96 / 185
第三十八話 「ハチャメチャな美女と野獣!」
しおりを挟む
次のシーンは、なんとなく、うまくいきました。
次は、お城にとらわれたモーリスを、ベルが助けるシーン。
「パパ!」
「おぉ、ベル!」
「・・・・・・手が冷たいわ。」
「そんなことより、早く逃げろ!」
「えっ?」
「誰だ、そこにいるのは!」
振り返ると、野獣姿のジュンブライトが、犬のように、一歩、一歩、歩いて、登場した。
ひぇー、こわーい!
「お前の娘か!」
頭の上には、チョッパーみたいな、角と耳がついていて、口にはおそろしい牙に、黒いしっぽが、おしりについていて、顔色は、茶色にぬってある。
それに、赤いマントをつけている。
「ベル、逃げろ!」
「まって!」
私は、おそるおそる、ジュンブライトに近づいた。
「顔を見せて。」
「顔を?お前も、みにくい私の姿を、見てバカにするのか!」
「バカにしないわ!さぁ、早く見せてちょうだい!」
ジュンブライトは、私に顔を見せた。
「いや!」
私は、顔を両手でおおった。
「ベル!」
「これが、私の姿だ。顔だ!」
いよいよ、私が一番、ジーンとくるセリフ!
「パパをここから出して。」
「なんだとぉ?」
「私をここに閉じこめて。そして、パパを自由にして。」
「よかろう。お前の言う通りにしてやる。」
「・・・・・・ゔぅ・・・・・・。」
春間真莉亜、我ながら、うまい演技です。
「ちょっとまったぁ!」
その声は・・・・・・。
「ウルフ一郎さん!?」
「なんだ、オオカミヤロー。」
「真莉亜ちゃん!その、勇気ある行動、したらだめだよ!」
はぁ?
「おい!話の流れを、止めようとするなっ!」
「うるさい!と・に・か・く!真莉亜ちゃん、俺様の言う通りにして!」
はぁ・・・・・・なんで、こーなるのぉ~?
「オオカミヤロー!貴様は舞台の裏側で、おとなしくしてろ!」
「おとなしくしてられっか!真莉亜ちゃんをろうに閉じこめるやつは、ゆるさん!」
「いや、これはぁ、台本に書いてある通りなんで・・・・・・。」
「台本なんか、ど―でもいい!俺様は、真莉亜ちゃんを守る役目を果たしたいんだ!」
「こ、こいつ、ぶっ飛んだかんちがいを、してやがる・・・・・・。」
ウルフ一郎さん!これ以上、お芝居をめちゃくちゃにしないでください!
「えっ?」
「私、そういうウルフ一郎さんが、大っ嫌いです!」
(大っ嫌いです、大っ嫌いです、大っ嫌いです、大っ嫌いです、大っ嫌いです・・・・・・・!)
「そ、そんなぁ~。」
私の言葉が、心の中に響いたのか、ウルフ一郎さんは、石化した。
「は―い、おつかれさ―んっと。」
ジュンブライトが、石化したウルフ一郎さんを、舞台裏まで運んだ。
これで、一安心です。
☆
「あ”-!もう、がまんできない!」
「野獣・王子様役をやりたい気持ちが、やまやまになった!」
「ん?そうだ!俺、いいこと考えちゃった―ん♡」
☆
そして、物語はいよいよ、クライマックスへ。
野獣を退治に来た、ガストンの仲間が追い出され、ガストンは、一人で野獣をたおしに行き、野獣はガストンを追い出して、ベルの元へと行こうとした。が、ガストンは、野獣を短剣でさし、さしたひょうしに、滝に落っこちちゃった。
「あなた、大丈夫?」
「あぁ。もう、私の命は、それほど長くない。」
「バカなこと、言わないで・・・・・・。」
「君と出会って、よかった。」
ジュンブライトは、私のほっぺに、手を当てた。
「うそでしょ?死なないで!」
「いい人生だった・・・・・・。」
ジュンブライトは、ゆっくり目を閉じた。
「あなた、あなた!お願い、目を覚まして!・・・・・・愛してるわ。」
私が、ほおずりをして、涙を一粒流した、その時!
ピカーッ!
