婚約破棄されたけれど、頼りない第一王子様と結婚したら溺愛されました

しおしお

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◆第18話 アルティシアの罠──“イメルダ孤立計画”の幕開け

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第18話 アルティシアの罠──“イメルダ孤立計画”の幕開け

アルファルファが民との謁見で見事に信頼を掴んだ翌週。
王宮の空気は、明らかに“第一王子寄り”へと流れ始めていた。

その中心に、
イメルダがいることは誰の目にも明らかだった。

――だからこそ。
アルティシアは、静かに牙を研ぎ始めた。



「殿下が変わられたのは、イメルダ様のおかげらしいわよ」
「王妃教育も順調なんですって」
「やっぱり名門の娘ね。上手に殿下を支えて……」

王宮の廊下で飛び交う声。
それを聞きながら、アルティシアの笑みは凍りついた。

(……支えて? あの女が?
 わたくしから殿下を奪い、
 さらには兄を持ち上げる流れまで作るなんて……)

嫉妬は、花の香りを吸い取るように
じんわりとアルティシアの胸を満たしていく。

だが、彼女は決して表では怒りを出さない。

扇を広げ、優雅に笑った。

「イメルダ様……あなたに、“王妃の重さ”を教えて差し上げますわ」



◆アルティシアの計画 その①

─ イメルダの“無能”を印象づける ─

まずアルティシアは、王妃教育担当の侍女長に接触した。

「イメルダ様には、
 少し……高度な教育も必要かもしれませんわね?」

侍女長は困惑する。

「で、ですが……すでに十分な課程を……」

アルティシアはにっこりと笑った。

「イメルダ様は、王妃になるお方。
 “普通”ではいけませんのよ?」

侍女長は断れない。
結果──
イメルダの負担は徐々に増えていく。

外交儀礼、文書処理、宮廷魔法基礎学、舞踏会交渉術、
さらには一部の“王妃専用の途方もない暗記項目”。

次第に、イメルダは王妃教育で手一杯になり、
殿下と過ごす時間が確実に削られていった。

(……殿下と過ごす時間が……減ってしまっている……)

それは、イメルダにとって
寂しさという形でじわじわ心に積もっていく。



◆アルティシアの計画 その②

─ 周囲に“イメルダ不評”の種を撒く ─

アルティシアは、繋がりのある侍女や下級貴族を呼び集め、
甘い声でささやいた。

「最近、殿下とイメルダ様……すれ違っているそうですわよ?」

「まあ……本当に?」
「仲睦まじいと聞いていたけれど……」

「ええ……殿下が仰っていましたの。
 “最近、イメルダが忙しくて寂しい”と」

実際は、
殿下は愚痴など一切言っていない。

ただ、優しい声で
「少しさみしい」と漏らしただけ。

だがアルティシアの口にかかれば、
それはすべて“イメルダの落ち度“に変わる。

「殿下を一人にする王妃なんて……務まるのかしら?」

「最近、殿下のお姿が少しお疲れのようにも……」

(殿下の顔は夜に優しくなるんだから当然ですわ)
と心の中で突っ込みつつも、
イメルダは知らぬまま噂が広がっていく。



◆アルティシアの計画 その③

─ すれ違いを“本物”にする ─

王妃教育が長引き、
遅い時間に終わった日のこと。

イメルダがようやく殿下の部屋に戻ろうとすると、
通路の角で──
アルティシアとアルファルファが話している姿が目に入った。

「殿下。お疲れのご様子……
 あまり無理なさらないでくださいませ」

「……あ、ありがとう……」

そのとき、アルティシアが
殿下の袖にそっと触れた。

瞬間──
胸の奥がずきんと痛む。

(……殿下……?
 なぜ、アルティシア様と……?)

殿下は気づいていない。
ただ、誰にでも優しいだけ。
いつもの殿下のまま。

だが、イメルダの胸に刺さった針は、
簡単には抜けなかった。

アルティシアは気づいた。
そして──笑った。

(気づきましたのね、イメルダ様?
 あとは、“不安”を育てるだけ)



その夜。

寝室に戻ったイメルダは、
殿下の優しい問いかけに
いつもより少しだけぎこちなく返してしまった。

「……イメルダ……今日も疲れて……?
 大丈夫……?」

「ええ……殿下。申し訳ございません……
 ただ……少し……考えごとをしていましたの」

「……考えごと……?」

殿下は心配そうに覗き込んでくる。

その優しい目を見ると、
胸がまた痛む。

(殿下は……悪くない。
 悪いのは……わたくし……
 こんなことで心が揺れるなんて……)

イメルダは心の中で自分を責めながら、
殿下に微笑んでみせた。

「あまり……気にしないでくださいませ」

殿下はうなずき、
イメルダをそっと抱き寄せた。

(ああ……もう……殿下のことばかり考えてしまう……
 どうしてわたくし……こんなに……)

その胸の痛みは、
アルティシアの黒い笑みによって
静かに育てられていた。

だが──
それは同時に、
イメルダと殿下の絆を
さらに強くする“きっかけ”となる。

そのことを、
アルティシアはまったく理解していなかった。


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