社長室の蜜月

しおしお

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第4章:陰謀と危機

4-2:疑惑と信頼の試練

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プロジェクト成功の余韻が薄れると同時に、西園寺グループは新たな危機に直面していた。それはライバル会社からの妨害工作だった。機密情報の一部が外部に漏洩し、その影響でプロジェクトの進行が危ぶまれる状況となっていた。

「情報漏洩の件、すでに調査を進めていますが、どうやら内部の関係者が関わっている可能性が高いようです。」
社内ミーティングでのその報告に、結衣は背筋が凍る思いだった。

「内部の関係者……?」
周囲のざわめきの中、結衣は不安を抑えながら耳を傾けた。

「具体的な名前はまだ挙がっていませんが、プロジェクトの中心にいた秘書課が疑われています。」

その一言で、結衣は目の前が真っ暗になるような感覚に襲われた。


---

その噂が広がるのに時間はかからなかった。社内のあちこちで、「秘書課の誰かが情報を漏らした」という話が囁かれ、結衣の名前もその中で頻繁に挙がるようになっていた。

「相沢さん、最近社長と近いから、情報を持ち出すのも簡単だったんじゃない?」
「そうそう、“社長のお気に入り”だから、何をしても許されると思ってるんじゃないの?」

昼休み、休憩室でそんな噂話を耳にした結衣は、悔しさと悲しさで胸がいっぱいになった。何度も自分の行動を振り返っても、漏洩に関与した覚えは一切ない。それでも、自分が疑われている現状にどう向き合えばいいのか分からなかった。


---

その日、蓮が社長室に結衣を呼び出した。

「相沢、今回の情報漏洩について、お前が疑われていることは知っているな。」
蓮は冷静な口調だったが、その視線は鋭く結衣を見据えていた。

「はい……ですが、私は何もしていません。」
結衣の声は震えていたが、その目には強い意志が宿っていた。

「分かっている。」
蓮の短い一言が結衣の胸に響いた。

「私はお前を疑っていない。むしろ、今回の件でお前が疑われるのは、お前が俺のそばで働いているからだ。」

蓮は視線を外し、静かに続けた。
「それが原因でお前に負担をかけているのなら、俺の責任だ。」

「社長……」
その言葉に、結衣は目頭が熱くなるのを感じた。誰もが自分を疑う中で、蓮だけが自分を信じてくれている。その信頼がどれだけ自分を救っているか、言葉にならないほどの感謝が胸に溢れた。


---

一方、社内の調査は進むにつれ、新たな事実が明らかになっていった。漏洩した情報は社内のセキュリティシステムの脆弱性を突かれて盗み取られたものであり、結衣や秘書課の誰かが直接関与した可能性は極めて低いことが判明した。

しかし、疑惑は完全に晴れたわけではなかった。周囲の視線は相変わらず冷たく、噂話は止むことがなかった。


---

数日後、結衣は蓮に相談するため、再び社長室を訪れた。彼女は意を決して切り出した。

「社長……私、会社を辞めようと思います。」

蓮は驚きながらも冷静な表情を崩さず、結衣の言葉を待った。

「私がここにいることで、社内が混乱し、社長にもご迷惑をおかけしてしまうかもしれません。私がいなくなれば、この状況も少しは落ち着くと思うんです。」

結衣が俯きながらそう言うと、蓮はしばらく黙った後、深い声で言った。
「相沢、お前がいなくなれば、確かに噂は消えるかもしれない。だが、それ以上に失うものが大きい。」

「失うもの……ですか?」
結衣が顔を上げると、蓮は真剣な目で彼女を見つめて続けた。

「俺はお前がそばにいることで、初めて自分の仕事に安心を感じることができている。お前がいなくなれば、俺は孤独だ。」

その言葉に、結衣は目を見開いた。冷徹で完璧な上司だと思っていた蓮が、そんな本音を口にするとは思っていなかった。

「俺にとって、お前はただの秘書ではない。お前の存在が、俺を支えているんだ。」

蓮の言葉が胸に響き、結衣は涙が溢れそうになるのを感じた。


---

その夜、結衣は帰宅してからも蓮の言葉を何度も思い返していた。

「俺は孤独だ……お前がいなくなれば。」

蓮が自分を必要としてくれている――その事実が、結衣の胸に温かい灯を灯していた。そして彼女は、もう一度自分の立場と蓮との関係に向き合う決意を固めるのだった。

周囲の噂や疑惑に翻弄されながらも、蓮との信頼関係はさらに深まり、結衣は新たな一歩を踏み出す準備を始めていた。

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