お見合い小夜曲

高牧 まき

文字の大きさ
6 / 6

その6

しおりを挟む
「圭太郎、話があるんだけど」

 それは、突然だった。

 キッチンで朝食の片づけをしていた俺。

 武流はソファに座っていた。

 交際を始めてはや二年。

 思った以上に順調に交際は続いていて、自分でも最近はもしかしてこのまま交際し続けられるかも……なんて甘いことを考え始めた矢先のことだった。

 とうとう、別れを切り出される時が来たのか。

 だったら、昨夜は抱かないで欲しかったな。

 週末、いつものように俺の部屋にやってきて、いつものように過ごしていた。

 そんなことしないで、昨日のうちに切り出してくれればよかったのに。

 俺はそう思いながら、手を拭いて武流の横に少しスペースを置いて腰かけた。

 こんな時、他の人はどうするんだろう。

 ……泣くのかな。

 捨てないでって言うんだろうか。

 でも、俺二年の間だけでも、夢みたいに幸せだったし。

 恋愛経験値の差だろうか。

 俺は武流に振り回されながらもいつも楽しく過ごせていたし、武流に甘えられるのも嫌いじゃなかった。

 だから、ありがとうって言おう。

 俺と付き合ってくれてありがとう。

 俺は幸せだったって。

 そう伝えよう。

 俺はそう思って、武流の言葉を待った。

「あのさ……。

 俺たち、交際初めて、そろそろ、二年だよな?」

「そうだね……」

「その……もうな、いいんじゃないだろうか?」

「………うん」

「そろそろ一緒に、暮らさないか?」

「………うん……え?

 一緒に??」

「職場もそれほど離れてないだろ?

 週末通うのも悪くないけど、そろそろ一緒に暮らしても、いい頃だと思うんだけど」 

 ってことは、武流とは、別れない……ってこと??

 要は、同棲するって事で………。

 うわわ……!!

 武流と、同棲??

 これは夢じゃないだろうか??

 毎日一緒にいて、朝起こしたり、ご飯を一緒に食べたり、そんな生活が始まるってことで……。

 早くも同棲生活に思いをはせる俺に、武流の手が伸びてきた。

 抱き寄せられ、彼が好きだという、うなじに唇が触れたのが分かる。

「圭太郎、返事は???」

 返事も何も、俺が君に適うはずはない。

「よ、よろしくお願いします……」

 気が付いたら俺は、そんな風に返事を返してしまっていた。

 その日の夜、母に武流と一緒に暮らすことになった、とメールしたら、「結婚おめでとう」と返事が来た。

 いやだから、なんで指輪もらったこと、母親にばれてるんだか。

 
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

キサラギムツキ
BL
長い間アプローチし続け恋人同士になれたのはよかったが…………… 攻め視点から最後受け視点。 残酷な描写があります。気になる方はお気をつけください。

後宮の男妃

紅林
BL
碧凌帝国には年老いた名君がいた。 もう間もなくその命尽きると噂される宮殿で皇帝の寵愛を一身に受けていると噂される男妃のお話。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

オメガなパパとぼくの話

キサラギムツキ
BL
タイトルのままオメガなパパと息子の日常話。

王様の恋

うりぼう
BL
「惚れ薬は手に入るか?」 突然王に言われた一言。 王は惚れ薬を使ってでも手に入れたい人間がいるらしい。 ずっと王を見つめてきた幼馴染の側近と王の話。 ※エセ王国 ※エセファンタジー ※惚れ薬 ※異世界トリップ表現が少しあります

happy dead end

瑞原唯子
BL
「それでも俺に一生を捧げる覚悟はあるか?」 シルヴィオは幼いころに第一王子の遊び相手として抜擢され、初めて会ったときから彼の美しさに心を奪われた。そして彼もシルヴィオだけに心を開いていた。しかし中等部に上がると、彼はとある女子生徒に興味を示すようになり——。

鳥籠の夢

hina
BL
広大な帝国の属国になった小国の第七王子は帝国の若き皇帝に輿入れすることになる。

ラピスラズリの福音

東雲
BL
*異世界ファンタジーBL* 特別な世界観も、特殊な設定も、壮大な何かもありません。 幼馴染みの二人が遠回りをしながら、相思相愛の果てに結ばれるお話です。 金髪碧眼美形攻め×純朴一途筋肉受け 息をするように体の大きい子受けです。 珍しく年齢制限のないお話ですが、いつもの如く己の『好き』と性癖をたんと詰め込みました!

処理中です...