21 / 24
6-1 家同士の交渉で決着
しおりを挟む
6-1 家同士の交渉で決着
クロフォード家の応接室には、朝から緊張した空気が満ちていた。
ミリアは侍女アナスタシアの後ろに隠れるように立ちながら、父と母が真剣な表情で国王からの使者を迎えているのを見つめていた。
――ついに来た。
この瞬間を待ち望んでいた。
長い長い悪夢を、今日こそ終わらせる。
ミリアは拳をぎゅっと握りしめ、深呼吸をした。
(ここまで長かった……
強制力、王子、ピー案件、噂、謝罪行脚、アリシア様推し……
全部まとめて今日で終わらせる!!)
しかし当の王子は来ない。
来れるわけがない。
国王が直々に呼びつけているのだ。
「ではクロフォード家より正式に申し上げます」
父・クロフォード侯爵が書状を取り出し、国王の紋章が刻まれた机の上に静かに置く。
「我が娘ミリア・クロフォードは、このたび第一王子殿下との婚約を円満に解消したく、王家に願い出るものであります」
緊張の静寂。
ミリアが息を飲んでいると、使者は重々しい口調で告げた。
「国王陛下はすでにご判断を下されております。
次期謁見の場にて、両家立ち会いのもと正式に発表されるとのことです」
ミリアの心臓がドクンと跳ねた。
(ほ、本当に!?
ついに!?
ついに私、自由!?)
侍女のアナスタシアがそっとミリアの肩を叩き、小さく囁く。
「よかったですね、お嬢様……もうピー案件を聞かされずに済みます」
(そこ!?)
しかし確かにその通りだ。
ミリアは涙が出そうだった。
——その日の夕方。
王宮の大広間では、臨時の家同士の会談が開かれることになった。
クロフォード家の馬車が門をくぐると、見慣れた重厚な光景が広がる。
ミリアは心が折れそうになりながらも、父母と共に歩いた。
(ここに来ると高確率で事件が起きるのよね……
できれば一生来たくなかった場所……)
だが、今日は違う。
終わらせに来たのだ。
大広間に入ると、国王と第一王子フィリオン、そしてアリシア嬢の姿があった。
ミリアはすかさずアリシアに目配せする。
(アリシア様……どうか殿下を支えてあげて……!
私はこれからモブに戻るの……)
アリシアは小さく頷き、優しく微笑んだ。
その瞬間、国王が席から立ち上がり、堂々と宣言した。
「クロフォード侯爵、ならびにミリア・クロフォード嬢。
本日をもって、第一王子フィリオンとの婚約は正式に破棄とする。
理由は――」
国王の視線がフィリオンに突き刺さる。
「すべて、お前(フィリオン)が悪い」
「ぐっ……!」
王子が胸を押さえて崩れ落ちそうになる。
(ですよね!!!
国王陛下、話が早い!!)
ミリアは心の中で全力拍手しながら、表面上は控えめに頭を下げた。
「陛下のご英断、感謝申し上げます」
国王はうむ、と頷き、さらに続ける。
「ミリア・クロフォード嬢。
これまで息子が迷惑をかけたこと、父として深く詫びよう」
「…………!!」
まさか国王から直接謝罪されるとは思わず、ミリアは思わず足が震えた。
(ひぃぃ……!!
相手は王国トップなのよ!?
土下座されるより怖いんだけど!?)
父母は驚きつつも平伏する。
そして国王の最後の言葉が、ミリアの胸を一気に軽くした。
「ミリアよ……今日よりお前は自由だ」
その瞬間。
ミリアの脳内には花火が散り、鼓笛隊が演奏し、モブキャラの天使たちが祝福の舞を踊り出した。
(やったぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーー!!
私は自由……!!
ついに自由……!!
バカ王子ともピー案件とも“夜の実力国家級”とかいう悪魔の噂ともお別れよぉぉぉ!!)
しかし王子は納得がいかないらしく、一歩前に出る。
「ま、待ってください、父上!
私はまだミリアに——」
「黙れ。原因はお前だ」
王子、二度目の即死。
ミリアはアリシアへそっと視線を送った。
(あとはお願いします……正ヒロイン様……)
アリシアは王子の肩にそっと手を置き、優しく寄り添った。
(よし……これで私は完全に表舞台から退場できる……!
