私は悪女らしいので、婚約者のうつけ王子を操り──私を売った父と母国に復讐します

しおしお

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第17話 悪女令嬢、次なる標的を選ぶ「この腐敗は根が深いですわ」

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第17話 悪女令嬢、次なる標的を選ぶ「この腐敗は根が深いですわ」

マルド男爵の失脚は、王都ベルリッタ中に電撃のように走った。

「まさか、うつけ王子が貴族を罰した……?」
「しかもあのマルドを……!」
「最近の殿下、別人のようだ……」

宮廷内では騒然となり、王子への評価も“うつけ”から“謎の覚醒”へと変わっていく。

だが。

それを作り出している張本人──
アクノ・マジョリーカは、涼しい顔で紅茶を啜っていた。

「殿下、次の標的を決めますわよ」

ベルリッタ城の会議室。
王子、側近たち、そしてマジョリーカが円卓を囲んでいる。

「もう!? 早すぎない……?」

「腐敗は待ってくれませんわ。放置すれば拡大するだけです」

マジョリーカは自作の“腐敗マップ”を机に広げた。

そこには貴族家ごとの不正疑惑が、まるで戦略図のように整理されている。

「え、え、これ……君、いつの間にこんな……」

「常に情報は集めておりますもの。悪女の嗅覚とお考えくださいまし」

「そんな嗅覚あるの……?」

「ありますわ」

マジョリーカはさらりと言い切る。

そして、指先で“とある侯爵家”をコン、と叩いた。

「次は……“ザカル侯爵”ですわ」

側近たちが一斉に息を呑む。

「ザカル……!! 彼は近衛隊を牛耳っている古参貴族……!」
「相当手強いぞ……!」
「殿下に牙を剥く可能性も……!」

王子もさすがに顔が青くなる。

「ま、マジョリーカ……本当に彼を?」

「ええ。ここを放置すれば、いずれ王国の心臓部が腐りますわ」

そして、優雅な表情のまま恐ろしいことを口にする。

「それに……」

「それに?」

「この侯爵……殿下のことを“操りやすい阿呆”だと陰で言っておりましたわ」

王子の表情がピキッと固まる。

「な……なに……ッ!?」

「事実ですわよ?」

マジョリーカは微笑むが、その目は完全に怒っていた。

(殿下の悪口を言うとは……許しませんわ)

(殿下を侮辱していいのは、この私以外に誰もおりませんの)

「わかった。やる!! 絶対に許さない!!」

純粋に怒りを燃やす王子と、黒く燃えるマジョリーカ。

二人の方向性は違うが、行きつく結論はひとつだった。

「ザカル侯爵を倒す!」

「倒しましょう」

側近たちは震えた。

(この二人……妙な相性の良さだ……)



翌日、ザカル侯爵邸周辺では奇妙な動きがあった。

護衛の数が明らかに増え、屋敷の門は以前より重々しく閉ざされている。

「殿下、やはりザカルは不自然に警戒を強めています」

側近の報告に、王子は険しい顔になる。

「……僕たちの動きが漏れているのか?」

「いいえ」

マジョリーカが断言する。

「単に、やましいことが多すぎて、四六時中怯えているだけですわ」

「なるほど……」

マジョリーカは静かに笑う。

「殿下。明日、侯爵を招きましょう」

「招く……?」

「ええ。“殿下主催の親睦茶会”という名目で」

「茶会……?」

「そこで殿下が、はっきりと問いただすのです」

彼女は黒い微笑みを浮かべた。

「“王国に対して、何か隠していることはありませんか?”と」

側近たちの背筋が一斉に凍った。

(……これはもう、悪女の尋問だ……)

(ザカル侯爵、終わったな……)

だが王子は、ふつうに感心していた。

「マジョリーカ……本当に頭がいいね……」

「当然ですわ。私は悪女ですもの」

王子はその言葉を聞いて、胸がドキッとなった。

(悪女なのに……なんでこんなに綺麗なんだろう……)

本人はまったく気づいていない。

マジョリーカも気づいていない。

だが――
ベルリッタ王国中が、密かに感じ始めていた。

“あの二人、なんか噛み合ってる……”

こうして、王国最大の腐敗貴族ザカル侯爵を追い詰める“大茶会作戦”が静かに始まった。


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