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翼の標
ep3
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アリシアはナハトの後を追いかけながら歩いていたのだが、ふと、だいぶ日が高くなってきたのを見てお腹がキュルキュルと情けない音を立てた。
「…あ」
朝から何も食べていない。そのことに気が付いたが、それを抑える前に腹が鳴ってしまい、ナハトの頭の上に乗っている飛燕が振り返った。
だが、何を思ったのか、思いついたような顔で相棒を見た。
「ナハト、そう言えばご飯の時間だね」
ナハトが頷いた。
「そうだな…」
そして、アリシアの方を振り返り、口元を小さく綻ばせる。
「ほら」
アリシアは彼が鞄から取り出して放り投げたリンゴを一つ受け取っていた。
「腹ペコさん、一つ食べておけ」
「…あっ…」
顔を真っ赤にしたアリシアの腹がさらに大きな音で鳴ったのを聞いてナハトはフードを目深にかぶり直しながら楽し気に声を弾ませた。
「薬なんて仕込むわけないだろうが」
「…そうではなく、いつから…気が付いて?」
「俺たちの後をついてきた辺りから、かな。あんたの足音はずっと聞こえていたし、草木のガサガサいう音とか、足を忍ばせているつもりかもしれないが、バレバレだ」
「う…」
アリシアがゆっくりと姿を現すと、ナハトは倒木に腰を下ろしてリンゴをシャクリと一口齧る。
「あんたもラクラを探しているんだろう?」
「…なんで、それを?」
「まあ、俺のいる会社は色々と情報網があるだけだ。一枚岩じゃないが、それでも利用価値のある、…な」
アリシアも遠慮がちにナハトと少し距離を取って倒木に腰掛けた。そして、エプロンでリンゴを磨いてからシャクリと一口齧る。
「あ、美味しい…」
「アーネア商会のリンゴは最高に旨いからな。初めてするキスの味、だそうだ?」
アリシアが思わずむせかえったが、ナハトはどこ吹く風でリンゴを齧っている。
「おちょくらないでください。――でも、なぜ疑問形なのです?」
「口と口でしたことなんてないからな。そこまで気持ちが傾かないというか…前世の記憶なんて”眠った”あとはほとんど覚えていないし、キスの味も覚えていない」
彼女は首筋に手をやって顔を真っ赤にしながら頬を膨らませた。
「で、でも! でも、私の首筋に…!」
「それはマーキングみたいなものだ。とはいえ、シリウスが騒ぐから加護は与えられないんだが」
「騒ぐって…」
「まあ、いろいろあるんだよ。聖龍同士だってな? …とにかく、それは俺からのお守りみたいなものだ。変わった経歴だからどういうやつなのかと思ってみたら、よく淘汰されずに生き残ってきたと思えるくらい天然で、変わったやつだったし?」
「…それは怒ればいいのか、笑えばいいのかわからないのですが…?」
「とりあえず笑っておけば可愛いと思うな」
飛燕がそう言うと、ナハトが飛燕の首根っこをつかまえて呆れ顔をした。
「意外だな。お前が好んで焼き鳥になりたいというとは…」
「や、やだなぁ、ナハト。僕はいつだって君の味方だよ?」
「余計なことは言うな」
リンゴを食べ終えた後に芯を魔法で焼却して灰にし、ペコッと軽くデコピンをしたナハトと、デコピンを食らってクラクラしているように見える飛燕を見比べながら、アリシアはちょっと吹き出した。
「仲がいいんですね?」
「相棒だからね。それに、僕がナハトを選んだんだから仲良くないわけないでしょ? ただ、ナハトはこう見えて人見知りだからとっつきにくいけどね」
アリシアも何とか食べきってリンゴの芯を地面に魔法で埋めると、立ち上がった。
「人見知りには見えませんけどね」
「見えないでしょ? アリシアさんが無害そうなオーラを放っているからナハトも気楽にしているだけで、普段は絶対に感情も見せないし、むしろ冷徹って感じなんだよ。本当は優しいのにね」
ナハトは不機嫌そうに相棒をつまみ上げた。
「優しくなんかない。単に、欲しいものを欲し、欲しくないものには感情を使う義務もないってだけだ」
「また、そんなことを言って~」
飛燕はそう言ったが、ナハトはそれを露骨に無視して立ち上がり、歩き出した。
慌ててアリシアも彼を追いかけ、何とか横に並んだ。
「ラクラはどこにいるんです?」
「体の部分がすっぽりと覆われるような、そういう空間がラクラはとても好きなんだそうだ。岩陰の傍とか、鍾乳洞の奥の、行き止まりの吹き抜けスペースみたいな場所…とか」
