白い結婚のはずが、旦那様の溺愛が止まりません!――冷徹領主と政略令嬢の甘すぎる夫婦生活

しおしお

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第31話 “普通の夫婦”として祝福される日

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ラディスとの“正式な告白”から数日後、領内は妙にそわそわしていた。
城下町を歩けば、どこからともなくヒソヒソ声が聞こえてくる。

「聞いた?公爵様と奥様が、ついに……その……」
「夜の庭園で手をつないで歩いてたらしいわよ」
「えぇっ、ついに白い結婚が終わったのね……!」
「いや、終わったとは言ってないわよ。でも……“進展”したんでしょうねぇ……」

リオラは顔まで真っ赤になり、俯いて歩くしかなかった。

(どうして……どうしてあれがこんなに噂になるの……!
 ただ手をつないだだけなのに……!)

でも、ほんの少しだけ胸がくすぐったい。
だって、あの夜の記憶は、思い出すたびに心が温かくなるから。

――その日の午後。

広間から、大きな拍手と歓声が響いた。

「おめでとうございます、旦那様、リオラ様!」

エミが泣きながら飛びついてきた。
今日、領主館では“正式に公爵夫妻が普通の夫婦として歩み始めたこと”を祝う小さな式が開かれていたのだ。

もちろん、これはラディスが主催したわけではない。
むしろ、提案したのは――

「リオラ様、本当に良かったですわ……!」
エミが涙を拭きながら、感激で震えていた。

……彼女である。

「エミ、泣きすぎよ。目が腫れちゃうわ」
「だって……だって……!私はずっと信じていたんです!
 旦那様は絶対にリオラ様を幸せにしてくださるって!」

ラディスがそっと近づき、落ち着いた声で言う。

「エミ、そこまで泣かれると、私が何かひどいことをしていたように見えるのだが」

「ち、違います!感極まっただけです!
 旦那様、本当にありがとうございます……!」

エミは涙目で何度も頭を下げた。
その横で、周りの使用人たちも微笑ましそうに二人を見ている。

「公爵様、奥様、本当にお似合いです」
「あの堅物の公爵様が……奥様の前では柔らかい表情をするなんて」
「城下町でもお祝いの声が広がっていますよ」

リオラは恥ずかしくて、頬に手を当てた。

「あの……そんなに大ごとでは……」

「大ごとだ」

ラディスが隣に立ち、優しく言った。

「君が幸せそうに笑っている。それ以上に大切なことはない」

その言葉に、一瞬で胸が熱くなる。

使用人たちが一斉に拍手する。

エミはまた涙をぽろぽろこぼし、「うぅ……幸せです……!」と鼻をすすっていた。

(ほんとに……こういう時だけ泣くんだから……)

けれど、エミが泣いてくれるほど、
自分たちの関係が“本物”になったことを実感して胸がじんとした。

式は大げさなものではなく、
領民たちから届いた花や食べ物が広間に並べられた、温かい“内輪の祝い”だった。

ラディスがふと、リオラの手を取った。

「リオラ。これからも……隣にいてくれ」

「はい。……こちらこそ、よろしくお願いします」

二人で微笑み合うと、広間にまた大きな拍手が響いた。

こうして、リオラとラディスは――
ついに“普通の夫婦”として、領内から認められ、祝福されたのだった。

その夜、エミは興奮のあまり日記に
《奥様が幸せで私は一生分泣いた》
と書いたらしい。

……明日になって読み返したらきっと赤面するだろうけど。
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