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第二十一話 揺らぐ王命と、北の宣言
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第二十一話 揺らぐ王命と、北の宣言
名誉顧問任命式から半月。
王都は安定していた。
補助炉は滑らかに動き、均衡特性研究局も順調に成果を積み重ねている。
だが、安定は時に“油断”を生む。
それは王都も例外ではなかった。
「王命により、王都魔導炉網の最終統括権を研究局へ移管する」
王宮で発表されたその一文は、穏やかに聞こえる。
だが内容は重い。
研究局――すなわちアルフレッドに、実質的な魔導炉網の管理権限を集中させるということだ。
分散型結界は理念上“中心を持たない”はず。
だが管理権限が一局に集まれば、それは新たな中心になる。
アルフレッドは沈黙した。
王の信任。
名誉。
責任。
だが同時に――違和感。
彼は夜、波形記録を見つめながら独り言のように呟いた。
「これは……均衡か?」
北。
私は通信越しにその報告を聞いた。
「集中管理ですか」
「形式上は効率化だ」
レオンハルトが言う。
「だが実質は再中央化」
私は静かに頷く。
「分散型は管理を分散させてこそ意味があります」
王都は均衡を受け入れた。
だが無意識に“統括者”を欲している。
象徴。
指揮者。
責任の集約。
数日後、アルフレッドから直接通信が入る。
「王命だ」
「ええ」
「だが、違和感がある」
彼は迷っている。
昇進でもある。
王都の信頼の証でもある。
だがそれは、均衡の理念と矛盾する。
「どうすればいい」
問いは率直だった。
私は少し考え、答える。
「選択してください」
「……」
「王都が望む統括者になるか、均衡の理念を守るか」
彼は沈黙する。
数秒。
だが重い。
北の夜風が窓を揺らす。
王都。
翌日の王宮会議。
アルフレッドは王の前に立つ。
「王命、光栄に存じます」
「受けるか」
「……一部のみ」
ざわめき。
「統括権は受けません。分散管理のまま、調整役に留まります」
王の眉が動く。
「なぜだ」
「均衡は中心を持ちません」
はっきりとした声。
「私が統括すれば、それは新たな中枢になります」
沈黙。
かつてなら反逆と取られかねない。
だが今は違う。
王はしばらく彼を見つめ、そして小さく頷いた。
「……ならば、分散を守れ」
「はい」
王都は再中央化を踏みとどまった。
ざまぁ、と言うには静かすぎる。
だが確実に。
王命でさえ、均衡の前では修正された。
北。
通信が繋がる。
「断ったのですね」
「半分だけな」
彼の声は少し軽い。
「王都は怒っていない」
「ええ。怒れません」
均衡はすでに根付いている。
中央集権への逆戻りは、民意も望まない。
「あなたは選びました」
「ああ」
「それで十分です」
通信が切れる。
レオンハルトが静かに言う。
「彼は成長したな」
「ええ」
かつて“価値なし”と断じた彼が、今は理念を守る側にいる。
ざまぁは、相手の破滅ではない。
変化だ。
夜。
私は庭に立つ。
風は穏やか。
王都は中央を再び作ろうとして、踏みとどまった。
均衡は守られた。
私は北にいる。
だが王都の選択は、確実に変わっている。
選ばれなかった令嬢は、今や王命さえ修正する存在になった。
それは静かな、しかし決定的な逆転だった。
名誉顧問任命式から半月。
王都は安定していた。
補助炉は滑らかに動き、均衡特性研究局も順調に成果を積み重ねている。
だが、安定は時に“油断”を生む。
それは王都も例外ではなかった。
「王命により、王都魔導炉網の最終統括権を研究局へ移管する」
王宮で発表されたその一文は、穏やかに聞こえる。
だが内容は重い。
研究局――すなわちアルフレッドに、実質的な魔導炉網の管理権限を集中させるということだ。
分散型結界は理念上“中心を持たない”はず。
だが管理権限が一局に集まれば、それは新たな中心になる。
アルフレッドは沈黙した。
王の信任。
名誉。
責任。
だが同時に――違和感。
彼は夜、波形記録を見つめながら独り言のように呟いた。
「これは……均衡か?」
北。
私は通信越しにその報告を聞いた。
「集中管理ですか」
「形式上は効率化だ」
レオンハルトが言う。
「だが実質は再中央化」
私は静かに頷く。
「分散型は管理を分散させてこそ意味があります」
王都は均衡を受け入れた。
だが無意識に“統括者”を欲している。
象徴。
指揮者。
責任の集約。
数日後、アルフレッドから直接通信が入る。
「王命だ」
「ええ」
「だが、違和感がある」
彼は迷っている。
昇進でもある。
王都の信頼の証でもある。
だがそれは、均衡の理念と矛盾する。
「どうすればいい」
問いは率直だった。
私は少し考え、答える。
「選択してください」
「……」
「王都が望む統括者になるか、均衡の理念を守るか」
彼は沈黙する。
数秒。
だが重い。
北の夜風が窓を揺らす。
王都。
翌日の王宮会議。
アルフレッドは王の前に立つ。
「王命、光栄に存じます」
「受けるか」
「……一部のみ」
ざわめき。
「統括権は受けません。分散管理のまま、調整役に留まります」
王の眉が動く。
「なぜだ」
「均衡は中心を持ちません」
はっきりとした声。
「私が統括すれば、それは新たな中枢になります」
沈黙。
かつてなら反逆と取られかねない。
だが今は違う。
王はしばらく彼を見つめ、そして小さく頷いた。
「……ならば、分散を守れ」
「はい」
王都は再中央化を踏みとどまった。
ざまぁ、と言うには静かすぎる。
だが確実に。
王命でさえ、均衡の前では修正された。
北。
通信が繋がる。
「断ったのですね」
「半分だけな」
彼の声は少し軽い。
「王都は怒っていない」
「ええ。怒れません」
均衡はすでに根付いている。
中央集権への逆戻りは、民意も望まない。
「あなたは選びました」
「ああ」
「それで十分です」
通信が切れる。
レオンハルトが静かに言う。
「彼は成長したな」
「ええ」
かつて“価値なし”と断じた彼が、今は理念を守る側にいる。
ざまぁは、相手の破滅ではない。
変化だ。
夜。
私は庭に立つ。
風は穏やか。
王都は中央を再び作ろうとして、踏みとどまった。
均衡は守られた。
私は北にいる。
だが王都の選択は、確実に変わっている。
選ばれなかった令嬢は、今や王命さえ修正する存在になった。
それは静かな、しかし決定的な逆転だった。
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