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第三十話 「ジュンブライトが、記憶喪失になった!?(後編)」

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私は、本を読んでいるジュンブライトの後ろに、やって来た。
 
「ねぇ。ジュンブライト。今から、菜の花広場に、一緒に行かない?」
 
ジュンブライトが、首をかしげた。
 
「なんで?」
 
「菜の花広場に行ったら、記憶がよみがえるかもしれないってさ。」
 
「ねぇお父さん、行こ―!」
 
「一緒に遊びましょう!」
 
道華とマドレーヌちゃんが、ジュンブライトの手をひっぱった。
 
「わかりました。」
 
やったぁ!
 
 

 
 
私達は、菜の花広場に着いた。
ウルフ一郎さんを見た子供達は。
 
「あっ、ワンワンだ!」
 
「俺様は犬じゃねぇ!」
 
「ワンワンがしゃべった!」
 
「だから俺様は、犬じゃねぇ!」
 
「オオカミと犬、どっちも同じだと思うけど?」
 
「ウルフ一郎、鬼ごっこやろ―。」
 
「ウルフ一郎が、鬼ねー。」
 
「ギロも遊ぼー。」
 
マドレーヌちゃん達は大はしゃぎ。
 
「いーぜ。」
 
「みんな、にげろ―っ!」
 
「キャ―ッ!」
 
ギロさん達は、逃げ出した。
 
「まて―っ!」
 
バラバラに逃げたギロさん達を、ウルフ一郎さんが追いかける。
うふふふふ。
けど・・・・・・。
 
「はぁ、はぁ。」
 
ウルフ一郎さんが息を切らして、私達のところにやって来て、ベンチにすわった。
汗はだくだく。
 
「あいつら、追いかけて来ないのかい。」
 
「あたり前だろ。俺様、歳だから、もう走れねぇ。」
 
ウルフ一郎さん、何歳ですか?
 
「36だ。」
 
36~!?
 
「あたし達と、4つ年上じゃないか!」
 
「ルクト、お前、俺様の代わりに、走ってくれ。」
 
「いやです。」
 
「僕がやりましょう!」
 
はりきってるよ、この人。
 
「あとはまかせたぞ、バカ王子。」
 
「ウルフ一郎さんのために、頑張りますっ!」
 
ジュンブライトは、風のように、走って行った。
 
「『ゴーオンジャー』なみだねぇ。」
 
「ワンワーン、水、いるぅ?」
 
あらら。さっきの子供達。
 
「俺様は犬じゃねぇって、言ってるだろっ!」
 
「ガキども。ワンワンの顔に、水をぶっかけて、いいぞ。」
 
「お前!なにをたくらんでいる!」
 
ジャー。
子供達はウルフ一郎さんの顔に、水をぶっかけた。
 
「うわ!や、やめろ!おめぇら、チキンにするぞ!」
 
「こわいこと、言うなや。」
 
「大変ですぅ~!」
 
マドレーヌちゃんと道華が、あわててやって来た。
 
「どうしたんですか?」
 
「お父さんが・・・・・・お父さんが!」
 
ジュンブライトが、どうしたの?
 
「ん―もう、いいからこっちに来て!」
 
道華ぁ。そんなに手を引っ張らないでよぉ。
来られた場所に着くと・・・・・・。
ジュンブライトが、すべり台の前で、頭を抱えて、しゃがみこんでる。
その横には、アキちゃんと、ソラちゃんと、ギロさんがいた。
 
「どうしたの、ジュンブライト。」
 
「う、う~ん。」
 
ジュンブライトは、うなったまま。
 
「先輩!」
 
「ジュンブライト様!」
 
「う、う~ん。」
 
「『これだよ。真莉亜、目をつぶれ。』」
 
「『え?』」
 
「『早く!』」
 
「『う、うん!』」
 
「『いいか?』」
 
「『はい。準備満タンですっ!』」
 
「『よし、いくぞ。』」
 
チュ。
 
「『キャ―ッ♡王子―っ♡』」
 
「『こっち向いてぇ~♡』」
 
「『なんか、ジャニーズのコンサートみたいになったな。』」
 
「『仕方ない。俺がなんとかすっか。二ヒッ。』」
 
「『萌え~♡』」
 
「『って、おい!」』」
 
「『国民を、ドミノみたいにたおすなっ。』」
 
「『あれ―?やりすぎちゃったかな~?』」
 
(僕は、僕は!)
 
(俺は、俺は!)
 
「ジュンブライトだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!」
 
ジュンブライトの声が、地球まで広がった。
 
「はぁ、はぁ、はぁ。」
 
ジュンブライト、質問、していいかな?
 
「なんだ。」
 
ジュンブライトが、私の方を振り向いた。
 
「誕生日は?」
 
「11月11日。」
 
「血液型は?」
 
「A型。」
 
「好きな食べものは?」
 
「ナポリタンと、干しトカゲ。」
 
「好きなマンガは?」
 
「『ОNEPICE』。」
 
「じゃあ、一番大好きな人は?」
 
「そりゃあ、もちろん・・・・・・。」
 
ジュンブライトが、私をぎゅっとだきしめた。
 
「春間真莉亜!お前だ!」
 
ジュンブライト!
私達は、だきあった。
うれしいよ。記憶が戻って!
 
「おめぇら、またいろいろと、めいわくかけっちまったな。」
 
「いいんですよ。」
 
「ったく、世話がやけるやつだぜ。」
 
「なんか、言ったか?」
 
「いや、別に。」
 
「ジュンブライトお兄様!満月荘に戻りましょう!」
 
マドレーヌちゃんが、ジュンブライトの手をひっぱった。
 
「今日はめいいっぱい、ごちそうしますよ。」
 
「うお!やったぁ!」
 
うふふふふ。
ジュンブライト。記憶を失ったあなたも、いつものあなたも、大好きだよ。
 
 
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