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第15話 王国の混乱、責任転嫁の始まり
しおりを挟むルーチェが追放されてから、王国では異常な事態が続いていた。
王都周辺の森で、低級魔獣の出現数が急増。
辺境からの報告には、討伐隊が引き返したことすら記されている。
「またか!? 一週間で五度目だぞ!」
「魔獣の発生源が分からないんです!」
「魔法師団は何をしている!?」
「全滅……ではありませんが、戦力は大幅に落ちています……」
「落ちている原因は!?」
「……ルーチェ殿の“例の大魔獣討伐”で、優秀な魔法師が大半、
恐怖で辞めてしまいまして……」
「なにぃ!? あれは王太子殿下の采配だったのだろうが!」
「……いえ、民は“ルーチェ殿が倒した”と……」
「なぜだ!! なぜ皆、私の働きを評価せん!!?」
王太子レグレンの怒声が執務室に響き渡る。
しかしその声に怯える家臣たちは、誰も目を合わせない。
「せ、殿下……問題は魔獣の増加でして……」
「魔獣など放っておけ!
それよりも重要なのは──」
レグレンは机を平手で叩いた。
「ルーチェだ!!」
「は、はぁ!?」
「ルーチェが王国の結界を乱し、魔獣が溢れているに違いない!!
そもそも追放に逆恨みして、呪いでもかけたのだ!!」
「……殿下、彼女は追放直後、馬車で国境に向かっただけで……」
「黙れ! 全てはあの女のせいだ!!」
(※この国のトップ、完全に逆恨みである)
さらに家臣が怯えた声で続けた。
「しかし……“魔法行使禁止魔法”が付与された者が、
結界を乱すような力を出せるわけが……」
「え? そ、そうなのか?」
「はい……。王国の法で定められた封印魔法なので……」
「……」
王太子は固まった。
──が、次の瞬間。
「そもそも! 封印魔法を解除すればよいのだ!!
そうすれば戻って魔獣を倒させられる!!」
「えっ……えっ? しかし……」
「解除方法はどうなっている!?」
「……王家にも記録がなく……
解除方法は“開発した魔法師しか知らない”と……」
「その魔法師はどこにいる!!?」
「……先日の魔獣戦の混乱で行方不明に……」
「役に立たん!!」
王太子は、完全に八方塞がりになった。
* * *
王都の街では、国民の不安が膨らみつつあった。
「最近魔獣多くない?」
「魔法師団、ほとんど辞めたらしいよ?」
「ルーチェ様を追放したからだろ……」
「殿下が無能なんじゃ……?」
王太子の耳にも噂は届いていた。
「わ、私が無能だと!? 許せん……!」
怒りのまま、王太子は叫んだ。
「至急、隣国フロストリアへ使者を送れ!!
“ルーチェを返せ”と!
それと、解除方法も教えさせろ!!」
「は、ははっ!!」
「もちろん、“協力願い”ではない。“王命”として伝えるのだ!!」
(隣国に通用すると思っているあたりが、もうダメである)
こうして王国の混乱は、
責任転嫁という最悪の方向へ加速していくのだった。
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