婚約破棄された悪役令嬢、放浪先で最強公爵に溺愛される

しおしお

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2隣国の公爵に拾われる

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 王都を出て数日が経った。
 スカーレット・ヨークは伯爵家の馬車に揺られながら、国境の向こうへ向かおうとしていた。辺境の親戚筋、あるいはまったく別の地にある修道院……いずれにしろ、王太子アルバートによって婚約を破棄された彼女が、王都に戻れる望みはもはやほとんどない。
 父や母が必死に手を尽くしてくれるとはいえ、王家や有力貴族が結託し、スカーレットを“悪役令嬢”として扱い続ける以上、短期間で名誉が回復される見込みは薄いだろう。――彼女自身、それを十分に理解していた。

 ◇

 馬車での旅は想像以上に過酷だった。王都周辺の道こそ石畳がしっかり整備されているものの、街を出てしばらく行くと道幅は狭くなり、街道の整備状態も一気に悪化する。大きな石や木の根が露出した凸凹道を進むたび、車輪が何度も軋み、揺れが激しくなって車内にいるスカーレットの身体を容赦なく左右へと振り動かした。

 本来ならば、長い旅に慣れた御者や護衛騎士など、十分な人員を整えて出発すべきところだったが、今のヨーク伯爵家にはその余裕がない。王家から睨まれた以上、派手な準備をすれば「逃亡の意図がある」としてますます追及される恐れがあるし、何より王都の使用人たちはあからさまにスカーレットを敬遠しており、身の回りの世話を申し出る者はごくわずかだった。

 それでも、出発の際に伯爵夫人が懇意にしていた年配の御者が、最後の善意として名乗りを上げ、馬車を駆る役を引き受けてくれた。しかし彼も年齢による体力の衰えは隠せず、旅程が長引くほど心身の疲労が蓄積していくのは明らかだった。

 ある夕刻、細い峠道に差しかかったとき、事件は起きる。荷物を満載した馬車が深い轍(わだち)にはまってしまい、御者が必死に鞭を振るっても車輪が空転するばかりでまったく動かなくなってしまったのだ。幸い天候は晴れで雨のぬかるみはなかったものの、峠道は急な斜面に挟まれており、道幅が狭い。下手に押せば馬車ごと谷底へ転落しかねない危険があった。

「……どうしようもありませんな。嬢様、ここは馬車を降りて、先に少し歩いていただけますか? 荷物を減らして馬を助けないと」

 疲労困憊の御者は額の汗を拭いながらそう申し出る。スカーレットは迷わず頷いた。ドレスの裾をたくし上げ、そっと馬車を降りる。といっても、旅用の少し丈夫な衣装を選んでいるため、普通の貴族令嬢のような豪奢な装いよりは動きやすい。とはいえ、慣れない山道を歩くのは骨が折れる。地面の小石が靴底から足を突き上げ、ゆるくウェーブのかかった栗色の髪に埃が舞い込んで不快感が募る。

「大丈夫、私は歩けますから。御者さんこそお気をつけて」
「痛み入ります。しばしお待ちを……」

 御者は荷台を軽くするため、一部の荷物を地面に下ろし、馬と車輪を引き上げようと試行錯誤を繰り返す。しかし車輪は頑固に轍に噛んでおり、少しも動かない。道行きで頼めそうな助けも近くには見当たらない。深い森と岩肌が迫る峠道で、通行人の姿すらほとんどないのだ。

 スカーレットは周囲を見渡し、次第に日が沈みかけていることに気づく。空の西側は淡いオレンジのグラデーションに染まり、あと数十分もすれば明かりがなければ進めないほど暗くなるだろう。ここで夜を迎えるのは危険が大きい。魔獣や盗賊の類が出没する噂も、辺境近くでは決して珍しくはないのだ。

「御者さん……今日中にここを抜けられないのなら、安全な場所に避難した方がいいかもしれません。あまりにも無理をすると、私たちが怪我をするどころか……」
「承知してます、嬢様。ですが、馬車をこのまま放置するわけにもいかんのです。せめて車輪を外すなど、何らかの手段を講じたいが……」

 御者が途方に暮れたように視線を巡らせた。その様子にスカーレットも心が沈んでいく。伯爵家の援助もなく、大人数の護衛もいない今、彼女たちはほぼ自力でこの状況を打開しなければならない。

 ――そこに、遠くから蹄の音が聞こえてきた。
 希望の光か、それとも新たな危険か。スカーレットは警戒心を抱きながら、音のする方へ視線をやる。峠道の曲がり角から姿を現したのは、漆黒の毛並みを持つ一頭の馬。その馬上には銀髪の男が乗っていた。

