婚約破棄されましたが、隣国で愛されすぎて困っています

第2章：隣国で芽生える新たな絆

2-4 陰謀の証拠

隣国エーバーハルト公爵領での生活にも少しずつ慣れ、新しい事業に尽力していたフェリシアのもとに、一通の手紙が届いた。送り主は、リヒトが信頼する情報屋だった。その手紙には、「王太子アルヴィンとクラリスが仕掛けた陰謀に関する証拠が手に入った」という内容が記されていた。


---

証拠の受け取り

その夜、フェリシアはリヒトの執務室に呼ばれた。リヒトは彼女を前に、情報屋が届けた証拠について話し始めた。

「フェリシア、君を陥れたアルヴィンとクラリスの陰謀を裏付ける証拠が見つかった。これがその手紙だ。」
リヒトは一通の封筒を彼女の前に置いた。その中には、アルヴィンとクラリスがフェリシアを貶めるために計画を練った内容が詳細に書かれた手紙が入っていた。

フェリシアは手を震わせながら手紙を開き、内容に目を通した。その文字はクラリスの筆跡であり、フェリシアを「嫉妬深い悪女」として陥れるための具体的な指示が書かれていた。

「アルヴィン様、計画通り、フェリシアが他の男性と密通しているように仕立て上げる手紙を用意しました。この証拠を用いれば、彼女を社交界から追放することが可能です。殿下のお力添えに感謝申し上げます。」

フェリシアはその内容を読み進めるにつれ、胸の奥から怒りと悔しさが湧き上がってくるのを感じた。

「やっぱり…私を陥れたのはこの二人だったのね。」
フェリシアは静かに呟いたが、その声には明らかな怒りが含まれていた。


---

リヒトの助言

リヒトはフェリシアの様子を見て、慎重に声をかけた。

「これで君が無実であることを証明できる。だが、どう行動するかは慎重に考えるべきだ。復讐に焦るのではなく、君自身の未来のためにこの証拠を活かす方法を考えた方がいい。」

リヒトの言葉に、フェリシアは少し驚いた表情を浮かべた。自分の無実を証明するためだけにこの証拠を使えばいいと考えていたが、彼の言葉はそれ以上の意味を含んでいた。

「私は復讐だけを考えているつもりはありません。でも、この証拠を持って、彼らの罪を暴くことが私の名誉を取り戻す第一歩だと思うの。」
フェリシアの声には決意が込められていた。

リヒトはそんな彼女の真剣な表情を見つめ、静かに頷いた。

「分かった。君がどう動くにしても、僕は君を支えるよ。ただ、君が傷つくことだけは避けたい。」


---

フェリシアの葛藤

その夜、フェリシアは自室で一人、手紙を見つめていた。この証拠があれば、彼女を陥れたアルヴィンとクラリスの陰謀を暴き、彼らに相応の罰を与えることができる。しかし、それが自分にとって本当の意味での救いになるのか、彼女は迷っていた。

「これが私の名誉を取り戻すための手段…。でも、これだけで心が晴れるのかしら。」
フェリシアは深く息をつき、手紙をそっと机の上に置いた。

その瞬間、これまでの記憶が頭をよぎった。王太子妃として努力し続けた日々、突然の婚約破棄、家族からの失望、社交界での孤立。それらが全て、この手紙に記された計画によって引き起こされたのだと思うと、涙が頬を伝った。

「私はこんなことで泣いている場合じゃないわ。」
フェリシアは自分に言い聞かせ、涙を拭った。


---

リヒトとの再会話

翌朝、フェリシアは再びリヒトのもとを訪れた。彼女の表情には迷いはなく、確固たる決意が感じられた。

「リヒト、この証拠を使って彼らの陰謀を暴きます。私が何もせずにいる間に、あの二人がさらに誰かを傷つけるかもしれない。それだけは絶対に許せない。」

リヒトは彼女の言葉に頷き、支援を約束した。

「分かった。君が動くなら、僕も全面的に協力する。ただ、慎重に進めよう。彼らに逃げ道を与えないようにするためにもね。」

フェリシアはリヒトの助言を受け入れ、具体的な行動計画を立てることにした。この証拠をもとに、王国の貴族たちに真実を伝え、彼らの支持を得る方法を考える。そして、その計画の第一歩として、彼女は情報屋にさらなる調査を依頼することを決めた。


---

真実を追い求めて

その夜、フェリシアは月明かりの下で静かに誓いを立てた。

「私はもう、ただ守られるだけの存在ではない。自分自身の力で名誉を取り戻し、未来を切り開いてみせる。そして、私を陥れた者たちに真実の代償を払わせる。」

その言葉には、これまでの彼女とは違う、強い決意が込められていた。

陰謀の証拠を手にしたことで、フェリシアは再び戦いの場に戻る準備を整えつつあった。彼女が歩む道は困難に満ちているが、それでも彼女の心にはもう迷いはなかった。これが、彼女自身の未来を取り戻すための第一歩であり、彼女の物語の新たな章の幕開けだった。