無資格魔法使いが最強すぎる件 ―資格ってなんですか? 強いのでそんな資格いりません―

しおしお

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第24話 公爵、密かに聞いていた

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ルーチェの独り言が続いていた応接室――
その扉の前を、すっと影が横切った。

アークト公爵である。

書類整理を終えて部屋に戻ってきたところ、
ふと中から微かな声が漏れ聞こえたのだ。

「……壊すことならできますけどね」

その一言に、公爵の足が止まった。

扉の向こうでは、ルーチェがのんびりとした声で呟き続けている。

「でも、壊したらまた王国に戻らなきゃいけなくなりますもの。
 追放されて、やっと静かな生活が手に入ったのに……戻るなんて、考えられませんわ」

アークトは、静かに目を細めた。

彼は確信した。
ルーチェは、王国が理解できないほどの存在だと。


---

◆ 扉の外で立ち尽くす公爵

(……禁止魔法を壊せる?)

普通なら解除法の研究に数十年かかる禁呪だ。
扱える者さえ限られている。

それを、“壊せる”と軽い調子で言ってのけた少女。

(本当に……なんという宝を捨てたのだ、王国は)

怒りではない。
呆れでもない。

ただ――
心からの驚嘆だった。

そして、ほんの少しの愛しさが混じっていた。


---

◆ 公爵、静かに扉を開ける

アークトは扉をノックせずに静かに押し開けた。

ルーチェは窓辺の椅子に座り、
膝に魔獣(モフモフの小動物)を抱きながらぼんやりしていた。

「……あら、公爵様? いつからそこに?」

「今、戻ったところだ」

それだけ言うと、彼は彼女の正面に腰を下ろす。

ルーチェは首をかしげる。

「そんなに真剣なお顔をして、どうされましたの?」

アークトはしばらく彼女を見つめ、

そして――
ゆっくりと微笑んだ。


---

◆ 公爵の深い微笑み

「君は……想像以上の方だ、ルーチェ」

「は、はぁ?」

「王国は、本当にとんでもない失策をしたな。
 君のような宝を手放すなど」

ルーチェはぽかんとした。

「た、宝だなんて……わたくしはただの無資格魔法使いですのに」

アークトは静かに首を振った。

「世界には“資格”よりも価値ある才能がある。
 君はその証明だ」

ルーチェは一瞬言葉を失い、
耳まで赤くなる。

「そ、そんな……。
 公爵様、褒めすぎですわ……」

アークトは立ち上げ、
彼女の手を取るでもなく、
ただ柔らかい声で告げた。

「ルーチェ。
 君はこの国で自由に生きていい。
 王国に戻る必要は一切ない。
 ここでは……君を誰も縛らない」

その言葉は、
ルーチェの胸の奥の不安をとかすように響いた。

彼女は小さく微笑む。

「……ありがとうございます、公爵様」


---

◆ 扉の外で、騎士たちがひそひそ

廊下の角では、ふたりの騎士が聞き耳を立てていた。

「公爵様……めずらしく優しい声してたな」

「完全に……あれ、惚れてるだろ?」

「しっ! 聞こえる!」

騎士たちは慌てて散り散りに逃げる。

アークトは気づいていないふりをして、
再びルーチェを見つめた。

その瞳は――
氷のように冷静でありながら、
どこか温かい光を宿していた。


--
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