やっと……やっと静かなモブ生活が……!!)
こうして——
ついに運命はねじ曲げられ、婚約破棄は正式に成立した。
だが、この時のミリアは知らない。
新たな地獄が、すでにすぐそこまで迫っているということを……。
---
クロフォード家の応接室には、朝から緊張した空気が満ちていた。
ミリアは侍女アナスタシアの後ろに隠れるように立ちながら、父と母が真剣な表情で国王からの使者を迎えているのを見つめていた。
――ついに来た。
この瞬間を待ち望んでいた。
長い長い悪夢を、今日こそ終わらせる。
ミリアは拳をぎゅっと握りしめ、深呼吸をした。
(ここまで長かった……
強制力、王子、ピー案件、噂、謝罪行脚、アリシア様推し……
全部まとめて今日で終わらせる!!)
しかし当の王子は来ない。
来れるわけがない。
国王が直々に呼びつけているのだ。
「ではクロフォード家より正式に申し上げます」
父・クロフォード侯爵が書状を取り出し、国王の紋章が刻まれた机の上に静かに置く。
「我が娘ミリア・クロフォードは、このたび第一王子殿下との婚約を円満に解消したく、王家に願い出るものであります」
緊張の静寂。
ミリアが息を飲んでいると、使者は重々しい口調で告げた。
「国王陛下はすでにご判断を下されております。
次期謁見の場にて、両家立ち会いのもと正式に発表されるとのことです」
ミリアの心臓がドクンと跳ねた。
(ほ、本当に!?
ついに!?
ついに私、自由!?)
侍女のアナスタシアがそっとミリアの肩を叩き、小さく囁く。
「よかったですね、お嬢様……もうピー案件を聞かされずに済みます」
(そこ!?)
しかし確かにその通りだ。
ミリアは涙が出そうだった。
——その日の夕方。
王宮の大広間では、臨時の家同士の会談が開かれることになった。
クロフォード家の馬車が門をくぐると、見慣れた重厚な光景が広がる。
ミリアは心が折れそうになりながらも、父母と共に歩いた。
(ここに来ると高確率で事件が起きるのよね……
できれば一生来たくなかった場所……)
だが、今日は違う。
終わらせに来たのだ。
大広間に入ると、国王と第一王子フィリオン、そしてアリシア嬢の姿があった。
ミリアはすかさずアリシアに目配せする。
(アリシア様……どうか殿下を支えてあげて……!
私はこれからモブに戻るの……)
アリシアは小さく頷き、優しく微笑んだ。
その瞬間、国王が席から立ち上がり、堂々と宣言した。
「クロフォード侯爵、ならびにミリア・クロフォード嬢。
本日をもって、第一王子フィリオンとの婚約は正式に破棄とする。
理由は――」
国王の視線がフィリオンに突き刺さる。
「すべて、お前(フィリオン)が悪い」
「ぐっ……!」
王子が胸を押さえて崩れ落ちそうになる。
(ですよね!!!
国王陛下、話が早い!!)
ミリアは心の中で全力拍手しながら、表面上は控えめに頭を下げた。
「陛下のご英断、感謝申し上げます」
国王はうむ、と頷き、さらに続ける。
「ミリア・クロフォード嬢。
これまで息子が迷惑をかけたこと、父として深く詫びよう」
「…………!!」
まさか国王から直接謝罪されるとは思わず、ミリアは思わず足が震えた。
(ひぃぃ……!!
相手は王国トップなのよ!?
土下座されるより怖いんだけど!?)
父母は驚きつつも平伏する。
そして国王の最後の言葉が、ミリアの胸を一気に軽くした。
「ミリアよ……今日よりお前は自由だ」
その瞬間。
ミリアの脳内には花火が散り、鼓笛隊が演奏し、モブキャラの天使たちが祝福の舞を踊り出した。
(やったぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーー!!
私は自由……!!
ついに自由……!!
バカ王子ともピー案件とも“夜の実力国家級”とかいう悪魔の噂ともお別れよぉぉぉ!!)
しかし王子は納得がいかないらしく、一歩前に出る。
「ま、待ってください、父上!
私はまだミリアに——」
「黙れ。原因はお前だ」
王子、二度目の即死。
ミリアはアリシアへそっと視線を送った。
(あとはお願いします……正ヒロイン様……)
アリシアは王子の肩にそっと手を置き、優しく寄り添った。
(よし……これで私は完全に表舞台から退場できる……!
やっと……やっと静かなモブ生活が……!!)
こうして——
ついに運命はねじ曲げられ、婚約破棄は正式に成立した。
だが、この時のミリアは知らない。
新たな地獄が、すでにすぐそこまで迫っているということを……。
---
10
あなたにおすすめの小説
婚約破棄された侯爵令嬢、帝国最強騎士に拾われて溺愛される
夜桜
恋愛
婚約者である元老院議員ディアベルに裏切られ、夜会で婚約破棄を宣言された侯爵令嬢ルイン。
さらにバルコニーから突き落とされ、命を落としかけた彼女を救ったのは、帝国自由騎士であるジョイアだった。
目を覚ましたルインは、落下のショックで記憶を失っていた。
優しく寄り添い守ってくれるジョイアのもとで、失われた過去と本当の自分を探し始める。
一方、ルインが生きていると知ったディアベルと愛人セリエは、再び彼女を排除しようと暗躍する。
しかし、ルインの中に眠っていた錬金術師としての才能が覚醒し、ジョイアや父の助けを得て、裏切った元婚約者に立ち向かう力を取り戻していく。
完 独身貴族を謳歌したい男爵令嬢は、女嫌い公爵さまと結婚する。
水鳥楓椛
恋愛
男爵令嬢オードリー・アイリーンはある日父が負った借金により、大好きな宝石だけでは食べていけなくなってしまった。そんな時、オードリーの前に現れたのは女嫌いと有名な公爵エドワード・アーデルハイトだった。愛する家族を借金苦から逃すため、オードリーは悪魔に嫁ぐ。結婚の先に待ち受けるのは不幸か幸せか。少なくとも、オードリーは自己中心的なエドワードが大嫌いだった………。
イラストは友人のしーなさんに描いていただきました!!
【完結】愛を知らない伯爵令嬢は執着激重王太子の愛を一身に受ける。
扇 レンナ
恋愛
スパダリ系執着王太子×愛を知らない純情令嬢――婚約破棄から始まる、極上の恋
伯爵令嬢テレジアは小さな頃から両親に《次期公爵閣下の婚約者》という価値しか見出してもらえなかった。
それでもその利用価値に縋っていたテレジアだが、努力も虚しく婚約破棄を突きつけられる。
途方に暮れるテレジアを助けたのは、留学中だったはずの王太子ラインヴァルト。彼は何故かテレジアに「好きだ」と告げて、熱烈に愛してくれる。
その真意が、テレジアにはわからなくて……。
*hotランキング 最高68位ありがとうございます♡
▼掲載先→ベリーズカフェ、エブリスタ、アルファポリス
悪役令嬢に転生するも魔法に夢中でいたら王子に溺愛されました
黒木 楓
恋愛
旧題:悪役令嬢に転生するも魔法を使えることの方が嬉しかったから自由に楽しんでいると、王子に溺愛されました
乙女ゲームの悪役令嬢リリアンに転生していた私は、転生もそうだけどゲームが始まる数年前で子供の姿となっていることに驚いていた。
これから頑張れば悪役令嬢と呼ばれなくなるのかもしれないけど、それよりもイメージすることで体内に宿る魔力を消費して様々なことができる魔法が使えることの方が嬉しい。
もうゲーム通りになるのなら仕方がないと考えた私は、レックス王子から婚約破棄を受けて没落するまで自由に楽しく生きようとしていた。
魔法ばかり使っていると魔力を使い過ぎて何度か倒れてしまい、そのたびにレックス王子が心配して数年後、ようやくヒロインのカレンが登場する。
私は公爵令嬢も今年までかと考えていたのに、レックス殿下はカレンに興味がなさそうで、常に私に構う日々が続いていた。
『生きた骨董品』と婚約破棄されたので、世界最高の魔導ドレスでざまぁします。私を捨てた元婚約者が後悔しても、隣には天才公爵様がいますので!
