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女王の帰還
閑話【回想】 アリシアとルピル
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15年前、試練の間にて――
「ここに七つの小部屋があります。それぞれに星獣様がおわす星獣石があるわけですが、あなたには聖女としての”本当のお力”を手に入れていただくため、試練に挑んでいただきますよ」
司祭にそう言われ、少女は顔を上げた。
「はい、司祭様」
「そう意気込まなくても大丈夫です。ただ、命にも危険を伴いますゆえ、アリシア様には遺言書を書いていただきますが、よろしいでしょうか?」
「…ゆいごんしょ?」
まだ10歳になったばかりの少女は不思議そうにその言葉に小首を傾げる。
「早い話、死んでしまっても自分のせいなので、教会は悪くないよ! って、書物です」
「それを書いておけば、教皇様にも迷惑を掛けませんか?」
アリシアが上目遣いに司祭を見上げると、司祭は深く頷いた。
「はい」
司祭に差し出された文面に目を通し、アリシアは瞬いたが小首を傾げた。
「…うーん、難しくてわからないです。『しぼーした際に』…えーと…『ほけんはてきよーがい』? 『すべてはじこせきに…ん』? 『ですので、じゅんしょくした時には』…うーん、単語が難しいです」
彼女がしばらく粘って文面を読んでいたのだが、ギブアップしたのか最後まで読まずに文末にサインした。
「これでいいんですよね!」
「はい、ありがとうございます」
司祭が文面を持って立ち去った後、アリシアは中央にあった、上に青い宝石の嵌められた封印の間へと足を踏み入れた。
小さな礼拝堂ほどのスペースに星獣を封印している星獣石が中央の台座に置かれており、台座には何かの文字が彫られていた。
「これは、古代語ですね。でも、一般的な魔導言語じゃないみたいですし、もっと古い…言葉ですかね?」
そう呟いて、彼女は文字を指でなぞった。
『我を呼び覚ます者よ。気高き青の荒波を超え、我が力を手に入れたくば、その力を示せ』
すると、星獣石がぼんやりと光を帯び、その光がふわりと飛んで入り口を塞ぐように佇んだ。
アリシアが振り返るとその光が形を変えていき、やがて額に角が生えた馬の姿をとると、その光が弾けて純白の毛並みを持つ白馬のユニコーンへと変化した。
「汝が試練を望む者か。…珍しい。これほど幼くして聖女の試練を受けるとは。初代以来のことだな」
アリシアはキョトンとした。
「初代聖女様も私のような年齢だったのですか?」
「12歳だった。だが、その当時の魔王に惨殺され、儚く命を散らせた。――もう、昔々、人々の記憶からも消えるほど昔の話だが」
「そう、なのですか」
アリシアは悲しそうに瞼を伏せると、深々と頭を下げた。
「星獣様。初代様ほど強い力を持っているわけではないかもしれません。ですが、私は聖女として精進してまいりますのでお力をお貸し願えませんか?」
一角獣は頭をもたげた。
「では、聞こうか。――聖女よ」
「はい」
「汝はなぜ、聖女になった?」
「私は、行く当てなどない孤児でした。でも、そんな私でも教会に必要だと言ってもらえたのです。そのためなら人柱になることも辞さない覚悟です」
一角獣はフンッと鼻で笑った。
「言葉でならば何とでも言える。証明したくば我に力を示せ」
アリシアは剣を抜いたが、一角獣は鼻で笑った。
「幼い聖女よ。貴様、剣も握ったことはないのか? そんなフォームでは無駄に力を使うぞ? それに、震えているではないか」
「剣を生き物に向けるのは初めてなのです。他の生き物から命を奪い、その肉で生きながらえているとしても、まだ、手を汚した経験がないものですから」
話にならんな、と一角獣が頭を下げ、角の照準をアリシアに向けた。
「清き乙女に手を上げるのは気が引けるが、これも誓約の一つ。力なき者へ死を与え、殉教の道を切り開かん。ということだ」
