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第二十四話 残った側近ほど、王太子の近くにいる自分を恥じ始めました
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第二十四話 残った側近ほど、王太子の近くにいる自分を恥じ始めました
王太子の周囲から人が減るとき、最初に消えるのは気楽な笑いだ。
次に消えるのは、用もないのに顔を出す取り巻きたち。
そして最後まで残るのは、立場上離れにくい者と、離れるのが遅れた者たちである。
だが残ったからといって、忠誠が厚いわけではない。
むしろ逆だ。
残った者ほど、自分がまだそこにいることを意識し始める。
その意識は、やがて恥へ変わる。
その日の王宮では、まさにそんな空気が濃くなっていた。
王太子付きの控えの間には、以前なら絶えず人の出入りがあった。若い貴族子息たち、顔を売りたい下級官吏、何かしら王太子の耳へ入れたい商会の者。誰もが“殿下のお近く”にいることを誇りたがっていた。
けれど今は違う。
出入りは減った。
声も減った。
廊下に漂うのは、王太子の機嫌を伺う息苦しさだけだ。
「殿下、本日の午後の件ですが」
侍従長補佐が、できるだけ無難な声で告げる。
カイルは書類の上から顔を上げた。
「何だ」
「明日の懇談会でございますが、さらに二家より欠席の連絡が」
「またか」
「はい。どちらも家内の事情と――」
「もういい」
カイルは苛立たしげに書類を閉じた。
家内の事情。
体調不良。
領地からの急報。
どれも聞き飽きた。
理由が本当かどうかなど、もはや問題ではない。問題は、皆がわざわざ同じような言い訳を使って距離を取り始めていることだ。
そして、その空気を自分も感じていることだ。
「では、出席予定は何人だ」
「……当初の三分の一ほどにございます」
その答えに、カイルの表情が固まる。
三分の一。
それはもう、懇談会の体裁すら危うい数字だった。
「ふざけているな」
低い声だった。
だが怒鳴るほどの勢いもない。
怒っているのに、怒鳴れば余計に惨めになると、どこかで分かっているのかもしれなかった。
「どうなさいますか」
侍従長補佐が問う。
「中止か」
「……いいや」
カイルは少し間を置いてから言った。
「そのまま行う」
補佐は一礼したが、その動きはわずかに重かった。
そのまま行う。
つまり、三分の一しか集まらぬ場へ、それでも王太子として座るということだ。
立派と言えば立派だが、今はそうではない。
ただ、自分から取りやめると言えないだけにも見える。
その空気を、補佐自身が感じているのだろう。
カイルはそれを読み取ったのか、不機嫌そうに眉を寄せた。
「何だ、その顔は」
「いえ」
「何か言いたいことがあるなら言え」
補佐はほんの一瞬だけ迷った。
本来なら、ここで沈黙するのが賢い。
だが今の王太子の周囲では、何も言わないこともまた不興を買う。
残った側近ほど、そのさじ加減に苦しむのだ。
「恐れながら」
補佐は慎重に言葉を選んだ。
「今の王都では、殿下のお近くにいることを、以前ほど名誉と見ぬ向きもございます」
部屋の空気が凍る。
カイルがゆっくり顔を上げる。
「……何だと」
「ですから、皆様ご自身の立場を量っておられるのかと」
言い終えた瞬間、補佐は自分でも血の気が引くのを感じた。
言い過ぎた。
だが、もう遅い。
カイルはしばらく何も言わなかった。
怒鳴るかと思った。
机を叩くかと思った。
けれど彼は、意外にも静かだった。
静かすぎるほどに。
「つまり」
やがて口を開く。
「私の近くにいることが、恥だとでも言いたいのか」
補佐は返答に詰まった。
そこまで露骨な言い方はしていない。
だが、意味としては近い。
そしてカイル自身、それを最初から分かっていたのだろう。
だからこそ、そこを突かれてこんなに冷えた声になる。
「申し上げにくいことですが……」
補佐は慎重に続けた。
「少なくとも、今の空気では、誇るべき近さとは見られておりません」
誇るべき近さとは見られておりません。
遠回しな言い方だった。
だが十分に痛かった。
カイルは椅子の背にもたれたまま、天井を仰ぐように一瞬目を閉じた。
怒りより先に、嫌な実感が胸へ差したのかもしれない。
自分の近くにいることが、誰かにとって名誉ではなくなっている。
それは王太子にとって、かなり深い傷だった。
「……下がれ」
