12 / 27
1章
12話 私、恋愛には臆病になってしまう
しおりを挟む
それからしばらく私たちは抱き合っていた。最初は飛び出しそうなくらいに早鐘を打っていた私の心臓も次第に落ち着いてきた。
好きな人に抱きしめられるのってこんなに気持ちがいいものなんだ。
ずっと、こうしていたい……。
そう思ったけど、私達は明日からまたお仕事だ。
いつまでも引っ付いてはいられない。
私はトシヤさんの背中をポンポンと叩いて言った。
「トシヤさん、そろそろお開きにしましょうか?」
「え?」
トシヤさんは驚いているみたいだ。
いや、そんなに驚かれても。
今夜ももちろん泊めてあげませんよ。
「……ツレナイね、葵ちゃん……」
トシヤさんの顔が若干引きつっているように感じたけど知~らない。
「そういうところも魅力的だけど」
トシヤさんがイケメンのオーラ全開の笑顔でこんなことを囁いたりするから、私はギョッとしてトシヤさんを再び家から追い出した。
ヤバイ、やっぱり、イケメンが本気出したら私なんか太刀打ちできないって!
リビングテーブルの上のお菓子や野菜を片付けていると『お礼』と書かれた白い封筒があった。愛美さんが置いていったもののようだ。裏には『二人で美味しいものを食べに行ってね、千尋』の文字が。
ちいちゃんだ! ちいちゃんからだ。
中には結構な金額のグルメカードと手紙が入っていた。
『葵ちゃん、電話だと泣いて話が出来そうにないから手紙にしました。
手紙なんてまともに書いたことがないから変なところがあったらごめんね。
あの日、わたしを家に連れて行ってくれて本当にありがとう。
正直、勢いだけで福岡に飛び出してきちゃったけれど、あの時はもうどうしたらいいのかわからなくて蓮と二人で途方に暮れていたの。
わたし、すぐに彼に会えるって簡単に思ってたんだ。バカだよね。
もし、あの時葵ちゃんと俊哉さんと出会えていなかったらって思ったらすごく恐ろしい。
あんなに寒い雨の中にまだ小さい蓮を連れて行ったなんて、今考えたら本当に怖くなるの。
葵ちゃん、わたし達を助けてくれてありがとう。
葵ちゃんの家に泊まって葵ちゃんとわたしと蓮の三人で同じ部屋で寝たでしょう?あの夜は葵ちゃんの存在が頼もしくてわたし、安心してぐっすり眠れたの。多分、あんなにぐっすり寝たのは蓮が産まれてから初めての事だと思う。
わたしが仕事に行っている時は、蓮は保育園にあずかって貰えるけど夜はいつもわたし達二人だけだったから、わたしはいつも不安だった。蓮に何かあっても頼れるのは自分だけだから。
昨日も楽しかったな。葵ちゃんや俊哉さんが蓮のオムツを替えてくれたり、ミルクを飲ませてくれたの、本当に嬉しかったの。
わたしね、蓮が産まれてから今まで、あんなふうに誰かと蓮の世話をしたことがなかったからすごく楽しかった。
彼の事も、一緒に探してくれてありがとう。
わたしの事を親身になって思ってくれてありがとう。
葵ちゃん、わたし、今まで強がって意地はってたんだなって気が付いた。
一人で蓮を育てていくのは寂しいよ。
もう一人には戻れないって思ったの。
わたしが実家に帰れたのは、全部葵ちゃんのおかげだよ
本当にありがとう。
葵ちゃん、大好きだよ』
……こんなに嬉しい手紙を貰ったのは人生で初めてだ。
ちいちゃん、ちいちゃんがおうちに帰れて本当に良かった。
蓮君と二人でだれにも頼らずに生きてきたちいちゃん。
これからは、蓮君のお爺ちゃんとお祖母ちゃんに沢山愛してもらってね。
ちいちゃん、私も大好きだよ。
ちいちゃんも蓮君も本当に大好きだよ。
……手紙には続きがあった。
『P.S.わたしの両親には葵ちゃんと俊哉さんはラブラブでお姉ちゃんの入る余地はないよって言っておいたから。お姉ちゃんには負けないでね。』
ってどういうこと?
私、この後、愛美さんと戦うの……?
