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第二十話 選ばれる側と、手放す覚悟
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第二十話 選ばれる側と、手放す覚悟
保守派の中核が失脚してから、王都は驚くほど静かになった。
分散型結界は完全に定着し、補助炉の応答速度も安定している。均衡特性研究局は正式に王宮直属の部署として再編され、アルフレッドはその責任者として多忙な日々を送っていた。
市民の間では、もはや「均衡は危険だ」という声は聞かれない。
代わりにささやかれるのは、別の話題。
「北の令嬢は、王都に戻らないのか」
「なぜ来ないの」
「王都は今や、彼女を必要としているのに」
必要。
その言葉は、甘く響く。
だが私は、北の書斎でその報告を聞きながら、静かに首を振った。
「必要とされることと、選ばれることは違います」
レオンハルトは黙っている。
彼は私の決断を尊重する。
だが、王都はまだ諦めていなかった。
数日後、正式な勅書が届く。
王都より北公爵家へ。
内容は明確。
――均衡特性研究局名誉顧問の地位を授与する。
名誉。
実権は伴わない。
だが象徴として、王都は私の名を掲げたいのだ。
私はしばらくその書状を眺めた。
王都は、ようやく私の名を認めた。
かつて価値なしと断じた水晶を、今は王宮の壁に飾ろうとしている。
「受けるか」
レオンハルトの問い。
「……受けます」
彼がわずかに目を細める。
「ただし条件付きで」
私は筆を取る。
返書には、こう記した。
――名誉のみ。常駐せず。北の独立を侵さないこと。
王都は数日間沈黙した。
そして了承の返答が来る。
譲歩。
かつて私を拒んだ王都が、今は譲歩する。
ざまぁ。
それは派手な断罪ではない。
だが立場は完全に逆転していた。
王宮。
名誉顧問任命式。
私は出席しない。
代わりに遠隔通信で参加する。
投影装置に映る私の姿。
貴族たちは静まり返る。
王が宣言する。
「均衡の理論は、北と王都が共に築いた」
共に。
以前なら、王都の功績として塗り替えられていただろう。
だが今は違う。
王は続ける。
「北の令嬢に、王都は感謝する」
私は一礼する。
「均衡は誰かのものではありません」
静かな声。
「偏りを削り、互いを支える理論です」
拍手が起こる。
その中で、アルフレッドはただ静かに立っていた。
式典後、通信が繋がる。
「おめでとう」
彼の声は穏やかだ。
「ありがとうございます」
「戻らないのか」
「戻りません」
迷いはない。
「王都は、もう私なしでも回る」
彼は少しだけ微笑む。
「そうだな」
それは敗北の言葉ではない。
理解の言葉だ。
北。
春の花が咲き始める。
私は庭を歩きながら思う。
必要とされることは、かつて望んだ未来だった。
だが今は違う。
私は選ばれる側ではなく、選ぶ側になった。
王都は均衡を受け入れた。
保守派は消え、影は削られた。
そして私の名は、王都の壁に掲げられる。
だが私は北に立つ。
中心には行かない。
均衡は、中央に座らないからこそ強い。
レオンハルトが隣に立つ。
「これで一区切りだな」
「ええ」
私は空を見上げる。
青く澄んだ空。
ざまぁは終わった。
だが物語は終わらない。
選ばれなかった令嬢は、今や選ぶ側にいる。
そして王都は、彼女を無理に動かせない。
それが最大の逆転だった。
保守派の中核が失脚してから、王都は驚くほど静かになった。
分散型結界は完全に定着し、補助炉の応答速度も安定している。均衡特性研究局は正式に王宮直属の部署として再編され、アルフレッドはその責任者として多忙な日々を送っていた。
市民の間では、もはや「均衡は危険だ」という声は聞かれない。
代わりにささやかれるのは、別の話題。
「北の令嬢は、王都に戻らないのか」
「なぜ来ないの」
「王都は今や、彼女を必要としているのに」
必要。
その言葉は、甘く響く。
だが私は、北の書斎でその報告を聞きながら、静かに首を振った。
「必要とされることと、選ばれることは違います」
レオンハルトは黙っている。
彼は私の決断を尊重する。
だが、王都はまだ諦めていなかった。
数日後、正式な勅書が届く。
王都より北公爵家へ。
内容は明確。
――均衡特性研究局名誉顧問の地位を授与する。
名誉。
実権は伴わない。
だが象徴として、王都は私の名を掲げたいのだ。
私はしばらくその書状を眺めた。
王都は、ようやく私の名を認めた。
かつて価値なしと断じた水晶を、今は王宮の壁に飾ろうとしている。
「受けるか」
レオンハルトの問い。
「……受けます」
彼がわずかに目を細める。
「ただし条件付きで」
私は筆を取る。
返書には、こう記した。
――名誉のみ。常駐せず。北の独立を侵さないこと。
王都は数日間沈黙した。
そして了承の返答が来る。
譲歩。
かつて私を拒んだ王都が、今は譲歩する。
ざまぁ。
それは派手な断罪ではない。
だが立場は完全に逆転していた。
王宮。
名誉顧問任命式。
私は出席しない。
代わりに遠隔通信で参加する。
投影装置に映る私の姿。
貴族たちは静まり返る。
王が宣言する。
「均衡の理論は、北と王都が共に築いた」
共に。
以前なら、王都の功績として塗り替えられていただろう。
だが今は違う。
王は続ける。
「北の令嬢に、王都は感謝する」
私は一礼する。
「均衡は誰かのものではありません」
静かな声。
「偏りを削り、互いを支える理論です」
拍手が起こる。
その中で、アルフレッドはただ静かに立っていた。
式典後、通信が繋がる。
「おめでとう」
彼の声は穏やかだ。
「ありがとうございます」
「戻らないのか」
「戻りません」
迷いはない。
「王都は、もう私なしでも回る」
彼は少しだけ微笑む。
「そうだな」
それは敗北の言葉ではない。
理解の言葉だ。
北。
春の花が咲き始める。
私は庭を歩きながら思う。
必要とされることは、かつて望んだ未来だった。
だが今は違う。
私は選ばれる側ではなく、選ぶ側になった。
王都は均衡を受け入れた。
保守派は消え、影は削られた。
そして私の名は、王都の壁に掲げられる。
だが私は北に立つ。
中心には行かない。
均衡は、中央に座らないからこそ強い。
レオンハルトが隣に立つ。
「これで一区切りだな」
「ええ」
私は空を見上げる。
青く澄んだ空。
ざまぁは終わった。
だが物語は終わらない。
選ばれなかった令嬢は、今や選ぶ側にいる。
そして王都は、彼女を無理に動かせない。
それが最大の逆転だった。
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