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第5章
25話 晩餐会とスイーツの評価
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25話 晩餐会とスイーツの評価
王宮の晩餐会場――
その広さと豪奢さは、何度訪れても雪乃を落ち着かなくさせた。
天井は高く、巨大なシャンデリアが無数の光を反射している。
大理石の床は磨き上げられ、歩くだけで自分の存在が目立ってしまう気がした。
(……やっぱり来るべきじゃなかった)
雪乃は、内心で何度目か分からない後悔を噛みしめる。
「こちらが、“雪の庭”の店主様です」
侍従の声とともに、周囲の視線が一斉に集まった。
「……!」
逃げ場は、ない。
「まあ……」
「噂の喫茶店の……」
ざわめきが、波のように広がる。
(見ないで……お願いだから……)
心の中では縮こまりながらも、雪乃は背筋を伸ばし、微笑みを浮かべた。
それは長年、王宮で身につけた“外向けの顔”だった。
「本日は、このような場にお招きいただき、光栄に存じます」
自分の声が、驚くほど落ち着いて聞こえる。
「なんて上品な方……」
「喫茶店の店主とは思えないわね」
(だから、思わなくていいのよ……!)
だが、その内心とは裏腹に、雪乃の立ち居振る舞いは自然だった。
指先の動き、視線の配り方、微笑みの角度。
どれもが“育ちの良さ”を隠しきれていない。
(……忍に怒られる)
そんなことを考えているうちに、晩餐会が本格的に始まった。
料理が次々と運ばれ、会場の空気が華やいでいく。
そして、いよいよ――
「それでは、本日の特別な一品をご紹介いたします」
侍従の声が響き、
会場の注目が一点に集まる。
「喫茶店『雪の庭』より、“特製マカロン”でございます」
白い皿に並べられたマカロンは、淡い色合いで統一され、まるで宝石のようだった。
「まあ……」
「なんて可愛らしい……」
貴族たちから、思わず漏れる感嘆の声。
(よし、見た目は合格)
雪乃は、内心で小さく拳を握った。
一人、また一人とマカロンを手に取り、口に運ぶ。
そして――
「……!」
空気が変わった。
「これは……」
「口の中で、ほどけて……」
「甘すぎないのに、深い……!」
あちこちから、驚きと称賛の声が上がる。
雪乃は、涼しい顔を保ちながらも、内心では誇らしさを抑えきれなかった。
(でしょう?
“雪の庭”のスイーツは、伊達じゃないのよ)
しばらくは、穏やかな賞賛の時間が続いた。
――だが。
「……あっ」
小さな声とともに、視界の端で何かが動いた。
マカロンを手にした貴族の一人が、後ろを向こうとして――
隣の女性に、ぶつかったのだ。
「きゃっ!」
マカロンが傾き、
クリームが、華やかなドレスに落ちる。
「まぁっ!?」
会場が、一瞬にしてざわついた。
(……うそでしょ)
雪乃の背筋が、ひやりと冷える。
(このタイミングで……?)
「ど、どうしてくださるの!?」
「申し訳ありません! その……!」
空気が、急速に張り詰めていく。
(まずい……このままじゃ、雰囲気が壊れる)
雪乃は、ほんの一瞬だけ迷った。
(でも……)
次の瞬間、彼女は一歩前に出ていた。
「ご安心くださいませ」
穏やかで、落ち着いた声。
視線が、再び雪乃に集まる。
「こちらのクリームは、水で簡単に落ちるよう調整しております」
そう言って、用意していたクロスを差し出す。
「すぐに跡は残りませんわ」
女性は驚きつつも、言われた通りに拭き取る。
「……本当……跡が……」
「よかった……」
ざわめきが、安堵へと変わる。
「さすが……」
「落ち着いた対応ですわね……」
(……よし)
雪乃は、胸の奥で大きく息を吐いた。
(これで、なんとか……)
その後、会場の雰囲気は再び和らぎ、
晩餐会は何事もなかったかのように進んでいった。
雪乃は、最後まで“優雅な店主”を演じきった。
(疲れた……)
だが同時に、確かな手応えも感じていた。
(味も、対応も……完璧だったはず)
晩餐会は、やがて終盤へと向かう。
雪乃はまだ知らない。
この成功が、
次なる“厄介事”を呼び込むことを――。
喫茶店「雪の庭」の名は、
この夜、王宮中に刻み込まれていった。
王宮の晩餐会場――
その広さと豪奢さは、何度訪れても雪乃を落ち着かなくさせた。
天井は高く、巨大なシャンデリアが無数の光を反射している。
大理石の床は磨き上げられ、歩くだけで自分の存在が目立ってしまう気がした。
(……やっぱり来るべきじゃなかった)
雪乃は、内心で何度目か分からない後悔を噛みしめる。
「こちらが、“雪の庭”の店主様です」
侍従の声とともに、周囲の視線が一斉に集まった。
「……!」
逃げ場は、ない。
「まあ……」
「噂の喫茶店の……」
ざわめきが、波のように広がる。
(見ないで……お願いだから……)
心の中では縮こまりながらも、雪乃は背筋を伸ばし、微笑みを浮かべた。
それは長年、王宮で身につけた“外向けの顔”だった。
「本日は、このような場にお招きいただき、光栄に存じます」
自分の声が、驚くほど落ち着いて聞こえる。
「なんて上品な方……」
「喫茶店の店主とは思えないわね」
(だから、思わなくていいのよ……!)
