私は悪女らしいので、婚約者のうつけ王子を操り──私を売った父と母国に復讐します

しおしお

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第16話 悪女令嬢、腐敗貴族を処刑台へ誘う「殿下、まずはこの小物からですわ」

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第16話 悪女令嬢、腐敗貴族を処刑台へ誘う「殿下、まずはこの小物からですわ」

王都ベルリッタの空気は、少しずつ変わり始めていた。

理由は一つ。

――“うつけ王子ドンファム”が、最近妙にまともになっている。

「王子が……書類に向かってるだと……?」
「しかも連日……!」
「これは……雪でも降るのでは?」

そんな噂が王宮に広まる中、今日もマジョリーカは容赦なく王子の部屋に入っていく。

「殿下、改革の準備はできまして?」

「もちろんだよ、マジョリーカ!」

すっかり姿勢まで良くなった王子が、胸を張る。

だが次の瞬間──

「では、これを」

彼女が机にドンと置いたのは、特定の貴族の不正をまとめた極秘書類の束だった。

「うっ……またこれ……」

「当然ですわ。腐敗の元凶は、まず“小物”から叩きますの」

マジョリーカの指が資料の一点を示した。

「最初の標的は──“マルド男爵”ですわ」

「マルド……? そんなに偉くもないけど……悪い噂は多いよね」

「税の中抜き、農民への過剰徴税、王子に贈り物攻勢……さらに裏で私たちエリルフィン公爵家に媚びておりますの」

ドンファムは息を呑む。

「じゃあ、マルド男爵を罰するの?」

「ええ。殿下自ら“公的に”です」

マジョリーカの声は冷たかった。

「これは正義のため。そして……殿下の威光を王国中に知らしめるため」

「わかった……!」

マジョリーカは満足げに微笑むと、王子に一枚の紙を渡した。

「では、殿下。“初めての処理”ですわ」

「処理って……言い方が怖いよ……」

「腐った肉は切り落とさねば感染しますわよ?」

その一言に、侍従たちの背筋が総立ちになった。



その日の午後、王宮に呼び出されたマルド男爵は、余裕の笑みを浮かべていた。

「いやあ殿下! 本日はどのような──」

「マルド男爵。あなたの不正を確認した」

ドンファムの声は、静かにして鋭かった。

男爵はぎょっとした。

「な、なにを……殿下は冗談を……!」

「冗談ではない!」

王子が書類を突きつけると、男爵の顔色が一気に崩れる。

「中抜き、虚偽報告、農民への違法徴税……これらすべて、王国法に照らして有罪だ」

「ま、待ってください殿下! これは誤解で──」

「誤解ではありませんわ」

背後から静かに歩み出たマジョリーカ。

男爵の顔がさらに青ざめる。

「マジョリーカ様……!?」

「あなたのやっていたことなど、調べるまでもありませんわ。
 “自分で口を滑らせていましたわよね?”」

「っ……!」

マルド男爵は観念した。

そして次の瞬間──

「マルド男爵。あなたを本日付で……すべての役職から罷免する!」

ドンファム王子の宣言に、侍従たちは息を呑んだ。

王子が、はっきりと人を裁いたのだ。

これまででは考えられなかったことだ。

男爵は引きずられ、王宮から追放された。

静寂が広がる。

そして──

「……殿下、立派でしたわ」

マジョリーカが、ほんの少しだけ微笑んだ。

「マジョリーカが教えてくれたからだよ」

「いえ。決断したのは殿下ですわ」

王子は耳まで赤くなる。

その様子にマジョリーカは心の中でため息をつく。

(……まったく、殿下は純情すぎますわ)

(これでは、侵略計画が完成する前に惚れられてしまいそうですわね)

彼女の頬に、ふと悪女らしい笑みが浮かんだ。

「では殿下──次は“中物”の番ですわよ」

「ち、中物……?」

「ええ。王国を変えるのは、これからが本番ですもの」

ベルリッタの改革は、まだほんの“序章”にすぎなかった。


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