「探知魔法は?」
「この森では使用できない。そもそも、ラクラはシャイなんだ。だから、長い年月をかけてラクラは身を隠すために探知魔法を阻害する体質を身に着けた。――とはいえ、見た目はバレバレなんだがな」
ナハトは歩幅を緩めて歩いていたが、ふと、足を止めた。
「…雲行きが怪しくなってきたな」
「え? でも、結構晴れていますよ?」
アリシアが不思議そうな顔をするのも無理はなく、少し上空に雲が浮かんでいるものの、雨が降る気配はみじんも感じられなかった。
「俺たち聖龍は魔力変化に敏感だ。一時間後に曇ってくる。夕食の食材と、休憩を取るための場所を探した方がよさそうだな」
「曇るだけで雨が降るとは…」
アリシアは困惑した顔をしていたが、彼と一緒に歩いているうちに本当に空が曇り始めた。
飛燕が見つけた洞窟に入った後、数分後には本降りの雨が降り始めていた。
それを見ながらアリシアは不安げな顔をした。
「ルピルが待っているのにこれでは…」
「星獣は簡単に死なない。あまり根詰めるとこっちが危ないだけだ」
ナハトがそう言いながら洞窟に来る途中でかき集めてきた薪代わりの枯れ枝などを窪みに入れ、そこに魔法で火をつけた。
すると焚火が完成し仄かにあたたかくなった。
飛燕がのんきに告げる。
「アリシアさんも焚火に当たらないの? 風邪をひいちゃうよ?」
「え、あ、ありがとうございます」
それでも浮かない表情ではあったが、アリシアはトボトボと焚火の傍にやってきて、腰を下ろした。
「そういえば、一緒にギュスターヴ様もいたのですが…置いてきちゃいました」
「アレのことは気にしなくていい。それより、腹ごしらえだな」
「アレって…」
アリシアが不安そうな顔をすると、ナハトは小さく首を横に振る。
「ギュスターヴは心配いらないし、ルピルはそもそも青の眷属だ。雨の日なんかは割と調子も良くなる。ラクラは雨の中でも動き続けられるが、俺たちはそうじゃない。キチンと食べて、しっかりと休んだら出発する。――いいな?」
「は、はい…って、なんで仕切っているんですか!」
アリシアがむぅっと頬を膨らませると、ナハトは鞄から干し肉とクラッカーを取り出した。
「野営は慣れているんでね」
「…ううっ」
干し肉を剣に変えた飛燕でスライスし、クラッカーに乗せてアリシアに差し出した。
「準備がいいんですね…」
「ラクラが簡単に見つかってたまるか。前は丸三日間かかった。だが、時間をかけるだけの価値はあるからな。ラクラの花や木は本当に妙薬だ」
彼はフードを目深にかぶり直し、焚火を挟んでアリシアの真向かいに腰を下ろした。
「あなたもどこか体調が…?」
「どうしても必要な人がいる。一年に一回、必ず」
アリシアはそれ以上聞く勇気がなく、モグモグと干し肉を乗せたクラッカーを食べ、それ以降は無言で過ごした。
だが、しばらくしてアリシアは小さく欠伸を漏らす。
「眠いなら寝てもいいぞ。見張りをしておくから」
「…交代制にしましょうよ」
「俺と飛燕で何とかなるから気にしなくていい。それに、明日もかなり歩く。いいから眠っておけ」
「……私が眠っている間に、変なこと…しないで、くださ、い…ね」
アリシアは眠そうに大きく欠伸をすると、ぶるっと小さく身震いした。ナハトが呆れたように肩をすくめ、アリシアの隣に腰を下ろす。
「嫌だろうがぴったりとくっついていた方が寒くないぞ」
「…は、い…」
微かに返事をしたものの、アリシアが寝息を立て始めてしまい、ナハトは彼女の肩を抱くようにして肩を貸し、凭れさせてやった。
穏やかに眠るアリシアの横顔を眺めながらナハトは口元に苦笑いを浮かべた。
「…ここまで素直に信じられると心苦しいものがあるな、飛燕」
飛燕は小首を傾げた。
「いいじゃない? いつも疑っているより、素直に信じられた方が」
「それは俺に対する嫌味か?」
そう言いながらフード付きのコートを脱いで仮面の下にある亜麻色の短い髪の毛を撫でつけた。そして、その上着を彼女にかけてやる。
「風邪をひくよ。それに、素顔を見られる危険性が高まるけど、いいの?」
「いつかバレるなら、早い方がいい。もし、明日打ち明けられなくても、ラクラが見つかった後に嫌でも見せることになるんだ。――これで否定されるなら、それはそれでいいさ」
皮肉気なナハトの声を聞きながら、飛燕は小さく呟いた。
「…そんな悲しいことを言わないでよ、ナハト」
飛燕はナハトの肩に降りると、スリッと体をこすりつけた。
