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第13話 崩れゆく塔、決意の光
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第13話 崩れゆく塔、決意の光
塔の空気が、もう人が耐えられる密度ではなくなっていた。
黒い靄は嵐のように吹き荒れ、壁に刻まれた魔法陣はひび割れ、結界核は不気味な鼓動を響かせている。
アレンはフェリシェールを腕に抱えたまま、ゆっくりと彼女を床へ下ろした。
「フェリシェール。ここから動くな。
君の魔力は今、不安定すぎる」
「で、殿下……私は、大丈夫です……だから……!」
フェリシェールは震える手を伸ばすが、アレンは微かに首を振った。
「違う。君が無事かどうかじゃない。
君を……危険に晒したくないんだ」
その声は震えていた。
怒りではない。
恐れでもない。
(殿下……私のせいで……こんなにも……)
フェリシェールの胸が締めつけられる。
その背後で、ディアスの黒い靄が塔の天井にまで広がり、まるで大樹の根が空間を侵食するように伸び始めた。
「殿下の魔力なんかでは、もう止められませんよ。
ここは……僕が支配した。
全部、僕の領域だ」
ディアスがゆっくりと手を広げると、塔の空気は一層黒く濁る。
床面がどろりと影に溶け、黒い手が何本も生え出し、アレンに襲いかかった。
「殿下!」
フェリシェールの叫びより早く、アレンが剣を振るう。
銀の風が巻き起こり、影を切り裂く。
が、次の影がまた襲う。
「チィッ……!」
アレンは影を斬り払うたびに後退し、やがて塔の中央近くまで追い込まれた。
「殿下……負けてしまう……!」
フェリシェールは拳を握る。
(私が……足手まといになっている……!
殿下の魔力を乱して……結界まで揺らして……
全部、私のせい……!)
胸の奥で黄金の魔力がざわめく。
熱い。
痛い。
でも、怖さよりも強く感じるのは――
(守りたい)
初めて芽生えた強い感情だった。
アレンは、すでに息を荒げていた。
銀の風の輝きも少し弱い。
「まだだ……私は、倒れない……」
「殿下……もうやめて……!」
フェリシェールが叫んだ瞬間、ディアスが嘲るように笑った。
「やめる?やめられるはずがない。
殿下は……“王族の責務”という鎖で縛られた男だ。
たとえ限界でも、退けない。
……だから、弱い」
「弱いのは……君の方だ、ディアス」
アレンが剣を支えに立ち上がった。
「力に溺れ、他者を踏みにじり、
その果てに、愛と呼べるものを見失った。
そんなものは……ただの執着だ」
ディアスの目が赤く光る。
「黙れ!!
黙れ黙れ黙れ!!
僕は……僕こそが……フェリシェールを救える……!
殿下ではない……僕だ!!」
影が爆発するように広がり、塔の床全てが黒い海のように沈んだ。
アレンは体勢を崩し、膝をついた。
「殿下!」
アレンが倒れる――
そう思った瞬間。
フェリシェールの中で、何かが“ぷつり”と切れた。
(嫌……!
殿下が傷つくところなんて……見たくない……!
私のせいで……誰も傷ついてほしくない……!)
身体の中心から、黄金が突き上げる。
痛みではない。
怒りでもない。
ただ、強く、純粋な願いが光となって湧き上がる。
「……っ!」
フェリシェールの金の瞳が大きく見開かれた。
次の瞬間、塔の内部に“風”が起こった。
黄金の魔力が、フェリシェールの周囲に渦を作るように立ちのぼる。
ディアスが驚きの声を漏らす。
「ま……さか……自力で……!?
まだ覚醒していないはず……いや……
そんな……これは……!」
アレンも目を見開いた。
「フェリシェール……?」
フェリシェールは震える手を伸ばした。
「私は……殿下を守りたい……
その気持ちだけは……揺らがない……!」
彼女の魔力は暴走ではなかった。
“意思”を持って奔り始めていた。
黄金の光はディアスの影に触れると、
じゅっ、と音を立てて影を溶かした。
「うっ……!? な……んで……
僕の影が……溶ける……?」
「フェリシェールの魔力は……純粋だからだ」
アレンが立ち上がり、フェリシェールの前に並ぶように歩み寄る。
「欲望や嫉妬に汚された禁術の影など、
彼女の光の前では……ただの闇にすぎない」
ディアスは目を見開き、後ずさる。
「う、嘘だ……そんな……こんな……!」
フェリシェールの黄金光がさらに強まる。
塔の壁に反射し、内部全体が金色に染まる。
「私は……殿下を守りたい。
守れる存在になりたい。
もう……自分のせいで誰かが傷つくのを見たくない……!」
涙が落ちたが、その表情は揺らがない。
「だから……!」
黄金の魔力が一気に中心へ収束する。
「私の光で……闇を払う!」
轟音と共に、黄金の奔流が放たれた。
黒い影が焼け、塔の床の一部が白く輝く。
ディアスの体が弾き飛ばされ、影が千切れる。
「ぐっ……ああああああああ!!」
影が消えた場所には、