 銀髪の男は、夕陽を背にしながらこちらへ近づいてくる。彼の身なりは一見して旅装束のようにも見えるが、織り込まれた生地は高級なものであり、その肩には何か高位の紋章と思しきデザインが刻まれていた。乗馬姿勢も堂々としており、まるで軍人か騎士のようだが、それ以上の威圧感と品位を感じさせる。

「これは……」

 距離が縮まるにつれ、スカーレットは男の容姿に驚かされる。彫りの深い整った横顔に、長身で引き締まった体躯。透き通るような銀色の髪はまるで月の光を映したかのごとく美しい。さらに、彼の瞳は冷淡さと高貴さを併せ持ち、どこか人を寄せ付けない雰囲気を放っていた。

 男は馬を止めると、まずは無言でスカーレットたちの馬車を一瞥する。そして落ち着いた声音で問うた。

「こんな時間に、こんな道で馬車が動かなくなるとは……随分と困っているようだな。どうした?」

 その低く響く声に、御者は安堵の表情を浮かべる。見知らぬ人物だが、盗賊風でもなければ怪しい集団を引き連れているわけでもない。もし力を貸してもらえるならば、これほど心強いことはない。

「ええ、実は……。峠道の轍に車輪が嵌ってしまいまして、馬も疲れ切っております。大変恐縮ですが、お力をお借りできませんでしょうか」

 御者がそう頼み込むと、男はちらりとスカーレットの方へ視線を向けた。彼女の衣服や佇まいから、ただの旅人ではなく、それなりに良家の出であることを察したのだろう。

「ふむ……そちらの嬢さんも旅の途中か? こんな辺境の峠道に、護衛もなく一人とはずいぶん危険だな」
「一応、私が護衛も兼ねておりますが、年寄りの身で……ご覧のありさまです」

 御者の自嘲気味な言葉に、男は口元にわずかな苦笑を浮かべる。そして馬を下りると、しっかりとした足取りで馬車の車輪へ近づいた。御者も「助けます」と声をかけて付き添う。

 男は馬車と轍の状態を確認し、しばらく車輪の様子を覗き込んでいたが、やがて立ち上がり、落ち着いた口調で言った。

「車輪を外すだけでは駄目だな。馬車の下に木材か石を差し込んで道をならす必要がある。……俺が持ち上げるから、お前はその間に支えを入れろ」
「はっ、はい! しかし、そんな重いものを……」

 御者は怪訝そうな顔をしたが、男は構わず両手を車輪付近の車体に当てる。まるで大岩を動かすかのように力を込めると、信じ難いことに馬車の一角が少しずつ持ち上がっていくではないか。

「……嘘……」

 スカーレットは息を呑んだ。馬車は決して軽いものではない。荷物もそれなりに積まれており、到底人の腕力だけで持ち上げられる代物ではないはずだ。それがこの男の手にかかると、不自然なほど容易く車体の傾斜が変わっていく。何かしら魔力を使ったのか、それとも単なる怪力か。

 いずれにしても、男の腕に秘められた桁外れの力を感じ、スカーレットはただ驚くばかりだった。御者が慌てて車輪の下に木片を噛ませ、さらには周囲の石や土砂を使って小さな斜面を作り出すと、馬車はようやく轍から抜け出すことに成功する。

「――やりました! ありがとうございます、本当に。あなたがいなければ、私たちは夜を明かさねばなりませんでした」
「助かった……! 重ね重ね感謝いたします。まさか、こんなに簡単に……」

 御者は地面に手をついて礼を述べた。その隣でスカーレットも丁寧に一礼する。

「……ありがとうございます。わたくし、スカーレットと申します。大恩をお受けしたままでは申し訳ございません。何かお礼を――」

 だが、男はスカーレットの言葉を制するかのように片手を挙げる。表情は依然として冷静で、どこか人形じみた美しさすら感じさせる。

「礼は要らない。困っているのを放っておくほど酷い性分じゃない。……それより、お前たちはこれからどうする? 峠を抜けても、ここから最寄りの街まではかなり距離がある。しかも陽は落ちかけている。今夜は安全な場所で休んだ方がいいだろう」
「たしかに、日が暮れるまでに街に着くのは無理かもしれません……」

 スカーレットが呟くように言うと、男は小さく頷く。

「俺の領地がそう遠くない。国境付近に邸があるから、良ければそこに一晩泊まっていくといい」
「え……領地がある、ということはあなたは……?」

 男はスカーレットの問いかけに直接は答えず、「早くしないと暗くなるぞ」とだけ言い残して愛馬に再び跨がる。そして馬車の御者を先導するように、片手で道を示す。その言動は強引なようにも見えるが、その実、迷いなく彼女たちを安全へ導く気概が感じられた。

 御者は一瞬ためらったものの、当てもないまま夜を迎えれば危険なのは明らかだ。幸い、相手は人目でわかるほど高貴な身分らしき雰囲気を漂わせ、しかも先ほどの善行が示すように悪意はなさそうである。スカーレットもうなずき、男に従うことを決めた。