小さな声だった。
補佐は一礼し、すぐに退いた。
部屋を出てから、ようやく深く息を吐く。
汗ばんだ手のひらが気持ち悪かった。
彼は分かっていた。
今、自分は王太子のそばにいる。
けれどその“そばにいる”という事実が、以前のような誇りにはならない。むしろ、周囲からどう見られるかを考えるたびに、じわじわと羞恥に変わる。
それが、残った側近たちの今の本音だった。
同じ頃、王都のいくつかの家では、親たちが息子へ似たような忠告をしていた。
「今はあまり殿下のお近くで目立つな」
「ですが父上、急に離れればそれはそれで」
「だから目立つなと言っている」
「忠義を示す顔は保て。だが、はしゃぐな。笑うな。殿下の名を振り回すな」
そういう細かな指示が、あちこちで出されている。
それ自体が、もう答えだった。
王太子の近さは、以前のような勲章ではない。
扱いを誤れば、自分の家まで軽く見られる危うい印へ変わりつつある。
そして若い男たちは、その現実をひどく居心地悪く感じ始めていた。
王太子派の一人と見なされていたブラウネル伯爵家の次男も、その日の夕刻、家の書斎で父から冷たい目を向けられていた。
「お前、今日は殿下のもとへ顔を出したそうだな」
「はい」
「何をしに行った」
次男は返答に詰まった。
忠誠を示しに行った、とは言えない。
保身のために行っただけだと、自分でも分かっているからだ。
伯爵は鼻で笑った。
「残るなら残るで腹を括れ。降りるなら降りるで遅れるな。今さら中途半端な顔だけ見せて、一番みっともない」
その言葉は、息子の胸へ深く刺さった。
中途半端でみっともない。
まさにその通りだった。
彼は今、王太子の近くにいた自分を誇れない。
けれど離れたと明言する勇気もない。
だから曖昧な忠誠の顔をして、余計に自分を汚している。
「……申し訳ありません」
やっとそれだけ言うと、伯爵は視線を外した。
「今の殿下の近くにいても、お前の格は上がらん。むしろ下がる。そこを忘れるな」
息子は頭を下げたまま、返事ができなかった。
別邸では、その空気の変化を示す報せが、もう夕方には届いていた。
「残った側近たちが、かなり苦しいようです」
グラントが告げる。
リディアナは文書から目を上げた。
「降り損ねた人たちね」
「はい。今はまだ殿下の側近という顔をしておりますが、周囲からの目が変わり始めていることは自覚しているようで」
「そう」
マリアベルが静かに言った。
「離れるのが遅い人ほど、あとで恥をかくものです」
「ええ」
リディアナはうなずく。
「しかも今回は、殿下のお近くにいること自体が、もう誇れないのよね」
グラントが小さく目を伏せた。
「そのようです。“王太子派”という言葉が、以前ほど箔にならぬどころか、むしろ軽薄さの証のように扱われ始めております」
それは、かなり大きな変化だった。
王太子本人が笑われるのも痛い。
だが、その周囲まで“あの軽率な騒ぎを支えた側”として見られ始めれば、離反はさらに早まる。
誰も、自分まで沈みたくはないからだ。
「残った側近ほど、王太子の近くにいる自分を恥じ始めたのね」
リディアナが言う。
「はい」
「それはかなり効くわ」
「殿下ご本人にも、でございますか」
「ええ」
彼女は静かに答えた。
「だって、あの方にとって側近って、ただ使える手足じゃないもの。自分の格を映す鏡でもあるでしょう?」
以前なら、その鏡はよく磨かれていた。
若い貴族たちが集まり、王太子の周囲に笑顔があり、近くにいるだけで何か特別な立場に見えた。
だが今は違う。
残っている者たちの顔は固い。
忠誠の形も薄い。
そして、その近さ自体が誇れない。
そんな鏡を見せられ続けるのは、王太子にとってかなり堪えるはずだった。
「この先、ますます歪むでしょうね」
マリアベルが言う。
「ええ。恥じながら残る人間は、いずれもっと醜いわ」
リディアナは窓の外へ目を向けた。
庭の木々は静かで、風もない。
だが、目に見えぬ流れは確かに変わり続けている。
王太子の周囲から人が減る。
残った者は、そこにいる自分を誇れない。
誇れないどころか、少しずつ恥じ始める。
その羞恥は、忠誠を削る。
忠誠が削れれば、また人が減る。
それは静かで、だがとても確実な崩れ方だった。
「王太子は、誰かに裏切られるより先に」
リディアナは小さく言った。
「側にいる人間の顔色から、自分の価値が落ちたことを知らされるのね」
その言葉には、冷えた確信があった。
