婚約破棄されたけれど、頼りない第一王子様と結婚したら溺愛されました

しおしお

文字の大きさ
14 / 43

第13話 王宮がざわつく──“変わった殿下”の噂

しおりを挟む
第13話 王宮がざわつく──“変わった殿下”の噂

イメルダとの新婚生活が始まってから、
王宮の空気は少しずつ、しかし確かに変わり始めていた。

特に、第一王子アルファルファの周囲が──。



ある日の午前。
王宮の廊下では、侍女や侍従たちがひそひそと囁き合っていた。

「聞いた? 第一王子殿下、最近“言葉”で返答していらっしゃるのよ」
「えっ……黙り込むのが殿下の平常運転だったのに?」
「そうなの。昨日なんて、文官に『少し考える時間を』って、
 はっきり言われたらしいわ」
「まぁ……ちゃんとご意見を……。誰の影響かしら?」
「もちろん、イメルダ様よ! だって、ご結婚してからよ?」

侍女たちは一斉にため息をついた。

「素敵……奥様の影響で変わる殿下……」
「やっぱり……愛って偉大……」

イメルダはその噂を耳にして、こっそり頬を染めた。

(殿下の努力……皆様が感じ取ってくださっている……
 それが……本当に嬉しい……)



だが、変化を感じたのは侍女たちだけではなかった。

文官たちも会議の席で妙なざわめきを見せていた。

「……あの……殿下、先ほどの資料についてですが」
「そ、それは……えっと……
 イメルダにも相談してみたい……」

それだけで文官が目を丸くする。

「(相談!? 誰にも相談しないで黙るだけだった殿下が!?)」
「(奥方様に……!?)」

殿下は慌てて続けた。

「い、いや……その……何でも彼女に任せるという意味ではなく……
 一応、意見を……聞きたいだけで……」

その赤面しながらの説明が、文官たちに
“新婚の夫そのもの”にしか見えなかった。

思わず別の文官が笑みを漏らす。

「……殿下。とても、よいことです。
 王妃殿下のご意見は、国政にとっても大きな力となりましょう」

アルファルファの顔がさらに赤くなる。

「そ、そうだろうか……?」

その様子に、文官たちはまたこっそり視線を交わす。

(変わった……)
(殿下が、変わろうとしている……)
(これは……王妃殿下のお力か……?)



夕方。
王宮の庭園を散歩するイメルダの耳に、また別の噂が聞こえてきた。

「最近の殿下、表情が柔らかくなられたと思わない?」
「ええ、以前は常に緊張されていたけれど……
 今は、どこか優しい雰囲気があるというか……」
「奥方様とご一緒のときなんて、特に……」
「まぁ……やっぱり新婚なのねぇ」

イメルダは胸の前で静かに両手を合わせた。

(殿下……皆様が、殿下の変化を見てくださってる……
 それは……何よりも励みになりますわ)

胸が温かくなる。

だがその一方で──
ここ数日の王宮の変化を面白く思っていない者もいた。



ベータ王子だ。

「くっ……アルファルファの奴、最近評判がいいじゃないか……!」
「殿下、焦る必要はありませんわ」
アルティシアは甘えるような声で囁く。
「殿下こそ次期国王にふさわしいのです。
 優柔不断で覇気のない殿下に負けるわけがございません」

しかし、ベータは荒れた表情で机を叩いた。

「――あいつが少し変わるだけで、このざまか……!
 なんだあの侍従どもは……!
 あれほど俺の優秀さを褒めていたくせに……!」

アルティシアの眉がぴくりと動いた。

(……殿下。あなたの“優秀”はただの思い込みですわ……
 利用価値があるから持ち上げられていただけ……)

だが、表面には絶対に出さない。

「大丈夫ですわ、殿下。
 “変わったふり”など、すぐに限界が来ます。
 今はただ……様子を見ればよろしいのです」

ベータは、怒りで震えながら吐き捨てた。

「……絶対に、俺が継ぐ。
 あいつが国王になるなど許さない……!」



その夜。

変わり始めた王宮の空気を知らないまま、
イメルダは殿下と静かな時間を過ごしていた。

アルファルファは、
少し恥ずかしそうに微笑んでイメルダに言った。

「……今日……“よく考えて話している”と褒められたんだ」
「まぁ、殿下! 本当に素晴らしいですわ!」

イメルダの称賛に、
殿下の表情がふわっと緩む。

「……君が……そばにいてくれるからだと思う……」

その言葉に、イメルダは胸がじんと熱くなる。

(だめ……もう……殿下のことばかり考えてしまう……)

愛おしさがふくらみ、
手がすっと殿下の手に重なる。

そして、二人は自然と寄り添い──

王宮がざわつき、
外で不穏な影が蠢いていることなど知らぬまま、
ただ静かに、互いへの想いを深めていくのだった。


---
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

天然だと思ったギルド仲間が、実は策士で独占欲強めでした

星乃和花
恋愛
⭐︎完結済ー本編8話+後日談7話⭐︎ ギルドで働くおっとり回復役リィナは、 自分と似た雰囲気の“天然仲間”カイと出会い、ほっとする。 ……が、彼は実は 天然を演じる策士だった!? 「転ばないで」 「可愛いって言うのは僕の役目」 「固定回復役だから。僕の」 優しいのに過保護。 仲間のはずなのに距離が近い。 しかも噂はいつの間にか——「軍師(彼)が恋してる説」に。 鈍感で頑張り屋なリィナと、 策を捨てるほど恋に負けていくカイの、 コメディ強めの甘々ギルド恋愛、開幕! 「遅いままでいい――置いていかないから。」

