無資格魔法使いが最強すぎる件 ―資格ってなんですか? 強いのでそんな資格いりません―

しおしお

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第23話 独り言の真相

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王国使者たちが去ったあと――
館の中には、嵐の後のような静けさが訪れていた。

緊張で張り詰めていた空気がようやく緩み、
騎士や侍女たちは安堵の息をもらしている。

ルーチェはというと、
ひとり窓辺に立って外の光を眺めていた。

ほんの少し肩を落とし、
小さなため息を漏らす。

「……つかれましたわ」

誰もいないと思っての、素の声だった。

アークト公爵は別室で書類に目を通しており、
騎士たちも下がっている。

ルーチェは静かな空間に甘えるように、
ぽつりと呟き始めた。


---

◆読者だけが知る真実

「“魔法行使禁止魔法”……」

指先に意識を向けると、
王国が刻んだ禁呪がじんわり反応する。

まるで鎖のように魔力を縛る不快な感覚。

「解除は……やっぱりできませんわね。
 あれ、たぶん“解除コード”が王宮のどこかにあるのですもの」

淡々と分析している。

しかし――

「でも、壊すことならできますのよね……これ」

軽く手を握ると、
禁呪がビリ、と怒ったように震えた。

「ふふ、反応が可愛いこと」

ルーチェはくすりと笑って続ける。

「壊すくらい簡単ですけど……
 壊したら、また王国に戻らなきゃいけなくなりますもの」

そして、微妙な顔になる。

「戻ったら……またあの王太子に絡まれるでしょう?
 “資格がないからダメ”とか、
 “国のために働け”とか……
 もう、こりごりですわ」

窓の外の青空を見つめて、
ルーチェは柔らかく笑う。

「だから……このままでいいんですの。
 壊さないほうが、わたくしは自由ですもの」

淡々と語る声は、
決して他人には聞かせない本心だった。

“本当は封印を破れる”

この事実を知るのは――
まだ読者だけ。


---

◆静かな幸福

ルーチェは椅子に腰を下ろし、
足もとに集まってくる小さな魔獣(隣国ではペット扱い)の頭を撫でた。

「ここは……居心地がよすぎますわ。
 追放って……案外いいものでしたのね」

その頬は、心からほころんでいた。

王国の混乱も、
王太子の絶望も、
国民の暴動寸前の叫びも――

この平穏な部屋には一切届かない。


---

◆その独り言を聞いていた影

しかし――

部屋の外、
廊下の角にひっそりと気配があった。

アークト公爵だ。

彼は書類の整理を終え、
たまたま戻ってきたとき、
ふと彼女の言葉の一部を聞いてしまったのだ。

「……壊すことなら、できますけどね」

その瞬間、彼の蒼い瞳は静かに細められた。

(やはり……想像以上の存在だな、彼女は)

音を立てずに立ち去りながら、
微笑みが深まる。

(この国は、宝を手に入れた)

ルーチェは気づかない。

彼女の独白は――
公爵の想いを、さらに強くしていた。


---
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