白い結婚のはずが、気づけば溺愛されていましたわ! 地味令嬢、辺境でスローライフを望んだのに国まで救ってしまう件

しおしお

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第31話 —一年後の奇跡と、過保護すぎる公爵様—

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第31話 —一年後の奇跡と、過保護すぎる公爵様—

辺境に春の風が吹きはじめた頃。
エルデ城の中では、ある意味「冬より騒がしい季節」が到来していた。

理由は──

ミレイユのお腹が、ふっくらと膨らみはじめたから。

(……はぁ……ついに……)

ミレイユは窓辺の椅子に腰かけ、そっとお腹に手を添えた。
まだ半歩先の未来のような小さな命。
しかし確かに、そこにいる。

「……こんにちは、あなた」

自然と微笑みがこぼれる。

その横で──

「ミレイユ、座り心地は悪くないか?
ここにクッションを……いや、もっと厚みのあるものを……!」

ロヴェルが常にバタバタしていた。

(……また始まりましたわね)

この数ヶ月、ロヴェルは
“過保護スキルLv99”
といってもいいほど豹変していた。

◆クッションを毎日7枚増やす
◆暖炉の温度を1度単位で調整
◆階段は絶対に使わせない
◆雪道は本人が先に歩いて整地
◆紅茶は「妊婦に優しい」ブレンドを毎日研究
◆寝る前に5回“寒くないか”確認

家臣たちがヒソヒソ声でこう言うのも無理はない。

家臣A「公爵様が……あの公爵様が……」

家臣B「溺愛の化身になられた……?」

家臣C「いや、むしろ溺愛を通り越して“保護魔”……」

しかし本人は真剣そのもの。

「ミレイユ、北風が強い。
窓は閉めるべきだ」

「いえ、ロヴェル様……今日は暖かいですし……」

「……だが念のためだ」

ぴしゃりと窓を閉じてしまう。

「……やっぱり過保護ですわね?」

問いかけると、ロヴェルは目をそらした。

「……心配だ。
……大事だから」

その小さな一言に、ミレイユの胸は温かくなる。

(そうですわね……
あなただって、不器用に変わっただけ……
家族ができるとわかって、
ただ必死に守ろうとしてくださっているだけ……)

ミレイユはそっと笑い、
ロヴェルの手を取った。

「私は元気ですのよ。
あなたが守ってくれているおかげで」

ロヴェルの瞳が、微かに揺れた。

「……なら、いい」

たったそれだけ。
けれどミレイユには十分すぎるほどの愛情だった。

◆そして——新しい家族の準備

その日の午後。
城の中庭では、ミレイユが領民に頼まれていた
“数字遊び教室”が開かれていた。

小さな子どもたちが集まり、
ミレイユの前で目を輝かせる。

「ねえねえ奥様! 今日の遊びは?」

「今日は……足し算ゲームですわ」

「わぁあああ!」

ミレイユはお腹をなでつつ、ニコリと微笑む。

(この子がお腹から出てきたら……
きっと一緒に遊ぶのね……
数字も教えてみようかしら……)

その姿をロヴェルが遠くから見守っていた。

侍女フィオナがひそひそ声で言う。

「……公爵様、あんなに優しいお顔をされるんですね」

「ええ……奥様とお子様の前では……
まるで別人のようですわ」

ロヴェルは子どもたちの笑顔を見つめながら
小さく呟いた。

「……幸せだな」

かつて“白い結婚”を望んでいたふたりは、
今や本当の家族になっていた。

領地も、家臣も、領民も、
そしてロヴェル自身も──
ミレイユの幸せを願い、支えようとしている。

それは、
静かな雪国に訪れた、あたたかい春の奇跡だった。

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