見た目は子供、頭脳は大人。 公爵令嬢セリカ

しおしお

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10-6 破滅への道 ― 悪徳金融業者の終焉

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10-6 破滅への道 ― 悪徳金融業者の終焉

 ――ついに、その日が訪れた。

 ディオール領を揺るがせた悪徳金融業者たちの罪が、白日の下に晒される日。
 会場には領民、商人、農民、そして有力者たちが一堂に集まっていた。
 その中央に立つのは、領主代理セリカ・ディオール。
 凛とした立ち姿に、誰もが息を呑む。

「皆さん、本日はお集まりいただき、ありがとうございます」

 セリカの声は、穏やかでありながらも、不思議と誰の耳にも鮮明に届いた。
 その一言で、ざわめきが静まり返る。

「今回、私たちの領で起きた不当な取引と搾取の実態を明らかにし、二度と同じ過ちを繰り返さないための場を設けました」

 その瞳には、冷たい怒りと、温かな正義の光が宿っていた。


---

 壇上の机に、証拠の山が積まれている。
 セリカは一枚の契約書を手に取り、高く掲げた。

「これは、彼らが農民や商人に無理やり結ばせた契約書です。
 一見、整った取引のように見えますが――ここに記された“利子率”を見てください。毎月の返済額が、借り入れの三倍。返済が一日でも遅れれば、担保の家も畑も没収される」

 会場から、驚きと怒りの声が上がった。

「こんな契約が……!」
「人の弱みに付け込んで……!」

 セリカは静かにうなずく。
「ええ、彼らは人の誠実さと恐怖心を利用していました。利益を得るために、人の生活を犠牲にしたのです」

 机の端に座る悪徳金融業者たちの顔がみるみる青ざめていく。
 それでも、リーダー格の男――オズワルドだけは、なおも虚勢を張っていた。

「……そ、そうだとしても!」
 彼は椅子を軋ませて立ち上がった。
「我々も商人です! 利益を得るのは当然だ! 取引とはそういうものだろう!」

 だが、セリカは微笑みながら言葉を返した。

「利益を得ること自体は悪ではありません。
 ですが――“他人の絶望”の上に成り立つ利益は、商売ではなく、ただの略奪です」

 その言葉は、氷のように冷たく、しかし鋭い正義の刃のように突き刺さった。


---

 セリカはカトレアに合図を送る。
 次の瞬間、魔法録音具《マギア・コーダー》が起動し、淡い光と共に音声が再生された。

> 『返済が遅れたら、担保は全部もらう。それが契約だ』
『ははっ、これでも前より優しい条件なんだぜ?』



 会場の空気が凍りついた。
 それは、オズワルドたち自身の声だった。

「な、なぜそれを……!?」

「あなたたちが領外で再び不当契約を行っていた証拠です」
 セリカは淡々と告げた。
「あなたたちの“口”が、自らの罪を証明しました」

 オズワルドたちは顔面蒼白となり、次々に弁解を始めた。
「誤解だ! 脅したつもりは――」
「領民が勝手に勘違いを――!」

 だが、セリカは首を横に振る。
「いいえ。ここにいる皆さんが証人です」

 商人たち、農民たち、かつての被害者たちが立ち上がった。
 「俺の家を奪ったのはあんたらだ!」
 「うちの子供は、あんたらのせいで飢えたんだ!」

 怒りと涙の声が会場に響く。
 その中で、セリカだけが静かに立っていた。


---

 やがて、彼女は宣告を下した。

「――オズワルド一派に告ぐ。
 あなたたちはディオール領法第八条、詐欺および搾取行為により、有罪と認めます。
 本日をもって、商業権の剥奪および領外追放とします」

 広間に、沈黙が落ちた。
 やがて、それが波紋のように広がり、拍手と歓声へと変わっていく。

「セリカ様、万歳!」
「ディオール家に栄光あれ!」

 人々の声が一斉に響く中、オズワルドたちは護衛に囲まれ、連行されていった。
 彼らが二度とこの地に戻ることはなかった。


---

 その夜。
 邸宅の執務室で、セリカは窓辺に立ち、月を見上げていた。

「終わったわね……」

 ドライドが穏やかにうなずく。
「はい。これで領内は本当の意味で救われました。お嬢様のご英断です」

 セリカは小さく微笑んだ。
「私一人の力じゃないわ。商人たち、農民たち、皆が勇気を出してくれたおかげ」

「しかし、お嬢様の導きがなければ、この結末はなかったでしょう」

「……そうかもしれないわね。でも、これからも油断はできない。
 正義を守るには、戦い続けなければならないもの」

 窓の外では、夜風が静かに吹き抜けていた。
 ディオール領は今、確かに新しい時代を迎えようとしていた。


---

 翌朝、領内ではセリカの名を称える声があちこちで上がった。
 「ディオールの令嬢こそ、真の守り神だ」
 「彼女がいる限り、この領に闇は訪れない」

 そして、セリカ自身は静かに胸の内で呟いた。

> 「――正義とは、ただ罰することではない。
  人を導き、立ち上がらせる力のことよ」



 その言葉とともに、朝の光が差し込み、彼女の金の髪を照らした。
 それはまるで、夜明けとともに訪れる希望の光のようだった。


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