真正面からの離反より、残った者の曇った目の方が、よほど残酷なこともある。
王太子はこれから、それを毎日見ることになる。
王太子の周囲から人が減るとき、最初に消えるのは気楽な笑いだ。
次に消えるのは、用もないのに顔を出す取り巻きたち。
そして最後まで残るのは、立場上離れにくい者と、離れるのが遅れた者たちである。
だが残ったからといって、忠誠が厚いわけではない。
むしろ逆だ。
残った者ほど、自分がまだそこにいることを意識し始める。
その意識は、やがて恥へ変わる。
その日の王宮では、まさにそんな空気が濃くなっていた。
王太子付きの控えの間には、以前なら絶えず人の出入りがあった。若い貴族子息たち、顔を売りたい下級官吏、何かしら王太子の耳へ入れたい商会の者。誰もが“殿下のお近く”にいることを誇りたがっていた。
けれど今は違う。
出入りは減った。
声も減った。
廊下に漂うのは、王太子の機嫌を伺う息苦しさだけだ。
「殿下、本日の午後の件ですが」
侍従長補佐が、できるだけ無難な声で告げる。
カイルは書類の上から顔を上げた。
「何だ」
「明日の懇談会でございますが、さらに二家より欠席の連絡が」
「またか」
「はい。どちらも家内の事情と――」
「もういい」
カイルは苛立たしげに書類を閉じた。
家内の事情。
体調不良。
領地からの急報。
どれも聞き飽きた。
理由が本当かどうかなど、もはや問題ではない。問題は、皆がわざわざ同じような言い訳を使って距離を取り始めていることだ。
そして、その空気を自分も感じていることだ。
「では、出席予定は何人だ」
「……当初の三分の一ほどにございます」
その答えに、カイルの表情が固まる。
三分の一。
それはもう、懇談会の体裁すら危うい数字だった。
「ふざけているな」
低い声だった。
だが怒鳴るほどの勢いもない。
怒っているのに、怒鳴れば余計に惨めになると、どこかで分かっているのかもしれなかった。
「どうなさいますか」
侍従長補佐が問う。
「中止か」
「……いいや」
カイルは少し間を置いてから言った。
「そのまま行う」
補佐は一礼したが、その動きはわずかに重かった。
そのまま行う。
つまり、三分の一しか集まらぬ場へ、それでも王太子として座るということだ。
立派と言えば立派だが、今はそうではない。
ただ、自分から取りやめると言えないだけにも見える。
その空気を、補佐自身が感じているのだろう。
カイルはそれを読み取ったのか、不機嫌そうに眉を寄せた。
「何だ、その顔は」
「いえ」
「何か言いたいことがあるなら言え」
補佐はほんの一瞬だけ迷った。
本来なら、ここで沈黙するのが賢い。
だが今の王太子の周囲では、何も言わないこともまた不興を買う。
残った側近ほど、そのさじ加減に苦しむのだ。
「恐れながら」
補佐は慎重に言葉を選んだ。
「今の王都では、殿下のお近くにいることを、以前ほど名誉と見ぬ向きもございます」
部屋の空気が凍る。
カイルがゆっくり顔を上げる。
「……何だと」
「ですから、皆様ご自身の立場を量っておられるのかと」
言い終えた瞬間、補佐は自分でも血の気が引くのを感じた。
言い過ぎた。
だが、もう遅い。
カイルはしばらく何も言わなかった。
怒鳴るかと思った。
机を叩くかと思った。
けれど彼は、意外にも静かだった。
静かすぎるほどに。
「つまり」
やがて口を開く。
「私の近くにいることが、恥だとでも言いたいのか」
補佐は返答に詰まった。
そこまで露骨な言い方はしていない。
だが、意味としては近い。
そしてカイル自身、それを最初から分かっていたのだろう。
だからこそ、そこを突かれてこんなに冷えた声になる。
「申し上げにくいことですが……」
補佐は慎重に続けた。
「少なくとも、今の空気では、誇るべき近さとは見られておりません」
誇るべき近さとは見られておりません。
遠回しな言い方だった。
だが十分に痛かった。
カイルは椅子の背にもたれたまま、天井を仰ぐように一瞬目を閉じた。
怒りより先に、嫌な実感が胸へ差したのかもしれない。
自分の近くにいることが、誰かにとって名誉ではなくなっている。
それは王太子にとって、かなり深い傷だった。
「……下がれ」
小さな声だった。
補佐は一礼し、すぐに退いた。
部屋を出てから、ようやく深く息を吐く。
汗ばんだ手のひらが気持ち悪かった。
彼は分かっていた。
今、自分は王太子のそばにいる。