まぶしい光が、光り出した。
ジュンブライトは、宙に浮かんだ。
赤いマントを体に包んで、浮かんでいる。
そして、ジュンブライトの化け物だった、手が人の手になり、化け物だった足が、人の足になり、しっぽが消え、野獣の顔が、人の顔になった。
ジュンブライトは、宙から舞い降りた。
ジュンブライトは、立ち上がって、自分の手を見て、私の方を振り向いた。
「・・・・・・誰?」
「ベル、僕だよ!」
ジュンブライトは喜んで、私の両手をにぎった。
「本当に、あなたなの?」
「あぁ。」
「あなた!」
私は、ジュンブライトにだきついた。
「よかった、生きてて・・・・・・。」
「魔法が解けて、よかった。」
「魔法?」
「僕は、10年前、とてもわがままで、自分勝手だったのさ。魔女の呪いで、城全体が呪いにかかり、僕はみにくい野獣の姿に変えられてしまった。」
「まぁ、かわいそう・・・・・・。」
「そう思うだろ?けど、今の僕は、今までの僕とちがう。本当の自分を見つけたのさ。そして・・・・・・心から愛し合える人も見つけた。」
「それって、まさか・・・・・・。」
「そう、君だよ、ベル。」
ジュンブライトは、優しくほほえんだ。
「あなた・・・・・・。」
「愛してるよ、ベル。」
「私も。愛してるわ、あなた。」
私達が、キスをしようとした、その時!
「ちょっとまったぁ!」
ステージの軸から、声が聞こえた。
見てみると、黒い影が、だんだん、こっちへ向かって来るのが見えた。
ジュンブライトと同じ、茶髪のかつらをかぶっていて、服装は、ジュンブライトと同じ、白い服と黒いズボンを着た、黒いサングラスをかけている、黒いオオカミさん。
「ウルフ一郎さん!」 「オオカミヤロー!」
一体、どーしたんですか!?
「えへ―ん。まだ、衣装が残っていたから、着てみたんだよ。」
「ぷっ!」
「くおうら!笑うなっ!」
「だ・・・・・・だってぇ、お前、おかしーんだもーん!かつらをかぶってさ。」
「てめぇ、この俺様をバカにすると、バチが当たるぞ!」
ウルフ一郎さん、またじゃましようとするのね。
ウルフ一郎さんは、目をハートにして、両手をグーにして、あごにあてた。
「真莉亜ちゅわ~ん♡俺様と、熱~いキス、しよ~♡」
そのために衣装を着たんかい!
「断りますっ!」
「ほーら。真莉亜がいやがってんじゃねぇか。」
「勝手に決めつけんな・・・・・・。」
「ア―アア―!」
ん!?今、天井から、声がしたような・・・・・・。
「なんだ、なんだ?」
「ターザン?」
「まさかぁ。」
会場が、ざわついた。
「ア―アア―!」
声がどんどん聞こえる。
「ア―アア―!」
一体、誰!?
と、思った瞬間、二人と同じ衣装を着た、男の人が、ひもにぶらさげて、ターザンのようにやって来るように見えた。
あの、かわいい瞳は、ギロさん!?
「ア―アア―!」
って、行きすぎてる―!
やっぱり、あの天然ぶりは、ギロさんだね。
「いったぁ~い。」
「お前があんな風に登場するからだろ。」
「もっと、ふつーに登場しろよ。」
「ところで、どうしたんですか、ギロさん。」
すると、ギロさんは真剣な顔になって、ジュンブライトの方に向かって、深く土下座した。
「先輩!俺に、野獣・王子様役を、やらせてください!」
「ぬわんだとぉ~!?」
ジュンブライトが、大きな声で驚いた。
「おい、お前、真莉亜のことが、好きなのか?」
「いえ、ちがいます。高校の時、やりたかったことが、急にできなくなって、悔しかったです!あれから8年後、それを実現しようとしているのですっ!もう、つらいあの過去とは、おさらばだぁ!」
ギロさんは、涙を流している。
よっほど、したかったんだね。野獣・王子様役を。
「ちょっとまったぁ!」
ウルフ一郎さん!?
「貴様、彼女がいるんだろ!その人の前で、真莉亜ちゃんと熱~いキスを、やろうってのか!」
「えっ?」
ギロさんが、顔をきょとんとしながら、客席の方を見ると、8列目のパイプいすにすわっている、リリアさんを見た。
「あ―!リッちゃんがいることを、忘れてた―っ!」
「バ―カヤロ―!」
ギロさん、天然すぎます。
「ま、いっか。」
「いいんかい!」
「・・・・・・!」
リリアさんが怒ってる!
「俺が真莉亜と熱いキスをするんだ!」
「い―や、俺様だっ!」
「ちょっとまって。真莉亜ちゃんに、決めさせるのは、どう?」
えぇっ!?
