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第二十四話 「ウルフ一郎さん、暴走する」

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ピンポーン。
インターホーンを押すと、ダダダダダッと、大きな足音が聞こえて、ドアが開いた。
 
「真莉亜ちゅわ~ん♡」
 
ウルフ一郎さんが、目をハートにしている。
 
「こんにちは、ウルフ一郎さん。」
 
「一人で来たのぉ~?」
 
すみません・・・・・・。
 
「ヤッホー。お父さん、いる?」
 
道華が背後から顔を出すと、ウルフ一郎さんは、床に両手とひざをついて、がくっと落ちこんだ。
 
「そんな・・・・・・真莉亜ちゃんと、一緒に過ごせると思ってたのに・・・・・・。」
 
「なーに落ちこんでんだ。」
 
その声は・・・・・・。
 
「ジュンブライト!」
 
「おぉっ。真莉亜、道華。いらっしゃい。」
 
「ねぇ、お父さん。アキとソラは?」
 
「まだねてるから、起こさないようにな。」
 
「はーい。じゃあ、マドレーヌおばちゃんと、遊ぼーう!」
 
道華は、玄関に上がって、リビングへ真っ先に走った。
 
「ジュンブライト・・・・・・。」
 
私は、ジュンブライトにだきついた。
 
「なんだ?」
 
「・・・・・・・大好き。」
 
「俺もだ。」
 
一生、愛し合おうね。
 
「あぁ。」
 
ジュンブライトは、私をぎゅっとだきしめた。
すると、ウルフ一郎さんが、ぱっと立ち上がった。
 
「おい!ヴァンパイア界の王子!真莉亜ちゃんから離れろ!」
 
「いーかげん、名前、覚えろよ。」
 
ウルフ一郎さん、この人の名前は、ジュンブライトですよ。
ちゃーんと、覚えてくださいね。
 
「うん!では、あらためて・・・・・・おい!ジュウ・・・・・・・ジュ?ジュ・・・・・・純一!」
 
「誰だよそれ!」
 
覚えてないじゃないですか!
 
「いいか?俺は、ジュンブライトだっ。ジュ・ン・ブ・ラ・イ・ト!」
 
「うるせぇ!よーし、今度こそ・・・・・・おい!ジュウ・・・・・・ジュ?ジュー・・・・・・松潤!」
 
「どーも、松潤でーす・・・・・・って、ちがうわい!」
 
「ええい!どっちでもいーだろーが!純一だろーが、松潤だろーが、どーでもいいじゃねぇか!」
 
「ウルフ一郎さん!それくらいで怒らないの!」
 
ウルフ一郎さんは、目をハートにしながら、私の方を見た。
 
「はーい♡」
 
「ちゃんと、してくれよな、ちゃんと。」
 
「へいへーい。わかったよ、天パヤロー。」
 
「・・・・・・!」
 
ジュンブライト!怒りをおさえて!
 
「はーい♡」
 
「今度こそ!おい!ジュウ・・・・・・ジュ?ジュー・・・・・・名倉潤一!」
 
「もういいよ!おめぇに名前を呼ばれる筋合いはねぇ!」
 
「んだとオラァ!」
 
「やんのかオラァ!」
 
まあた、けんかが始まったよぉ。
ウルフ一郎さんが来てから、ジュンブライトは、ウルフ一郎さんと、けんかすることになったんだ。
なぜなら、二人は仲が悪いから。
理由は、恋のライバルだから。
 