いくぞ、という掛け声共に突っ込んできた一角獣の角を剣で受け止めたアリシアだったが、その剣が力づくで払い飛ばされ、地面を転がってアリシアの手の届かないところにいってしまった。
一角獣が角を振り下ろしたのを見て間一髪で横に転がって回避すると、一角獣は容赦なく角を振り回してきた。
「避けてばかりでは、試練に合格できぬぞ」
一角獣が目を回して動きを止めたアリシアにとどめを刺そうと角を突き出した直後、幼い首に角が刺さる前に動きが止められたので目を見開いた。
「む?」
生ぬるい血が角を伝い、角が少女の手を貫いていることに気が付いて目を見開く。
「貴様…手を犠牲に…?」
「後で右手ならば治せますから」
アリシアがよろよろと立ち上がると、角の位置も少しだけ持ち上げられて位置の悪さに首を動かす。
「む…」
しかし、魔法で強化しているのか意外な強さで頭を強く動かすことができず、小さな手のひらから流れ落ちる血と少女の顔色を見比べることしか出来なかった。
「こういう生き方しか出来ないのが私なのです」
「え?」
「盲目的に教会に仕えているようでも、きちんとするべきではないことは拒否する。それくらいの意思はきちんとありますよ。これから先、どうなったとしても…」
10歳とは思えないまっすぐな言葉に一角獣は目を見開いた直後、少女は首を反らすと勢い良く頭を突き出して馬面の頬に向けて頭突きを放った。
一角獣の角が衝撃で折れてしまい、そのまま一角獣はもんどりをうって台座に衝突した。
「取引をしませんか、一角獣さん」
アリシアの方を振り返った一角獣は、少女が刺さった角を引き抜いて手のひらを治癒魔法で治しながらこちらに進んでくるのを見て、思わず後ずさった。
「この角は返します。その代わり、私と共に歩んで、力を貸していただけませんか?」
「ッ」
「この角ならばあなたの体も傷つけられるでしょう。――でも、私はどんなに血を流しても構いませんが、誰かが傷ついたり苦しんだ顔をしているのを見るのは嫌なのです」
アリシアが切なそうに笑った。
「私をここまで育ててくださった前の大司教様は、私を守ったせいで殉職なさいました。だから、もう、そんな悲しいことは起こってほしくないのです」
そう言って手を差し伸べたアリシアに一角獣は頭を垂れ、その手に触れた。
「返す、といった者は初めてだ。そのうち生え変わるから、別に気にすることはない。――よかろう。汝が我の力をきちんと使いこなせるようになったら、その時は試練をもう一度行う。次は容赦しない」
「わかりました」
「我が名はルピルという。――よろしくな、姐さん!」
いきなり明るくそう言われ、アリシアがキョトンとしていると、ルピルはぴょんぴょんと飛び跳ねた。
「いやー、疲れた。あの堅ッ苦しいのは苦手なんだよなぁ。聖女のために堂々と胸を張れって言われているから守っているけどさ、俺様には無理無理!」
「え?」
「今までの、演技なんで、気にしないでください! でも、次も試練をするっていうのは本当っすよ!」
そう言うと、一方的に光となって消えていった彼を見送ったアリシアは緊張感が途切れ、その場に倒れこんだ。
「…あれ、体が動かない…?」
すると、ルピルが勝手に隣に現れ、アリシアの顔を覗き込んだ後に封印の間から出て大声を出した。
「おおぃ、クソ司祭、降りて来い! 聖女様が契約の反動で倒れたんだぞ、クソがぁ!」
そんな汚い言葉も使いながら叫んでいたルピルを見ながら、司祭の足音を聞きつつ彼女は瞼を閉じた。
「ちょっとだけ、おやすみなさい…です」
「ぬおおおおぉぉっ、ね、姐さん!? 姐さん、寝ちゃだめだぁ、姐さん、姐さあああああぁぁぁぁーん!!」
ルピルは雪山での一幕のように叫んでいたが、「うるさい」とチョップを司祭から受け、司祭と喧嘩をしたのだが、それはまた、別の話で。
☆
アリシアは頬を膨らませてノリアとカンナを見て小首を傾げた。
「信心深いですけど、天然ではないっていうのがわかりましたよね?」