「あぁ、それはいいなぁ。」
「さっすが、俺の後輩だぜっ!」
三人は、私の方を振り向いた。
「さぁ、真莉亜!」
「真莉亜ちゃん!」
「真莉亜ちゅわ~ん♡」
「この中から、好きな方を選んで、好きな方の唇に、キスをしてくれ!」
え~!?
「『花田中文芸会史上、ものすごい展開が始まりました!』」
「『ベル役、春間真莉亜さんにキスされた方が、運命の王子様です!』」
ちょっ、放送部!勝手に話を変えるなっ!
「『果たして、真莉亜さんは、誰を選ぶのか!』」
「『真相は、CМの後!』」
飛ばしませんっ。
全く、ややしいことになったよぉ。
「ちょっとまったぁ!」
その声は・・・・・・。
「千葉のおじいちゃん!?」
「かわいいかわいい孫娘に手ぇ出すなど、ゆるさ―ん!」
千葉のおじいちゃん、乱入!
「こんな展開があるとは、聞いてないぞ!」
「誰だ、じじい。」
「私のおじいちゃんなの。」
「え~!?真莉亜ちゃんの、おじいちゃん~!?」
ギロさん、驚きすぎ。
「とにかく、おじいちゃん、じゃましないで。」
「いやだねーだ!かわいいかわいい孫娘とキスするなんて、ゆるさん!」
だめだ。言うことを聞きやしません。
「お父さん。恥をかかせないでくれる?」
千葉のおばあちゃん、登場!
「誰だ、このババア。」
ババア言うな―っ!
「私のおばあちゃん。千葉の方のねっ。」
「お前、じーちゃんとばーちゃん、何人いるんだよ。」
「真莉亜のお芝居をじゃましたら、だめですよ。」
「そ、そんなぁ~。」
おばあちゃんにひきつられ、おじいちゃんは退場。
これで、演技に集中できる。
私は、三人に顔を向けた。
この中から、私の運命の王子様が決まる。
ギロさんにキスしたら、ギロさんがその、運命の王子様。
ウルフ一郎さんは・・・・・・想像するたび、気持ち悪くなるから、やめとこ。
でも、もし、ギロさんにキスをしたら、リリアさんがやきもちやくから、やめとこ。
私の運命の王子様は、やっぱり、この人しかいない。
私は、ゆっくり歩き始めた。
そして、ある人の前に立って、ゆっくり目を閉じて・・・・・・。
チュッ・・・・・・。
熱いキスをした。
キスをしたのは、ジュンブライトだ。
この人しか、一緒に魔法を解けることが、できない。
ジュンブライトは、それにつられて、目を閉じて、私をギュッとだきしめた。
チュッ、チュッ、チュッ、チュッ、チュッ・・・・・・。
ジュンブライトは、どんどん私の唇に、キスをしてくる。
大好きだよ、ジュンブライト。
☆
数日後。比奈多さんが、お礼をしにやって来た。
「先週は、どうもありがとうございました!」
比奈多さんは、ジュンブライトに向けて、お辞儀をした。
「おかげで、大好評でしたわぁ。」
「いやぁ、それほどでもぉ、アリアリだぜ。」
もう、調子に乗っちゃって。
「前回は大好評だったので、また、一緒に劇をやりましょう!」
え―っ!?
「またやんのか?」
「えぇ。」
はぁ・・・・・・今度はなにをするんだろ。
「俺は、『黒魔女さんが通る!!』がいいなっ。」
「いいえ。『黒魔女さんが通る!!』では、ありませんわ。」
「じゃあ、なんなのさ。」
比奈多さんは、にっこり笑った。
「『走れメロス』ですわっ。」
「メロスだとぉ~!?」
「いいじゃない、ジュンブライト。」
私は小声で言った。
「いいじゃないじゃねぇよ!はぁ、今度は何役なんだ。」
「主役ですわ!」
「主役だとぉ~!?」
ジュンブライト、よかったね。
「よかったねじゃねぇよ!ったく、メロスの声の人の声に似ているからか?」
「あら、やだ。」
「図星かい!」
うふふふふ。
「はぁ、俺、劇はもうあきたぁ!」
ジュンブライトの大きな声が、青空まで響いた。
次は、お城にとらわれたモーリスを、ベルが助けるシーン。
「パパ!」
「おぉ、ベル!」
「・・・・・・手が冷たいわ。」
「そんなことより、早く逃げろ!」
「えっ?」
「誰だ、そこにいるのは!」
振り返ると、野獣姿のジュンブライトが、犬のように、一歩、一歩、歩いて、登場した。
ひぇー、こわーい!