あんな美人と戦っても負ける気しかしない。
あんなゴージャスな美人相手じゃ私の戦闘値はゼロ以下だよ。
ていうかそもそも戦う予定がない……。
ちいちゃん、ちいちゃんのお姉さんはとても素敵な人だったよ。
トシヤさんを呪縛から解放してくれた。
それにしても……ちいちゃんは、私のトシヤさんへの想いに気が付いていたんだ……。
私は今日、自覚したっていうのに。
そうだよ、ちいちゃん、素直に認めるよ。
私はトシヤさんが好きだよ。
トシヤさんも私の事を好いてくれていると思う。
でもね……。私は自分に自信がないの。
今まで、誰とも上手くいかなかった。
気づかないうちに恋人を傷つけてしまっていた。
また、同じことをしたらどうしよう?
……だからトシヤさんとこれ以上進むのは怖いの。
怖いんだよ、ちいちゃん。
私、恋愛には臆病になってしまう。
情けないな。
こんな弱虫、情けなくてちいちゃんに笑われちゃうね……。
私はトシヤさんに本気で恋することを心のどこかで恐れている。
結局この日、私はトシヤさんに『好き』と口にしていないことに気が付いてしまった。
好きな人に抱きしめられるのってこんなに気持ちがいいものなんだ。
ずっと、こうしていたい……。
そう思ったけど、私達は明日からまたお仕事だ。
いつまでも引っ付いてはいられない。
私はトシヤさんの背中をポンポンと叩いて言った。
「トシヤさん、そろそろお開きにしましょうか?」
「え?」
トシヤさんは驚いているみたいだ。
いや、そんなに驚かれても。
今夜ももちろん泊めてあげませんよ。
「……ツレナイね、葵ちゃん……」
トシヤさんの顔が若干引きつっているように感じたけど知~らない。
「そういうところも魅力的だけど」
トシヤさんがイケメンのオーラ全開の笑顔でこんなことを囁いたりするから、私はギョッとしてトシヤさんを再び家から追い出した。
ヤバイ、やっぱり、イケメンが本気出したら私なんか太刀打ちできないって!
リビングテーブルの上のお菓子や野菜を片付けていると『お礼』と書かれた白い封筒があった。愛美さんが置いていったもののようだ。裏には『二人で美味しいものを食べに行ってね、千尋』の文字が。
ちいちゃんだ! ちいちゃんからだ。
中には結構な金額のグルメカードと手紙が入っていた。
『葵ちゃん、電話だと泣いて話が出来そうにないから手紙にしました。
手紙なんてまともに書いたことがないから変なところがあったらごめんね。
あの日、わたしを家に連れて行ってくれて本当にありがとう。
正直、勢いだけで福岡に飛び出してきちゃったけれど、あの時はもうどうしたらいいのかわからなくて蓮と二人で途方に暮れていたの。
わたし、すぐに彼に会えるって簡単に思ってたんだ。バカだよね。
もし、あの時葵ちゃんと俊哉さんと出会えていなかったらって思ったらすごく恐ろしい。
あんなに寒い雨の中にまだ小さい蓮を連れて行ったなんて、今考えたら本当に怖くなるの。
葵ちゃん、わたし達を助けてくれてありがとう。
葵ちゃんの家に泊まって葵ちゃんとわたしと蓮の三人で同じ部屋で寝たでしょう?あの夜は葵ちゃんの存在が頼もしくてわたし、安心してぐっすり眠れたの。多分、あんなにぐっすり寝たのは蓮が産まれてから初めての事だと思う。
わたしが仕事に行っている時は、蓮は保育園にあずかって貰えるけど夜はいつもわたし達二人だけだったから、わたしはいつも不安だった。蓮に何かあっても頼れるのは自分だけだから。
昨日も楽しかったな。葵ちゃんや俊哉さんが蓮のオムツを替えてくれたり、ミルクを飲ませてくれたの、本当に嬉しかったの。
わたしね、蓮が産まれてから今まで、あんなふうに誰かと蓮の世話をしたことがなかったからすごく楽しかった。
彼の事も、一緒に探してくれてありがとう。
わたしの事を親身になって思ってくれてありがとう。
葵ちゃん、わたし、今まで強がって意地はってたんだなって気が付いた。
一人で蓮を育てていくのは寂しいよ。
もう一人には戻れないって思ったの。
わたしが実家に帰れたのは、全部葵ちゃんのおかげだよ
本当にありがとう。
葵ちゃん、大好きだよ』
……こんなに嬉しい手紙を貰ったのは人生で初めてだ。
ちいちゃん、ちいちゃんがおうちに帰れて本当に良かった。
蓮君と二人でだれにも頼らずに生きてきたちいちゃん。
これからは、蓮君のお爺ちゃんとお祖母ちゃんに沢山愛してもらってね。
ちいちゃん、私も大好きだよ。
ちいちゃんも蓮君も本当に大好きだよ。
……手紙には続きがあった。
『P.S.わたしの両親には葵ちゃんと俊哉さんはラブラブでお姉ちゃんの入る余地はないよって言っておいたから。お姉ちゃんには負けないでね。』
ってどういうこと?
