17 / 39
第17話 悪女令嬢、次なる標的を選ぶ「この腐敗は根が深いですわ」
しおりを挟む
第17話 悪女令嬢、次なる標的を選ぶ「この腐敗は根が深いですわ」
マルド男爵の失脚は、王都ベルリッタ中に電撃のように走った。
「まさか、うつけ王子が貴族を罰した……?」
「しかもあのマルドを……!」
「最近の殿下、別人のようだ……」
宮廷内では騒然となり、王子への評価も“うつけ”から“謎の覚醒”へと変わっていく。
だが。
それを作り出している張本人──
アクノ・マジョリーカは、涼しい顔で紅茶を啜っていた。
「殿下、次の標的を決めますわよ」
ベルリッタ城の会議室。
王子、側近たち、そしてマジョリーカが円卓を囲んでいる。
「もう!? 早すぎない……?」
「腐敗は待ってくれませんわ。放置すれば拡大するだけです」
マジョリーカは自作の“腐敗マップ”を机に広げた。
そこには貴族家ごとの不正疑惑が、まるで戦略図のように整理されている。
「え、え、これ……君、いつの間にこんな……」
「常に情報は集めておりますもの。悪女の嗅覚とお考えくださいまし」
「そんな嗅覚あるの……?」
「ありますわ」
マジョリーカはさらりと言い切る。
そして、指先で“とある侯爵家”をコン、と叩いた。
「次は……“ザカル侯爵”ですわ」
側近たちが一斉に息を呑む。
「ザカル……!! 彼は近衛隊を牛耳っている古参貴族……!」
「相当手強いぞ……!」
「殿下に牙を剥く可能性も……!」
王子もさすがに顔が青くなる。
「ま、マジョリーカ……本当に彼を?」
「ええ。ここを放置すれば、いずれ王国の心臓部が腐りますわ」
そして、優雅な表情のまま恐ろしいことを口にする。
「それに……」
「それに?」
「この侯爵……殿下のことを“操りやすい阿呆”だと陰で言っておりましたわ」
王子の表情がピキッと固まる。
「な……なに……ッ!?」
「事実ですわよ?」
マジョリーカは微笑むが、その目は完全に怒っていた。
(殿下の悪口を言うとは……許しませんわ)
(殿下を侮辱していいのは、この私以外に誰もおりませんの)
「わかった。やる!! 絶対に許さない!!」
純粋に怒りを燃やす王子と、黒く燃えるマジョリーカ。
二人の方向性は違うが、行きつく結論はひとつだった。
「ザカル侯爵を倒す!」
「倒しましょう」
側近たちは震えた。
(この二人……妙な相性の良さだ……)
▼
翌日、ザカル侯爵邸周辺では奇妙な動きがあった。
護衛の数が明らかに増え、屋敷の門は以前より重々しく閉ざされている。
「殿下、やはりザカルは不自然に警戒を強めています」
側近の報告に、王子は険しい顔になる。
「……僕たちの動きが漏れているのか?」
「いいえ」
マジョリーカが断言する。
「単に、やましいことが多すぎて、四六時中怯えているだけですわ」
「なるほど……」
マジョリーカは静かに笑う。
「殿下。明日、侯爵を招きましょう」
「招く……?」
「ええ。“殿下主催の親睦茶会”という名目で」
「茶会……?」
「そこで殿下が、はっきりと問いただすのです」
彼女は黒い微笑みを浮かべた。
「“王国に対して、何か隠していることはありませんか?”と」
側近たちの背筋が一斉に凍った。
(……これはもう、悪女の尋問だ……)
(ザカル侯爵、終わったな……)
だが王子は、ふつうに感心していた。
「マジョリーカ……本当に頭がいいね……」
「当然ですわ。私は悪女ですもの」
王子はその言葉を聞いて、胸がドキッとなった。
(悪女なのに……なんでこんなに綺麗なんだろう……)
本人はまったく気づいていない。
マジョリーカも気づいていない。
だが――
ベルリッタ王国中が、密かに感じ始めていた。
“あの二人、なんか噛み合ってる……”
こうして、王国最大の腐敗貴族ザカル侯爵を追い詰める“大茶会作戦”が静かに始まった。
---
マルド男爵の失脚は、王都ベルリッタ中に電撃のように走った。
「まさか、うつけ王子が貴族を罰した……?」
「しかもあのマルドを……!」
「最近の殿下、別人のようだ……」
宮廷内では騒然となり、王子への評価も“うつけ”から“謎の覚醒”へと変わっていく。
だが。
それを作り出している張本人──
アクノ・マジョリーカは、涼しい顔で紅茶を啜っていた。
「殿下、次の標的を決めますわよ」
ベルリッタ城の会議室。
王子、側近たち、そしてマジョリーカが円卓を囲んでいる。
「もう!? 早すぎない……?」
「腐敗は待ってくれませんわ。放置すれば拡大するだけです」
マジョリーカは自作の“腐敗マップ”を机に広げた。
そこには貴族家ごとの不正疑惑が、まるで戦略図のように整理されている。
「え、え、これ……君、いつの間にこんな……」
「常に情報は集めておりますもの。悪女の嗅覚とお考えくださいまし」
「そんな嗅覚あるの……?」
「ありますわ」
マジョリーカはさらりと言い切る。
そして、指先で“とある侯爵家”をコン、と叩いた。
「次は……“ザカル侯爵”ですわ」
側近たちが一斉に息を呑む。
「ザカル……!! 彼は近衛隊を牛耳っている古参貴族……!」
「相当手強いぞ……!」
「殿下に牙を剥く可能性も……!」
王子もさすがに顔が青くなる。
「ま、マジョリーカ……本当に彼を?」
「ええ。ここを放置すれば、いずれ王国の心臓部が腐りますわ」
そして、優雅な表情のまま恐ろしいことを口にする。
「それに……」
「それに?」
「この侯爵……殿下のことを“操りやすい阿呆”だと陰で言っておりましたわ」
王子の表情がピキッと固まる。
「な……なに……ッ!?」
「事実ですわよ?」
マジョリーカは微笑むが、その目は完全に怒っていた。
(殿下の悪口を言うとは……許しませんわ)
(殿下を侮辱していいのは、この私以外に誰もおりませんの)
「わかった。やる!! 絶対に許さない!!」
純粋に怒りを燃やす王子と、黒く燃えるマジョリーカ。
二人の方向性は違うが、行きつく結論はひとつだった。
「ザカル侯爵を倒す!」
「倒しましょう」
側近たちは震えた。
(この二人……妙な相性の良さだ……)
▼
翌日、ザカル侯爵邸周辺では奇妙な動きがあった。
護衛の数が明らかに増え、屋敷の門は以前より重々しく閉ざされている。
「殿下、やはりザカルは不自然に警戒を強めています」
側近の報告に、王子は険しい顔になる。
「……僕たちの動きが漏れているのか?」
「いいえ」
マジョリーカが断言する。
「単に、やましいことが多すぎて、四六時中怯えているだけですわ」
「なるほど……」
マジョリーカは静かに笑う。
「殿下。明日、侯爵を招きましょう」
「招く……?」
「ええ。“殿下主催の親睦茶会”という名目で」
「茶会……?」
「そこで殿下が、はっきりと問いただすのです」
彼女は黒い微笑みを浮かべた。
「“王国に対して、何か隠していることはありませんか?”と」
側近たちの背筋が一斉に凍った。
(……これはもう、悪女の尋問だ……)
(ザカル侯爵、終わったな……)
だが王子は、ふつうに感心していた。
「マジョリーカ……本当に頭がいいね……」
「当然ですわ。私は悪女ですもの」
王子はその言葉を聞いて、胸がドキッとなった。
(悪女なのに……なんでこんなに綺麗なんだろう……)
本人はまったく気づいていない。
マジョリーカも気づいていない。
だが――
ベルリッタ王国中が、密かに感じ始めていた。
“あの二人、なんか噛み合ってる……”
こうして、王国最大の腐敗貴族ザカル侯爵を追い詰める“大茶会作戦”が静かに始まった。
---
0
あなたにおすすめの小説
不機嫌な侯爵様に、その献身は届かない
翠月 瑠々奈
恋愛
サルコベリア侯爵夫人は、夫の言動に違和感を覚え始める。
始めは夜会での振る舞いからだった。
それがさらに明らかになっていく。
機嫌が悪ければ、それを周りに隠さず察して動いてもらおうとし、愚痴を言ったら同調してもらおうとするのは、まるで子どものよう。
おまけに自分より格下だと思えば強気に出る。
そんな夫から、とある仕事を押し付けられたところ──?
出来損ないと呼ばれた公爵令嬢の結婚
奏千歌
恋愛
[できそこないと呼ばれても][魔王]
努力をしてきたつもりでした。
でもその結果が、私には学園に入学できるほどの学力がないというものでした。
できそこないと言われ、家から出ることを許されず、公爵家の家族としても認めてもらえず、使用人として働くことでしか、そこに私の居場所はありませんでした。
でも、それも、私が努力をすることができなかった結果で、悪いのは私のはずでした。
私が悪いのだと、何もかもを諦めていました。
諦めた果てに私に告げられたことは、魔法使いとの結婚でした。
田舎町に住む魔法使いさんは、どんな方なのか。
大きな不安を抱え、長い長い道のりを歩いて行きました。
婚約破棄?結構ですわ。公爵令嬢は今日も優雅に生きております
鍛高譚
恋愛
婚約破棄された直後、階段から転げ落ちて前世の記憶が蘇った公爵令嬢レイラ・フォン・アーデルハイド。
彼女の前世は、ブラック企業で心身をすり減らして働いていたOLだった。――けれど、今は違う!
「復讐? 見返す? そんな面倒くさいこと、やってられませんわ」
「婚約破棄? そんなの大したことじゃありません。むしろ、自由になって最高ですわ!」
貴族の婚姻は家同士の結びつき――つまりビジネス。恋愛感情など二の次なのだから、破談になったところで何のダメージもなし。
それよりも、レイラにはやりたいことがたくさんある。ぶどう園の品種改良、ワインの販路拡大、新商品の開発、そして優雅なティータイム!
そう、彼女はただ「貴族令嬢としての特権をフル活用して、人生を楽しむ」ことを決めたのだ。
ところが、彼女の自由気ままな行動が、なぜか周囲をざわつかせていく。
婚約破棄した王太子はなぜか複雑な顔をし、貴族たちは彼女の事業に注目し始める。
そして、彼女が手がけた最高級ワインはプレミア化し、ついには王室から直々に取引の申し出が……!?
「はぁ……復讐しないのに、勝手に“ざまぁ”になってしまいましたわ」
復讐も愛憎劇も不要!
ただひたすらに自分の幸せを追求するだけの公爵令嬢が、気づけば最強の貴族になっていた!?
優雅で自由気ままな貴族ライフ、ここに開幕!
幼馴染みの婚約者が「学生時代は愛する恋人と過ごさせてくれ」と言ってきたので、秒で婚約解消を宣言した令嬢の前世が、社畜のおっさんだった件。
灯乃
ファンタジー
子爵家の総領娘である令嬢の前に、巨乳美少女と腕を組んだ婚約者がやってきた。
曰く、「学生時代くらいは、心から愛する恋人と自由に過ごしたい。それくらい、黙って許容しろ」と。
婚約者を甘やかし過ぎていたことに気付いた彼女は、その場で婚約解消を宣言する。
前半はたぶん普通の令嬢もの、後半はおっさんコメディーです。
今さら遅いと言われる側になったのは、あなたです
有賀冬馬
恋愛
夜会で婚約破棄された私は、すべてを失った――はずだった。
けれど、人生は思いもよらない方向へ転がる。
助けた騎士は、王の右腕。
見下されてきた私の中にある価値を、彼だけが見抜いた。
王城で評価され、居場所を得ていく私。
その頃、私を捨てた元婚約者は、転落の一途をたどる。
「間違いだった」と言われても、もう心は揺れない。
選ばれるのを待つ時代は、終わった。
主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します
白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。
あなたは【真実の愛】を信じますか?
そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。
だって・・・そうでしょ?
ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!?
それだけではない。
何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!!
私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。
それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。
しかも!
ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!!
マジかーーーっ!!!
前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!!
思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。
世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。
『お前とは結婚できない』と婚約破棄されたので、隣国の王に嫁ぎます
ほーみ
恋愛
春の宮廷は、いつもより少しだけざわめいていた。
けれどその理由が、わたし——エリシア・リンドールの婚約破棄であることを、わたし自身が一番よく理解していた。
「エリシア、君とは結婚できない」
王太子ユリウス殿下のその一言は、まるで氷の刃のように冷たかった。
——ああ、この人は本当に言ってしまったのね。
すべてを失って捨てられましたが、聖絵師として輝きます!~どうぞ私のことは忘れてくださいね~
水川サキ
恋愛
家族にも婚約者にも捨てられた。
心のよりどころは絵だけ。
それなのに、利き手を壊され描けなくなった。
すべてを失った私は――
※他サイトに掲載
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる