私は悪女らしいので、婚約者のうつけ王子を操り──私を売った父と母国に復讐します

しおしお

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第18話 大茶会作戦開始「悪女の笑顔は逃げ道を塞ぐ」

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第18話 大茶会作戦開始「悪女の笑顔は逃げ道を塞ぐ」

翌日。
ベルリッタ城・白亜の大広間。

王国有数の名門が集う“レオン王子主催・親睦茶会”が開かれた。
表向きは和やかだが、貴族たちは皆理解していた。

(これは……尋問だ)
(殿下の動きが最近鋭い……誰が狙われている?)

視線があちこち揺れる中。
一人、落ち着きなく汗をかく男がいた。

ザカル侯爵。

その眉間には深い皺。
片手は震え、カップを持つ手にも力が入っている。

(なぜ呼ばれた……? なぜ私だけ、招待状に“重要案件あり”などと書かれて……?)

本人は気づいていない。
それを書き足したのはアクノ・マジョリーカである。



「ごきげんよう、ザカル侯爵」

突然、マジョリーカが背後から声をかけた。

ザカル侯爵は椅子ごと飛び上がる。

「ひ、ひぃっ!? な、なんだその……悪女令嬢……!」

「まあ、随分と失礼な呼び方ですわね。ですが構いませんわ」

マジョリーカはにこりと笑う。

その笑顔が、いっそ残酷だった。

「今日は殿下がお話ししたいことがあるそうですの。逃げずにいらしてくださいませ?」

「に、逃げるなど……!?」

「そう。逃げるはずがありませんわよね?」

ぐい、と肩に手を置き、微笑んだまま逃げ道を封じる。

「潔白ならば」

ザカル侯爵の顔が一瞬で蒼白になった。

(ご、誤魔化せんのか!? この悪女……!!)



やがて、茶会の中心へとレオン王子が歩み出る。

エリルフィン公爵令嬢──
アクノ・マジョリーカがその隣に立ち、静かに頷いた。

示し合わせたわけではないのに、息がぴたりと合う。

「皆、集まってくれてありがとう」

レオン王子の声に、視線が集まる。

そして王子は、ゆっくりとザカル侯爵へ向き直った。

「ザカル侯爵。あなたに伺いたい」

「ひ、ひぇ……?」

「王国に報告していない事柄はあるか?」

茶会の空気が、一瞬で凍り付く。

(出た!)
(ストレートに来た……!)
(ザカル……終わった……!!)

ザカル侯爵の額から、汗が滝のように流れ落ちる。

「な、な、なにも……っ!?」

マジョリーカが横から、優雅に畳みかけた。

「まあ。でしたら“王国軍の物資横流し”についても、潔白ということですわね?」

「!!?!」

ザカル侯爵は完全に固まった。

(な、なぜそれを……!?)

それを暴いたのはもちろんマジョリーカだ。
“悪女の嗅覚”である。

王子の指示ではない。
すべて、マジョリーカ自身が調べ上げた。

レオン王子も驚いていた。

(すごい……全部見抜いてる……)

マジョリーカはさらに追い打ちを掛ける。

「もちろん、“近衛隊への裏金”も無関係ですわね?」

「ぐふっ……!」

「“領地の虚偽報告”も?」

「ぅ゛……!」

貴族たちの視線が一斉にザカル侯爵へ集中する。

(あ、完全に詰んだ……)
(マジョリーカ様の前では誤魔化し不可能……)
(悪女というより……司法そのもの……)

ザカル侯爵は、ついに崩れ落ちた。

「…………ま、参りました……殿下……! すべて……す、べてを白状いたしますゆえ……!」

レオン王子は大きくうなずき、憐れむように言った。

「ザカル侯爵。罪を償ってくれ」

「は……はははぁぁぁ……!」

宮廷に、どよめきが広がった。



茶会が終わり、二人きりになった廊下。

マジョリーカは満足げに微笑む。

「殿下、素晴らしい采配でしたわ」

「いや……君が全部仕組んでくれたから……」

「殿下が堂々としてくださるから、私の策が活きるんですわ」

王子は、胸が熱くなるのを感じた。

(この人……僕を導いてくれている……)

(うつけと言われても、馬鹿にされても……彼女だけは、僕を前に進ませてくれる……)

「……マジョリーカ。ありがとう」

マジョリーカは、少しだけ顔を赤くした。

「な、なにを改まって……当たり前のことをしているだけですわ!」

だが王子は気づいていない。

マジョリーカのその反応が、側近たちにとっては衝撃だった。

(アクノ様が照れてる……!?)
(まさか……この二人……恋の……?)

誰も口には出さないが、もう全員が薄々感じていた。

二人は“悪女と元うつけ”という奇妙な組み合わせで――

とんでもなく相性がいい。


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