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第11話 はじまる激突、揺らぐ心
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第11話 はじまる激突、揺らぐ心
黒い靄が塔の内部をじわりと満たし始めた。
フェリシェールは奥の壁際へ下がりながら、胸の鼓動が痛いほど早くなっているのを感じた。
しかし、その眼はしっかりとアレンの背中を捉えていた。
「アレン殿下……」
呼ぼうとした声は震えていたが、アレンは振り返らず、ただ一歩、ディアスへ踏み込む。
「ディアス。今すぐ撤退すればまだ命だけは助けてやる」
冷ややかな声。
だがその中には、かすかに哀れみの色があった。
かつてディアスは優秀な宮廷魔術師だった。
自他ともに認める才覚。努力家で、熱心で。
だが今。
「命なんて、もうどうでもいいんです。
僕が欲しいのは……フェリシェールだけだ」
赤く濁った瞳が、まっすぐにフェリシェールを射抜く。
その瞬間、フェリシェールの身体が震えた。
「……っ」
(いや……嫌だ……あの魔力……)
アレンが剣を構えた。
「その名を呼ぶな」
「ふふ……嫉妬ですか、殿下?」
「違う。
私は、君のような魔物に彼女を呼ばせたくないだけだ」
言い終わるや否や、アレンが低く詠唱する。
「銀嵐よ、刃となれ」
空気が震え、光の粒が剣にまとわりつく。
銀の風が巻き起こり、塔の内部の黒い靄を切り裂いた。
ディアスは微笑む。
「まるで光の騎士ですね。
……でも、足りない」
ディアスの足元から、影が滴るように溢れ広がった。
黒い靄が一気に濃くなり、塔の空気が重く沈む。
「これは……!」
フェリシェールは胸の奥がきゅっと痛んだ。
体内の魔力が騒ぎ出す。
(だめ……落ち着いて……落ち着かないと……)
「フェリシェール、下がって!」
アレンが鋭く叫んだ。
その声に反応しようとしたが、身体がわずかに遅れた。
(頭が……重い……魔力が勝手に動く……)
ディアスの瞳が細まる。
「やっぱり……呼んでいるね。
君の魔力は僕を求めている」
「下がれと言った」
アレンの声が低く響く。
「求めてなどいない。
……フェリシェールは恐がっている。それが分からないのか」
「恐がらせているのは殿下でしょう?」
ディアスが指をひらりと動かした。
直後、黒い靄が刃のように凝縮し、アレンめがけて飛ぶ。
アレンは即座に剣で受け、靄は白い火花を散らして弾けた。
「甘い」
黒い靄が次々と襲いかかる。
アレンは回避しながらフェリシェールとの距離を守る。
(殿下……一人で全部、受け止めて……)
フェリシェールの手が震えた。
(私も……何か力にならなければ……)
でも、怖かった。
自分の魔力が暴走しそうで。
アレンが剣を振り抜く。
銀の風が起こり、靄を切り裂く。
「ディアス……君はもう人ではない。
禁術に魅入られ、心も魂も奪われている」
「人なんて……弱い生き物ですよ。
弱いからこそ、君に“惹かれた”。
でも……フェリシェールは違う」
再び視線がフェリシェールに向けられる。
「彼女の魔力は僕と“響き合っている”。
僕を拒絶できない。
……ねぇ、フェリシェール?」
「違う……!私は、あなたなんか……!」
声を振り絞った瞬間。
胸の奥で魔力が弾けた。
「っ……!」
体中を黄金の光が駆け巡る。
視界が揺れ、膝が崩れそうになる。
(だめ……制御……できない……!)
アレンが凍りついた表情で振り返った。
「フェリシェール!」
「やっぱり……僕を呼んでいる。
ああ……美しい……!」
「黙れ!」
アレンが怒声を上げたのは初めてだった。
その一瞬で、フェリシェールの目に涙が滲む。
(殿下……私……)
アレンが駆け寄ろうとした瞬間、ディアスが動いた。
「彼女に触れさせない!」
黒い影がアレンの足元を絡め取るように伸びる。
アレンは剣を振り下ろし刻み裂くが、次の影がすぐ迫る。
「くっ……!」
フェリシェールの魔力はさらに暴れ、塔の壁面が薄く光り始める。
魔力が結界に反応して、共鳴しているのだ。
(……このままでは結界が……壊れてしまう……!)