 こうして、不思議な出会いをした銀髪の男――のちに名を知ることになるゼイン・ファーガス公爵――の導きによって、スカーレットの馬車は峠道を抜け、隣国へと続く国境地帯にある公爵領へ足を踏み入れることになったのである。

月光の館

 国境付近は王都とは打って変わり、森や山岳地帯が多く、農村が点在するばかりだ。人家も少なく、夜になれば辺りは真っ暗に包まれる。そんな中で、ゼインが“領地”と呼んだ場所――ファーガス公爵家の別邸――は、まるで月光を浴びるように白く輝く館だった。

 大きな門をくぐると、整然とした並木道が館の玄関口まで続いており、街灯代わりの魔導ランプがいくつも灯されている。深い森の中にひっそりと佇むようでありながら、敷地内はどこか幻想的な雰囲気を湛えていた。

 馬車が館の正面につくと、ゼインは馬から下り、スカーレットたちを振り返る。

「ここが俺の領地の一つだ。そこまで豪勢ではないが、客人を泊めるくらいの部屋はある。……少なくとも、峠道で一夜を明かすよりはましだろう」
「お言葉に甘えさせていただきます。……本当にありがとうございます」

 スカーレットは申し訳なさそうに頭を下げる。御者が馬車から降り、スカーレットの荷物を持とうとすると、ゼインの部下らしき人物たちがいつの間にか集まってきて、手早く荷を運び始めた。おそらく、館の従者なのだろう。彼らは慣れた様子でスカーレットたちを出迎え、案内の手筈を整えている。

「公爵様、お帰りなさいませ。そして、お客様がおられるのですね。早急に客室の準備をいたします」

 執事と思しき老人が深々と頭を下げ、ゼインにそう告げる。その言葉に、スカーレットは目を見開いた。「公爵様」と呼ばれたのだ。つまり、彼こそが隣国において「ファーガス公爵」と呼ばれる高位貴族――しかも国王に次ぐ権威と力を持つとされる存在だということになる。

「あなたは……公爵、でいらっしゃったのですね」
「名乗るのが遅れたな。俺はゼイン・ファーガス。隣国ルーヴェル王国で公爵をしている。ここは俺が静養や仕事の合間に立ち寄る別邸で、領内の管理を行う拠点の一つだ」

 やはり、ただ者ではなかった。スカーレットは呆然としつつも、すぐに礼を取ろうとする。しかし、あまりにも突然の展開に頭が追いつかず、ぎこちない動作となってしまう。

「そ、それは失礼を……。まさか、そんな高貴な方とは存じ上げず、無礼の数々をお許しください。先ほども馬車の修理を手伝っていただいたというのに……」
「構うな。俺が名乗らなかったのが悪い。それに、俺の地位や立場など知っていようといまいと、助けるべきだと思ったから助けただけだ」

 ゼインの言葉はぶっきらぼうでありながら、どこか優しさも含んでいる。スカーレットは安堵と緊張が入り混じった複雑な心持ちで、小さく息を吐いた。

「……ありがとうございます。改めて名乗らせていただきますが、私はスカーレット・ヨークと申します。先日まで……いえ、王都グランフォードで暮らしていました。詳しい事情はあまり話したくはないのですが、今は旅の途中で……」
「言いたくないのなら、無理に聞くつもりはない。ここでの滞在中は客人として扱うから、好きに過ごすといい。体を休めろ」

 ゼインはそう言い残すと、執事に指示を出して足早に邸内へ消えていった。スカーレットはその広い背中を見送りながら、彼の冷静な態度と、静かな気遣いに胸を打たれる。

(……なんて不思議な方なのでしょう。あれだけ高位の身分なのに、嫌味がなくて……)

 こんなにも心の広い人物がいるとは思わなかった。王太子アルバートはどちらかといえば、温和な表情で周囲を和ませるタイプだったが、その実、彼は非常に自己中心的な側面を持ち合わせていた。おそらくアメリアに対しても、その“騎士道精神”が過剰に働いた結果、スカーレットに嫌疑をかけているのだろう――などと考えてしまう。

 一方で、ゼイン・ファーガスは決して人当たりが“柔らかい”わけではない。言葉遣いも丁寧とは言い難いが、不思議な説得力と、合理的な優しさを感じさせる。彼のほうがよほど“誠実”という言葉が似合うようにスカーレットには思えた。

 そんな思考を巡らせているうちに、スカーレットは執事や侍女たちの案内を受け、邸内にある客室へと通される。そこは落ち着いた色調の家具と、床にはふかふかの絨毯が敷かれた、とても“別邸”とは思えないほど豪華で快適な部屋だった。