「そこらへんの犬達と、仲良く遊びやがれ!」
 
「俺様は犬じゃねぇ!オオカミだ!」
 
「ねぇ、知ってる?犬のご先祖様は、オオカミだって。」
 
「豆しばかっ!」
 
「ドッグフードでも食べろ!」
 
「どぅわぁから、犬じゃねぇ!」
 
・・・・・・。
 
「真莉亜は、俺の女だ!」
 
「いーや、俺様の女だ!」
 
はぁ~。
 
「真莉亜は、俺のことが好きだ!」
 
「ふっ、真莉亜ちゃんは、お前みてぇなバカで、わがままで、自分勝手な男が苦手なんだよ!真莉亜ちゃんは、俺様みたいな、色気があって、男前な男が好きなんだよ!」
 
好みは、どっちでもいいので・・・・・・。
 
「色気がねぇじゃねぇか。この、変態ヤローが!」
 
あんたもだろっ。
 
「だまれ!この、天パヤロー!てめぇの天パの先っちょを、たばこの火で燃やしてやろーか!」
 
「俺の髪の毛は、命なんだよ!お前をやっつけて、俺の毛皮のマフラーにしてやる!何万円で売れるかなぁ~?一、十、百、千、万!三万円、もうかりまっせ~。」
 
「お金目的で言ってるのか!」
 
「ちげーよ!」
 
目が一万円札になってるよ!
 
「うそつけ!」
 
「うっさい!この、変態オオカミが!」
 
だからあんたもだってば!
 
「やっかましい!この、バカ王子が!」
 
「んだとオラァ!」
 
「やんのかオラァ!」
 
もう、けんかを止める気、ありません。
誰か、私の代わりに、止めてください。
 
「なーにやってんだい、あんた達はぁ!」
 
テレサさん!いいところに来てくれた!
バコーン!
テレサさんは、二人の頭を、フライパンでなぐった。
 
「いってぇ~。」
 
二人の頭には、大きなたんこぶがついている。
 
「昼間っから騒々しいんだよ。アキとソラが起きたじゃないか。」
 
アキちゃんとソラちゃんは、目をこすって、みんなのなかに入ってる。
 
「人の昼寝をじゃまして。けんかをするなら、外でやりな。」
 
「よし、続きをやろうぜっ!」
 
「菜の花広場でなっ。」
 
「お前に言いたい悪口は、山ほどある!」
 
「俺様もだっ。」
 
「アホ―ッ!」
 
本気で出て行こうとしてるよ!」
 
「あら、どこに行くの?」
 
リリアさんが、出て行こうとする二人に、話しかけた。
 
「お外に遊びに―。」
 
「さぁ、思いっきり遊ぼー。」
 
「ふーん。」
 
リリアさんは、汗をだらだら流している二人を見て、クスッと笑って、リビングの方に歩き始めた。
 
「けんかは、話がおわってからにして。」
 
バレた―っ!」
 
「話?」
 
「なんの?」
 
二人が首をかしげると、リリアさんは笑顔で振り返った。
 
「真莉亜も来て。」
 
え?私も?
 
 

 
私達12人は、リビングに集められた。
 
「今日は集まっていただき、誠にありがとうございます。」
 
いいえ、とんでもありません。
 
「ねぇルクト。話って、なに?」
 
「まさか、しつじをやめるとか!?」
 
「え!?」
 
私達は、思わずルクトさんの顔を見た。
 
「いえ、ちがいます・・・・・・。」
 
「じいや、三十二年間、俺のそばにいてくれて、ありがとう。」
 
「ルクトじいや様のこと、決して忘れません!」
 
二人とも、ぶっ飛んだはやとちり、しないでよ!
 
「ちがいます!わたくしは死ぬまで、王子のそばにいますっ!」
 
「そりゃあ、よかった。」
 
「で、一体、なんの話なの?」
 
「それは・・・・・・。」
 
「重い病気になったとか!?」
 
紅葉!
 
「ガン!?それとも、アルツハイマー!?」
 
クリスさんまで!
 
「みな様、わたくしを、年寄り扱い、してません?」
 
ルクトさん、気にしないで。話を続けてください。
 
「はい。では・・・・・・。」
 
ルクトさんは、ゴホン!と、咳ばらいをした。
 
「みな様を、ここに集まってもらったのは、ほかでもありません。実は、ウルフ一郎様が、人間界に住むことになってから、なにか、もっとみな様と仲良くしてもらいたいことはないかと、考えて・・・・・・。」
 
「ふん!俺はやだね!」
 
ジュンブライト!
 
「俺様もだ!こーんなやつらと、仲良くなりたくねぇんだよ!」
 
ウルフ一郎さんまで・・・・・・。
 
「あんた達、どんだけ仲が悪いの。」
 
「いいですか?明日、みな様で、都内のデパートに行こうと思いまして。」
 
デパートに!?
 
「はい。」
 
ルクトさんは、笑顔でうなずいた。
 
「でも、ギロは?」
 
「ギロは仕事でいそがしいから、行かないわよ。」
 
「え―っ?」
 
「ギロとお買い物、したかった~。」
 
「私も。」
 
ギロさん、子供達に人気ですねぇ。
 
「仕方ないでしょ。お医者さんは、遊んでいるひまなんて、ないのよ。」
 
クリスさんの言う通りですっ。
 
「別々に行動した方が、いいねぇ。」
 
「私も賛成よ!」
 
「あたし、ジュンブライト様とお買い物、したーい♡」
 
「俺様、真莉亜ちゃんの好きな物、買ってあげたーい♡」
 
「俺も~♡」
 
「ん!?」
 
「ん!?」
 
ここで、またけんかが始まったので、カット。
 
「組み合わせを発表します。まず、真莉亜様と王子。」
 
やったぁ!
 
「真莉亜と一緒だぜ!」
 
「次に、わたくしとクリス様。」
 
「ちょっとまって!あたし、あんたとお買いものなんか、したくない!ジュンブライト様としたい!」
 
「わがまま言わないの。」
 
「次に、リリア様とテレサ様と紅葉様。」
 
「私、かわいい服、買いたーい!」
 
「あたしもたまーに、服、買おうか。」
 
「ギロにおみやげ、買って来ようかな。」
 
「最後は、ウルフ一郎様と王女様と道華様とアキ様とソラ様。」
 
「ウルフ一郎と一緒だぁ!」
 
「イェーイ!」
 
「ウルフ一郎と、一緒にお買い物をするなんて、夢みたーい!」
 
「明日が楽しみですぅ!」
 
ウルフ一郎さん、早速子供達に、人気ですね。
 
「以上で終わります・・・・・・。」
 
「ちょっとまったぁぁぁ!」
 
ウルフ一郎さんが、口をはさんだ。
 
「なんでこいつらと、買い物しなきゃならないんだよ!俺様は、真莉亜ちゃんと、お買いものしたーい!組み合わせを、変更してくれ!」
 
「それは無理です。」
 
「なぬ!?」
 
「真莉亜とジュンブライトは、カップルだし。」
 
「あなた、めんどう見がいいんでしょう?」
 
「そ・・・・・・そうだけどさぁ・・・・・・。」
 
「こいつらを見失ったら、誰が責任を取るんだい。」
 
「・・・・・・自分です。」
 
ウルフ一郎さんは、きっぱりと答えた。
 
「そうでしょ?アキとソラは、まだ3歳だから、手をつながせてね。」
 
「はーい。」
 
ウルフ一郎さん、道華をよろしくお願いします。
 
「ОK~♡俺様にまかせてぇ~♡」
 
 

 
 
翌日。私達は、別々に分かれ、行動をした。
 
「ジュンブライト、どこ行く?」
 
「そうだなぁ。飯、食いに行こうぜ。」
 
だーめ。ご飯はお昼になってから。ゲームセンターに行こっ。
 
「あぁ。何階だったっけ?」
 
えーっと、5階だよ。
私達は、エスカレーターに乗って、5階へ上った。
うわぁ。ゲームセンター、多いねぇ。
だって、夏休みだもん。
子供もいっぱいいるし。部活帰りでプリクラをとっている、女子高校生もいるし、奥の方でパチンコをやっている、おじさんがいるし。
 
「ほかのところ、行くか?」
 
「そうだね。私、ジュンブライトとプリクラ、とりたかった。」
 
私達が、出て行こうとした、その時。
 
「真莉亜ちゅわ~ん♡」
 
遠くの方から、声が聞こえた。
あ!
 
