婚約破棄されたけれど、頼りない第一王子様と結婚したら溺愛されました

しおしお

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第17話 アルファルファ、民との初対面──“誠実さ”が光り始める日

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第17話 アルファルファ、民との初対面──“誠実さ”が光り始める日

王妃教育が本格化し、
アルティシアが不穏に動き出した頃、
アルファルファにとっても大きな節目が訪れようとしていた。

それは──
初めての「民との謁見」。

国の行事としては簡易なものだが、
第一王子として民と顔を合わせ、
言葉を交わす機会はそう多くない。

つまり、王子としての「評価」が生まれる重要な場だった。



謁見当日の朝。
アルファルファは、緊張で胸を押さえながら衣服を整えていた。

「だ、大丈夫だろうか……」
「殿下、深呼吸を」

イメルダはそっと殿下の胸元に触れ、
呼吸を整えるよう優しく促す。

「殿下は……努力してきましたわ。
 自信を持ってくださいませ」

殿下はうなずきつつ、しかし目は泳いでいる。

「……イメルダは……そばに……」
「ええ。殿下の後方で見守っていますわ」

その言葉に、殿下の肩が少しだけ落ち着いた。

(殿下……わたくしがそばにいれば……
 少しは安心してくださるのですね……)

胸がじんわり熱くなる。



謁見の広間には、
王都の代表として選ばれた数十名の民が集められていた。

緊張でその場が静まり返る中、
殿下がゆっくりと歩み出る。

(殿下……落ち着いて……)

イメルダは両手を胸の前でそっと重ね、
息を殺して見守った。

はじめの挨拶は、書記官が用意した文面を読み上げる。
殿下の声は震えていたが、最後まで読み切った。

そして──
問題はそのあとだった。

代表者のひとりが、
殿下の“自分の言葉”を求めたのだ。

「殿下……我ら民に、どうかお言葉を……!」

場が凍りつく。

殿下は──
あの、沈黙の悪夢を思い出したかのように、
一瞬、動きを止めてしまう。

(殿下……っ!)

イメルダの心臓が跳ねた。

しかしその直後。

アルファルファは、
まっすぐに民を見て──
そっと、静かに言った。

「……僕には……まだ……立派な言葉は……言えない……」

民たちは息を呑む。

殿下は続けた。

「……でも……僕は……
 皆さんの声を、ちゃんと聞ける王になりたい……
 僕一人では……足りないから……
 皆さんと一緒に……国を作っていきたい……」

その言葉は不器用で、
決して華やかだとは言えなかった。

けれど──
たしかに“誠実”だった。

民たちの表情が、ひとつ、またひとつと緩んでいく。

「……殿下……」
「なんて真摯なお言葉だ……」
「飾り立てた言葉より……よほど心に響く……」

やがて、拍手が広がっていった。

王宮の者たちも驚いていた。

「殿下が……あの殿下が……」
「こんなにしっかり民に向き合えるとは……」

イメルダは胸がいっぱいになり、
目をうるませながら殿下を見つめた。

(殿下……本当に……すごい方……)

殿下が壇上から引き返すと、
イメルダは歩み寄り、そっと声をかけた。

「殿下……本当に……素晴らしかったですわ」

殿下は照れながら目をそらし、
控えめに言った。

「……イメルダが……見てくれていたから……」

イメルダの胸がふるりと震えた。

(だめ……本当に……殿下のことばかり考えてしまう……)



その光景を、
遠くから見つめる影があった。

ベータだ。

アルティシアを伴い、
謁見の様子を陰から眺めていたベータは、
歯噛みしながら呟いた。

「……なんだ、あれは……」

アルティシアも目を細める。

「ええ……少し厄介ですわね。
 殿下が“民からの信頼”を得始めていますわ……」

ベータの拳が震えた。

「くそ……あれが人気を得たら……
 俺が王になる道が遠ざかる……!」

アルティシアは、そんなベータに寄り添い、
甘い声で囁いた。

「ご安心くださいませ。
 “殿下が変わるほどの人間”など、存在しませんわ。
 イメルダ様だって……結局はすぐに限界が来ますわよ」

その笑みは、
冷たく歪んだままだった。

しかし──
その言葉は、近い未来において
完全に誤りであることが証明される。

アルファルファは変わり始めていた。
その力は、イメルダの存在が与えている。

物語は加速し始める。


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