嫌そうな顔でナハトは押しのけようとしたが、アリシアの体が傾きそうになったので飛燕の悪ふざけにも近いような甘えの仕草を黙ってされるがままにしていた。
「…あ」
朝から何も食べていない。そのことに気が付いたが、それを抑える前に腹が鳴ってしまい、ナハトの頭の上に乗っている飛燕が振り返った。
だが、何を思ったのか、思いついたような顔で相棒を見た。
「ナハト、そう言えばご飯の時間だね」
ナハトが頷いた。
「そうだな…」
そして、アリシアの方を振り返り、口元を小さく綻ばせる。
「ほら」
アリシアは彼が鞄から取り出して放り投げたリンゴを一つ受け取っていた。
「腹ペコさん、一つ食べておけ」
「…あっ…」
顔を真っ赤にしたアリシアの腹がさらに大きな音で鳴ったのを聞いてナハトはフードを目深にかぶり直しながら楽し気に声を弾ませた。
「薬なんて仕込むわけないだろうが」
「…そうではなく、いつから…気が付いて?」
「俺たちの後をついてきた辺りから、かな。あんたの足音はずっと聞こえていたし、草木のガサガサいう音とか、足を忍ばせているつもりかもしれないが、バレバレだ」
「う…」
アリシアがゆっくりと姿を現すと、ナハトは倒木に腰を下ろしてリンゴをシャクリと一口齧る。
「あんたもラクラを探しているんだろう?」
「…なんで、それを?」
「まあ、俺のいる会社は色々と情報網があるだけだ。一枚岩じゃないが、それでも利用価値のある、…な」
アリシアも遠慮がちにナハトと少し距離を取って倒木に腰掛けた。そして、エプロンでリンゴを磨いてからシャクリと一口齧る。
「あ、美味しい…」
「アーネア商会のリンゴは最高に旨いからな。初めてするキスの味、だそうだ?」
アリシアが思わずむせかえったが、ナハトはどこ吹く風でリンゴを齧っている。
「おちょくらないでください。――でも、なぜ疑問形なのです?」
「口と口でしたことなんてないからな。そこまで気持ちが傾かないというか…前世の記憶なんて”眠った”あとはほとんど覚えていないし、キスの味も覚えていない」
彼女は首筋に手をやって顔を真っ赤にしながら頬を膨らませた。
「で、でも! でも、私の首筋に…!」
「それはマーキングみたいなものだ。とはいえ、シリウスが騒ぐから加護は与えられないんだが」
「騒ぐって…」
「まあ、いろいろあるんだよ。聖龍同士だってな? …とにかく、それは俺からのお守りみたいなものだ。変わった経歴だからどういうやつなのかと思ってみたら、よく淘汰されずに生き残ってきたと思えるくらい天然で、変わったやつだったし?」
「…それは怒ればいいのか、笑えばいいのかわからないのですが…?」
「とりあえず笑っておけば可愛いと思うな」
飛燕がそう言うと、ナハトが飛燕の首根っこをつかまえて呆れ顔をした。
「意外だな。お前が好んで焼き鳥になりたいというとは…」
「や、やだなぁ、ナハト。僕はいつだって君の味方だよ?」
「余計なことは言うな」
リンゴを食べ終えた後に芯を魔法で焼却して灰にし、ペコッと軽くデコピンをしたナハトと、デコピンを食らってクラクラしているように見える飛燕を見比べながら、アリシアはちょっと吹き出した。
「仲がいいんですね?」
「相棒だからね。それに、僕がナハトを選んだんだから仲良くないわけないでしょ? ただ、ナハトはこう見えて人見知りだからとっつきにくいけどね」
アリシアも何とか食べきってリンゴの芯を地面に魔法で埋めると、立ち上がった。
「人見知りには見えませんけどね」
「見えないでしょ? アリシアさんが無害そうなオーラを放っているからナハトも気楽にしているだけで、普段は絶対に感情も見せないし、むしろ冷徹って感じなんだよ。本当は優しいのにね」
ナハトは不機嫌そうに相棒をつまみ上げた。
「優しくなんかない。単に、欲しいものを欲し、欲しくないものには感情を使う義務もないってだけだ」
「また、そんなことを言って~」
飛燕はそう言ったが、ナハトはそれを露骨に無視して立ち上がり、歩き出した。
慌ててアリシアも彼を追いかけ、何とか横に並んだ。
「ラクラはどこにいるんです?」
「体の部分がすっぽりと覆われるような、そういう空間がラクラはとても好きなんだそうだ。岩陰の傍とか、鍾乳洞の奥の、行き止まりの吹き抜けスペースみたいな場所…とか」
「探知魔法は?」
「この森では使用できない。そもそも、ラクラはシャイなんだ。だから、長い年月をかけてラクラは身を隠すために探知魔法を阻害する体質を身に着けた。――とはいえ、見た目はバレバレなんだがな」
