無資格魔法使いが最強すぎる件 ―資格ってなんですか? 強いのでそんな資格いりません―

しおしお

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第6話 馬車での本音、最強の片鱗

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追放門をくぐったルーチェは、霧に包まれた道へ停められた馬車へ案内された。

王国から出る者用の、質素な護送馬車。
護衛は最低限で、罪人扱いらしく冷たい視線が向けられていた。

「……どうせ私、危険人物ですものね」

小さくため息をつきながら馬車に乗り込む。

扉が閉まり、馬車が動き出した瞬間――
ルーチェの肩からふっと力が抜けた。

(はぁ……ようやく静かになれた)

これまで縛られていた鎖の痛みも、群衆の視線の刺すような冷たさも、
全部あの門の向こう側に置いてきたように軽くなっていく。

カツ、カツ、と馬車の揺れる音だけが響く中、
ルーチェは胸に刻まれた封魔刻印にそっと触れた。

――すると。

ビリ、と内部で魔力が反発するような感覚。

(あー……やっぱりこの封魔刻印、作りが雑ね)

ルーチェは首をかしげる。

それは普通の魔法師なら絶対に気づかない、
繊細すぎる魔力の“ほつれ”だった。

(魔法網の接続を遮断するための封印……
構造は悪くないけれど、術式の基礎理論が古いのよね。
あれじゃ、ちょっと強い衝撃を与えたら壊れるわ)

ぽつりと呟く。

「解除方法は……まあ、知らないふりでいいかしら」

軽い声だった。

「壊そうと思えば一瞬ですけど。
戻る気なんてないし、このままで不便ないものね」

その言葉を聞く者は誰もいない。
だが読者だけは知ってしまう。

この少女が――
封魔刻印すら容易に破壊できる規格外だということを。

馬車が森を抜け始めると、
ルーチェは窓の外を眺めた。

「追放って言われても……
むしろ生活しやすくなる気がするんだけど」

呆れたような、嬉しいような、複雑な笑み。

「魔法免許永久禁止?
あれ、普通の魔法師なら人生終了なんでしょうけど……」

ひょい、と肩をすくめる。

「そもそも私、魔法を“習ったこと”がないから、
免許いらないのよね」

魔法を学ばず、
魔法の基礎すら知らず、
自然と最強の魔力を操る――
そんな人間が存在すると、誰が思うだろう。

ルーチェは、少しだけ目を閉じた。

(王都のみんな、しばらくは平和になるわよね。
私が魔獣を倒したって気づかないまま……)

静かに笑う。

馬車が揺れ、進む。

これが、ルーチェの“追放ライフ”の始まりだった。
自由で、静かで、少し退屈で――
でも彼女にとっては、これ以上なく心地よい旅路。

(さて、どこで静かに暮らしましょうか)

彼女の無自覚な最強ぶりに気づく者は、まだいない。

そしてこのとき王国では、
第二の大災厄が、ゆっくりと迫っていた。


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