私、この後、愛美さんと戦うの……?
あんな美人と戦っても負ける気しかしない。
あんなゴージャスな美人相手じゃ私の戦闘値はゼロ以下だよ。
ていうかそもそも戦う予定がない……。
ちいちゃん、ちいちゃんのお姉さんはとても素敵な人だったよ。
トシヤさんを呪縛から解放してくれた。
それにしても……ちいちゃんは、私のトシヤさんへの想いに気が付いていたんだ……。
私は今日、自覚したっていうのに。
そうだよ、ちいちゃん、素直に認めるよ。
私はトシヤさんが好きだよ。
トシヤさんも私の事を好いてくれていると思う。
でもね……。私は自分に自信がないの。
今まで、誰とも上手くいかなかった。
気づかないうちに恋人を傷つけてしまっていた。
また、同じことをしたらどうしよう?
……だからトシヤさんとこれ以上進むのは怖いの。
怖いんだよ、ちいちゃん。
私、恋愛には臆病になってしまう。
情けないな。
こんな弱虫、情けなくてちいちゃんに笑われちゃうね……。
私はトシヤさんに本気で恋することを心のどこかで恐れている。
結局この日、私はトシヤさんに『好き』と口にしていないことに気が付いてしまった。
0
あなたにおすすめの小説
優しい雨が降る夜は
葉月 まい
恋愛
浮世離れした地味子 × 外資系ITコンサルのエリートイケメン
無自覚にモテる地味子に
余裕もなく翻弄されるイケメン
二人の恋は一筋縄ではいかなくて……
雨降る夜に心に届いた
優しい恋の物語
⟡☾·̩͙⋆☔┈┈┈ 登場人物 ┈┈┈ ☔⋆·̩͙☽⟡
風間 美月(24歳)……コミュニティセンター勤務・地味でお堅い性格
雨宮 優吾(28歳)……外資系ITコンサルティング会社勤務のエリートイケメン
猫なので、もう働きません。
具なっしー
恋愛
不老不死が実現した日本。600歳まで社畜として働き続けた私、佐々木ひまり。
やっと安楽死できると思ったら――普通に苦しいし、目が覚めたら猫になっていた!?
しかもここは女性が極端に少ない世界。
イケオジ貴族に拾われ、猫幼女として溺愛される日々が始まる。
「もう頑張らない」って決めたのに、また頑張っちゃう私……。
これは、社畜上がりの猫幼女が“だらだらしながら溺愛される”物語。
※表紙はAI画像です
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている
井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。
それはもう深く愛していた。
変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。
これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。
全3章、1日1章更新、完結済
※特に物語と言う物語はありません
※オチもありません
※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。
※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。
英雄の番が名乗るまで
長野 雪
恋愛
突然発生した魔物の大侵攻。西の果てから始まったそれは、いくつもの集落どころか国すら飲みこみ、世界中の国々が人種・宗教を越えて協力し、とうとう終息を迎えた。魔物の駆逐・殲滅に目覚ましい活躍を見せた5人は吟遊詩人によって「五英傑」と謳われ、これから彼らの活躍は英雄譚として広く知られていくのであろう。
大侵攻の終息を祝う宴の最中、己の番《つがい》の気配を感じた五英傑の一人、竜人フィルは見つけ出した途端、気を失ってしまった彼女に対し、番の誓約を行おうとするが失敗に終わる。番と己の寿命を等しくするため、何より番を手元に置き続けるためにフィルにとっては重要な誓約がどうして失敗したのか分からないものの、とにかく庇護したいフィルと、ぐいぐい溺愛モードに入ろうとする彼に一歩距離を置いてしまう番の女性との一進一退のおはなし。
※小説家になろうにも投稿
【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)
かのん
恋愛
気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。
わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・
これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。
あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ!
本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。
完結しておりますので、安心してお読みください。
今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。
そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。
だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。
そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる