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第15話 —雪夜の感謝と、胸に灯る光—
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第15話 —雪夜の感謝と、胸に灯る光—
その夜、辺境は静かだった。
吹雪は一段落し、雪はふわりふわりと舞い降りるだけ。
城の廊下には暖炉の炎が柔らかに揺れ、
北国の夜を、ほんのりと温めていた。
ミレイユは暖炉前のソファに腰かけ、
編み物をしながら待っていた。
(ロヴェル様……遅いですわね。
視察が長引いておられるのかしら……)
待つつもりなんてなかったのに、
いつの間にか「帰りを気にしている自分」に気づく。
(いえ、これは奥様として当然の配慮で……
恋とか、そういうのじゃなくて……
ただ、家の主を心配するのは普通で……)
自分に言い訳をしているうちに、
部屋の扉が静かに開いた。
「……待たせたな」
雪の匂いをまとってロヴェルが入ってくる。
肩に積もった雪を払う姿さえ絵になる。
まるで冬の精霊がそのまま歩いてきたようだった。
「お疲れ様ですわ、ロヴェル様。
あたたかいお飲み物を淹れておきましたの」
「ありがとう」
ロヴェルは隣に腰を下ろし、
マグカップを両手で包んだ。
暖炉の炎が二人の間に柔らかい影を作る。
しばらく、静かな時間が流れた。
そして──
ロヴェルがふっと息を吸った。
「……ミレイユ」
「はい?」
ロヴェルは焚き火を見るような目で、
ゆっくりと言葉を紡いだ。
「……君のおかげで、領地が変わった」
ミレイユの心臓が跳ねた。
ロヴェルは続ける。
「保存食の提案。
倉庫の効率化。
物資の再利用。
あれらがどれほど領地を救ったか……
今日、視察に行って改めて思い知らされた」
炎の光がロヴェルの横顔を照らす。
その表情は、柔らかくて、あたたかくて。
「家臣たちは皆、君に感謝していた。
……私もだ」
「わ、私……?
そんな……わたくしは、ただ……
スローライフを満喫するために、
思いついたことをしただけで……」
ロヴェルが首を振る。
「いや。
君がした“思いつき”は、
この領地の未来を救う力を持っていた」
静かに、真っすぐな声。
あまりにも素直で、
あまりにもまっすぐで。
ミレイユの胸の奥が
ぐっと熱く締めつけられた。
(ロヴェル様……
そんな風に……言ってくださるなんて……)
自分がしたことが、
誰かの役に立った。
誰かを救った。
そしてその「誰か」に、
ロヴェル自身が含まれている。
その事実が、
嬉しくて、泣きそうになるくらい胸に沁みた。
「……わたくし、そんな……
大したことをしたつもりは……」
震える声で言うと、
ロヴェルが静かに返す。
「大したことだ。
本当に……ありがとう」
その“ありがとう”は、
ただの感謝ではなかった。
尊敬、信頼、
そして──どこか、深い温もりを含んでいる。
ミレイユの胸は、
暖炉よりも熱く、じんわりと温かくなった。
(ああ……だめ……
こんなの……心が溶けてしまいますわ……)
恋とか、愛とか、
そんな言葉を使ってはいけないはずなのに。
心が勝手に、
ロヴェルの言葉を大切に抱きしめてしまう。
ロヴェルはふっと視線を落とし、
小さくつぶやいた。
「……君がいてくれて、本当に良かった」
ミレイユは返事ができず、
ただ胸を押さえることしかできなかった。
暖炉の火が、ぱちんと弾ける。
白い結婚。
干渉しない関係。
──そのはずなのに。
二人の心は、
すでに“とても近い場所”にあった。
---
その夜、辺境は静かだった。
吹雪は一段落し、雪はふわりふわりと舞い降りるだけ。
城の廊下には暖炉の炎が柔らかに揺れ、
北国の夜を、ほんのりと温めていた。
ミレイユは暖炉前のソファに腰かけ、
編み物をしながら待っていた。
(ロヴェル様……遅いですわね。
視察が長引いておられるのかしら……)
待つつもりなんてなかったのに、
いつの間にか「帰りを気にしている自分」に気づく。
(いえ、これは奥様として当然の配慮で……
恋とか、そういうのじゃなくて……
ただ、家の主を心配するのは普通で……)
自分に言い訳をしているうちに、
部屋の扉が静かに開いた。
「……待たせたな」
雪の匂いをまとってロヴェルが入ってくる。
肩に積もった雪を払う姿さえ絵になる。
まるで冬の精霊がそのまま歩いてきたようだった。
「お疲れ様ですわ、ロヴェル様。
あたたかいお飲み物を淹れておきましたの」
「ありがとう」
ロヴェルは隣に腰を下ろし、
マグカップを両手で包んだ。
暖炉の炎が二人の間に柔らかい影を作る。
しばらく、静かな時間が流れた。
そして──
ロヴェルがふっと息を吸った。
「……ミレイユ」
「はい?」
ロヴェルは焚き火を見るような目で、
ゆっくりと言葉を紡いだ。
「……君のおかげで、領地が変わった」
ミレイユの心臓が跳ねた。
ロヴェルは続ける。
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倉庫の効率化。
物資の再利用。
あれらがどれほど領地を救ったか……
今日、視察に行って改めて思い知らされた」
炎の光がロヴェルの横顔を照らす。
その表情は、柔らかくて、あたたかくて。
「家臣たちは皆、君に感謝していた。
……私もだ」
「わ、私……?
そんな……わたくしは、ただ……
スローライフを満喫するために、
思いついたことをしただけで……」
ロヴェルが首を振る。
「いや。
君がした“思いつき”は、
この領地の未来を救う力を持っていた」
静かに、真っすぐな声。
あまりにも素直で、
あまりにもまっすぐで。
ミレイユの胸の奥が
ぐっと熱く締めつけられた。
(ロヴェル様……
そんな風に……言ってくださるなんて……)
自分がしたことが、
誰かの役に立った。
誰かを救った。
そしてその「誰か」に、
ロヴェル自身が含まれている。
その事実が、
嬉しくて、泣きそうになるくらい胸に沁みた。
「……わたくし、そんな……
大したことをしたつもりは……」
震える声で言うと、
ロヴェルが静かに返す。
「大したことだ。
本当に……ありがとう」
その“ありがとう”は、
ただの感謝ではなかった。
尊敬、信頼、
そして──どこか、深い温もりを含んでいる。
ミレイユの胸は、
暖炉よりも熱く、じんわりと温かくなった。
(ああ……だめ……
こんなの……心が溶けてしまいますわ……)
恋とか、愛とか、
そんな言葉を使ってはいけないはずなのに。
心が勝手に、
ロヴェルの言葉を大切に抱きしめてしまう。
ロヴェルはふっと視線を落とし、
小さくつぶやいた。
「……君がいてくれて、本当に良かった」
ミレイユは返事ができず、
ただ胸を押さえることしかできなかった。
暖炉の火が、ぱちんと弾ける。
白い結婚。
干渉しない関係。
──そのはずなのに。
二人の心は、
すでに“とても近い場所”にあった。
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