そんなアリシアに、二人は見事に声をハモらせた。
「「どこが?」」
「ここに七つの小部屋があります。それぞれに星獣様がおわす星獣石があるわけですが、あなたには聖女としての”本当のお力”を手に入れていただくため、試練に挑んでいただきますよ」
司祭にそう言われ、少女は顔を上げた。
「はい、司祭様」
「そう意気込まなくても大丈夫です。ただ、命にも危険を伴いますゆえ、アリシア様には遺言書を書いていただきますが、よろしいでしょうか?」
「…ゆいごんしょ?」
まだ10歳になったばかりの少女は不思議そうにその言葉に小首を傾げる。
「早い話、死んでしまっても自分のせいなので、教会は悪くないよ! って、書物です」
「それを書いておけば、教皇様にも迷惑を掛けませんか?」
アリシアが上目遣いに司祭を見上げると、司祭は深く頷いた。
「はい」
司祭に差し出された文面に目を通し、アリシアは瞬いたが小首を傾げた。
「…うーん、難しくてわからないです。『しぼーした際に』…えーと…『ほけんはてきよーがい』? 『すべてはじこせきに…ん』? 『ですので、じゅんしょくした時には』…うーん、単語が難しいです」
彼女がしばらく粘って文面を読んでいたのだが、ギブアップしたのか最後まで読まずに文末にサインした。
「これでいいんですよね!」
「はい、ありがとうございます」
司祭が文面を持って立ち去った後、アリシアは中央にあった、上に青い宝石の嵌められた封印の間へと足を踏み入れた。
小さな礼拝堂ほどのスペースに星獣を封印している星獣石が中央の台座に置かれており、台座には何かの文字が彫られていた。
「これは、古代語ですね。でも、一般的な魔導言語じゃないみたいですし、もっと古い…言葉ですかね?」
そう呟いて、彼女は文字を指でなぞった。
『我を呼び覚ます者よ。気高き青の荒波を超え、我が力を手に入れたくば、その力を示せ』
すると、星獣石がぼんやりと光を帯び、その光がふわりと飛んで入り口を塞ぐように佇んだ。
アリシアが振り返るとその光が形を変えていき、やがて額に角が生えた馬の姿をとると、その光が弾けて純白の毛並みを持つ白馬のユニコーンへと変化した。
「汝が試練を望む者か。…珍しい。これほど幼くして聖女の試練を受けるとは。初代以来のことだな」
アリシアはキョトンとした。
「初代聖女様も私のような年齢だったのですか?」
「12歳だった。だが、その当時の魔王に惨殺され、儚く命を散らせた。――もう、昔々、人々の記憶からも消えるほど昔の話だが」
「そう、なのですか」
アリシアは悲しそうに瞼を伏せると、深々と頭を下げた。
「星獣様。初代様ほど強い力を持っているわけではないかもしれません。ですが、私は聖女として精進してまいりますのでお力をお貸し願えませんか?」
一角獣は頭をもたげた。
「では、聞こうか。――聖女よ」
「はい」
「汝はなぜ、聖女になった?」
「私は、行く当てなどない孤児でした。でも、そんな私でも教会に必要だと言ってもらえたのです。そのためなら人柱になることも辞さない覚悟です」
一角獣はフンッと鼻で笑った。
「言葉でならば何とでも言える。証明したくば我に力を示せ」
アリシアは剣を抜いたが、一角獣は鼻で笑った。
「幼い聖女よ。貴様、剣も握ったことはないのか? そんなフォームでは無駄に力を使うぞ? それに、震えているではないか」
「剣を生き物に向けるのは初めてなのです。他の生き物から命を奪い、その肉で生きながらえているとしても、まだ、手を汚した経験がないものですから」
話にならんな、と一角獣が頭を下げ、角の照準をアリシアに向けた。
「清き乙女に手を上げるのは気が引けるが、これも誓約の一つ。力なき者へ死を与え、殉教の道を切り開かん。ということだ」
いくぞ、という掛け声共に突っ込んできた一角獣の角を剣で受け止めたアリシアだったが、その剣が力づくで払い飛ばされ、地面を転がってアリシアの手の届かないところにいってしまった。
