュンブライト、ジュンブライト!
私が大きな声で呼んでも、ジュンブライトはなかなか起きない。
気絶しているから。
もう!
私は思いっ切り深呼吸して、大きな声でさけんだ。
「ジュンブライトぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」
「そんなに大きな声でさけぶなっ。」
あ、起きた。
「王子。向こうから女の子の声が聞こえたんです。」
「なんだとぉ!?・・・・・・ゔ!」
また吐くの!?
「ちがう!これだ!」
首の周りの傷、まだ治ってないみたいだね。
傷口がひどい。
「ヘタに動くと、危ないわよ。」
「無理しないでください、ジュンブライトお兄様っ。」
マドレーヌちゃんとリリアさんが、とても心配している。
「大丈夫。こーんな傷くらい、なんとかなるさ。」
ジュンブライトが、マドレーヌちゃんとリリアさんに向かって、二カッと笑った。
その作り笑い、とても大丈夫じゃなさそう・・・・・・。
私達が向こうに走って行くと、見覚えのある女の子がいた。
むらさきの髪の色に、『LОVE』という字がのった黒いお洋服は。
「道華!」
「お父さん、お母さん!」
なにしてるの?授業、始まるよ!
「真莉亜!道華の歯と、口の周りを見て!」
リリアさんが、道華の方を指さした。
道華の口の中にはなんと、とんがった歯があって、口の周りには、赤い絵の具がついていた。
こ・・・・・・これは、赤い絵の具じゃない!血だ!
「一体、どういうこと!?」
道華!これは一体、どういうことなの!?ちゃんと、説明して!
「道華・・・・・・。」
「道華・・・・・・。」
「道華・・・・・・。」
「道華様・・・・・・。」
すると、道華が、「はぁ。」と、ためいきをついた。
「・・・・・・わかった。説明するよ。実はあたし、ヴァンパイアと人間のハーフなんだ。」
「ヴァ・・・・・・ヴァンパイアと、人間のハーフぅ!?」
まるで、『おおかみ子どもの雨と雪』みたいですっ。
「お父様がおうじですからねぇ。」
「びっくりです。」
「だから、スッポンの生き血ジュースを欲しがってたのね。」
道華がこっくりとうなずいた。
「あたしね、半分ヴァンパイアだから、血を吸ったり、にんにくと十字架と銀が、苦手なの。未来のお母さんから、「人の血を吸ったらだめ!」って、三歳のころから言われてるの。それなのに、急に美鈴ちゃんの血が欲しくなって、つい・・・・・・。」
吸ってしまったんだね。
道華が泣きそうな顔で、うなずいた。
「あ・・・・・・あたし、未来のお母さんとの約束、破っちゃった。」
道華の目に、涙が出てきた。
泣くのを必死に、こらえている。
「じゃあ、なんでだまってたんですか?」
「み・・・・・・みんなに嫌われると思ったから・・・・・・。」
「そんな理由で、だまってたのかよ。」
ジュンブライト。
ジュンブライトが、道華のところにやってきて、道華をぎゅっと、だきしめた。
「ヴァンパイアと人間のハーフで、嫌われると思うか?」
「ううん。」
道華が首を振ると、ジュンブライトは二ヒッと笑った。
「だろ?人間の道華も、ヴァンパイアの道華も、俺は大好きだ!」
「お母さんも、マドレーヌおばちゃんも、ルクトも、リリアも、テレサも、紅葉も、クリスも?」
「あたり前だろ?み―んな、人間の道華と、ヴァンパイアの道華が大好きだ!だから、約束してくれるか?「もう二度と、人間の血を吸わない。」って。」
「う・・・・・・うん!」
道華がしゃくり上げそうな顔で、大きくうなずいた。
「あと、ちゃんと話してくれて、ありがとう。」
「う・・・・・・うわーん!」
道華が大きな声で泣き始めた。
「よしよし、さすが俺の娘だ・・・・・・いでででで!」
ジュンブライトが離したとたん、道華がはっとした顔で、ジュンブライトの首の周りの傷を見た。
「お父さん、その傷・・・・・・。」
道華がふるえながら、傷の方を指さした。
「大丈夫!だんだん、傷口がなくなってるからなっ。」
ほんとだ。もう、傷口は、そんなにひどいという、レベルじゃなくなってる。
☆
美鈴ちゃんを保健室に運んだ、私とジュンブライトは、運んだ後、道華の教室に入った。
「次は道華ちゃんです。」
道華はにこにこ顔で、教卓に立った。
そして、文章用紙を広げ、深呼吸して、口を開いた。
「あたしのお父さんは、優しくて、イケメンで、かっこいい人です。」
「そ、そんなに言われると、照れるなぁ~。」
おい。もじもじするなっ。
「す・・・・・・すみません・・・・・・。」
「けど、あたしと同じ、わがままで、自分勝手で、いっつもお母さんを困らせています。」
「真剣に書いてねぇ―じぇねぇーか!」
「え―?」
かわいい小学4年生達が、後ろを振り向いて、ジュンブライトの方を見た。
「振り向くな!」
「お父さん、子供みたいだねぇ。」
「先生が感心してどーする!」
「お母さんは、とってもかわいくて、勉強が得意で、お父さんみたいに優しい人です。」
そ・・・・・・そうかなぁ・・・・・・?