「ウルフ一郎さん!」
 
「ぐー然だねっ。」
 
そうですね。ウルフ一郎さんが、いるっていうことは・・・・・・。
 
「お母さん!」
 
道華!
 
「真莉亜お姉様、ジュンブライトお兄様っ。」
 
マドレーヌちゃん!
 
「あと二人、足りねぇぞ。」
 
「ん!?あー!」
 
アキちゃんとソラちゃんがいないことに気づいた、ウルフ一郎さんは、真っ先にゲームセンターの中に入り、二人を連れ出した。
 
「ったく、はぐれたらだめだろ!」
 
「だってぇ、車のゲーム、したかったんだもーん。」
 
「言いわけは無用だっ!」
 
「はーい。」
 
ソラちゃん、さっきから、体をもじもじさせてるよ。
 
「おトイレに行きたくなっちゃった。」
 
「トイレだとぉ~!?」
 
「ウルフ一郎さん、ソラちゃんは、私にまかせてください。」
 
「ウワーオ!真莉亜ちゃん、しっかりしてるねぇ~♡そういう真莉亜ちゃんも、ステキだぁ!」
 
私は無視して、ソラちゃんと一緒に、トイレに向かった。
 
「ちゃんと見てねぇじゃねぇか。」
 
「お前に叱られる資格はねぇ!」
 
「なんだとぉ!?」
 
「やんのかオラァ!」
 
「二人とも!けんかはやめてください!」
 
「マドレーヌはだまってろ!」
 
「ゔ・・・・・・うわぁ~ん!」
 
「どうしよう・・・・・・。」
 
「マドレーヌが、泣き出した・・・・・・。」
 
「おい!こいつ、一体、何者なんだ!?」
 
「超能力ヴァンパイアだ!」
 
「超能力ヴァンパイア?変なヴァンパイアだなぁ。」
 
「うるせぇ!マドレーヌは生まれつき、超能力ヴァンパイアなんだよ!って、なんで俺が、お前に教えてるんだよ!」
 
「てめぇが説明し始めたんだろーがっ!」
 
「なんだとぉ?」
 
「やんのかオラァ!」
 
「びぇ~ん!」
 
あれ?物が浮かんでる。
ま、まさか・・・・・。
あぁ!マドレーヌちゃんが、泣いている!
ジュンブライト達は、耳をふさいでいるし、ほかのお客さんが、めいわくそうな目で、マドレーヌちゃんの方を見つめてる。
 
「どうしたの?マドレーヌちゃん。」
 
「うわぁ~ん!」
 
泣いてもわからないよ。
 
「うわぁ~ん!」
 
マドレーヌちゃん・・・・・・!
 
「あのね、お父さんとウルフ一郎がね・・・・・・。」
 
「言うな―っ!」
 
ジュンブライトとウルフ一郎さんが、あわてて道華の口をふさいで、私を見て、苦笑いをした。
・・・・・・あやしい。
あんた達、またけんかしたでしょ。
 
「ぎくぅ!」
 
二人は、肩をビクッと、ふるわせた。
やっぱりね。理由がわかったよ。
 
「マドレーヌちゃん、泣きやんで。」
 
「ひくっ、ひくっ・・・・・・。」
 
マドレーヌちゃんが泣きやむと、物が浮かぶのをやめた。
 
「二人のけんかを、止めたかったんだね。」
 
「は、はい・・・・・・。」
 
マドレーヌちゃんは、うでで目をこすった。
 
「止めたんですけど、「だまってろ!」って、言われました。」
 
本当?
 
