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第一章:朝、目が覚めたらお姫様一行の保護者になっていた俺。

アナザーサイド:獅子の意思を継ぐもの1(アメリア視点)

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 私は、親に捨てられた。
 いや、正確には、エルフの次期女王としての知見を拡げるべく、人間の住む集落に預けられたのだ。

 幼いエルフは、人間の姿とほとんど見分けがつかない。
 人間とは明らかに異なる長い耳すら、大人になるまでに少しずつ成長するものだから、一度エルフの子供が人間の子供に紛れてしまうと、そこから見つけ出すのはさぞ骨が折れることだろう。

 だから私は安全な場所で、のん気な人間に囲まれて育つことができた。

 しかし、ひとつだけ頭が痛くなることがある――男だ。

 私と同じ人間の集落……村といったか、そこには女だけではなく、男もいた。
 エルフの集落では女性しか見たことがなかったので、初めはとても新鮮だったが……すぐに飽きた。

 なぜなら、男というのはとにかくうるさいのだ。
 私が野に咲く花の姿に感動している時も、老いて身動きが取れなくなった人間に手を貸している時も、やれどこの村のあいつに勝っただ、可愛い女がいたとか、そんなくだらないことで一日中騒いでいる。

 品性はおろか、知性すら感じない。

 エルフの集落のように、男女で分ければいいものを……やはり、お母さま……いや、エルフの王たちは正しい。

 おそらく、王たちも人間の愚かさを学び、優れたエルフの歴史を理解して欲しいのだろう。

「私は必ず期待に応えて見せます」

 誰もいない自分の家で、私は毎日そう誓いを立てた。
 愛する家族の為……同胞であるエルフの為に私は全てを捧げ――


「アメリア、レオナルドの様子をどう見る?」

 ふと気が付くと、幼馴染のフェイシン兄さんが私を見ていた。
 ええっと……そうだ、今は私が所属するギルド「獅子の意思」の会議中だった。

「すまな……いえ、ごめんなさい。
 あれはレオナルドじゃない、それは確かだと思う。
 だけど……」

 そう、「あれ」は私たちのレオナルドとは似ても似つかない。
 下品で、他者を思いやる気持ちもどこか欠落している。
 
 この国の姫と出会ったいきさつなんかも、すべて物陰から見ていたが、あの年で娼婦に身をやつしていると聞いてへらへらしているなんて本来ありえないことだ。

 まあ、今回の場合は、本当は娼婦ではなかったわけだが。
 しかし、レオナルドなら嘘か本当かなんて考える前に助けようとしたはず。

 ……だけど、時折見せる「彼らしさ」が、私を悩ませていることも確か。

「わかるぞ、確かにあれはレオナルドではない。
 しかし、面影のようなものを感じた。
 お前もそうだというなら、ここは大臣にもう一度、細かい話を聞いたほうが良いかもしれないな」

 大臣……あれは嫌な男だ。

 フェイシンは感じていないようだが、あれは明らかに女を見下している。
 会うたびに遠慮のない視線を向けられ、いやらしい笑みを浮かべる。

 本当に、男と同じ社会で暮らすというのは、息が詰まって仕方ない。

 早く、エルフの集落に帰りたい。
 できれば、レオナルドと一緒に……

「それより、アメリア?
 こんなことを言っては何だが……その、少し老けたか?」

 あ、そういえばフェイシン兄さんたちに、今の姿を見せるのは初めてだったっけ。

「ああ、これはね、この間大臣に言われたの。
 人間の国で暮らすつもりなら、それらしく振舞えって。
 それに、あの自分をレオナルドと思い込んでいるぬいぐるみに、変な気を起こさせたくなかったし、メイクでちょちょっとね。
 ……ま、まあ、無意味だったけど、あはは」

 私は今は5シリス、人間の単位で言うと29歳くらいか、そろそろ30代に突入というところ。
 だというのに、私はエルフなので人間とは違い7リシス、つまり20歳くらいから見た目の変化はほとんどないから、そこを大臣に指摘されたというわけだ。

「あら~。
 見た目を老いさせるメイクなんて誰に教わったの?
 間違っても私を練習台にしないでね、子供の頃みたいに」

「も、もちろんです。
 そうだ、新しいメイク道具が集落から送られきたんでした……はい、どうぞ!」

 今度会ったら渡そうと思っていた、ウチの職人たちが最近開発したばかりのメイク道具を、モリアナ姉さんに渡した。

「んんっ、それでは、そろそろ決をとる。
 アレをレオナルドと認めるものは是、認めぬものは非、決めかねるものは迷で応じよ、獅子の意思に背くなかれ――決!」

 フェイシン兄さんがそう言って私に視線を移した、正直なところ、アレにはどこかレオナルドを感じる。
 だけど、レオはもういない。

「非です」

 私は意を示した。

 そして、モリアナ姉さんが「是」、フェイシン兄さんが「迷」……フェイシン兄さんが迷!?

 モリアナ姉さんがアレをレオナルドだと思ったことも驚きだけど、まさかフェイシン兄さんまでアレがレオナルドだと思ったっていうの!?

「兄さん! あれはレオナルドじゃない!
 そんなわけない――だって、あの人はもう……」

 私は懐から4つのコビンを取り出した。
 これは、私たちがギルドを結成した時に作ったもの。

 多忙な私たちは、たとえ同じギルドに所属したとしても、顔を合わせることすら容易なことではなかった。
 だから、せめてお互いの安否がわかるようにと作ったのが、この「命の篝火」。

 私のものには、桃色、モリアナ姉さんのには、白色、フェイシン兄さんのには水色の光がともっている。
 そして、レオナルドの「命の篝火」には、周りを明るくしてくれるような優しい黄色の光がともっていた。

 だけど、その光はもう消えて――あれ?

 私はコビンの中に何かが見えた気がして、下から覗いたり、軽く振ってみたり、手で覆ってみたりした。
 その結果……、光が、とっても小さくいけど、目を凝らしてやっと見えるかぐらいだけど――ともってる。

 なんで? 確かにこのコビンの中の光が消えたことは、3人で確かめたはず。
 私なんて、信じられなくて1ヶ月くらい目を離さずにいたこともあるのに……絶対にありえない。

 どうして光が……まさか、本当にあれが……レオなの?

「こ、これは……っ、異常事態だな。
 私たちの知らない何かが、予想を超えたことがおこっているようだ。
 よし、決議もわかれたことだし、まずはあのレオナルドとしっかり話を――ぐぁあああっ!!!」

 私が夢中でコビンの中を覗き込んでいると、突然背後からフェイシン兄さんの叫び声が聞こえた。

 急いで振り返った私の目に飛び込んできたのは――

「ただいま!
 帰ってきたよ、アメリア」

 ――レオナルドだった。
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