aozora
恋愛
『時代遅れの飾り人形』――。
そう罵られ、公衆の面前でエリート婚約者に婚約を破棄された子爵令嬢セラフィナ。家からも見放され、全てを失った彼女には、しかし誰にも知られていない秘密の顔があった。
それは、世界の常識すら書き換える、禁断の魔導技術《エーテル織演算》を操る天才技術者としての顔。
淑女の仮面を捨て、一人の職人として再起を誓った彼女の前に現れたのは、革新派を率いる『冷徹公爵』セバスチャン。彼は、誰もが気づかなかった彼女の才能にいち早く価値を見出し、その最大の理解者となる。
古いしがらみが支配する王都で、二人は小さなアトリエから、やがて王国の流行と常識を覆す壮大な革命を巻き起こしていく。
知性と技術だけを武器に、彼女を奈落に突き落とした者たちへ、最も華麗で痛快な復讐を果たすことはできるのか。
これは、絶望の淵から這い上がった天才令嬢が、運命のパートナーと共に自らの手で輝かしい未来を掴む、愛と革命の物語。
「地味で無能」と捨てられた令嬢は、冷酷な【年上イケオジ公爵】に嫁ぎました〜今更私の価値に気づいた元王太子が後悔で顔面蒼白になっても今更遅い
腐ったバナナ
恋愛
伯爵令嬢クラウディアは、婚約者のアルバート王太子と妹リリアンに「地味で無能」と断罪され、公衆の面前で婚約破棄される。
お飾りの厄介払いとして押し付けられた嫁ぎ先は、「氷壁公爵」と恐れられる年上の冷酷な辺境伯アレクシス・グレイヴナー公爵だった。
当初は冷徹だった公爵は、クラウディアの才能と、過去の傷を癒やす温もりに触れ、その愛を「二度と失わない」と固く誓う。
彼の愛は、包容力と同時に、狂気的な独占欲を伴った「大人の愛」へと昇華していく。
側妃の条件は「子を産んだら離縁」でしたが、孤独な陛下を癒したら、執着されて離してくれません!
花瀬ゆらぎ
恋愛
「おまえには、国王陛下の側妃になってもらう」
婚約者と親友に裏切られ、傷心の伯爵令嬢イリア。
追い打ちをかけるように父から命じられたのは、若き国王フェイランの側妃になることだった。
しかし、王宮で待っていたのは、「世継ぎを産んだら離縁」という非情な条件。
夫となったフェイランは冷たく、侍女からは蔑まれ、王妃からは「用が済んだら去れ」と突き放される。
けれど、イリアは知ってしまう。 彼が兄の死と誤解に苦しみ、誰よりも孤独の中にいることを──。
「私は、陛下の幸せを願っております。だから……離縁してください」
フェイランを想い、身を引こうとしたイリア。
しかし、無関心だったはずの陛下が、イリアを強く抱きしめて……!?
「離縁する気か? 許さない。私の心を乱しておいて、逃げられると思うな」
凍てついた王の心を溶かしたのは、売られた側妃の純真な愛。
孤独な陛下に執着され、正妃へと昇り詰める逆転ラブロマンス!
※ 以下のタイトルにて、ベリーズカフェでも公開中。
【側妃の条件は「子を産んだら離縁」でしたが、陛下は私を離してくれません】
世間知らずな山ごもり薬師は、××な騎士団長の性癖淫愛から逃げ出せない
二位関りをん
恋愛
平民薬師・クララは国境沿いの深い山奥で暮らしながら、魔法薬の研究に没頭している。招集が下れば山を下りて麓にある病院や娼館で診察補助をしたりしているが、世間知らずなのに変わりはない。
ある日、山の中で倒れている男性を発見。彼はなんと騎士団長・レイルドで女嫌いの噂を持つ人物だった。
当然女嫌いの噂なんて知らないクララは良心に従い彼を助け、治療を施す。
だが、レイルドには隠している秘密……性癖があった。
――君の××××、触らせてもらえないだろうか?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる