無資格魔法使いが最強すぎる件 ―資格ってなんですか? 強いのでそんな資格いりません―

しおしお

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第28話 古代魔法継承者の片鱗

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破砕された禁呪の残滓が消えた後――
大広間は言葉にならない静寂に包まれていた。

ルーチェは自分の胸を軽く押さえ、
自由になった魔力を確かめるようにゆっくり息をつく。

「……ふぅ。やっぱり、自由って素晴らしいものですわね」

その何気ない一言に、
周囲の者たちは総崩れした。

「じ、自由ってレベルじゃねえ……」

「禁呪を……素手で……」

「この子、神の御使いか……?」

騎士たちの声は震えていた。


---

◆ 魔導士団長の土下座レベルの衝撃

魔導士団長は完全に腰を抜かし、
床に手をつきながら、震える声で呟いた。

「……間違いない。彼女は……古代魔法の系譜……」

「古代魔法……?」

騎士団長が眉をひそめる。

魔導士団長は狂気じみた興奮で続けた。

「魔法免許制度が成立する 千年以上前 に存在したと言われる、“始源の魔法使い”たち……
 その血筋、もしくはその魂を継ぐ者……!」

「そ、そんな神話みたいな……」

「だが現実を見ろ!
 禁呪破砕、魔力の波動、空間の揺らぎ……
 すべてが古代魔力特有の現象だ!!」

魔導士団員たちは一斉に膝をついた。

「ルーチェ様……!」

「聖女か……いや、それ以上……!」


---

◆ ルーチェの困惑

ルーチェは思わず手を振る。

「ちょ、ちょっと待ってくださいませ!
 わたくし、そんな大それた者じゃありませんわ!
 ……ただ無資格なだけで」

その瞬間、全員が固まった。

「無資格どころか……資格制度の想定外なんだよ!?」

「資格制度側が無資格だわ!!」

「逆に君のほうが格上だぞ!!」

騎士たちのツッコミに、
ルーチェはさらに困惑する。

「そんな……わたくしは普通の魔法使いですのに……」

アークト公爵がすっと歩み寄り、
彼女の肩に軽く手を置いた。

「普通、という言葉の意味が君の中だけ別物になっていないか?」

「そ、そんなことありませんわ!」

「禁呪破壊を“ちょっとした作業”と言ってのける者を、普通とは呼ばない」

ルーチェはむぅっと頬をふくらませた。

それを見た騎士たちは
(あれ……かわいい……)
と揃って胸を撃ち抜かれる。


---

◆ 公爵の一言で空気が変わる

アークトは静かに周囲を見渡した。

「騎士団、魔導士団。
 彼女を“神格化”するな」

皆がハッとする。

「ルーチェは……ただの少女だ。
 だが世界を救えるほど強い。
 その二つを混同するな」

深く、静かに告げたその言葉に、
館の空気が一気に整えられる。

余計な幻想ではなく――
尊敬と敬意だけが残った。

ルーチェは小さく呟く。

「公爵様……」

アークトは穏やかな目で微笑んだ。

「君が君である限り、それでいい」


---

◆ 世界が震える前兆

広間の窓が風で揺れる。

外から、巨大な魔力のうねりが近づいていた。

「破級魔獣です!!」

「王国側から流れてきている個体が、こちらへ接近中!!」

騎士たちが一斉に武器を構える。

ルーチェはゆっくりと振り返り、
その小さな手を、軽く前へ伸ばした。

「大丈夫ですわ。
 もう鎖はありませんもの」

彼女の足元から、
金色の古代魔力が静かに溢れ出した。

アークトはその姿を見つめながら、
確信を深めていた。

(……彼女こそ、この世界を導く光だ)

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