冷徹団長の「ここにいろ」は、騎士団公認の“抱きしめ命令”です

星乃和花
恋愛
⭐︎完結済ー全16話+後日談5話⭐︎ 王都最硬派、規律と責任の塊――騎士団長ヴァルド・アークライトは、夜の見回り中に路地で“落とし物”を拾った。 ……いや、拾ったのは魔物の卵ではなく、道端で寝ていた少女だった。しかも目覚めた彼女は満面の笑みで「落とし物です!拾ってくださってありがとうございます!」と言い張り、団長の屋敷を“保護施設”だと勘違いして、掃除・料理・当番表作りに騎士の悩み相談まで勝手に開始。 追い出せば泣く、士気は落ちる、そして何より――ヴァルド自身の休息が、彼女の存在に依存し始めていく。 無表情のまま「危ないから、ここにいろ」と命令し続ける団長に、周囲はざわつく。「それ、溺愛ですよ」 騎士団内ではついに“団長語翻訳係”まで誕生し、命令が全部“愛の保護”に変換されていく甘々溺愛コメディ!

【完結】異世界転移したら騎士団長と相思相愛になりました〜私の恋を父と兄が邪魔してくる〜

伽羅
恋愛
愛莉鈴(アリス)は幼馴染の健斗に片想いをしている。 ある朝、通学中の事故で道が塞がれた。 健斗はサボる口実が出来たと言って愛莉鈴を先に行かせる。 事故車で塞がれた道を電柱と塀の隙間から抜けようとすると妙な違和感が…。 気付いたら、まったく別の世界に佇んでいた。 そんな愛莉鈴を救ってくれた騎士団長を徐々に好きになっていくが、彼には想い人がいた。 やがて愛莉鈴には重大な秘密が判明して…。

都会から田舎に追放された令嬢ですが、辺境伯様と畑を耕しながらのんびり新婚スローライフしています 

さら
恋愛
王都一の名門で育ちながら、婚約破棄と共に「無能」と烙印を押され、辺境へと追放された令嬢クラリッサ。 行き着いた先で出会ったのは、過去の戦場で心を閉ざし、孤独に領地を守る辺境伯ライナルトだった。 荒れ果てた畑、限られた食糧、迫り来る悪徳商会の策略――。 王都では役に立たなかった薬草や農作の知識が、この地では大きな力となる。 村人たちと共に畑を耕し、薬草園を育て、やがてクラリッサは「無能令嬢」から「皆に必要とされる奥方」へ。 剣で村を守るライナルトと、知恵と優しさで人を支えるクラリッサ。 二人が並び立った時、どんな脅威も跳ね除けられる――。 「あなたとなら、どんな嵐も越えていける」 追放から始まる辺境スローライフは、やがて夫婦の愛と未来を育む物語へ。 のんびり畑を耕しながら、気がつけば“無双”の幸せ新婚生活!?

ギルド回収人は勇者をも背負う ~ボロ雑巾のようになった冒険者をおんぶしたら惚れられた~

水無月礼人
恋愛
 私は冒険者ギルド職員ロックウィーナ。25歳の女で担当は回収役。冒険者の落し物、遺品、時には冒険者自体をも背負います!  素敵な恋愛に憧れているのに培われるのは筋肉だけ。  しかし無駄に顔が良い先輩と出動した先で、行き倒れた美形剣士を背負ってから私の人生は一変。初のモテ期が到来です!!  ……とか思ってウハウハしていたら何やら不穏な空気。ええ!?  私の選択次第で世界がループして崩壊の危機!? そんな結末は認めない!!!! ※【エブリスタ】でも公開しています。  【エブリスタ小説大賞2023 講談社 女性コミック9誌合同マンガ原作賞】で優秀作品に選ばれました。

【完結】番としか子供が産まれない世界で

さくらもち
恋愛
番との間にしか子供が産まれない世界に産まれたニーナ。 何故か親から要らない子扱いされる不遇な子供時代に番と言う概念すら知らないまま育った。 そんなニーナが番に出会うまで 4話完結 出会えたところで話は終わってます。

冷酷侯爵と政略結婚したら、実家がざまぁされました

鍛高譚
恋愛
「この結婚は、家のため。ただの政略結婚よ」 そう言い聞かせ、愛のない結婚を受け入れた公爵令嬢リゼット。 しかし、挙式後すぐに父が「婚約破棄しろ」と命じてきた!? だが、夫であるアレクシス・フォン・シュヴァルツ侯爵は冷たく言い放つ。 「彼女を渡すつもりはない」 冷酷無慈悲と噂される侯爵が、なぜかリゼットを溺愛し始める!? 毎日甘やかされ、守られ、気づけば逃げ場なし! さらに、父の不正が明るみに出て、公爵家は失墜―― リゼットを道具として利用しようとした者たちに、ざまぁの鉄槌が下される! 政略結婚から始まる、甘々溺愛ラブストーリー! 「愛なんてないはずなのに……どうしてこんなに大切にされるの?」

婚約破棄された侯爵令嬢、帝国最強騎士に拾われて溺愛される

夜桜
恋愛
婚約者である元老院議員ディアベルに裏切られ、夜会で婚約破棄を宣言された侯爵令嬢ルイン。 さらにバルコニーから突き落とされ、命を落としかけた彼女を救ったのは、帝国自由騎士であるジョイアだった。 目を覚ましたルインは、落下のショックで記憶を失っていた。 優しく寄り添い守ってくれるジョイアのもとで、失われた過去と本当の自分を探し始める。 一方、ルインが生きていると知ったディアベルと愛人セリエは、再び彼女を排除しようと暗躍する。 しかし、ルインの中に眠っていた錬金術師としての才能が覚醒し、ジョイアや父の助けを得て、裏切った元婚約者に立ち向かう力を取り戻していく。

処理中です...