婚約破棄されるはずが、強制力のせいで王子に溺愛されました!? ――原作者を呪ったら、強制力がサボり始めました――

しおしお

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5-3 王子はミリア一筋

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5-3 王子はミリア一筋

 フィリオン王子の“全国謝罪行脚”が始まって三日。
 王都は前代未聞のざわめきに包まれていた。

「殿下、あのフィリオン殿下が本当に謝罪して回ってるらしいわよ……!」
「『自分の愚かさを悔いている』と涙ながらに語ったとか……」
「昔の放蕩王子じゃなく、まるで別人だよ……あれは恋する男だ……」

 恋する男。
 その言葉が、また新たな噂を生む。

> 「殿下の想い人はクロフォード令嬢だ」
「彼女のために更生したらしい」



 ミリア・クロフォードは、屋敷の窓辺で膝を抱え、頭を抱え、そして泣き叫んだ。

「ちがあああうのよぉぉぉ!!
 なんでそうなるのよ!!
 私はただ、婚約破棄したいだけなのよ!!!」

 床を転げ回ったその時、屋敷に来客の知らせが入る。

「お嬢様、アリシア・フェルンハルト様がお見えです!」

「えっ!? ヒロイン本人!?」

 ミリアは慌てて身なりを整え、応接室へ向かった。


---

◆アリシア来訪

 応接室に入ると、アリシアは少し頬を染め、気まずそうに座っていた。

「ミリア様……あの……お話したいことがあって……」

「もちろんよアリシア様! なんでも言ってちょうだい!」

 ミリアは前のめりだ。
 本来のヒロインと王子をくっつけることが、彼女の悲願である。

 アリシアは胸に手を置き、そっと言った。

「最近……殿下が、変わられましたわよね?」

「変わったどころか別人レベルよ!!」

「殿下の謝罪……その真剣な姿勢を見て……
 わ、私……心が……揺れてしまって……」

「揺れていいのよ!!
 揺れろ!!
 むしろ転げ落ちろ!! どんどん好きになって!!」

「み、ミリア様!?!?」

 アリシアが驚くが、ミリアは構わず手を握った。

「あなたこそ正規ヒロインなの!!
 王子と恋に落ちるのはあなた!!
 私は背景!! 道端の石!! モブなのよ!!
 だから遠慮はいらないの!! 攻めて攻めて攻めまくって!!」

「い、石って……そんな……」

 すると――。

「ミリア……」

 不意に扉が開き、入ってきたのはフィリオン王子。

 ミリアの顔が歪む。

「ひぃっ!? なんで今来るのよ!!??」

「君のことを考えていたら、どうしても来ずにはいられなかった」

「来るな!!」

 王子の視線は、アリシアには一瞬たりとも向かない。
 ただひたすらに、まっすぐミリアだけを見ていた。

 アリシアは胸を押さえ、震える声で言った。

「殿下……その……ミリア様のことが……そんなに……?」

「もちろんだ。
 私は今……ミリアのことしか考えられない。
 謝罪行脚も、全てはミリアの望みだからだ」

 ミリアは天を仰いだ。

「強制力ぅぅぅぅ!!! 今こそ働けよぉぉぉ!!
 なんでよりによって、私への愛情に使われてるのよ!!
 本来のヒロインはここにいるのよ!? ねぇ!? 見ろ!!!
 視線をアリシア様に向けろぉぉぉ!!」

「ミリア、どうしたんだその必死さは……?」

「あなたが原因よ!!」

 アリシアは切なげにうつむき、ぽつりと言う。

「……殿下は……そんなに、ミリア様のことを……
 本気で……大切に思っていらっしゃるのですね」

 その声は寂しげで、少しだけ震えていた。

 ミリアの胸に罪悪感が広がる。

(いやいやいや、違うのよアリシア様!!
 私はあなたの邪魔なんてしたくないの!!
 むしろあなたに持っていってほしいの!!
 お願い、どうか正ヒロインとして頑張って!!)

 ミリアは両手でアリシアの手を握りしめる。

「諦めないで!! アリシア様ならいけるわ!!
 強制力がちょっとサボってるだけよ!!」

「え、え? 強制……?」

「いいから任せて!! 私はアリシア様推しよ!!
 NTRでも何でも構わないわ!!
 殿下を持っていって!! お願いだから!!」

「や、やめてくださいその強い応援!!
 なんだか逆に恐縮してしまいます!!」

 だが――。

 当の王子は、ミリアしか見ていなかった。

「ミリア、今日は一緒に夕食をどうだ?」

「行かないわよ!!
 アリシア様と行きなさいよ!!」

「アリシア嬢には申し訳ないが……
 私はミリアの隣がいい。」

 アリシアはわずかに息をのむ。

 ミリアは頭を抱え、叫んだ。

「なんでよぉぉぉぉ!!
 強制力ぅぅぅ!!
 あなた、どこで油売ってるのぉぉぉ!!?
 原作ルートに戻してぇぇぇ!!!」

 しかし、王子は微笑んだまま。

「ミリアのそばにいたい。それだけだ。」

 アリシアは胸を押さえ、切なげに微笑む。

「殿下……本当に……ミリア様が好きなのですね……」

 ミリアは泣きたい。

(違うのよアリシア様!!
 私は、あなたにこの王子を押し付ける気満々なのよ!!
 なんでこうなるのよぉぉぉ……!!)


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