かすれた呻きと、倒れ込むディアスの姿だけが残った。
塔の内部は、黄金の残光だけを残して、静寂に包まれた。
塔の空気が、もう人が耐えられる密度ではなくなっていた。
黒い靄は嵐のように吹き荒れ、壁に刻まれた魔法陣はひび割れ、結界核は不気味な鼓動を響かせている。
アレンはフェリシェールを腕に抱えたまま、ゆっくりと彼女を床へ下ろした。
「フェリシェール。ここから動くな。
君の魔力は今、不安定すぎる」
「で、殿下……私は、大丈夫です……だから……!」
フェリシェールは震える手を伸ばすが、アレンは微かに首を振った。
「違う。君が無事かどうかじゃない。
君を……危険に晒したくないんだ」
その声は震えていた。
怒りではない。
恐れでもない。
(殿下……私のせいで……こんなにも……)
フェリシェールの胸が締めつけられる。
その背後で、ディアスの黒い靄が塔の天井にまで広がり、まるで大樹の根が空間を侵食するように伸び始めた。
「殿下の魔力なんかでは、もう止められませんよ。
ここは……僕が支配した。
全部、僕の領域だ」
ディアスがゆっくりと手を広げると、塔の空気は一層黒く濁る。
床面がどろりと影に溶け、黒い手が何本も生え出し、アレンに襲いかかった。
「殿下!」
フェリシェールの叫びより早く、アレンが剣を振るう。
銀の風が巻き起こり、影を切り裂く。
が、次の影がまた襲う。
「チィッ……!」
アレンは影を斬り払うたびに後退し、やがて塔の中央近くまで追い込まれた。
「殿下……負けてしまう……!」
フェリシェールは拳を握る。
(私が……足手まといになっている……!
殿下の魔力を乱して……結界まで揺らして……
全部、私のせい……!)
胸の奥で黄金の魔力がざわめく。
熱い。
痛い。
でも、怖さよりも強く感じるのは――
(守りたい)
初めて芽生えた強い感情だった。
アレンは、すでに息を荒げていた。
銀の風の輝きも少し弱い。
「まだだ……私は、倒れない……」
「殿下……もうやめて……!」
フェリシェールが叫んだ瞬間、ディアスが嘲るように笑った。
「やめる?やめられるはずがない。
殿下は……“王族の責務”という鎖で縛られた男だ。
たとえ限界でも、退けない。
……だから、弱い」
「弱いのは……君の方だ、ディアス」
アレンが剣を支えに立ち上がった。
「力に溺れ、他者を踏みにじり、
その果てに、愛と呼べるものを見失った。
そんなものは……ただの執着だ」
ディアスの目が赤く光る。
「黙れ!!
黙れ黙れ黙れ!!
僕は……僕こそが……フェリシェールを救える……!
殿下ではない……僕だ!!」
影が爆発するように広がり、塔の床全てが黒い海のように沈んだ。
アレンは体勢を崩し、膝をついた。
「殿下!」
アレンが倒れる――
そう思った瞬間。
フェリシェールの中で、何かが“ぷつり”と切れた。
(嫌……!
殿下が傷つくところなんて……見たくない……!
私のせいで……誰も傷ついてほしくない……!)
身体の中心から、黄金が突き上げる。
痛みではない。
怒りでもない。
ただ、強く、純粋な願いが光となって湧き上がる。
「……っ!」
フェリシェールの金の瞳が大きく見開かれた。
次の瞬間、塔の内部に“風”が起こった。
黄金の魔力が、フェリシェールの周囲に渦を作るように立ちのぼる。
ディアスが驚きの声を漏らす。
「ま……さか……自力で……!?
まだ覚醒していないはず……いや……
そんな……これは……!」
アレンも目を見開いた。
「フェリシェール……?」
フェリシェールは震える手を伸ばした。
「私は……殿下を守りたい……
その気持ちだけは……揺らがない……!」
彼女の魔力は暴走ではなかった。
“意思”を持って奔り始めていた。
黄金の光はディアスの影に触れると、
じゅっ、と音を立てて影を溶かした。
「うっ……!? な……んで……
僕の影が……溶ける……?」
「フェリシェールの魔力は……純粋だからだ」
アレンが立ち上がり、フェリシェールの前に並ぶように歩み寄る。
「欲望や嫉妬に汚された禁術の影など、
彼女の光の前では……ただの闇にすぎない」
ディアスは目を見開き、後ずさる。
「う、嘘だ……そんな……こんな……!」
フェリシェールの黄金光がさらに強まる。
塔の壁に反射し、内部全体が金色に染まる。
「私は……殿下を守りたい。
守れる存在になりたい。
もう……自分のせいで誰かが傷つくのを見たくない……!」
涙が落ちたが、その表情は揺らがない。
「だから……!」
黄金の魔力が一気に中心へ収束する。
「私の光で……闇を払う!」
轟音と共に、黄金の奔流が放たれた。
黒い影が焼け、塔の床の一部が白く輝く。
ディアスの体が弾き飛ばされ、影が千切れる。
「ぐっ……ああああああああ!!」
影が消えた場所には、
かすれた呻きと、倒れ込むディアスの姿だけが残った。
塔の内部は、黄金の残光だけを残して、静寂に包まれた。
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