俺が子連れエルフに一目惚れした話

kaduki

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罪過の炎が身を焦がす 【3】※R18

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薬剤の効果が切れる前に、侍従に頼んで自室へ運んでもらった。
せめて、ヒースの最期がロベルトの視界に入らないように。

胸の中には、後悔が渦巻いている。

なぜ、否と突き放さなかったのか。突き放せなかったのか。突き放してさえいれば、ヒースが命を晒すことなどなかったのに。

「っはは・・・、ヒースのことになると、初めての感情ばかりで戸惑うな・・・」

論理的でなくても肯定してあげたくなり、合理的でなくても実現してあげたくなる。すべてが論理的に、合理的に、正しく通してきた道程が、ヒースとの出会いで歪んでいく。

「そんな歪みが心地いいなんて、恋愛というのは非合理的、だな。」

そんなことを動かない身体で考えていると、ドアが軽くノックされる。ああ、もうこの時が来てしまったのか。

「イアン様、ヒースにございます。失礼してもよろしいでしょうか?」

・・・ここでダメだと言えば、ヒースは引き下がるだろうか?

「・・・イアン様?」

「あ、ああ。入っていいぞ。」

そうだとしても、もう突き放すのは無理だろう。
それに一度受け入れてしまった手前、無かったことにするのは気が引ける。貴族であるならば、二言は無きように、と母上から教わった。その教えを破ることなどできない。

「は、はい!失礼いたします!!」

ベッドから身体を動かすことができないため、出迎えることも、もてなすことも出来ない。

「ろくなもてなしもできなくて悪いな。」

顔を動かすこともできないため、ヒースの様子をうかがい知ることも出来ない。動けないことがもどかしいが、動けるようにならなければ、ヒースを襲う心配もない。もどかしくて仕方がないが、この状態が今の最適解だ。

「い、イアン様、・・・繋がれてらっしゃるのですか?」

ヒースが触れたのだろうか、じゃら、と耳元で鎖が鳴る。

「ああ、これか?気休めにもならないが、少しでも抑えることが出来ないかと思ってな。」

魔族の膂力のまえでは、魔力回路の通っていない拘束具など玩具同然だが、それでもないよりはましだと言って、両手両足、そして首元につけてもらっている。
ヒースの、息をのむ音が聞こえる。

ギシっ、とベッドが軋む。ヒースの体重がベッドに乗ったのだろうか。

「イアン様、私、きっとお役に立って見せます・・・・・・!」

そう言うと、ヒースは俺に馬乗りになった。ヒースの全身が、ようやく視界に入る。

「なっ、!?ヒース、おま、!な、なんて恰好をしているんだ!!」

ヒースの肌が透けて見えるほど薄い生地、レースの付いた裾。下半身を覆うはずの布は、隠す気があるのか分からないほどの、きわどい布面積をしている。
雄を興奮させるために作られたと言える下着を身につけ、顔を真っ赤にしたヒースが、俺の上に居る。

「こ、これは!・・・えっと、私の趣味、というわけでは、なくてですね・・・事情を説明したら、アンさんに押し付けられたといいますか・・・押し切られたと言いますか・・・」

わたわたと説明するヒースだが、説明していくにつれ、だんだんと声が小さくなっていく。
そんなヒースがとても愛しく感じるが、違う。聞きたいことはそれじゃない。

「ヒース、・・・なにがどうなったら、その・・・そんな、きわどい格好に至るんだ?」

どんどんと顔に血が昇っていく。何故だか、こちらまで気まずくなってしまった。
気まずい沈黙の後、ヒースがゆっくりと口を開く。

「ダンダリオン様に、『生命エネルギーを得るのに最も効率的なものは捕食だが、性行為でも生命エネルギーを得ることが可能だ』と、教えていただいたので・・・、その、お役にたてるかと思ったのですが、・・・ご迷惑でしたか?」