「お前の娘か!」
頭の上には、チョッパーみたいな、角と耳がついていて、口にはおそろしい牙に、黒いしっぽが、おしりについていて、顔色は、茶色にぬってある。
それに、赤いマントをつけている。
「ベル、逃げろ!」
「まって!」
私は、おそるおそる、ジュンブライトに近づいた。
「顔を見せて。」
「顔を?お前も、みにくい私の姿を、見てバカにするのか!」
「バカにしないわ!さぁ、早く見せてちょうだい!」
ジュンブライトは、私に顔を見せた。
「いや!」
私は、顔を両手でおおった。
「ベル!」
「これが、私の姿だ。顔だ!」
いよいよ、私が一番、ジーンとくるセリフ!
「パパをここから出して。」
「なんだとぉ?」
「私をここに閉じこめて。そして、パパを自由にして。」
「よかろう。お前の言う通りにしてやる。」
「・・・・・・ゔぅ・・・・・・。」
春間真莉亜、我ながら、うまい演技です。
「ちょっとまったぁ!」
その声は・・・・・・。
「ウルフ一郎さん!?」
「なんだ、オオカミヤロー。」
「真莉亜ちゃん!その、勇気ある行動、したらだめだよ!」
はぁ?
「おい!話の流れを、止めようとするなっ!」
「うるさい!と・に・か・く!真莉亜ちゃん、俺様の言う通りにして!」
はぁ・・・・・・なんで、こーなるのぉ~?
「オオカミヤロー!貴様は舞台の裏側で、おとなしくしてろ!」
「おとなしくしてられっか!真莉亜ちゃんをろうに閉じこめるやつは、ゆるさん!」
「いや、これはぁ、台本に書いてある通りなんで・・・・・・。」
「台本なんか、ど―でもいい!俺様は、真莉亜ちゃんを守る役目を果たしたいんだ!」
「こ、こいつ、ぶっ飛んだかんちがいを、してやがる・・・・・・。」
ウルフ一郎さん!これ以上、お芝居をめちゃくちゃにしないでください!
「えっ?」
「私、そういうウルフ一郎さんが、大っ嫌いです!」
(大っ嫌いです、大っ嫌いです、大っ嫌いです、大っ嫌いです、大っ嫌いです・・・・・・・!)
「そ、そんなぁ~。」
私の言葉が、心の中に響いたのか、ウルフ一郎さんは、石化した。
「は―い、おつかれさ―んっと。」
ジュンブライトが、石化したウルフ一郎さんを、舞台裏まで運んだ。
これで、一安心です。
☆
「あ”-!もう、がまんできない!」
「野獣・王子様役をやりたい気持ちが、やまやまになった!」
「ん?そうだ!俺、いいこと考えちゃった―ん♡」
☆
そして、物語はいよいよ、クライマックスへ。
野獣を退治に来た、ガストンの仲間が追い出され、ガストンは、一人で野獣をたおしに行き、野獣はガストンを追い出して、ベルの元へと行こうとした。が、ガストンは、野獣を短剣でさし、さしたひょうしに、滝に落っこちちゃった。
「あなた、大丈夫?」
「あぁ。もう、私の命は、それほど長くない。」
「バカなこと、言わないで・・・・・・。」
「君と出会って、よかった。」
ジュンブライトは、私のほっぺに、手を当てた。
「うそでしょ?死なないで!」
「いい人生だった・・・・・・。」
ジュンブライトは、ゆっくり目を閉じた。
「あなた、あなた!お願い、目を覚まして!・・・・・・愛してるわ。」
私が、ほおずりをして、涙を一粒流した、その時!
ピカーッ!