ナハトは歩幅を緩めて歩いていたが、ふと、足を止めた。
「…雲行きが怪しくなってきたな」
「え? でも、結構晴れていますよ?」
アリシアが不思議そうな顔をするのも無理はなく、少し上空に雲が浮かんでいるものの、雨が降る気配はみじんも感じられなかった。
「俺たち聖龍は魔力変化に敏感だ。一時間後に曇ってくる。夕食の食材と、休憩を取るための場所を探した方がよさそうだな」
「曇るだけで雨が降るとは…」
アリシアは困惑した顔をしていたが、彼と一緒に歩いているうちに本当に空が曇り始めた。
飛燕が見つけた洞窟に入った後、数分後には本降りの雨が降り始めていた。
それを見ながらアリシアは不安げな顔をした。
「ルピルが待っているのにこれでは…」
「星獣は簡単に死なない。あまり根詰めるとこっちが危ないだけだ」
ナハトがそう言いながら洞窟に来る途中でかき集めてきた薪代わりの枯れ枝などを窪みに入れ、そこに魔法で火をつけた。
すると焚火が完成し仄かにあたたかくなった。
飛燕がのんきに告げる。
「アリシアさんも焚火に当たらないの? 風邪をひいちゃうよ?」
「え、あ、ありがとうございます」
それでも浮かない表情ではあったが、アリシアはトボトボと焚火の傍にやってきて、腰を下ろした。
「そういえば、一緒にギュスターヴ様もいたのですが…置いてきちゃいました」
「アレのことは気にしなくていい。それより、腹ごしらえだな」
「アレって…」
アリシアが不安そうな顔をすると、ナハトは小さく首を横に振る。
「ギュスターヴは心配いらないし、ルピルはそもそも青の眷属だ。雨の日なんかは割と調子も良くなる。ラクラは雨の中でも動き続けられるが、俺たちはそうじゃない。キチンと食べて、しっかりと休んだら出発する。――いいな?」
「は、はい…って、なんで仕切っているんですか!」
アリシアがむぅっと頬を膨らませると、ナハトは鞄から干し肉とクラッカーを取り出した。
「野営は慣れているんでね」
「…ううっ」
干し肉を剣に変えた飛燕でスライスし、クラッカーに乗せてアリシアに差し出した。
「準備がいいんですね…」
「ラクラが簡単に見つかってたまるか。前は丸三日間かかった。だが、時間をかけるだけの価値はあるからな。ラクラの花や木は本当に妙薬だ」
彼はフードを目深にかぶり直し、焚火を挟んでアリシアの真向かいに腰を下ろした。
「あなたもどこか体調が…?」
「どうしても必要な人がいる。一年に一回、必ず」
アリシアはそれ以上聞く勇気がなく、モグモグと干し肉を乗せたクラッカーを食べ、それ以降は無言で過ごした。
だが、しばらくしてアリシアは小さく欠伸を漏らす。
「眠いなら寝てもいいぞ。見張りをしておくから」
「…交代制にしましょうよ」
「俺と飛燕で何とかなるから気にしなくていい。それに、明日もかなり歩く。いいから眠っておけ」
「……私が眠っている間に、変なこと…しないで、くださ、い…ね」
アリシアは眠そうに大きく欠伸をすると、ぶるっと小さく身震いした。ナハトが呆れたように肩をすくめ、アリシアの隣に腰を下ろす。
「嫌だろうがぴったりとくっついていた方が寒くないぞ」
「…は、い…」
微かに返事をしたものの、アリシアが寝息を立て始めてしまい、ナハトは彼女の肩を抱くようにして肩を貸し、凭れさせてやった。
穏やかに眠るアリシアの横顔を眺めながらナハトは口元に苦笑いを浮かべた。
「…ここまで素直に信じられると心苦しいものがあるな、飛燕」
飛燕は小首を傾げた。
「いいじゃない? いつも疑っているより、素直に信じられた方が」
「それは俺に対する嫌味か?」
そう言いながらフード付きのコートを脱いで仮面の下にある亜麻色の短い髪の毛を撫でつけた。そして、その上着を彼女にかけてやる。
「風邪をひくよ。それに、素顔を見られる危険性が高まるけど、いいの?」
「いつかバレるなら、早い方がいい。もし、明日打ち明けられなくても、ラクラが見つかった後に嫌でも見せることになるんだ。――これで否定されるなら、それはそれでいいさ」
皮肉気なナハトの声を聞きながら、飛燕は小さく呟いた。
「…そんな悲しいことを言わないでよ、ナハト」
飛燕はナハトの肩に降りると、スリッと体をこすりつけた。
嫌そうな顔でナハトは押しのけようとしたが、アリシアの体が傾きそうになったので飛燕の悪ふざけにも近いような甘えの仕草を黙ってされるがままにしていた。
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