私は悪女らしいので、婚約者のうつけ王子を操り──私を売った父と母国に復讐します

しおしお

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第31話 公爵軍、前代未聞の“兵糧切れ”

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第31話 公爵軍、前代未聞の“兵糧切れ”

――エリフィン公爵、怒号の中で気づく敗走の予兆

エリフィン公爵軍・前線本陣。
深夜の霧が立ち込める中、巨大な天幕の内では、苛立ちを隠さぬ怒号が飛び交っていた。

「なぜだ! 補給が届かぬとはどういうことだ!」

エリフィン公爵の声が響き渡る。
彼の前で震える伝令兵は、口をぱくぱくと開閉させながら、必死に報告した。

「も、申し訳ございません……!
補給隊は本日未明より行方不明で……野営倉庫も……制圧されておりました!」

「制圧……? 誰がだ!」

「そ、それが……敵兵の死体も戦闘跡もなく……全員“縄で丁寧に縛られて”放置されていた、と……」

天幕内の空気が凍り付いた。

エリフィン公爵
「丁寧に……縛られていた……?」

副官
「はっ。縛り方は、どうやら“ベルリッタ軍のもの”と……」

エリフィン公爵の眉がぴくりと跳ねた。

「ベルリッタ……! あの王国が我が軍の補給路を断つなど――」

彼は怒りに震えたが、すぐに思い当たる。

――この動き、まさか。

脳裏に浮かんだのは、ひとりの令嬢の冷たい瞳。

アクノマジョリーカ。

「奴か……! あの娘が、ドンファムを使って妨害を……!」

歯ぎしりが天幕に響く。

副官
「公爵様、見張り台より報告が!
前線の兵たちが、すでに“食糧不足”で動揺しております!
干し肉の残量、あと一日分とのこと!」

エリフィン公爵
「馬鹿な……!
本国からの輸送もあるはずだろう!」

伝令兵はさらに顔を蒼白にしながら続けた。

「そ、その本国からの補給隊が……昨夜、全隊戻ってまいりました……」

「戻った? 補給せずにだと?」

「は、はい……理由は……
“国内の物資がほぼ枯渇しているため、送れない”とのことです……!」

エリフィン公爵
「枯渇……? 一体誰がそんな――!」

伝令兵
「ベルリッタへ送った“親善物資”が、すべて……
公爵様の秘密裏の侵攻準備に流用されているのが発覚した、と……」

天幕の中で、重い沈黙が落ちた。

副官
「王都では動揺が広がり……
“親善の名で隣国侵略を企んでいた”と噂が……」

公爵
「黙れ……!」

エリフィン公爵のこめかみが痙攣する。
すべてが崩れていく音が聞こえるようだった。

「ベルリッタごとき……
ドンファムのようなうつけを利用し、取り込んだ小国ごときに……!」

怒りで拳が震え、天幕を叩き割らんばかりの表情。

「なぜだ……!
なぜ私の計画が、こうも“内側から”崩されていく……!」

副官は、絞り出すように答えた。

「それは……たぶん……
“アクノマジョリーカ嬢の仕業”かと……」

公爵
「あの娘が!
王都で縛られて育ったはずの娘が、なぜそこまで……!」

副官
「逆に……王都で縛られて育ったからこそ……
“誰よりも、あなたの思考を熟知している”のかと。」

その一言に、公爵の背筋がぞっと震えた。

「……策謀の化け物め。」

彼は低く唸った。

「だが……!
まだ終わらぬ!
我が軍は十万!
補給路など、いずれ復旧する……!」

伝令兵
「そ、それが……
復旧の目処も立たず……
“ベルリッタ軍が街道すべてを抑えた”と……!」

「何だと!?」

公爵の絶叫が、夜明けの森にこだました。

――アクノマジョリーカの“静かな侵略返し”は、
いまやエリフィン公爵軍の全身に深く爪を立てていた。

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