ディアスの笑みが深まる。
「フェリシェール……君が望むなら、僕が助けてあげる。
この暴走を止められるのは、僕だけだよ」
その口ぶりに、フェリシェールの瞳が大きく開く。
「違う……!来ないで……!」
アレンが叫ぶ。
「近づくな、ディアス!!」
「君に止められるのかな?」
黒い靄が襲いかかる。
アレンは剣を構え、決死の覚悟で立ちはだかった。
「フェリシェール。絶対に、私が止める。
だから……耐えてくれ」
その声は強く、震えていて、優しかった。
フェリシェールの胸が、熱く痛む。
(殿下……どうか、無事で……)
塔の内部は、銀の風と黒い影と黄金の光が入り乱れ始めていた。
初めての本格的な戦いが、今、幕を開けた。
黒い靄が塔の内部をじわりと満たし始めた。
フェリシェールは奥の壁際へ下がりながら、胸の鼓動が痛いほど早くなっているのを感じた。
しかし、その眼はしっかりとアレンの背中を捉えていた。
「アレン殿下……」
呼ぼうとした声は震えていたが、アレンは振り返らず、ただ一歩、ディアスへ踏み込む。
「ディアス。今すぐ撤退すればまだ命だけは助けてやる」
冷ややかな声。
だがその中には、かすかに哀れみの色があった。
かつてディアスは優秀な宮廷魔術師だった。
自他ともに認める才覚。努力家で、熱心で。
だが今。
「命なんて、もうどうでもいいんです。
僕が欲しいのは……フェリシェールだけだ」
赤く濁った瞳が、まっすぐにフェリシェールを射抜く。
その瞬間、フェリシェールの身体が震えた。
「……っ」
(いや……嫌だ……あの魔力……)
アレンが剣を構えた。
「その名を呼ぶな」
「ふふ……嫉妬ですか、殿下?」
「違う。
私は、君のような魔物に彼女を呼ばせたくないだけだ」
言い終わるや否や、アレンが低く詠唱する。
「銀嵐よ、刃となれ」
空気が震え、光の粒が剣にまとわりつく。
銀の風が巻き起こり、塔の内部の黒い靄を切り裂いた。
ディアスは微笑む。
「まるで光の騎士ですね。
……でも、足りない」
ディアスの足元から、影が滴るように溢れ広がった。
黒い靄が一気に濃くなり、塔の空気が重く沈む。
「これは……!」
フェリシェールは胸の奥がきゅっと痛んだ。
体内の魔力が騒ぎ出す。
(だめ……落ち着いて……落ち着かないと……)
「フェリシェール、下がって!」
アレンが鋭く叫んだ。
その声に反応しようとしたが、身体がわずかに遅れた。
(頭が……重い……魔力が勝手に動く……)
ディアスの瞳が細まる。
「やっぱり……呼んでいるね。
君の魔力は僕を求めている」
「下がれと言った」
アレンの声が低く響く。
「求めてなどいない。
……フェリシェールは恐がっている。それが分からないのか」
「恐がらせているのは殿下でしょう?」
ディアスが指をひらりと動かした。
直後、黒い靄が刃のように凝縮し、アレンめがけて飛ぶ。
アレンは即座に剣で受け、靄は白い火花を散らして弾けた。
「甘い」
黒い靄が次々と襲いかかる。
アレンは回避しながらフェリシェールとの距離を守る。
(殿下……一人で全部、受け止めて……)
フェリシェールの手が震えた。
(私も……何か力にならなければ……)
でも、怖かった。
自分の魔力が暴走しそうで。
アレンが剣を振り抜く。
銀の風が起こり、靄を切り裂く。
「ディアス……君はもう人ではない。
禁術に魅入られ、心も魂も奪われている」
「人なんて……弱い生き物ですよ。
弱いからこそ、君に“惹かれた”。
でも……フェリシェールは違う」
再び視線がフェリシェールに向けられる。
「彼女の魔力は僕と“響き合っている”。
僕を拒絶できない。
……ねぇ、フェリシェール?」
「違う……!私は、あなたなんか……!」
声を振り絞った瞬間。
胸の奥で魔力が弾けた。
「っ……!」
体中を黄金の光が駆け巡る。
視界が揺れ、膝が崩れそうになる。
(だめ……制御……できない……!)
アレンが凍りついた表情で振り返った。
「フェリシェール!」
「やっぱり……僕を呼んでいる。
ああ……美しい……!」
「黙れ!」
アレンが怒声を上げたのは初めてだった。
その一瞬で、フェリシェールの目に涙が滲む。
(殿下……私……)
アレンが駆け寄ろうとした瞬間、ディアスが動いた。
「彼女に触れさせない!」
黒い影がアレンの足元を絡め取るように伸びる。
アレンは剣を振り下ろし刻み裂くが、次の影がすぐ迫る。
「くっ……!」
フェリシェールの魔力はさらに暴れ、塔の壁面が薄く光り始める。
魔力が結界に反応して、共鳴しているのだ。
(……このままでは結界が……壊れてしまう……!)
ディアスの笑みが深まる。
「フェリシェール……君が望むなら、僕が助けてあげる。
この暴走を止められるのは、僕だけだよ」
その口ぶりに、フェリシェールの瞳が大きく開く。
「違う……!来ないで……!」
アレンが叫ぶ。
「近づくな、ディアス!!」
「君に止められるのかな?」
黒い靄が襲いかかる。
アレンは剣を構え、決死の覚悟で立ちはだかった。
「フェリシェール。絶対に、私が止める。
だから……耐えてくれ」
その声は強く、震えていて、優しかった。
フェリシェールの胸が、熱く痛む。
(殿下……どうか、無事で……)
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初めての本格的な戦いが、今、幕を開けた。
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