まぶしい光が、光り出した。
ジュンブライトは、宙に浮かんだ。
赤いマントを体に包んで、浮かんでいる。
そして、ジュンブライトの化け物だった、手が人の手になり、化け物だった足が、人の足になり、しっぽが消え、野獣の顔が、人の顔になった。
ジュンブライトは、宙から舞い降りた。
ジュンブライトは、立ち上がって、自分の手を見て、私の方を振り向いた。
「・・・・・・誰?」
「ベル、僕だよ!」
ジュンブライトは喜んで、私の両手をにぎった。
「本当に、あなたなの?」
「あぁ。」
「あなた!」
私は、ジュンブライトにだきついた。
「よかった、生きてて・・・・・・。」
「魔法が解けて、よかった。」
「魔法?」
「僕は、10年前、とてもわがままで、自分勝手だったのさ。魔女の呪いで、城全体が呪いにかかり、僕はみにくい野獣の姿に変えられてしまった。」
「まぁ、かわいそう・・・・・・。」
「そう思うだろ?けど、今の僕は、今までの僕とちがう。本当の自分を見つけたのさ。そして・・・・・・心から愛し合える人も見つけた。」
「それって、まさか・・・・・・。」
「そう、君だよ、ベル。」
ジュンブライトは、優しくほほえんだ。
「あなた・・・・・・。」
「愛してるよ、ベル。」
「私も。愛してるわ、あなた。」
私達が、キスをしようとした、その時!
「ちょっとまったぁ!」
ステージの軸から、声が聞こえた。
見てみると、黒い影が、だんだん、こっちへ向かって来るのが見えた。
ジュンブライトと同じ、茶髪のかつらをかぶっていて、服装は、ジュンブライトと同じ、白い服と黒いズボンを着た、黒いサングラスをかけている、黒いオオカミさん。
「ウルフ一郎さん!」 「オオカミヤロー!」
一体、どーしたんですか!?
「えへ―ん。まだ、衣装が残っていたから、着てみたんだよ。」
「ぷっ!」
「くおうら!笑うなっ!」
「だ・・・・・・だってぇ、お前、おかしーんだもーん!かつらをかぶってさ。」
「てめぇ、この俺様をバカにすると、バチが当たるぞ!」
ウルフ一郎さん、またじゃましようとするのね。
ウルフ一郎さんは、目をハートにして、両手をグーにして、あごにあてた。
「真莉亜ちゅわ~ん♡俺様と、熱~いキス、しよ~♡」
そのために衣装を着たんかい!
「断りますっ!」
「ほーら。真莉亜がいやがってんじゃねぇか。」
「勝手に決めつけんな・・・・・・。」
「ア―アア―!」
ん!?今、天井から、声がしたような・・・・・・。
「なんだ、なんだ?」
「ターザン?」
「まさかぁ。」
会場が、ざわついた。
「ア―アア―!」
声がどんどん聞こえる。
「ア―アア―!」
一体、誰!?
と、思った瞬間、二人と同じ衣装を着た、男の人が、ひもにぶらさげて、ターザンのようにやって来るように見えた。
あの、かわいい瞳は、ギロさん!?
「ア―アア―!」
って、行きすぎてる―!
やっぱり、あの天然ぶりは、ギロさんだね。
「いったぁ~い。」
「お前があんな風に登場するからだろ。」
「もっと、ふつーに登場しろよ。」
「ところで、どうしたんですか、ギロさん。」
すると、ギロさんは真剣な顔になって、ジュンブライトの方に向かって、深く土下座した。
「先輩!俺に、野獣・王子様役を、やらせてください!」
「ぬわんだとぉ~!?」
ジュンブライトが、大きな声で驚いた。
「おい、お前、真莉亜のことが、好きなのか?」
「いえ、ちがいます。高校の時、やりたかったことが、急にできなくなって、悔しかったです!あれから8年後、それを実現しようとしているのですっ!もう、つらいあの過去とは、おさらばだぁ!」
ギロさんは、涙を流している。
よっほど、したかったんだね。野獣・王子様役を。
「ちょっとまったぁ!」
ウルフ一郎さん!?
「貴様、彼女がいるんだろ!その人の前で、真莉亜ちゃんと熱~いキスを、やろうってのか!」
「えっ?」
ギロさんが、顔をきょとんとしながら、客席の方を見ると、8列目のパイプいすにすわっている、リリアさんを見た。
「あ―!リッちゃんがいることを、忘れてた―っ!」
「バ―カヤロ―!」
ギロさん、天然すぎます。
「ま、いっか。」
「いいんかい!」
「・・・・・・!」
リリアさんが怒ってる!
「俺が真莉亜と熱いキスをするんだ!」
「い―や、俺様だっ!」
「ちょっとまって。真莉亜ちゃんに、決めさせるのは、どう?」
えぇっ!?
「あぁ、それはいいなぁ。」
「さっすが、俺の後輩だぜっ!」
三人は、私の方を振り向いた。
「さぁ、真莉亜!」
「真莉亜ちゃん!」
「真莉亜ちゅわ~ん♡」
「この中から、好きな方を選んで、好きな方の唇に、キスをしてくれ!」
え~!?