「けど、怒るとこわーい人です。」
し、失礼なっ!
「え―?」
かわいい小学4年生達が、後ろを振り向いて、私の方を見た。
君達!勉強に集中しなさいっ!
「うふふふふ。」
がくっ。他のお母さん達に笑われるなんて、恥ずかしいです・・・・・・。
このガキ、親をどんな目で見てるんだ?
「二人はラブラブで、いっつもキスしています。」
「よけーなこと、言うなぁ!」
「え―?」
かわいい小学4年生達が、後ろを振り向いて、私達の方を見た。
「振り向くな!」
「これで、あたしの発表を終わります。」
パチパチパチパチ。
「道華ちゃんの家族、おもしろいわねぇ。ラブラブで、いっつもキスしてるなんて。私の夫ったら、いっつもキスしてくれないのよ~。」
先生、全然感想になっていませんがなっ。
「新婚の時はラブラブだったけど、今は全―然、ラブラブじゃないわぁ~。」
「それはどーでもいいだろっ。その話は、女子会でやれっ。」
「道華ちゃんの家族が、うらやましいわぁ~。」
この先生、話が長すぎる・・・・・・。
保護者のみなさんも、『ど―でもいいだろ』という顔をして、あきれています。
「一回、だまろっか。」
ジュンブライトがつっこんだとたん、先生は話すのをやめた。
☆
満月荘に行った私達は、早速、道華がヴァンパイアと人間のハーフということを、テレサさん達に話した。
「なるほどぉ。」
「まるで、『おおかみ子どもの雨と雪』みたいねぇ。」
でしょ~?
「ジュンブライト様ぁ~♡あたしと、ヴァンパイアと猫娘のハーフ、つくりましょー♡」
「誰がおめーと子供をつくるか、バーカ。」
「道華ぁ~、スッポンの生き血ジュース、持ってきましたよぉ~。」
「あ・・・・・・ありがとう。」
どうしたの?元気がないよ。
「なにか、あったんですか?」
「教えて。」
ルクトさん達に心配されると、道華はごくんと、つばを飲んで、口を開いた。
「あたしが未来からやって来た理由、教えてやろうか?」
そのとたん、部屋の中が急に、しーんとなった。
道華はそれを気にせず、話を続けた。
「あたしの未来のお父さんとお母さん、離婚することになったんだ。」
へー、離婚、するのかぁ。
「びっくりしたぜぇ。」
「アハハハハハ~。」
「あんた達、なに笑ってんだい。」
「未来のあなた達が、離婚することになったのよ?」
・・・・・・。
「えぇ~!?」
「気づくの、おそ!」
「なんで離婚することになったのぉ!?」
「教えてくれ!」
「お二人とも、落ち着いて・・・・・・。」
「あたしのお父さん、あたしをヴァンパイア界の王女に、しようと言ったの。」
「道華をヴァンパイア界の王女にぃ?」
「それ、どーゆーこと?」
「あたしが半分、ヴァンパイアだからって。それを聞いた未来のお母さんは、反対して、そのあと、言い争いになって、離婚することになったの。それから、二人は仲が悪くなったんだ。あたしね、過去の二人に会って、仲良くさせようと、こっそりタイムスリップして、やって来たんだ。」
そうなんだ・・・・・・。
「なんで、仲良くさせようと思ったんだ?」
「二人がまた、仲が良い夫婦に戻って、また、楽しい生活を、二人と一緒に、送りたいから。過去の二人に会って、過去の二人を仲良くさせようと思ったんだ。」
道華、本当のこと、話してくれて、ありがとう。
「俺達のために、未来から来たなんて、うれしいぜ!」
私達、これから、仲良くするよう、がんばるから。
「うん!」
道華が笑顔でうなずいた。
私の予想通り、またやっかいなことになったよぉ~。
でも、ファンタジー石みたいに、人間界がほろぼされることじゃないし、お妃みたいに、こわくて、とても強い敵が現れないし。
もし、私達がけんかして、別れたら、未来の私達は、離婚しちゃうってこと!?
それはやだよ・・・・・・。
そのために、ジュンブライトと仲良くしなくちゃ!
私達の未来のためだもん!
自分達の未来は、自分達でつくらなくちゃ!
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
ちょっと大人な物語はこちらです
神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な短編物語集です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜
来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、
疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。
無愛想で冷静な上司・東條崇雅。
その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、
仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。
けれど――
そこから、彼の態度は変わり始めた。
苦手な仕事から外され、
負担を減らされ、
静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。
「辞めるのは認めない」
そんな言葉すらないのに、
無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。
これは愛?
それともただの執着?
じれじれと、甘く、不器用に。
二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。
無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話
登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる