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その2
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時間というものは、かくもあわただしく過ぎるものか……。
上京して十年。
幸い就職先はいい人ばかりで、俺は充実した毎日を送っていた。
だがそれは、あくまで仕事関係の話で、プライベート、要は恋愛関係はさっぱりとしたものだった。
東京に行けば、俺のようなマイノリティでも恋人ができるのではないか……そんな風に思っていたけれど、生来のチキンハートはなかなか捨てられず。
ゲイバーに行くのもなかなかハードルが高く、そこで何らかの出会いをするなんて、俺にしては完全にキャパを越えていた。
それに、田舎ではそこそこだった容姿も、都会では埋もれてしまい、可もなく不可もなくといった状態で、たまに気まぐれに誘われることはあっても、明らかに遊びの関係を結ぶには俺は純情すぎた。
大学時代に積極的な女性に誘われ辛うじて童貞は捨てていたけれど、俺はその相手のように遊びと本気を使い分けられるほど器用な性格じゃないことを同時に思い知った。
セックスは気持ちがいい……それはよく分かってる。
でも安易な気持ちで行為に及ぶことができず……結局俺は、住んでる場所以前の問題で、誰とも……そういう関係を築けなかった。
ここ数年は忙しさにかまけて清い日々を送っている。
きっと、このまま一人で生きていくに違いない……。
そう思っていたのだが。
数年ぶりに帰省した我が家で待っていたのは、お見合い用の写真と釣り書き。
「あんた、お見合いしなさい」
そう言って差し出された写真には、スーツを着て華やかな笑顔を浮かべる男性、だった。
「……っ、母さん、この人!!!」
そう、その男性は、俺が図らずもカミングアウトをしてしまう原因となった、あの、彼だった。
上京して十年。
幸い就職先はいい人ばかりで、俺は充実した毎日を送っていた。
だがそれは、あくまで仕事関係の話で、プライベート、要は恋愛関係はさっぱりとしたものだった。
東京に行けば、俺のようなマイノリティでも恋人ができるのではないか……そんな風に思っていたけれど、生来のチキンハートはなかなか捨てられず。
ゲイバーに行くのもなかなかハードルが高く、そこで何らかの出会いをするなんて、俺にしては完全にキャパを越えていた。
それに、田舎ではそこそこだった容姿も、都会では埋もれてしまい、可もなく不可もなくといった状態で、たまに気まぐれに誘われることはあっても、明らかに遊びの関係を結ぶには俺は純情すぎた。
大学時代に積極的な女性に誘われ辛うじて童貞は捨てていたけれど、俺はその相手のように遊びと本気を使い分けられるほど器用な性格じゃないことを同時に思い知った。
セックスは気持ちがいい……それはよく分かってる。
でも安易な気持ちで行為に及ぶことができず……結局俺は、住んでる場所以前の問題で、誰とも……そういう関係を築けなかった。
ここ数年は忙しさにかまけて清い日々を送っている。
きっと、このまま一人で生きていくに違いない……。
そう思っていたのだが。
数年ぶりに帰省した我が家で待っていたのは、お見合い用の写真と釣り書き。
「あんた、お見合いしなさい」
そう言って差し出された写真には、スーツを着て華やかな笑顔を浮かべる男性、だった。
「……っ、母さん、この人!!!」
そう、その男性は、俺が図らずもカミングアウトをしてしまう原因となった、あの、彼だった。
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