一角獣が角を振り下ろしたのを見て間一髪で横に転がって回避すると、一角獣は容赦なく角を振り回してきた。
「避けてばかりでは、試練に合格できぬぞ」
一角獣が目を回して動きを止めたアリシアにとどめを刺そうと角を突き出した直後、幼い首に角が刺さる前に動きが止められたので目を見開いた。
「む?」
生ぬるい血が角を伝い、角が少女の手を貫いていることに気が付いて目を見開く。
「貴様…手を犠牲に…?」
「後で右手ならば治せますから」
アリシアがよろよろと立ち上がると、角の位置も少しだけ持ち上げられて位置の悪さに首を動かす。
「む…」
しかし、魔法で強化しているのか意外な強さで頭を強く動かすことができず、小さな手のひらから流れ落ちる血と少女の顔色を見比べることしか出来なかった。
「こういう生き方しか出来ないのが私なのです」
「え?」
「盲目的に教会に仕えているようでも、きちんとするべきではないことは拒否する。それくらいの意思はきちんとありますよ。これから先、どうなったとしても…」
10歳とは思えないまっすぐな言葉に一角獣は目を見開いた直後、少女は首を反らすと勢い良く頭を突き出して馬面の頬に向けて頭突きを放った。
一角獣の角が衝撃で折れてしまい、そのまま一角獣はもんどりをうって台座に衝突した。
「取引をしませんか、一角獣さん」
アリシアの方を振り返った一角獣は、少女が刺さった角を引き抜いて手のひらを治癒魔法で治しながらこちらに進んでくるのを見て、思わず後ずさった。
「この角は返します。その代わり、私と共に歩んで、力を貸していただけませんか?」
「ッ」
「この角ならばあなたの体も傷つけられるでしょう。――でも、私はどんなに血を流しても構いませんが、誰かが傷ついたり苦しんだ顔をしているのを見るのは嫌なのです」
アリシアが切なそうに笑った。
「私をここまで育ててくださった前の大司教様は、私を守ったせいで殉職なさいました。だから、もう、そんな悲しいことは起こってほしくないのです」
そう言って手を差し伸べたアリシアに一角獣は頭を垂れ、その手に触れた。
「返す、といった者は初めてだ。そのうち生え変わるから、別に気にすることはない。――よかろう。汝が我の力をきちんと使いこなせるようになったら、その時は試練をもう一度行う。次は容赦しない」
「わかりました」
「我が名はルピルという。――よろしくな、姐さん!」
いきなり明るくそう言われ、アリシアがキョトンとしていると、ルピルはぴょんぴょんと飛び跳ねた。
「いやー、疲れた。あの堅ッ苦しいのは苦手なんだよなぁ。聖女のために堂々と胸を張れって言われているから守っているけどさ、俺様には無理無理!」
「え?」
「今までの、演技なんで、気にしないでください! でも、次も試練をするっていうのは本当っすよ!」
そう言うと、一方的に光となって消えていった彼を見送ったアリシアは緊張感が途切れ、その場に倒れこんだ。
「…あれ、体が動かない…?」
すると、ルピルが勝手に隣に現れ、アリシアの顔を覗き込んだ後に封印の間から出て大声を出した。
「おおぃ、クソ司祭、降りて来い! 聖女様が契約の反動で倒れたんだぞ、クソがぁ!」
そんな汚い言葉も使いながら叫んでいたルピルを見ながら、司祭の足音を聞きつつ彼女は瞼を閉じた。
「ちょっとだけ、おやすみなさい…です」
「ぬおおおおぉぉっ、ね、姐さん!? 姐さん、寝ちゃだめだぁ、姐さん、姐さあああああぁぁぁぁーん!!」
ルピルは雪山での一幕のように叫んでいたが、「うるさい」とチョップを司祭から受け、司祭と喧嘩をしたのだが、それはまた、別の話で。
☆
アリシアは頬を膨らませてノリアとカンナを見て小首を傾げた。
「信心深いですけど、天然ではないっていうのがわかりましたよね?」
そんなアリシアに、二人は見事に声をハモらせた。
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