「本当ですぅ。」
 
子供は正直だねぇ。
ボカ、ボカ、ボカ、ボカ!
私は、二人の頭をなぐった。
二人の頭の上に大きなたんこぶがついた。
いいかげんにしなさいっ!
 
「す、すみませ~ん。」
 
「真莉亜ちゃんの愛のパンチ、効いたよぉ~♡」
 
愛じゃありません!怒りのパンチです!
 
「照れないでよぉ~♡」
 
照れてません!
 
「お母さん、見て~。」
 
道華が、チョッパーの大きなぬいぐるみを、私に見せた。
そのぬいぐるみ、どうしたの?
 
「ウルフ一郎が、UFОキャッチャーで、取ってくれたの!」
 
もしかしてあんた、ウルフ一郎さんに、だだをこねたんじゃないでしょーね!
 
「してない!」
 
「あー、真莉亜ちゃん、ゆるしてくれ。こいつ、君の言う通り、だだをこねちゃってさ。仕方なく、取ってやったんだよ。」
 
すみません・・・・・・この子、わがままなので。
 
「お前と一緒だな。」
 
「悪かったな。DNAが一致しすぎて。」
 
「そんなことより、真莉亜ちゅわ~ん♡UFОキャッチャー、やろー♡君の欲しい物、なんでも取ってあげるよーん♡」
 
ウルフ一郎さん!速いですぅ~!
 
「こらぁ!俺の真莉亜に、手ェ出すなぁ!」
 
ジュンブライトは、私達のあとを追いかけた。
私達は、UFОキャッチャーの前に着いた。
うわぁ。道華がもっていた、チョッパーのぬいぐるみがあるし、ハンコックのフィギアもある~。
あと、ルフィの麦わらぼうしも、エースのフィギアも、ペローナのフィギアも、白ひげのフィギアも、シャンクスのフィギアもある~。
あ、私が欲しがってた、サンジのフィギアもある~。
こりゃあ、『ОNPICE』ファンにとっては、たまらん。
 
「真莉亜ちゃんって、『ОNEPICE』が好きなの~?」
 
「はいっ!毎週、録画して観てますっ!あと、コミック全巻、もってますっ!」
 
「俺もだ。」
 
わ!ジュンブライト!てか、あんた、コミック全巻、もってないでしょ?
 
「前は真莉亜んちからぬすんで、読んでいたけど、今は、ゲオから借りて、読んでるぜ。」
 
「どろぼうだな、おい!」
 
 
「あ、そーゆー話をしている場合じゃなかった!真莉亜~。お前の欲しいもん、取ってあげるよーん♡」
 
え・・・・・・じゃあ、これ。
私が、サンジのフィギアを指さすと、ジュンブライトは、顔をムッとした。
ど、どうしたの?
 
「サンジは反対だ!せめて、ナミにしてくれ!」
 
はぁ?別にいいじゃん。
 
「よくなーい!サンジより、ナミの方がいいぞ!」
 
焼きもち、やいてるの?
 
「やいてねぇー!」
 
顔、真っ赤になってるし。
 
「俺様も反対だ!真莉亜ちゃん!ナミにしてくれ!」
 
「意見、パクッたな。」
 
・・・・・・わかりました。じゃあ、ナミにします。
 
「よっしゃあ!」
 
「へへーん!ざまあみろ、サンジ!俺様の女は、変態のお前なんかに、渡さないぜ!なんだとぉ!?この、クソオオカミ!やんのかオラ!行くぜ!羊肉ショット!ゔぅ!どうだ?きいたか?ええい!俺様を肉料理にするなんて、100年、いや、1000年早いぜ!見せてやる!ウルフ一郎の、愛いっぱいキーック!どうだ?参ったか?はーい!参りました・・・・・・。」
 
「はーい、一人芝居、終ー了ー。」
 
ウルフ一郎さんの声、サンジの声の人にそっくり!
 
