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第四十七話 「道華、ヴァンパイア界に行く」

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ある日、道華がこんなことを言い出した。
 
「あたし、おじいちゃんちに泊まりた―い!」
 
「え~?一人で大丈夫なの?」
 
「うん!大丈夫!」
 
って言いながら、なんかやらかしそう。
 
「それに、初めて一人でヴァンパイア界に行くんだよ!?お母さん、ことわざであるでしょ?かわいい子には旅をさせろって。」
 
「うんうん。あるねぇ~。」
 
あんた、なにデレデレした顔で、2回うなずいてんのよ。
すると、道華が私にだきついて来た。
 
「ねぇお母さん、いいでしょ?おじいちゃんの言うこと、ちゃ―んと聞くから。」
 
で、でも・・・・・・。
 
「真莉亜、いいじゃねぇか。道華、お父さんがおじいちゃんに手紙を出すから、泊まってきな!」
 
ジュンブライトが、道華の方に向かって、ウインクをした。
 
「うわぁ~。やったぁ~!」
 
道華は喜びのあまり、飛び跳ねちゃった。
ジュンブライト、本当にいいの?
 
「あたり前だろ?親父も、孫が泊まりに来たら、さぞ、うれしがることだし。」
 
「でもあんた、字が汚いから、大王様、読めないんじゃないかい?」
 
あぁ、確かに。
 
「だいじょーうぶ!家族だから、読めない字はなーい!」
 
「本当なのかねぇ。」
 
「彼がそう言うから、大丈夫じゃない?」
 
「いや、大王様がそれを見て、なんて言うのか、そこが一番心配なのよ。」
 
「道華、一つだけ聞いてね。おじいちゃんの言うことは、必ず聞くこと。わかった?」
 
「うん、わかった!」
 
道華は笑顔でうなずいた。
本当にわかってんのかなぁ?
 
「それじゃあ、家に帰って、明日の用意を、お母さんと一緒にしよう。」
 
「うん!」
 
道華はまた、笑顔でうなずいた。
私は、道華と手をつないで、満月荘を出た。
 
 

 
 
-ヴァンパイア界ー
 
 
「ジュンブライトは、元気だろうか。」
 
「きっと、相変わらず、元気に過ごしてるんじゃない?」
 
「ハハハハ!たまには手紙など書いてくればいいのに。」
 
「大王様ぁ~!」
 
「お、ポストガラス。」
 
「めずらしいなぁ~。兄さん。手紙は正月とクリスマスしか来ないのに。なんにもない日に来るなんて。誰からなのかい?」
 
「息子からだ。」
 
「やっぱり・・・・・・。相変わらず、汚くて、自分の名前をまだ、ひらがなで書いてる・・・・・・。兄さん、その手紙、開けてみなよ。」
 
「わかった。では、開けるぞ。」
 
「・・・・・・。」
 
「・・・・・・。」
 
「読め~ん!」
 
「こんなに汚い字で書いた字を、誰が読むかぁ!」
 
「兄さん、落ち着いて。」
 
「全く、息子がまだ子供だった時、習字を習いに行かせたが、習い始めて一週間たたないうちに、すぐあきて、そのままやめた。あの時、ちゃ―んとしかればよかった。」
 
「ポストガラス、これを訳してくれるかい?」
 
「あ、はいっ!え―っと、親父へ 元気か?俺は元気だぜ!ちょっと話が変わるけど、明日、道華が泊まりに来る。楽しみに待ってろよな!ジュンブライトより。」
 
「道華!?」
 
「道華って、聞いたことがない名前だなぁ。」
 
「私の孫だ!」
 
「ま、孫ぉ~!?ジュンブライト様、結婚されてないんじゃ・・・・・・。」
 
「これは私達一家の秘密だ!誰にも話さん!さぁ、準備をしよ―う!リアン、道華専用の部屋を用意してくれ!」
 
「は・・・・・・はい!兄さん、すっかりはしゃいじゃって・・・・・・。」
 
「かわいい孫のためだ!はぁ、明日が楽しくなってきた!」
 
「兄さん、孫を溺愛してるね。」
 
「?はて、なんのことやら。さぁ、次の手紙を届けよう。」
 
 

 
 
次の日。
私達は、鏡の前に集まった。
 
「道華、気をつけて行ってね。」
 
「うん!」
 
「親父によろしくって伝えてくれよなっ。」
 
「うん!じゃあみんな、いってきま―す!」
 
鏡がピカーッと光って、道華は鏡の中に入って行った。
・・・・・・行っちゃったね。
 
「あぁ。」
 
「真莉亜ちゅわ~ん♡今度、君の家に泊まりに来ていい~?」
 
はいはい。
 
「やったぁ~!」
 
「どぅわぁれが、真莉亜んちに泊まりに行っていいって言った!俺以外の男は、真莉亜んちに出入りするのは、禁止だぁ!」
 
「はぁ!?い―じゃねぇかよ、別に!」
 
あのう、勝手にめちゃくちゃなルール、作らないでくれます?
 
 

 
 
うわぁ~。初めて一人で見る、ヴァンパイア界の景色!
いつ見ても、きれいだなぁ~。ん?
あっ!おじいちゃんちが見えるぅ~!
けど、どうやってたどり着くのか、わからない・・・・・・。
あ!お父さんに地図、書いてもらったんだった!
あたしは、リュックのポケットの中から、四角に折り曲げられた紙を取り出し、その紙を広げた。
ん~。なんて書いてあるのか、全然わからないよぉ~。
しかも、富士山、ないし。これじゃあ、お城へたどり着けないよぉ~。
そこら辺の人に聞こう。
けど、誰に聞けばいいのか、全然わかんない・・・・・・。
ん?あそこに、人がいる!
赤い髪で、紙を横に結んでいて、黒い服を着ている、男の人。
顔、後ろを向いているから、わかんない。
あたしは、男の人に近づいた。
 
「あのう!」
 
「ん?」
 
男の人が、あたしの方を振り向いた。
うわぁ~。お父さんより、美形~。
あたしのタイプかも♡
 
「どうしたんだい?」
 
笑顔、かっこい~♡
 
「実は、あのお城に行きたいんだけど・・・・・・お父さんが書いた地図、お城への道のりがわかりづらくって、全然わからないの。」
 
あたしはイケメンさんに、お父さんに書いてもらった地図を見せた。
 
「あ~。この字のキタなさ、誰かさんにそっくりだなぁ。」
 
えっ!?お父さんを知ってるの!?
 
「お前の親父がどんなやつか知らねぇが・・・・・・お城まで案内するよ。」
 
えっ!?いいの!?
 
「あぁ。」
 
やったぁ~!
あたしは、ピョンピョン飛び跳ねた。
 
「ふっ、かわいいやつだなぁ。どら、その大きいバック、俺が持ってやるよ。」
 
えっ!?いいの!?
 
「あたり前だろ。こ―んな大きな荷物を、子供が一人で持ったら、大変だと思うしさ。」
 
や、優し~い。
あたし達は、山を下りて行った。
 
 

 
 
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