白い結婚のはずが、旦那様の溺愛が止まりません!――冷徹領主と政略令嬢の甘すぎる夫婦生活

しおしお

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第32話(最終話)

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「これからは、干渉したい。君を愛する夫として」

リオラはその日、朝から胸がそわそわしていた。
昨日の祝福の式の余韻がまだ残っていて――
気がつけば、鏡の前で髪を整える手がいつもより丁寧になっている。

(落ち着いて、私……今日は、ただの“普段どおり”……のはず……)

そう言い聞かせていたけれど、
どうしても胸がふわふわしてしまう。

そんな時だった。

「リオラ、入ってもいいか?」

扉越しに聞こえる低い声。
胸が跳ね、リオラは思わず返す。

「ど、どうぞ!」

扉がゆっくり開き、ラディスが姿を見せる。
いつもと変わらぬ穏やかな表情……のはずなのに、
どこか強い決意を秘めた雰囲気を纏っている。

「どうしたんですか、旦那様?」

リオラが尋ねると、ラディスは少しだけ息を吸って言った。

「リオラ。……少し、話がある」

「……はい」

距離を詰められ、胸がまた跳ねる。
ラディスは手を伸ばし、リオラの指先に触れるだけの距離で立ち止まった。

「これまで、君の自由を守るために“干渉しない”と誓った。
 君を束縛したくなかった。
 ……でも、もう誤魔化せそうにない」

リオラははっと息を飲む。

ラディスはゆっくり、彼女の手を包み込んだ。

「これからは……干渉したい。
 君の隣にいたいからだ。
 夫として、伴侶として――君を愛している」

その言葉は真っ直ぐで、まるで深く澄んだ泉のように心にしみていく。

(ああ……この人は、本当に……)

胸に熱が広がり、視界がにじむ。

「……リオラ?」

「……はい……」

涙を浮かべながら、リオラはラディスの胸にそっと手を置いた。

「お願いします。
 あなたに干渉してほしい。
 ずっと、隣に……いてください」

ラディスの瞳が驚きに揺れ、すぐにほどけるような笑みへ変わる。

「……ありがとう」

次の瞬間――
彼はリオラをそっと抱き寄せた。

温かい腕。落ち着く香り。
胸の音が自分のそれと重なり合って、まるで一つになったようだった。

「リオラ……愛している」

「……私も、旦那様を……愛しています」

二人はしばらく抱きしめ合い、
静かで満ち足りた時間が流れた。

――その後。

ラディスはリオラの髪を撫でながら、小さく笑った。

「さて……今日からは、夫として遠慮なく“干渉”させてもらう」

「……あの、ほどほどにお願いしますね?」

「いや、もう遅い」

「えっ」

ラディスはリオラの手を取り、指を絡める。

「もう離すつもりはないから」

リオラは真っ赤になって俯いた。

(この人……急に甘すぎません!?)

しかしその頬には、隠しきれない微笑みが浮かんでいる。

ラディスが優しくリオラを見つめた。

「これから、ずっと一緒だ」

「はい……」

――こうして。
白い結婚として始まった二人は、
本当の意味で“夫婦”となり、甘い未来へ歩き始めた。

深い愛と穏やかな日々――
そのすべてが、これからの二人を包み込んでいく。
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