「しばらくこちらでお休みくださいませ。お荷物はそちらにおいて、疲れが取れ次第、夕食の席へご案内いたします」

 侍女の丁寧な声に、スカーレットは頭を下げる。邸内には多くの使用人が働いているようで、どの者も規律正しく動き、洗練された接客態度を示していた。国境近くの辺境とはとても思えないレベルの高さだ。

「ありがとうございます。本当に助かります。――あの、御者の方は?」
「御者様には使用人用の部屋をご用意いたしております。馬車や馬も、こちらで管理いたしますのでご安心ください」
「……お気遣い感謝します」

 スカーレットはほっと胸を撫で下ろす。よかった、と素直に思う。馬車の御者までぞんざいに扱われたらどうしようと不安だったが、それも杞憂で終わったらしい。

 ドアが閉じられ、スカーレットは一人きりになる。ふと室内を見回すと、大きな窓から薄暗い森が見える。日が沈んだ後の森は漆黒に染まり、少し不気味にも感じるが、この邸内ならば襲われる心配はなさそうだ。何より、旅の疲れを癒やすには申し分ない静けさがある。

 スカーレットはベッドの端に腰掛けると、ようやく安堵のため息をついた。馬車での旅路や、度重なるトラブル、そしてこの不可思議な出会い――緊張で張り詰めていた心が弛緩していくのを感じる。

「……自分が、こんなところにいるなんて、夢みたい」

 ほんの数日前まで、彼女は王太子妃となるはずだった。しかし、気づけば無実の罪を着せられ、婚約を破棄され、王都を追われる身となり、今こうして隣国の公爵邸で客人として迎えられている。あまりに波乱に満ちた展開に、現実感が湧かないほどだ。

 だが、嫌でも思い出してしまうのは、アルバートの冷たい眼差し、そして自分を陥れた誰かの陰謀――まるで悪夢のように、心を締め付ける。スカーレットは首を振って思考を振り払った。今は休むことが先決だ。いずれにせよ、明日はゼインに礼を述べる際、もう少し詳しい事情を聞かれるかもしれない。そのときにどう説明するか、簡単な嘘で誤魔化しても良いのだろうか。

「でも、嘘をつくのは好きじゃないし……。あまりに大きな出来事だったから、正直に話してしまったほうが……いや、でも、王太子の婚約破棄の話なんて、下手をすれば政争の火種になりかねないわ」

 スカーレットは唇を噛む。公爵という立場であれば、隣国ルーヴェル王国の王宮や外交問題にも深く関わっているに違いない。下手なことを告げれば、王太子アルバートとの関係のみならず、両国間の微妙な政治バランスにまで波紋を及ぼす可能性がある。スカーレットはそこまで気遣う義務はないかもしれないが、ヨーク伯爵家がこれ以上追い込まれる事態は避けたいのだ。

 結局、あれこれ考えた挙句、スカーレットは眠気に負けてベッドに横になった。旅の疲れは想像以上に身体を蝕んでいた。少しでも身体を休めておかなければ、今後の対応など考えようにも頭が回らない。

「……眠れるうちに眠っておこう……」

 そう呟くと、スカーレットは瞼を閉じた。まるで、ずっと不安定だった心を柔らかな毛布が包み込むかのように、彼女は深い眠りへと落ちていった。

邸内での目覚め

 目を覚ましたとき、窓の外には朝の光が差し込んでいた。いつの間にか夜が明け、澄んだ青空が広がっている。森の木々がそよ風に揺れ、鳥のさえずりが微かに耳に届く。

「もう朝……。昨夜はほとんど夕食も食べずに眠ってしまったわね」

 スカーレットは軽く伸びをし、ドレッサーの前に座った。昨夜は風呂どころか着替えすら満足にできなかったが、今日は侍女が準備してくれたらしい清潔な衣類がすでに置かれている。サイズもほぼぴったりで、どうやって測ったのか不思議だが、これが“公爵家の有能な使用人”というものなのだろうか。

 身支度を整えて部屋を出ると、廊下の前で侍女が待っていて、にっこりと微笑む。

「おはようございます、スカーレット様。よくお休みになれましたか? 朝食の用意ができておりますので、応接室へどうぞ」
「ありがとう。……昨夜は失礼しました。すっかり疲れて寝入ってしまって……」
「とんでもございません。お疲れのところを長旅のままご案内するのも酷かと存じ、私どももご無理を申し上げませんでした。何かご不便な点があれば、おっしゃってくださいませ」

 侍女は優雅に一礼すると、スカーレットを先導する。邸内は広大で、回廊や階段が幾つもあり、一度来ただけではとても覚えられそうにない。スカーレットも記憶力には自信がある方だが、この館の構造は複雑で、まるで迷路のようだ。

 応接室に着くと、小さなテーブルの上に様々な料理が並んでいた。香り高いパンやスープ、フルーツ、ハーブを使った温かいお茶、そして少量だが新鮮な肉料理など、辺境とは思えないほど贅沢な朝食である。そこに、ゼインの姿はまだないようだ。執事が静かに声をかける。

「公爵様は今朝は早くから領地の見回りに出ておられます。お戻りは昼前になるとのことですので、それまでスカーレット様にはごゆっくりお食事を召し上がっていただき、館内でご自由にお過ごしください、との伝言を預かっております」
「そう、ですか……。わかりました。ありがとうございます」

 ゼインは領内の管理や、他にも公爵としての仕事が山積みなのだろう。彼が実際に“公務”をしている姿を見たわけではないが、きっと多忙な日常を送っているはずだ。迷惑をかけたくはないし、せめて彼が戻るまでに何らかの形で礼を考えておきたい。

 スカーレットは静かにテーブルにつき、出されるままに朝食をいただく。王都でも高級ホテルや伯爵家の食卓で豪勢な食事を口にしてきたが、この館の料理はまた違った趣があった。ハーブを多用し、ほどよい塩味で仕上げられたスープは胃に優しく、旅の疲れが癒やされるように感じる。パンは噛むと甘みが広がり、焼きたての香ばしさが食欲をそそる。

 食後には暖かいハーブティーが運ばれ、スカーレットはその湯気と香りを楽しみながら、ほっと息をつく。

(……こうしていると、まるで王都にいた頃よりも静かで、落ち着いていられる気がする。あの華やかな社交界より、ずっと居心地がいいなんて……皮肉なものね)

 心に引っかかるのは、やはり自分が“追われる身”であることだ。ただ居心地が良いと感じるほどのんびりしていていいのだろうか、という不安が去来する。だが、今は無理に動いても仕方がない。ヨーク伯爵家が用意してくれた“避難先”とは別の場所ではあるが、ここにいる限りは命の危険が遠のくだろうし、しばし身体と心を癒やす期間も必要かもしれない。

公爵との再会――互いの素性

 朝食を済ませ、少し館内を散策していたスカーレットは、優雅な螺旋階段や図書室のような部屋を見つけては興味をかき立てられていた。伯爵家の蔵書にも負けず劣らず、あるいはそれ以上の古文書や魔法書が並んでおり、まるで小さな研究所のようだ。人がいない静かな図書室に足を踏み入れてみると、壁一面の本棚が圧巻で、思わず言葉を失ってしまう。

(こんな辺境の別邸に、どうしてこれほどまでの蔵書が……? ゼイン公爵は学問にも熱心なのかしら)

 次第に好奇心が疼き始め、スカーレットは本棚に近づいて背表紙を眺める。そこには古代文字が刻まれた貴重そうな魔道史の記録や、植物学、薬学、さらにこの国や周辺諸国の歴史書などがずらりと並んでいた。

 ふと手に取った一冊を捲ってみると、そこには“古代ルーヴェル語”による呪文や、その発祥に関する詳細が書かれている。難解ではあるが、スカーレットは幼少期から貴族教育の一環として魔法理論や歴史を学んできた。興味をかき立てられる内容に、ついついページを読み進めてしまう。

 しばらくの間、ページを捲る音だけが図書室に響いていた。――その静寂を破ったのは、低く落ち着いた声だった。

「……随分、熱心に読んでいるな」
「っ……!」

 突然の声に驚き、スカーレットは手元の本を落としそうになった。振り返ると、いつの間にか図書室の入口にゼイン・ファーガス公爵が立っている。気配をまったく感じさせなかったその存在感に、思わず心臓が高鳴った。

「す、すみません! 勝手に図書室を物色してしまって……」
「構わない。ここは俺が研究や書類整理をするときに使う部屋だが、客人が入ってはいけない決まりなどない。……むしろ、気に入ってもらえたなら嬉しい」

 ゼインは微笑らしさと無表情の中間のような表情を浮かべると、スカーレットの隣へ歩み寄る。彼が棚の上段にある一冊をスッと取り出すと、その背表紙には古めかしい紋章が刻まれていた。

「王国成立以前の古代戦争についての記録だ。ルーヴェル王国にも王都にも、こうした歴史書は数多く存在するが、この本は比較的実地の記録に近い。興味があるなら見てみるといい」
「ありがとうございます。……というか、あの、朝早くからお忙しかったと伺いましたが」
「ああ。領地内の監視塔や村の様子を見回ってきた。辺境には魔獣も出るし、道路整備も必須だからな。今日は騎士団を率いて夜明け前から動いていたのだが、ひとまず落ち着いた」