けれどその“そばにいる”という事実が、以前のような誇りにはならない。むしろ、周囲からどう見られるかを考えるたびに、じわじわと羞恥に変わる。
それが、残った側近たちの今の本音だった。
同じ頃、王都のいくつかの家では、親たちが息子へ似たような忠告をしていた。
「今はあまり殿下のお近くで目立つな」
「ですが父上、急に離れればそれはそれで」
「だから目立つなと言っている」
「忠義を示す顔は保て。だが、はしゃぐな。笑うな。殿下の名を振り回すな」
そういう細かな指示が、あちこちで出されている。
それ自体が、もう答えだった。
王太子の近さは、以前のような勲章ではない。
扱いを誤れば、自分の家まで軽く見られる危うい印へ変わりつつある。
そして若い男たちは、その現実をひどく居心地悪く感じ始めていた。
王太子派の一人と見なされていたブラウネル伯爵家の次男も、その日の夕刻、家の書斎で父から冷たい目を向けられていた。
「お前、今日は殿下のもとへ顔を出したそうだな」
「はい」
「何をしに行った」
次男は返答に詰まった。
忠誠を示しに行った、とは言えない。
保身のために行っただけだと、自分でも分かっているからだ。
伯爵は鼻で笑った。
「残るなら残るで腹を括れ。降りるなら降りるで遅れるな。今さら中途半端な顔だけ見せて、一番みっともない」
その言葉は、息子の胸へ深く刺さった。
中途半端でみっともない。
まさにその通りだった。
彼は今、王太子の近くにいた自分を誇れない。
けれど離れたと明言する勇気もない。
だから曖昧な忠誠の顔をして、余計に自分を汚している。
「……申し訳ありません」
やっとそれだけ言うと、伯爵は視線を外した。
「今の殿下の近くにいても、お前の格は上がらん。むしろ下がる。そこを忘れるな」
息子は頭を下げたまま、返事ができなかった。
別邸では、その空気の変化を示す報せが、もう夕方には届いていた。
「残った側近たちが、かなり苦しいようです」
グラントが告げる。
リディアナは文書から目を上げた。
「降り損ねた人たちね」
「はい。今はまだ殿下の側近という顔をしておりますが、周囲からの目が変わり始めていることは自覚しているようで」
「そう」
マリアベルが静かに言った。
「離れるのが遅い人ほど、あとで恥をかくものです」
「ええ」
リディアナはうなずく。
「しかも今回は、殿下のお近くにいること自体が、もう誇れないのよね」
グラントが小さく目を伏せた。
「そのようです。“王太子派”という言葉が、以前ほど箔にならぬどころか、むしろ軽薄さの証のように扱われ始めております」
それは、かなり大きな変化だった。
王太子本人が笑われるのも痛い。
だが、その周囲まで“あの軽率な騒ぎを支えた側”として見られ始めれば、離反はさらに早まる。
誰も、自分まで沈みたくはないからだ。
「残った側近ほど、王太子の近くにいる自分を恥じ始めたのね」
リディアナが言う。
「はい」
「それはかなり効くわ」
「殿下ご本人にも、でございますか」
「ええ」
彼女は静かに答えた。
「だって、あの方にとって側近って、ただ使える手足じゃないもの。自分の格を映す鏡でもあるでしょう?」
以前なら、その鏡はよく磨かれていた。
若い貴族たちが集まり、王太子の周囲に笑顔があり、近くにいるだけで何か特別な立場に見えた。
だが今は違う。
残っている者たちの顔は固い。
忠誠の形も薄い。
そして、その近さ自体が誇れない。
そんな鏡を見せられ続けるのは、王太子にとってかなり堪えるはずだった。
「この先、ますます歪むでしょうね」
マリアベルが言う。
「ええ。恥じながら残る人間は、いずれもっと醜いわ」
リディアナは窓の外へ目を向けた。
庭の木々は静かで、風もない。
だが、目に見えぬ流れは確かに変わり続けている。
王太子の周囲から人が減る。
残った者は、そこにいる自分を誇れない。
誇れないどころか、少しずつ恥じ始める。
その羞恥は、忠誠を削る。
忠誠が削れれば、また人が減る。
それは静かで、だがとても確実な崩れ方だった。
「王太子は、誰かに裏切られるより先に」
リディアナは小さく言った。
「側にいる人間の顔色から、自分の価値が落ちたことを知らされるのね」
その言葉には、冷えた確信があった。
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王太子はこれから、それを毎日見ることになる。
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