婚約破棄されるはずが、強制力のせいで王子に溺愛されました!? ――原作者を呪ったら、強制力がサボり始めました――

しおしお

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5-4 ミリア、アリシア推しに完全転向

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5-4 ミリア、アリシア推しに完全転向

 王子が帰ったあと、屋敷の応接室には、深い沈黙が残された。

 ミリアは、頭を両手で抱えたまま、机に突っ伏している。

「……ど、どうしてこうなるのよ……
 アリシア様と殿下がいい感じになる予定だったのに……!」

 アリシアは困ったように微笑み、ミリアの肩をそっと叩いた。

「ミリア様……お気持ちは嬉しいのですが……その……
 私、殿下に想いを寄せるほど、そんなに軽い気持ちでは……」

「ダメですわアリシア様!!」

「ひっ!?」

 ミリアは勢いよく顔を上げ、アリシアの手を両手で包み込んだ。
 瞳はぎらぎらと輝き、もはや“推し活戦士”のそれだった。

「あなたこそ! 正ヒロインなのです!!
 あなたの誠実さ、美しさ、誰にでも分け隔てなく優しく接する心……
 あれを前にして惚れない王子が悪いんですわ!!」

「えっ!? わ、私、そんなつもりは……!」

「あります!!(断言)
 あなたには覚悟があります!
 恋する女性の輝きがありますわ!!」

「そ、そんな……!」

 アリシアの頬が赤くなる。

 ミリアはさらに身を乗り出した。

「アリシア様……殿下に心が揺れたのでしょう?」

「……はい……正直に言えば……。
 謝罪する殿下のお姿を見て……少しだけ……」

「少しじゃありません!! それは恋の芽です!!
 私の代わりに大きく育ててくださいまし!!」

「ま、待ってくださいミリア様!?
 芽ってそんな簡単に……!」

 その時――

 コンコン。

 扉がノックされ、侍女が顔をのぞかせた。

「お嬢様……王都でまた噂が……」

「またぁ!? 今度は何よっ!!」

 侍女は申し訳なさそうに報告する。

「『殿下はもうミリア様の虜で、
 アリシア嬢の恋など一蹴した』と……
 街の人々が……」

「一蹴してなーーい!!
 私が必死にアリシア様ルートに誘導してるのよ!!
 なんで逆に進むのよ!? 誰よこの世界のシナリオ担当!!!」

 アリシアは慌ててミリアの背をさする。

「み、ミリア様、落ち着いてくださいまし……」

「無理よおおお!!」

 ミリアは床を転がりながら叫んだ。

「私はアリシア様推しなのよぉぉぉ!!
 NTRでも構わないわ!!
 アリシア様が幸せになればそれでいいのよ!!
 殿下なんて、どうぞどうぞ持っていって!!
 返品不可で!!!」

「返品不可って……そんな……!!
 あ、あの……私、本当に殿下を奪うつもりは……!」

「奪って!! ぜひ奪って!!
 むしろ早く奪ってぇぇぇ!!」

 アリシアは完全に涙目だ。

「ミリア様……そんな強い応援……私、どうしたら……!」

「遠慮しないでアリシア様!!
 もう私はあなたの幸せのために全てを捧げます!!
 殿下を押し付け――
 もとい! 進呈いたします!!」

「今、押し付けって言いました!?!?」

 そんなやり取りをしているうちに、侍女がさらに追い打ちをかける。

「それと……王都の噂が、また増えております……」

ミリア「まだあるの!!???」

侍女「『クロフォード令嬢の“夜の実力”は国家級だ』と……」

ミリア「やめろおおおお!!!
 なんでピー案件の噂が増えるのよ!!!
 アリシア様の前で何言ってるのよぉぉぉ!!」

 アリシアの顔が一気に真っ赤になる。

「よ、夜の……実力……!?
 み、ミリア様……そ、そんな……!」

「違うの!!!
 全部殿下の暴走発言のせいなの!!!
 私は清く正しい淑女なの!!!」

「で、ですが殿下が……あれほど熱心に……」

「だからそれが困ってるのよーー!!」

 ミリアは頭を抱え、アリシアに泣きついた。

「もう嫌ぁぁぁ!!
 お願いアリシア様!!
 殿下を救って!!
 あなたならできるわ!!」

「な、なにそのバトンタッチの仕方……!」

 しかしアリシアは、ミリアの必死な気持ちに胸を打たれたのか、そっと手を重ねてくれる。

「……ミリア様。
 あなたがそこまでおっしゃるなら、私も……真剣に考えてみます。
 殿下のお気持ちを……」

「そうですわーー!!
 その調子! その調子!
 私は永遠にアリシア様推しですわ!!!」

「お、お手柔らかにお願いしますミリア様……!」

 こうして――
ミリアの“アリシア推し完全転向宣言”は、王都にまた新たな混乱を呼ぶことになるのだった。


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