いじらしく潤んだ瞳で見つめられて、どうして迷惑などと言えるのだろう。

「考えた結果がそれ・・、なのだな?
否定したりなどしないさ。おまえが死なずに済むのなら、それに越したことはないんだから。」

胸の奥から、じわり、じわりと安堵がわいてくる。
ヒースが、死ぬことはないのだ。
いや、まだ安心はできない。薬剤が切れた瞬間、俺の行動は、最も効率のいい“捕食”に変わってしまうかもしれないのだから、ヒースの身は危険に晒されたままだ。

「嬉しい、です。」

するり、とヒースの手が服の中へ入ってくる。

「イアン様が、私を拒まずにいてくれる・・・受け入れてくださる・・・」

恍惚とした笑みを浮かべ、俺の肌に手を這わせる。
その手つきは、経験したことがない感覚を俺に湧きあがらせた。

「っ、ヒース・・・何を・・・・・・?」

ヒースの瞳は妖しげに揺れていて、何の感情がそこにあるのか読み取りづらい。

「もしかして、イアン様はこういったご経験はないのですか?」

恍惚の中に、期待がともる。心臓が、ドクドクと早鐘を打つ。この感情の正体が分からない。

「性行為のことを指すなら、・・・誰とも身体を重ねたことはない。
必要が・・・なかったものだから。」

期待が、歓喜へと染まっていく。恍惚と歓喜が入り混じる、熱っぽいその瞳から、目を逸らすことが出来ない。

「私が、イアン様の初めてなんですね。・・・分からないことばかりでしょうから、私に任せてくださいね。」

精一杯、務めさせていただきます。
そういいながら、ヒースは慣れた手つきで俺の服をずらしていく。
リップ音を立てながら、ヒースの唇が俺に触れていく。ぞわぞわとした感覚が、背筋に走る。
腹部から、胸へ。胸から鎖骨へと、ヒースの唇が順番に触れていく。
ゆっくりと、舌が肌の上を這う。ぬるり、とした感覚はくすぐったさとは別の、経験したことのない感覚を呼び起こす。

「キス、させていただいてもよろしいですか・・・?」

恍惚に染まる瞳は、返事など求めていなかった。許可を求めども、何と答えようとも、することは変わらない。そういう目をしていた。
返事を待たずに、唇が重ねられる。触れられた部分から、ぞくぞくと、なにかが湧きあがってくる。

言いようのないほどの歓喜。秘めがたいほどの恍惚。


ああ、俺は今、ヒースと触れ合っている。



肉体だけではなく、魂にさえも、触れ合っている。



昔、ダンダリオンに聞いたことがある。子を成せぬ魔族にとって、性行為とはどんな意味を持つのか、と。
『魂に触れ合う、ということだ。愛しいものと身体を重ねることは、何にも代えがたい幸福をもたらしてくれる。』
そう、ダンダリオンは答えた。
俺は、今、その言葉を正しく理解した。

「不快だったら、言ってくださいね。」

ヒースの声に、脳がクラクラと揺れる。
こんな感覚は、知らない。理解が及ばない。
けれど、不快ではない。

ヒースの手が、男根に触れる。優しく、優しく触れられている。
ヒースの手が触れていくたびに、男根は存在を主張していく。

「よかった・・・興奮してくれているんですね。」

いつの間にかヒースの顔は俺の下半身に移動しており、熱っぽい息が男根に触れる。

「ふっ・・・、く、・・・・・・ヒー、ス。」

「大丈夫ですよ。そのまま・・・私に身を任せていてください。悪いようには、いたしませんから。」

怖がる子供をあやすかのように、ヒースは俺に声をかける。
その声が、どうしようもなく劣情を煽った。

ヒースの唇が、男根に触れる。

「な、っヒース・・・・・・!そんなところ、汚い・・・だろう!」

「ん、・・・イアン様の、ですから、・・・気にならないですよ。」

声の振動が、男根を刺激する。背筋に、快楽が走っていく。
ヒースの舌が、根元から先端に刺激を与えていく。恍惚とした表情が快楽を増幅し、押し上げる。
受け入れられているという事実が、どうしようもない幸福をもたらす。

「イアン様の、私の中に・・・招かせていただきますね。」

どこに持っていたのか、小瓶から潤滑油を手に取り、男根に塗り広げる。
そして、男根を自らの窄まりに押しあてると、ゆっくりと体重をかけていく。
ヒースの中を押し広げていく感覚が、背骨を抜けていく。温かくうねる体内が、欲を吐きだすように促している。

「っは、あっ・・・イ、アン様の・・・全部、入りましたよ・・・ほら、根元まで、私のなかに、おいでです。」

うっとりとした表情が、ヒースに苦痛はないのだと教えてくれる。

「ヒース、・・・っは、あ、・・・もう、欲を、吐きだしたい・・・!」

耐えきれぬ快楽に、ヒースに懇願する。

「お前の中に、欲を、吐きだしてしまいたい・・・・・・!」

「はい・・・!受け止めますから・・・!わたしのなかにっ!吐きだしてしまってください・・・・・・!」

ヒースの了承と共に、俺は欲を吐きだした。魂と触れ合った快楽と幸福が背骨を抜け、脳を揺らす。
ああ、もっと触れ合っていたい。
一度だけではなく、もっと、何度でも。

いつの間にか動くようになった身体は、さらにヒースを求めていた。
もっと、もっと貪りたい。

身体を起こすと、鎖の砕ける音が聞こえた。
驚くヒースを組敷き、乱暴に唇を奪う。
たりない。
もっと、もっと、もっと欲しい。

「ヒース、俺はまだ、お前が欲しい。」

「は、んむ!?んー!」

返事など待っていられずに、貪りつく。乱暴に口内を犯し、食らいつく。
苦しげに息継ぎをする舌をからめ捕る。軽く舌に噛みつけば、組伏せた細い身体が小さく跳ねる。
身体が小刻みに痙攣し始めたのを感じ、はっとして身体を起こす。
荒い息を整えながら、ヒースは俺の目を見る。ヒースの瞳には、獣のように高ぶっている俺が映っていた。

「っはあ、は・・・逃げたりなど、・・・いたしません。
この身体は、あなたに捧げると決めた瞬間から、イアン様のものです。」

好きなようになさってください、と涙を浮かべた瞳を細めてヒースが微笑んだ。

「いい、のだな?
薬剤も切れ、もう、歯止めが効かない。やめてくれと懇願されても、聞いてやることはできない。」

「構いません。」

するり、と拘束から抜け出し、その腕を俺の首にまわす。

「どうぞ私を、もらってくださいませ。」

優しく、口づけられる。
どちらからともなく、求めあうように舌をからめ合う。独りよがりではない、お互いを求めあう口付けは、独りよがりのものよりも、はるかに大きな充足感と幸福と快楽をもたらした。

指をからめ合い、ヒースの嬌声を奪うように口付け、その欲を打ちつけた。
幾度となく繰り返し、何度も欲を吐きだし、何度も互いを貪った。


日が落ち、また日が昇り、もう一度日が暮れた暮れた頃、永遠に続くとも思えたその交わりは、来訪者と共に終わりを告げた。

「お楽しみ中申し訳ないのですが、治療のため落ち着いていただきますね。」

首筋に軽い痛みが走り、全身の力が抜ける。

「急いできましたが、もう少し遅くても大丈夫そうでしたね。」

全身を黒で覆った、男とも女ともつかぬ中性的な面立ちの者が立っている。

「あ、そこのエルフさんはシャワー浴びられそうですか?あ、大丈夫そう。魔族とそれだけまぐわって平気なんて、随分丈夫ですね。」

「えっと、あなたが・・・?」

ヒースが疑問を投げれば、その黒ずくめは頷く。


「あ、はい。私がサリエルというものです。」
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