「『花田中文芸会史上、ものすごい展開が始まりました!』」
「『ベル役、春間真莉亜さんにキスされた方が、運命の王子様です!』」
ちょっ、放送部!勝手に話を変えるなっ!
「『果たして、真莉亜さんは、誰を選ぶのか!』」
「『真相は、CМの後!』」
飛ばしませんっ。
全く、ややしいことになったよぉ。
「ちょっとまったぁ!」
その声は・・・・・・。
「千葉のおじいちゃん!?」
「かわいいかわいい孫娘に手ぇ出すなど、ゆるさ―ん!」
千葉のおじいちゃん、乱入!
「こんな展開があるとは、聞いてないぞ!」
「誰だ、じじい。」
「私のおじいちゃんなの。」
「え~!?真莉亜ちゃんの、おじいちゃん~!?」
ギロさん、驚きすぎ。
「とにかく、おじいちゃん、じゃましないで。」
「いやだねーだ!かわいいかわいい孫娘とキスするなんて、ゆるさん!」
だめだ。言うことを聞きやしません。
「お父さん。恥をかかせないでくれる?」
千葉のおばあちゃん、登場!
「誰だ、このババア。」
ババア言うな―っ!
「私のおばあちゃん。千葉の方のねっ。」
「お前、じーちゃんとばーちゃん、何人いるんだよ。」
「真莉亜のお芝居をじゃましたら、だめですよ。」
「そ、そんなぁ~。」
おばあちゃんにひきつられ、おじいちゃんは退場。
これで、演技に集中できる。
私は、三人に顔を向けた。
この中から、私の運命の王子様が決まる。
ギロさんにキスしたら、ギロさんがその、運命の王子様。
ウルフ一郎さんは・・・・・・想像するたび、気持ち悪くなるから、やめとこ。
でも、もし、ギロさんにキスをしたら、リリアさんがやきもちやくから、やめとこ。
私の運命の王子様は、やっぱり、この人しかいない。
私は、ゆっくり歩き始めた。
そして、ある人の前に立って、ゆっくり目を閉じて・・・・・・。
チュッ・・・・・・。
熱いキスをした。
キスをしたのは、ジュンブライトだ。
この人しか、一緒に魔法を解けることが、できない。
ジュンブライトは、それにつられて、目を閉じて、私をギュッとだきしめた。
チュッ、チュッ、チュッ、チュッ、チュッ・・・・・・。
ジュンブライトは、どんどん私の唇に、キスをしてくる。
大好きだよ、ジュンブライト。
☆
数日後。比奈多さんが、お礼をしにやって来た。
「先週は、どうもありがとうございました!」
比奈多さんは、ジュンブライトに向けて、お辞儀をした。
「おかげで、大好評でしたわぁ。」
「いやぁ、それほどでもぉ、アリアリだぜ。」
もう、調子に乗っちゃって。
「前回は大好評だったので、また、一緒に劇をやりましょう!」
え―っ!?
「またやんのか?」
「えぇ。」
はぁ・・・・・・今度はなにをするんだろ。
「俺は、『黒魔女さんが通る!!』がいいなっ。」
「いいえ。『黒魔女さんが通る!!』では、ありませんわ。」
「じゃあ、なんなのさ。」
比奈多さんは、にっこり笑った。
「『走れメロス』ですわっ。」
「メロスだとぉ~!?」
「いいじゃない、ジュンブライト。」
私は小声で言った。
「いいじゃないじゃねぇよ!はぁ、今度は何役なんだ。」
「主役ですわ!」
「主役だとぉ~!?」
ジュンブライト、よかったね。
「よかったねじゃねぇよ!ったく、メロスの声の人の声に似ているからか?」
「あら、やだ。」
「図星かい!」
うふふふふ。
「はぁ、俺、劇はもうあきたぁ!」
ジュンブライトの大きな声が、青空まで響いた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
ちょっと大人な物語はこちらです
神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な短編物語集です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜
来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、
疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。
無愛想で冷静な上司・東條崇雅。
その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、
仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。
けれど――
そこから、彼の態度は変わり始めた。
苦手な仕事から外され、
負担を減らされ、
静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。
「辞めるのは認めない」
そんな言葉すらないのに、
無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。
これは愛?
それともただの執着?
じれじれと、甘く、不器用に。
二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。
無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話
登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる