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第7話 襲い来る魔獣、しかし魔法は封じられ
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追放馬車は王国境へ向かう途中、峠の村に立ち寄った。
山間にある小さな集落で、旅人の休憩地点にもなっている。
「ここで少し休むから、勝手にどこか行くなよ」
護衛騎士のぶっきらぼうな声に、
ルーチェは素直にうなずく。
「はい。おとなしくしてますわ」
(……まあ、私が暴れたところで魔法封じられてる設定ですし)
軽く肩をすくめながら、
ルーチェは村の井戸のそばに腰を下ろした。
空気は澄み、鳥のさえずりが聞こえる。
険悪な王都とは違い、静かで穏やかな場所だ。
(いいわね、この辺で暮らすのもアリかも……)
そう考えていた――その瞬間。
地面が震えた。
ズズンッ!!
「な、なに!?」
「魔獣だ! 魔獣が出たぞ!!」
村の警鐘が鳴り響き、
住民たちは一斉に悲鳴を上げて走り出した。
「魔獣……?」
ルーチェが顔を上げると、
森の奥から人間の三倍はあろうかという巨体が姿を現す。
黒毛に覆われた獣。
牛と狼を合わせたような角と牙。
見るからに凶暴で、魔力も異常に濃い。
(……あれ、封魔刻印されてないと一瞬で焼き払えるのに)
馬車の騎士たちも慌てて構える。
「クソッ、こんなところで魔獣かよ!」
「いいかルーチェ、お前は動くなよ! 非戦闘員なんだから!」
「そこから絶対離れるな!」
(いや、離れないけど……
あなたたちがそのまま突っ込むほうが危ないのでは?)
ルーチェは、冷静すぎる視線で騎士たちと魔獣を見比べた。
魔獣は、村人の逃げる方向へ猛然と突進した。
「きゃああああ!!」
「子どもが取り残された!!」
小さな少女が転んで泣き叫んでいる。
(……ああ、あれは危ないわね)
ルーチェは立ち上がりかけ――
ぴたりと動きを止めた。
(……そうだった。“魔法行使禁止中”だった)
どこか残念そうに、しかし淡々と。
「非戦闘員のふりをしないといけませんわね」
少女のすぐそばまで魔獣が迫り、
鋭い牙が光る。
騎士が叫ぶ。
「まずい!! 間に合わない!!」
その瞬間。
――バシュッ!!
風を裂く音と共に、魔獣の動きが完全に止まった。
巨大な影が後方へ吹き飛ばされ、
地面を転がり森の中へ叩きつけられる。
「え……?」
「なにが起きたんだ……?」
住民も騎士も呆然。
ルーチェはただ、目を細めた。
(……今の魔力の圧。人間じゃないわね)
森の入口に、青い外套を纏った人物が立っていた。
銀髪が光を反射し、鋭い青の瞳が獣を見据える。
「魔獣の討伐に来た者だ。
怪我人は?」
低く落ち着いた声。
周囲がざわめく。
「隣国グレイシアの……騎士団?」
「なんでこんな所に……!」
ルーチェは静かに息を吐いた。
(……もう来たのね。早いわ)
その銀髪の騎士は、ゆっくりこちらへ視線を向けた。
そして、ほんの一瞬だけ、驚いたように目を見開いた。
「……君から、異常な魔力の残滓がする」
ルーチェはにこりと微笑んだ。
「わたくし、無資格の非戦闘員ですので。
魔力なんて、あるはずありませんわ」
たおやかに、丁寧に。
だが騎士は確信めいた声で続ける。
「いや……隠す気がないほど強烈だ。
君は一体、何者なんだ?」
(バレてる……!? いや、でも封魔刻印されてるから国内じゃ使えないのよね?
なのに感知されるって……この人、どれだけ強いの?)
ルーチェは戸惑うふりをしつつ、
内心では少し楽しそうだった。
こうして――
最強無資格少女と、隣国の“本物”の騎士団との出会いが始まった。
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山間にある小さな集落で、旅人の休憩地点にもなっている。
「ここで少し休むから、勝手にどこか行くなよ」
護衛騎士のぶっきらぼうな声に、
ルーチェは素直にうなずく。
「はい。おとなしくしてますわ」
(……まあ、私が暴れたところで魔法封じられてる設定ですし)
軽く肩をすくめながら、
ルーチェは村の井戸のそばに腰を下ろした。
空気は澄み、鳥のさえずりが聞こえる。
険悪な王都とは違い、静かで穏やかな場所だ。
(いいわね、この辺で暮らすのもアリかも……)
そう考えていた――その瞬間。
地面が震えた。
ズズンッ!!
「な、なに!?」
「魔獣だ! 魔獣が出たぞ!!」
村の警鐘が鳴り響き、
住民たちは一斉に悲鳴を上げて走り出した。
「魔獣……?」
ルーチェが顔を上げると、
森の奥から人間の三倍はあろうかという巨体が姿を現す。
黒毛に覆われた獣。
牛と狼を合わせたような角と牙。
見るからに凶暴で、魔力も異常に濃い。
(……あれ、封魔刻印されてないと一瞬で焼き払えるのに)
馬車の騎士たちも慌てて構える。
「クソッ、こんなところで魔獣かよ!」
「いいかルーチェ、お前は動くなよ! 非戦闘員なんだから!」
「そこから絶対離れるな!」
(いや、離れないけど……
あなたたちがそのまま突っ込むほうが危ないのでは?)
ルーチェは、冷静すぎる視線で騎士たちと魔獣を見比べた。
魔獣は、村人の逃げる方向へ猛然と突進した。
「きゃああああ!!」
「子どもが取り残された!!」
小さな少女が転んで泣き叫んでいる。
(……ああ、あれは危ないわね)
ルーチェは立ち上がりかけ――
ぴたりと動きを止めた。
(……そうだった。“魔法行使禁止中”だった)
どこか残念そうに、しかし淡々と。
「非戦闘員のふりをしないといけませんわね」
少女のすぐそばまで魔獣が迫り、
鋭い牙が光る。
騎士が叫ぶ。
「まずい!! 間に合わない!!」
その瞬間。
――バシュッ!!
風を裂く音と共に、魔獣の動きが完全に止まった。
巨大な影が後方へ吹き飛ばされ、
地面を転がり森の中へ叩きつけられる。
「え……?」
「なにが起きたんだ……?」
住民も騎士も呆然。
ルーチェはただ、目を細めた。
(……今の魔力の圧。人間じゃないわね)
森の入口に、青い外套を纏った人物が立っていた。
銀髪が光を反射し、鋭い青の瞳が獣を見据える。
「魔獣の討伐に来た者だ。
怪我人は?」
低く落ち着いた声。
周囲がざわめく。
「隣国グレイシアの……騎士団?」
「なんでこんな所に……!」
ルーチェは静かに息を吐いた。
(……もう来たのね。早いわ)
その銀髪の騎士は、ゆっくりこちらへ視線を向けた。
そして、ほんの一瞬だけ、驚いたように目を見開いた。
「……君から、異常な魔力の残滓がする」
ルーチェはにこりと微笑んだ。
「わたくし、無資格の非戦闘員ですので。
魔力なんて、あるはずありませんわ」
たおやかに、丁寧に。
だが騎士は確信めいた声で続ける。
「いや……隠す気がないほど強烈だ。
君は一体、何者なんだ?」
(バレてる……!? いや、でも封魔刻印されてるから国内じゃ使えないのよね?
なのに感知されるって……この人、どれだけ強いの?)
ルーチェは戸惑うふりをしつつ、
内心では少し楽しそうだった。
こうして――
最強無資格少女と、隣国の“本物”の騎士団との出会いが始まった。
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