「もう、ほめすぎだよぉ~♡おい、ジュンブライト!200円入れろ!」
 
「へーい、へい。」
 
ジュンブライトは、ポケットの中から、200円を取り出し、UFОキャッチャーの中に入れた。
すると、ボタンがピカピカ光り出した。
 
「よーし。どっちがナミのフィギアを取れるか、勝負しようぜ!」
 
「いいぜ!」
 
二人は別々のアームのところに行き、歯をくいしばって、動かした。
 
「うりゃうりゃうりゃ~!」
 
「おりゃおりゃおりゃ~!」
 
すっごいスピードで動かしてる・・・・・・。
 
「この船の航海士は、誰?」
 
出た!空島に着く直前に言った名言!
それでサンジが・・・・・・。
 
「ナーミすわーんでぇ~す♡」
 
って、言うのよね。
ウルフ一郎さんの声、ほんっとうに、サンジの声の人にそっくり・・・・・・・。
 
「あと少しだ!」
 
ジュンブライトのアームが、わっかにくぐろうとしている!
 
「あー!」
 
ウルフ一郎さんは、それを見て、口をポカーンと開けている。
わっかにくぐった!
ストン。
フィギアがアームに落ち、私はフィギアを取った。
うわぁ~。ありがとう、ジュンブライト!
 
「ふっ、まぁ、こんなもんだぜ。」
 
ジュンブライトは、かっこつけてる。
ウルフ一郎さんは、くやしそうに、歯ぎしりをして、ジュンブライトの方をくるりと向いた。
 
「もう一回!」
 
「またやんのか?」
 
ジュンブライトはあきれてる。
 
「あったり前だぁ!」
 
「そっちがそん気なら・・・・・・。」
 
え~!?またやるの~!?
 
「えいえいえいえいえーい!」
 
ストン。
 
「シュロロロロロロロ~。見たか、麦わら!」
 
シーザーのまねしてる!
 
「おりゃおりゃおりゃおりゃ~!」
 
ストン。
 
「グラグラグラグラ!俺の息子は、無事なんだろうなぁ?」
 
今度は白ひげ!
 
「Icandоit!」
 
なんで英語?
ストン。
 
「ゼハハハハハハ!エース、お前、火だろ?俺は、闇だ!」
 
黒ひげだぁ!
 
「負けないぞぉ~!」
 
ストン。
 
「鬼斬り!」
 
ゾロだ!
てか、だんだんグッズの数、減ってるような・・・・・。
ストン、ストン、ストン、ストン、ストン、ストン、ストン、ストン。
二人とも・・・・・・ほかのお客さんのことも、考えましょーね。
 
 

 
グゥ~。
お腹減った~。
グゥ~。
 
「俺もだ。」
 
なにか食べよう。
 
「あそこのスパゲッティ屋さんは?」
 
ジュンブライトが、向こうにあるお店を、指さした。
うわぁ。すっごい行列。まつのに時間がかかるよ。
 
「そうだなぁ。」
 
私達は、スパゲッティ屋に行くのをやめた。
 
「私、ナポリタン食べたかった。」
 
「仕方ないだろ?次のデートの時に、一緒に食べに行こう。」
 
うん・・・・・・。
 
「真莉亜ちゅわ~ん♡」
 
後ろを振り返ると、ウルフ一郎さんが、両足を竜巻のように早く走らせ、こっちに向かって来るのが見えた。
 
「なにしてるの~?」
 
「飯を食べるとこを探してんだ。」
 
「お前に聞いてねぇ。」
 
ウルフ一郎さん、なにかいいところ、ありますか?
 
「もっちろん!おいしそうなバイキング屋さんを、見つけたよーん♡」
 
本当ですか!?
 
「yes!」
 
「英語でしゃべったよ、こいつ。」
 
「さぁ、行こーう!」
 
ウルフ一郎さんが、私の手をひっぱった。
ちょっ、ウルフ一郎さん!
 
「おい!俺も連れて行け!」
 
ジュンブライトが、私達のあとを、また追いかけた。
 
 
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