 そう言いながら、ゼインの視線がスカーレットの手元に移る。彼女が読んでいた本をちらりと覗き込み、ほんの少しだけ目を丸くした。

「それは……“上級魔術理論”の書だな。普通の貴族令嬢が読むようなものではない。文字を追うだけでも骨が折れるだろうに、理解できるのか?」
「ええ、まあ、幼い頃から多少は勉強しておりましたので……。あまり深いところまではわかりませんが、興味があって」

 スカーレットの頬がわずかに紅潮する。王太子妃教育の一環とはいえ、彼女はかなり幅広い分野を学んでいた。歴史や語学だけでなく、魔法理論にも関心を持っており、社交界の他の令嬢から「変わり者」と囁かれることもしばしばだった。――しかし、ゼインがバカにするような態度をとる気配はない。それどころか、感心したように小さく頷いている。

「そうか。……なかなか博識なのだな。貴族の娘という肩書だけでなく、しっかりとした教養もあるらしい。……もっとも、王太子殿下の婚約者だったのなら、その程度の学識は身につけていて当然か」
「!!」

 思わずスカーレットは息を呑む。ゼインが「王太子殿下の婚約者」という言葉を口にした。すなわち、彼はすでにスカーレットの素性――少なくとも、かつて王太子アルバートの婚約者であったことを知っている、ということになる。

「な……どうして、そのことを……?」
「昨夜、俺の執事がその御者と話をしていたようだ。御者が素性を口にしたらしい。俺はそれで知っただけだ」

 ゼインは悪びれる様子もなく、あっさりと真相を打ち明ける。スカーレットは内心で、ああ、やはりそうなるよね……と納得するしかなかった。伯爵家の御者が、館の使用人に対して自分たちの出身や状況を説明したとしても不思議ではない。むしろ、黙っているほうが不自然だ。

「……そうですか。隠していたわけではありませんが、お騒がせして申し訳ありません。今はもう“元”婚約者、という立場ですが……」
「聞いたところによると、お前はまったく理不尽な形で婚約を破棄されたそうだな。平民出身の“聖女”とやらが原因だとか……」

 ゼインの声には興味というより、わずかに苛立ちがにじむ。彼はアルバートやその王国に詳しいのだろうか。隣国とはいえ、貴族界の事情に疎いわけではないのかもしれない。スカーレットは視線を落とし、短く答えた。

「……はい。正直、私にも何が何だかよくわからないのですが、突然罪を着せられて、無実のまま婚約破棄されて追放された形です。これ以上は、あまり詳しく話したくありません。――こんな私が、ここに滞在してよいのか、不安になるほどですが……」
「……そうか」

 ゼインはそれ以上問い詰めず、少し間をおいてから口を開く。

「俺は王都グランフォードにそこまで深入りするつもりはない。だが、お前が安全に過ごす場所を探しているのなら、ここを利用して構わない。別に構わんが……お前にも望みがあるだろう。どうしたい?」
「どうしたい……ですか」

 スカーレットは自問自答する。王都に戻るのは不可能に近い状況。かといってこのまま国外へ逃亡するのも、ヨーク伯爵家に残る両親や使用人たちが気がかりだ。望みといえば、ひとまず身の安全と、いつか名誉を回復したいという願いくらい。

 その沈黙を見て取ったゼインは、ほんの少しだけ口元をほころばせるような気配を見せる。

「……お前が望むなら、しばらくここにいろ。辺境には人目も少ないし、俺の名前があれば不当な扱いを受けることも少ない。もちろん、時期が来て王都に戻りたいならそれもいいし、この国で新たな生活を始めたいなら助けてやってもいい」
「そこまで……なぜ、私なんかに?」

 スカーレットは思わず問い返す。これほどまでに厚意を示される理由がわからない。ゼインは必要以上に親切な態度を取りたがるタイプには見えないが、少なくとも彼はスカーレットに危害を加えるどころか、むしろ守ろうとしているようだ。

「……俺も貴族の内紛や陰謀というものを嫌というほど見てきた。名誉を濡れ衣で貶められ、破滅へと追いやられる人間をこれまで何度も目にしている。お前のような目をした奴も、昔いたのを覚えているんだ」
「目……?」

 スカーレットは瞬きをする。ゼインの言う“お前のような目”とは一体どんなものを指しているのだろうか。

「失意と絶望を抱えながらも、まだ何かを信じようとしている――そんな揺れを感じる。……それが、どうにも放っておけなくてな。お前が完全に打ちのめされた状態なら、むしろ俺も余計なことはしない。だが、お前はギリギリのところで自分の尊厳を保とうとしている。そこが気に入っただけだ」

 何とも不思議な言い回しだが、ゼインらしい素直な言葉のように思えた。スカーレットは胸の奥が温かくなるのを感じる。どこか不器用な慰め方だが、自分の中の“まだ諦めていない想い”を見抜かれたようで、少しだけ涙が浮かびそうになる。

「……ありがとうございます。でも、あまり長居をして迷惑をかけるのは本意ではありませんから、もし負担になるようでしたら、遠慮なく仰ってくださいね」
「心配するな。俺の領地は広いし、別邸の維持費も十分にある。お前ひとり面倒を見るくらい何でもない。むしろ、お前が不安定なまま外をさまよわれるほうが、俺としても寝覚めが悪いんでな」

 ゼインはそう言い放ち、再び本棚を見つめる。スカーレットも彼の横顔をちらりと盗み見る。銀髪の美しさもさることながら、その瞳の奥には確かな“力”と“覚悟”が宿っているのを感じる。

(この人は、きっと強い。地位や権力だけじゃなく、個人としても強い。だからこそ、こんな私にも手を差し伸べてくれるんだわ……)

 スカーレットはそんなふうに思わずにはいられなかった。アルバートとの馴れ初めを思い出してみても、彼女がこのように“圧倒的な安心感”を覚えたことはなかった気がする。

「わかりました。しばらく、ここにお世話になります。……私なりに、できることがあれば手伝わせてください。ご迷惑ばかりかけるわけにはいきませんもの」
「ふむ。では、後ほど執事に声をかけておく。館の雑用や文書整理など、手を貸せるものがあるかもしれない」

 そう言って、ゼインは本棚に戻った書籍をもう一度手に取る。すると、ぱらぱらとページを捲りながら、ふと顔を上げて付け加える。

「……そういえば、ヨーク伯爵家といえば、先代から学問や文化を重視していた家系だと聞く。お前が博識なのも納得がいくな。もし退屈しのぎに研究や読書をしたければ、好きなだけこの図書室を使っていい」
「ありがとうございます……!」

 スカーレットは思わず目を輝かせる。自分の境遇は散々だが、こうして知的好奇心を満たせる環境に身を置けるのは大きな救いになるだろう。もし後の人生で、自分の学識が何かの役に立つことがあれば――そう考えるだけでも、少しだけ生きる希望が湧いてきた。

隣国ルーヴェル王国の情勢

 それから数日、スカーレットはファーガス公爵家の別邸で穏やかな日々を過ごすようになった。馬車の御者は、館の使用人たちとともに馬の世話や館の周辺整備を手伝っており、時折スカーレットと顔を合わせては「ここは本当にすごいところだ。あんたがここにいる間は安心だろう」と感心している。

 ゼインは忙しく、朝早くから領地の管理や隣国との交渉などで飛び回り、夕方に帰ってきては夕食後に書類整理をする、という生活を送っていた。その合間に、スカーレットが図書室で読書していると、ふと顔を出して「進捗はどうだ?」などと会話を交わすこともある。短いやり取りだが、不思議と心が休まるひとときだった。

 スカーレットは館の侍女や執事を通じて、時折ゼインの話を耳にする。彼は単なる公爵ではなく、王国軍の総司令官を務めた経験もあり、国内でも屈指の武勇と魔力を誇る人物だという噂だ。しかも、政務にも通じており、王族すら一目置く存在なのだとか。

「王都では殿下と呼ばれる王族方よりも、公爵様のほうがよほど頼りになりますの。ファーガス家は代々、剣と魔法の才覚に恵まれた名門貴族でして……」

 侍女たちは誇らしげにそう語る。その尊敬の念は、ただの主従関係を超えているようにも見える。ファーガス公爵家は民を思いやり、広大な領地を平和に治めているらしい。確かに、ゼインの周囲で働く者たちを見る限り、主君に対する恐怖心や卑屈さは感じられない。皆、それぞれの役割を理解し、誇りを持って従事している。

 一方で、気になるのは“隣国との関係”だ。スカーレットが暮らしていたグランフォード王国とは、長年にわたって国境紛争や貴族間の軋轢があったと聞く。近年は休戦協定が結ばれているが、完全に友好関係とは言い難い状況だ。とりわけ、ファーガス公爵のように巨大な軍事力を持つ人物は、グランフォード王国にとって警戒すべき存在でもある。

(こんなところに私がいると知ったら、アルバート様はどんな顔をするのかしら……)

 考えても仕方がないとわかっていても、ついそんな妄想が頭をよぎる。今の自分にとって、アルバートは忘れたい相手でありながら、どうしても思い出してしまう存在だ。だが、それは同時に“あの日の屈辱”をも呼び起こし、心を痛ませる。

「私はもう、王太子妃でも何でもない。ただの“悪役令嬢”として追放された身……」

 そう自嘲しながらも、スカーレットは図書室で本を読み、館の雑用を手伝ううちに、ほんの少しずつ心を落ち着かせていった。自分を受け入れてくれる場所があること、優れた人物たちと触れ合えること、それだけでも救いになる。周囲が下手に腫れ物扱いをするわけでもなく、気遣いながらも普通に接してくれる。それが何より有り難かった。