だが、その内心とは裏腹に、雪乃の立ち居振る舞いは自然だった。
指先の動き、視線の配り方、微笑みの角度。
どれもが“育ちの良さ”を隠しきれていない。
(……忍に怒られる)
そんなことを考えているうちに、晩餐会が本格的に始まった。
料理が次々と運ばれ、会場の空気が華やいでいく。
そして、いよいよ――
「それでは、本日の特別な一品をご紹介いたします」
侍従の声が響き、
会場の注目が一点に集まる。
「喫茶店『雪の庭』より、“特製マカロン”でございます」
白い皿に並べられたマカロンは、淡い色合いで統一され、まるで宝石のようだった。
「まあ……」
「なんて可愛らしい……」
貴族たちから、思わず漏れる感嘆の声。
(よし、見た目は合格)
雪乃は、内心で小さく拳を握った。
一人、また一人とマカロンを手に取り、口に運ぶ。
そして――
「……!」
空気が変わった。
「これは……」
「口の中で、ほどけて……」
「甘すぎないのに、深い……!」
あちこちから、驚きと称賛の声が上がる。
雪乃は、涼しい顔を保ちながらも、内心では誇らしさを抑えきれなかった。
(でしょう?
“雪の庭”のスイーツは、伊達じゃないのよ)
しばらくは、穏やかな賞賛の時間が続いた。
――だが。
「……あっ」
小さな声とともに、視界の端で何かが動いた。
マカロンを手にした貴族の一人が、後ろを向こうとして――
隣の女性に、ぶつかったのだ。
「きゃっ!」
マカロンが傾き、
クリームが、華やかなドレスに落ちる。
「まぁっ!?」
会場が、一瞬にしてざわついた。
(……うそでしょ)
雪乃の背筋が、ひやりと冷える。
(このタイミングで……?)
「ど、どうしてくださるの!?」
「申し訳ありません! その……!」
空気が、急速に張り詰めていく。
(まずい……このままじゃ、雰囲気が壊れる)
雪乃は、ほんの一瞬だけ迷った。
(でも……)
次の瞬間、彼女は一歩前に出ていた。
「ご安心くださいませ」
穏やかで、落ち着いた声。
視線が、再び雪乃に集まる。
「こちらのクリームは、水で簡単に落ちるよう調整しております」
そう言って、用意していたクロスを差し出す。
「すぐに跡は残りませんわ」
女性は驚きつつも、言われた通りに拭き取る。
「……本当……跡が……」
「よかった……」
ざわめきが、安堵へと変わる。
「さすが……」
「落ち着いた対応ですわね……」
(……よし)
雪乃は、胸の奥で大きく息を吐いた。
(これで、なんとか……)
その後、会場の雰囲気は再び和らぎ、
晩餐会は何事もなかったかのように進んでいった。
雪乃は、最後まで“優雅な店主”を演じきった。
(疲れた……)
だが同時に、確かな手応えも感じていた。
(味も、対応も……完璧だったはず)
晩餐会は、やがて終盤へと向かう。
雪乃はまだ知らない。
この成功が、
次なる“厄介事”を呼び込むことを――。
喫茶店「雪の庭」の名は、
この夜、王宮中に刻み込まれていった。
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