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第1章「婚約破棄と追放」
1−1 ちいさな令嬢の婚約破棄
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第1章 婚約破棄と追放
1-1 ちいさな令嬢の婚約破棄
王都の大広間は、きらきら光るシャンデリアでいっぱいでした。
たくさんの貴族のおとなたちが、笑ったり、ワインを飲んだりしながら楽しそうに話しています。
わたし――リリアナ・フォン・ローゼリアは、その中でいちばん小さな女の子でした。
だって、わたし、まだ八さいなんですもの。
今日は王子さまとのお披露目の会。
みんなが言いました。「まあ、かわいらしい婚約者だこと!」
それなのに……。
「リリアナ、今日で君との婚約を破棄する。」
突然、王子さま――アーノルド殿下がそう言ったのです。
音楽が止まりました。みんなの目が、わたしに集まります。
心臓が“どくん”と音を立てて、息がつまってしまいました。
「え……?」
わたしの声は小さすぎて、だれにも聞こえなかったと思います。
でも王子さまは、聞こえたふうでもなく、堂々と続けました。
「僕はもう、子どもの遊びのような婚約にはうんざりなんだ。
リリアナはまだ八さい。おしゃべりもまともにできない。
こんな幼い子と結婚なんて、ありえないだろう?」
ざわざわ……。
会場中が騒めきました。
「まあ、王子殿下もごもっともね」「確かに子どもすぎるわ」
大人たちの声が、まるで氷の針みたいにわたしの胸に刺さりました。
わたしは、ちゃんとお勉強だってしてました。
お花の飾り方も、ティーカップの持ち方も、ダンスだってがんばったのに……。
それでも“まだ子ども”って言われるの?
心の中でぐるぐる考えて、頭の中が真っ白になりました。
それでも、泣くのはいやでした。
だって、泣いたら“負けた”気がしますの。
だから、胸を張って、にっこり笑って言いました。
「そうですのね。……でしたら、どうぞ、おしあわせに。」
大広間がしんと静まりかえりました。
みんなが目を丸くして、まるで“変なもの”を見るようにわたしを見ています。
でも、かまいません。
わたしは、これ以上泣くくらいなら、笑っていたいのです。
ほんとうは、手が震えていました。
足もがくがくして、ドレスのすそが少しずつ揺れました。
でもわたしは、王子さまの前で背筋をぴんとのばして頭を下げ、
くるりと背を向けて歩き出しました。
……その時です。
会場のすみの方から、ひそひそ声が聞こえました。
「やっぱり、継母に似てないわね」「先妻の娘だしね」
そんなこと、聞きたくなかった。
胸の奥がちくっと痛くて、でも顔だけは笑っていたかった。
父さまの顔をちらりと見ました。
けれど父さまは何も言わず、ただ目をそらしました。
母さまはもういません。
そして今、わたしを抱きしめてくれる人も、だれもいません。
大広間の扉の前で、振り返らずに心の中で言いました。
――さようなら、王子さま。
――さようなら、昔のわたし。
外に出ると、夜風がひやっと肌をなでました。
泣きそうな顔をぐっとこらえて、わたしはお城の階段をおりました。
ドレスのすそをふんで転びそうになったけど、泣きません。
泣いたら、ほんとうに終わっちゃう気がしたから。
屋敷に帰ると、継母さまが待っていました。
金色の髪をゆるくまとめて、冷たい笑みを浮かべています。
「婚約破棄された娘なんて、この家の恥よ。
みっともないから、明日の朝までに出ていきなさい。」
「え……? どこへ、ですの?」
「どこでもいいわ。森の外れでも行ってなさい。」
「まってください、継母さま。 わたし、まだ――」
「言い訳は聞きません。あなたは王家に恥をかかせたの。
食事も部屋も、もういらないでしょう?」
胸がぎゅっと痛くなりました。
何も悪いことしていないのに、どうしてこんなことを言われるのか分かりませんでした。
でも、泣いたら“負け”です。だから、わたしは小さく頭を下げました。
「……はい。お世話になりましたの。」
その夜、わたしはひとりで荷物をまとめました。
といっても、もっていけるのは小さな人形とハンカチ、それにお母さまの形見のリボンだけ。
小さなカゴに入れて、窓の外の月を見上げます。
お母さま……。
もし空の上で見ているなら、どうか怒らないでください。
わたし、泣かないようにがんばりますの。
そして翌朝、まだ夜明け前の冷たい空気の中、
わたしは屋敷の門をくぐりました。
門番さんも、わたしに目を向けようとしません。
それでも、わたしは小さな足で一歩一歩、森へと歩き出しました。
風がつめたくて、木々がざわざわと鳴っています。
でも、怖くても――泣かない。
お母さまとの約束だから。
> 「こんなので まけない。がんばって……さばいばるするぞー!」
わたしの声が、森にこだましました。
泣き声じゃなくて、いちばんつよい“はじめのことば”。
こうして――ちいさな令嬢の、さばいばる生活がはじまったのです。
1-1 ちいさな令嬢の婚約破棄
王都の大広間は、きらきら光るシャンデリアでいっぱいでした。
たくさんの貴族のおとなたちが、笑ったり、ワインを飲んだりしながら楽しそうに話しています。
わたし――リリアナ・フォン・ローゼリアは、その中でいちばん小さな女の子でした。
だって、わたし、まだ八さいなんですもの。
今日は王子さまとのお披露目の会。
みんなが言いました。「まあ、かわいらしい婚約者だこと!」
それなのに……。
「リリアナ、今日で君との婚約を破棄する。」
突然、王子さま――アーノルド殿下がそう言ったのです。
音楽が止まりました。みんなの目が、わたしに集まります。
心臓が“どくん”と音を立てて、息がつまってしまいました。
「え……?」
わたしの声は小さすぎて、だれにも聞こえなかったと思います。
でも王子さまは、聞こえたふうでもなく、堂々と続けました。
「僕はもう、子どもの遊びのような婚約にはうんざりなんだ。
リリアナはまだ八さい。おしゃべりもまともにできない。
こんな幼い子と結婚なんて、ありえないだろう?」
ざわざわ……。
会場中が騒めきました。
「まあ、王子殿下もごもっともね」「確かに子どもすぎるわ」
大人たちの声が、まるで氷の針みたいにわたしの胸に刺さりました。
わたしは、ちゃんとお勉強だってしてました。
お花の飾り方も、ティーカップの持ち方も、ダンスだってがんばったのに……。
それでも“まだ子ども”って言われるの?
心の中でぐるぐる考えて、頭の中が真っ白になりました。
それでも、泣くのはいやでした。
だって、泣いたら“負けた”気がしますの。
だから、胸を張って、にっこり笑って言いました。
「そうですのね。……でしたら、どうぞ、おしあわせに。」
大広間がしんと静まりかえりました。
みんなが目を丸くして、まるで“変なもの”を見るようにわたしを見ています。
でも、かまいません。
わたしは、これ以上泣くくらいなら、笑っていたいのです。
ほんとうは、手が震えていました。
足もがくがくして、ドレスのすそが少しずつ揺れました。
でもわたしは、王子さまの前で背筋をぴんとのばして頭を下げ、
くるりと背を向けて歩き出しました。
……その時です。
会場のすみの方から、ひそひそ声が聞こえました。
「やっぱり、継母に似てないわね」「先妻の娘だしね」
そんなこと、聞きたくなかった。
胸の奥がちくっと痛くて、でも顔だけは笑っていたかった。
父さまの顔をちらりと見ました。
けれど父さまは何も言わず、ただ目をそらしました。
母さまはもういません。
そして今、わたしを抱きしめてくれる人も、だれもいません。
大広間の扉の前で、振り返らずに心の中で言いました。
――さようなら、王子さま。
――さようなら、昔のわたし。
外に出ると、夜風がひやっと肌をなでました。
泣きそうな顔をぐっとこらえて、わたしはお城の階段をおりました。
ドレスのすそをふんで転びそうになったけど、泣きません。
泣いたら、ほんとうに終わっちゃう気がしたから。
屋敷に帰ると、継母さまが待っていました。
金色の髪をゆるくまとめて、冷たい笑みを浮かべています。
「婚約破棄された娘なんて、この家の恥よ。
みっともないから、明日の朝までに出ていきなさい。」
「え……? どこへ、ですの?」
「どこでもいいわ。森の外れでも行ってなさい。」
「まってください、継母さま。 わたし、まだ――」
「言い訳は聞きません。あなたは王家に恥をかかせたの。
食事も部屋も、もういらないでしょう?」
胸がぎゅっと痛くなりました。
何も悪いことしていないのに、どうしてこんなことを言われるのか分かりませんでした。
でも、泣いたら“負け”です。だから、わたしは小さく頭を下げました。
「……はい。お世話になりましたの。」
その夜、わたしはひとりで荷物をまとめました。
といっても、もっていけるのは小さな人形とハンカチ、それにお母さまの形見のリボンだけ。
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お母さま……。
もし空の上で見ているなら、どうか怒らないでください。
わたし、泣かないようにがんばりますの。
そして翌朝、まだ夜明け前の冷たい空気の中、
わたしは屋敷の門をくぐりました。
門番さんも、わたしに目を向けようとしません。
それでも、わたしは小さな足で一歩一歩、森へと歩き出しました。
風がつめたくて、木々がざわざわと鳴っています。
でも、怖くても――泣かない。
お母さまとの約束だから。
> 「こんなので まけない。がんばって……さばいばるするぞー!」
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