静かな夜と、熱い想い

 そんなある夜、スカーレットは再び図書室で読書をしていた。ろうそくの灯と魔導ランプの青白い光が書棚を照らし、窓の外には静寂の森が広がる。もう既に寝る時間ではあるが、彼女は眠れぬ夜を紛らわせようと本に没頭していた。

 と、そのとき、重厚なドアがノックもなく開く。入ってきたのはゼインだった。珍しく少し肩を上下させ、息が乱れているように見える。まるで、何か急ぎの用事を終えてきた直後のようだ。

「こんな遅い時間まで起きているのか? 明かりがついていたから寄ってみたが……」
「あ……公爵様。申し訳ありません、いつの間にかこんな時間になっていて。お邪魔でしたらすぐに――」
「いや、邪魔ではない。俺も少しばかり頭を冷やしたくてな。……仕事が終わらないのさ」

 ゼインは大きく息を吐く。彼の銀髪はいつもよりやや乱れており、その鋭い瞳には疲労が見え隠れしていた。それでも堂々たる雰囲気は変わらないのだから、やはりただ者ではない。

「公爵様ほどの実力者でも、仕事が山積みなんですね……。私でお手伝いできることがあれば、仰ってください」
「はは……ありがたいが、これは軍事関連の書類だからお前には見せられない。まあ、気持ちだけ受け取っておくさ」

 ゼインはソファに腰を下ろし、こちらを見上げるようにスカーレットに視線を投げる。彼の瞳は、夜の闇を湛えながらも、微妙に揺らぐ何かを秘めているようだった。

「……なあ、スカーレット。お前はどうしてそこまで平静でいられる? 婚約を破棄され、追放同然になって……普通なら、もっと荒んでもおかしくないはずだ」
「平静……そう見えますか?」

 スカーレットは自嘲気味に笑う。内心では、何度も涙を流してきた。孤独と絶望に押しつぶされそうになった夜だってある。それでも、この館では涙を見せまいと心に決めているのだ。ここで醜態を晒してしまえば、ゼインの厚意に甘えている自分が情けなく思えてしまうから。

「……実際は、私だって辛いですよ。両親のことが心配で、でも王都に戻れなくて。あの平民の女性――アメリアに何をされたのかもわからない。無実を証明する手段もない。……でも、嘆いているだけじゃ何も変わらないじゃないですか」
「それは……まあ、そうだな」

 ゼインの目が小さく揺れる。スカーレットは言葉を続ける。

「私が今ここで泣き叫んでも、アルバート様やアメリアが改心して罪を白状してくれるわけじゃない。だったら、今は私にできること――せめて自分を保つことに集中しているほうがいい、そう思うんです。いつか正義が明らかになる日が来ると信じて……」
「……強いな、お前は」

 その言葉に、スカーレットは首を振る。

「違います。私は強くなんてありません。でも、ゼイン様をはじめ、ここにいる皆さんが普通に接してくださるからこそ、なんとか自分を見失わずにいられる。誰一人として、私を“悪役”なんて呼ばないし、蔑んだりしないから……」

 声が少し震えた。心の奥底に溜まっていた感謝と悲しみが、夜という静寂の中で溶け出しそうになる。すると、ゼインはそっと立ち上がり、スカーレットのそばに近づいた。

「スカーレット。もし辛いときは、泣いてもいい。誰かに頼るのは恥ではない。お前が泣いたところで、俺たちはお前を弱いとは思わん。……俺だって、何もかも一人で背負ってきたわけじゃないさ」

 その言葉に、スカーレットはハッとする。凛々しく完璧な印象のゼインが“自分も一人ではなかった”という真実。それに気づいた瞬間、心の奥に残っていたわだかまりが溶けていくようだった。

「……ありがとうございます。――本当に、ありがとうございます」

 静かな図書室に、スカーレットの小さな声が溶ける。夜の帳に包まれながら、二人はしばし言葉もなく立ち尽くした。穏やかで、けれどどこか熱を帯びた空気が、ゆらりと漂っている。

(この人がいてくれて良かった。今、私がここにいることは偶然だけど、きっと“運命”だと感じる。もしこのまま私が彼の好意に甘えることを許されるのなら――)

 そう思わずにはいられないほど、ゼインの存在はスカーレットにとって大きくなりつつあった。しかしそれは同時に、かつて婚約者であったアルバートの影を薄れさせるようでもあり、自分でも気づかないうちに心の一部が“新たな道”を模索し始めているのかもしれない。

 まだ、はっきりとした答えは出せない。けれど、こうして強くて優しい公爵に支えられながら、スカーレットは少しずつ、前を向く勇気を取り戻していくのだった。



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