婚約破棄されたけれど、頼りない第一王子様と結婚したら溺愛されました

しおしお

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第22話 ベータ、兄の変化に苛立ちを覚える

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第22話 ベータ、兄の変化に苛立ちを覚える

「――はあああ!? 兄上が、堂々としてきた!? 嘘だろう!?」

王宮の私室で、ベータは声を荒げた。
執事や侍女がびくりと震えるが、誰も言い返せない。

「にわかには信じがたい話ですな……しかし、臣下たちからの噂でも――」

執事は恐る恐る続ける。

「“第一王子殿下は、最近少し雰囲気が変わられた”と」

「変わるわけないだろうがぁぁぁ!!」

ベータは椅子を蹴り飛ばし、苛立ちに任せて歩き回る。

(兄上が変わる?
 堂々と振る舞う?
 イメルダと自然に歩く!?)

「そんなの……全部俺の立場が悪くなるだけじゃないか!!」



ベータにとって、兄のアルファルファは“都合のいい存在”だった。

気弱、優柔不断、目立たない。

王太子の座に近くとも、
まったく威圧感がなく、
自分(ベータ)こそが国王にふさわしいと言われる土台があった。

(兄上が無能だからこそ、俺が優れて見えるのに……!)

それが――崩れようとしている。



「ベータ殿下、落ち着かれませんと……」

「落ち着けるか!!」

彼は怒鳴ると、机を叩いた。

「兄上はあれだぞ!?
 女の手も握れず、ダンスでもイメルダ相手に足踏んでた男だぞ!?
 何をやっても考え過ぎて固まる……
 あの兄上が、変わるわけ……!」

言いながら、自分でも気づく。

(……いや。もしかして……イメルダのせいか?)

イメルダは気が強く、王家でも一目置かれていた。
そんな彼女を“妻”として持ったことで、
兄が変わったのかもしれない。

(だとしたら……面白くない。面白くないぞ……!)



更に苛立ちに拍車をかける出来事が起きた。

「……殿下、アルティシア様がお越しです」

「通せ」

扉が開き、
アルティシアが優雅に微笑む――が、目は笑っていない。

「ベータ殿下。……ご覧になりまして?」

「……何をだ?」

アルティシアは扇子で口元を隠し、
くすりと笑った。

「殿下の兄上――
 あの臆病で、気弱で、優柔不断の第一王子殿下が……
 まるで“妻を守る騎士”のように振る舞っておりましたの」

「……はあ!? 何を言って――」

「殿下、これは現実ですわ」

アルティシアは静かに告げる。

「このままでは……兄上が“次期国王”として本当に支持を得てしまいます。
 殿下の――私たちの未来が、脅かされますわ」

ベータは激しく舌打ちした。

「兄上は“ダメな兄上”のままでいないと困るんだよ!」

「ええ……ですから……」

アルティシアはベータの首に腕を絡めるように寄り添い、
澄ました声で囁いた。

「少し、手を打ちましょう?」



ベータの眉がぴくりと動く。

(手を打つ……?
 兄上が王にふさわしくないと、皆に思わせる策を――
 アルティシアは既に考えている……)

「……具体的には?」

ニヤリと笑うアルティシア。

「殿下の“欠点”が、より大きく見えるようにするのです」

「欠点……?」

「優柔不断さ。曖昧な返事。決断の遅さ。
 何もしなくても、もともとその欠点はありますわ。
 後は、それを“周囲が意識せざるをえない状況”に誘導するだけ」

ベータは口元を歪める。

「つまり……兄上を“無能に見せる”わけだな」

「ええ、その通りですわ、殿下」

アルティシアは妖艶に微笑んだ。

(殿下――兄上がどれだけ変わろうと、
 私たちが“変わったように見せなければ”、
 世間などいくらでも思い込むのです)

アルティシアはそう確信していた。

だが――
彼女は知らない。

その“欠点”がもう、
イメルダの前では欠点でなくなっていることを。

そして、その誠実さと慎重さこそ、
国王に最も必要な“本物の器”として評価される未来を。

二人の企ては、
この後、自らに返ってくる。


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