コーポ小林事件

３

関係者は今の所は３人。
最後の一人は来生敦子の子供で【来生 かのん（きすぎ かのん）】４歳。
事件があった当時は保育園に行っていて現場にはいなかったことが分かっている。
保育園でかのんちゃんをみていた保育士数人が証言をしているので間違いない。
現在は児相が保護している。
敦子はシングルマザーだったのでこれから父親に連絡をとり、今後のことが決まるだろう。
正直子供を殺してしまった敦子よりもかのんちゃんのことを考えると、心が締め付けられる。
周りの先輩たちも同じようで、あの環境で子供を置いて離婚するような父親はかなりの高確率で引き取らないと話していた。
それだけでなく人殺しの子供ともなれば母親に近い親族でさえ引き取ると手を挙げる者はいないだろうとのことだった。
可哀想だが私にはどうにも出来ない。

捜査会議で私は事件があったコーポに住む住人に事情を聞くことになった。
とは言ってもこういうところに住む人は人間関係も希薄で大した情報はとれない。
それでも、何か分かるもしれないので真剣にやるしかない。
本宮先輩の同期は康隆くんとかのんちゃんの父親のところに話を聞きに行くそうだ。
先輩が選ばれなかった理由はきっと私だ。
やる気がどうのではなくまだ未熟だと判断されたのだろう。
まぁ、申し訳ないとは思ったり思わなかったりする。
先輩は敦子の仕事先に行きたかったようだ。
職場は色んな人がいるので話好きな先輩は残念そうにしていた。
それでも熱い男大悟はやる気を無くしたりはせずに、私に気合を入れように言っていた。

正直、康隆くんとかのんちゃんは父親が違うと思っていた。
男に弄ばれたか、お金のために男と寝て出来てしまったのかと勝手に考えていた。
それと、話を聞くまでは敦子のことは完全に生活保護だと思っていた。
仕事先とは言ったが実際は自宅が実質的な職場だ。
家で編み物を作りお店に置いてもらい売れたらお金を受け取るという生活だった。
楽な生活ではなかったようで、いくらかの生活保護は受けていたが自立を目指していたそうだ。
子供のために頑張っていたのだろう。
なんのために働いているのか分からなくなってしまった私とは反対だ。
まだまだ下っ端とは言え公務員。
給料も決まっているし、各種手当も出ている。
生活は安定している。
それでもやる気が出ない自分が情けないが、未だにやる気が出ない。