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第13話 第二王子レオンハルトとの接触
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第13話 第二王子レオンハルトとの接触
王都の夜は、いつものように華やかだった。
王宮の庭園では、月明かりが白い花々を照らし、静かな風が葉を揺らしている。
そんな中、黒いマントを羽織った一人の女性が、影のように歩みを進めていた。
ソフィアだった。
メイド服の上にマントをかけ、フードを深く被り、足音を殺して庭園の奥へ進む。
彼女の目的は、第二王子レオンハルトとの接触だった。
庭園の奥、噴水の近くに、ひとりの男が立っていた。
黒髪を後ろで束ね、鋭い銀色の瞳を持つレオンハルト王子。
彼は月を見上げ、静かに待っていた。
ソフィアが近づくと、レオンハルトは振り返った。
「……兄上の新しい婚約者だったな?
その前は、元の婚約者のメイドだったか。
出世したもんだ」
皮肉交じりの声に、ソフィアは涼しい笑みを返した。
「ええ、その通りですわ」
彼女は一歩近づき、声をひそめた。
「――あの方に、本当に次期国王の資質があるのか。
わたくし、疑問を抱いております」
レオンハルトの表情がわずかに揺れる。
「ほう……」
ソフィアは構わず言葉を重ねた。
「殿下の方がふさわしいと、わたくし考えております。
この国を思うなら、殿下が立つべきです。
及ばずながら――わたくしがお力になります」
囁く声は甘美で、しかし底知れぬ響きを伴っていた。
月明かりに照らされたソフィアは、まるで運命を操る魔女のようだった。
「……君は、一体何を望んでいる?」
レオンハルトの声は低く、鋭さを増す。
ソフィアは唇に指先を添え、意味深な笑みを浮かべた。
「望み? ただ真実を申し上げただけですわ。
どう受け取るかは――殿下次第です」
夜風が二人の間を吹き抜ける。
レオンハルトはしばらく沈黙した後、ゆっくりと口を開いた。
「証拠はあるのか?
兄上の不正を、証明できるもの」
ソフィアは懐から一枚の羊皮紙を取り出した。
「こちらですわ。
殿下が愛人を王宮に連れ込んだ記録、侍従への口止め、さらには……
わたくしが直接目撃した場面も記してあります」
レオンハルトは羊皮紙を受け取り、月明かりの下で目を通した。
詳細な記述に、彼の瞳が鋭く細まる。
「……確かに、兄上らしいな」
彼は羊皮紙を折り、懐にしまった。
「これをどうするつもりだ?」
ソフィアは控えめに微笑んだ。
「殿下にお任せしますわ。
わたくしは、ただ……お嬢様の仇を討ちたいだけです」
レオンハルトは一瞬、眉を寄せた。
「お嬢様……クラリッサのことか」
ソフィアは静かに頷いた。
「はい。
彼女は、殿下に捨てられたのです。
わたくしは、その無念を晴らしたい」
レオンハルトは噴水の縁に腰を下ろし、ソフィアを見上げた。
「君は、本当にメイドか?
その目……ただの使用人には見えん」
ソフィアは微笑みを深めた。
「メイドですわ。
ただ、お嬢様のためなら、何でもします」
レオンハルトは立ち上がり、ソフィアに近づいた。
「わかった。
この情報を活かす。
だが、君も覚悟しておけ。
兄上を倒せば、王宮は大混乱だ」
ソフィアは深く頭を下げた。
「ありがとうございます、殿下」
レオンハルトは背を向け、庭園の奥へ消えていった。
ソフィアは一人残り、月を見上げた。
彼女の瞳には、冷たい確信が宿っていた。
(お嬢様……順調ですわ)
王都の夜は深く、静かに過ぎていった。
一方、辺境の館では、クラリッサが机に向かっていた。
ソフィアからの最新の手紙(またしても甘すぎるラブレターの山の後ろに隠された報告書)を読み終え、拳を握った。
「レオンハルト殿下との接触……成功したのね」
彼女は羊皮紙にメモを書き加えた。
「これで、第二王子派閥も味方につけたわ。
エドモンドは完全に孤立する」
クラリッサは眼鏡を外し、鏡に映る自分を見つめた。
「もう少し……もう少しで、舞踏会の準備が整うわ」
辺境の夜は静かだった。
しかし、その静けさの裏で、二人の計画は着実に進んでいた。
第二王子レオンハルトとの接触は、逆襲の大きな一歩だった。
失敗令嬢の物語は、ゆっくりと、しかし確実に、王都への帰還へと近づいていた。
王都の夜は、いつものように華やかだった。
王宮の庭園では、月明かりが白い花々を照らし、静かな風が葉を揺らしている。
そんな中、黒いマントを羽織った一人の女性が、影のように歩みを進めていた。
ソフィアだった。
メイド服の上にマントをかけ、フードを深く被り、足音を殺して庭園の奥へ進む。
彼女の目的は、第二王子レオンハルトとの接触だった。
庭園の奥、噴水の近くに、ひとりの男が立っていた。
黒髪を後ろで束ね、鋭い銀色の瞳を持つレオンハルト王子。
彼は月を見上げ、静かに待っていた。
ソフィアが近づくと、レオンハルトは振り返った。
「……兄上の新しい婚約者だったな?
その前は、元の婚約者のメイドだったか。
出世したもんだ」
皮肉交じりの声に、ソフィアは涼しい笑みを返した。
「ええ、その通りですわ」
彼女は一歩近づき、声をひそめた。
「――あの方に、本当に次期国王の資質があるのか。
わたくし、疑問を抱いております」
レオンハルトの表情がわずかに揺れる。
「ほう……」
ソフィアは構わず言葉を重ねた。
「殿下の方がふさわしいと、わたくし考えております。
この国を思うなら、殿下が立つべきです。
及ばずながら――わたくしがお力になります」
囁く声は甘美で、しかし底知れぬ響きを伴っていた。
月明かりに照らされたソフィアは、まるで運命を操る魔女のようだった。
「……君は、一体何を望んでいる?」
レオンハルトの声は低く、鋭さを増す。
ソフィアは唇に指先を添え、意味深な笑みを浮かべた。
「望み? ただ真実を申し上げただけですわ。
どう受け取るかは――殿下次第です」
夜風が二人の間を吹き抜ける。
レオンハルトはしばらく沈黙した後、ゆっくりと口を開いた。
「証拠はあるのか?
兄上の不正を、証明できるもの」
ソフィアは懐から一枚の羊皮紙を取り出した。
「こちらですわ。
殿下が愛人を王宮に連れ込んだ記録、侍従への口止め、さらには……
わたくしが直接目撃した場面も記してあります」
レオンハルトは羊皮紙を受け取り、月明かりの下で目を通した。
詳細な記述に、彼の瞳が鋭く細まる。
「……確かに、兄上らしいな」
彼は羊皮紙を折り、懐にしまった。
「これをどうするつもりだ?」
ソフィアは控えめに微笑んだ。
「殿下にお任せしますわ。
わたくしは、ただ……お嬢様の仇を討ちたいだけです」
レオンハルトは一瞬、眉を寄せた。
「お嬢様……クラリッサのことか」
ソフィアは静かに頷いた。
「はい。
彼女は、殿下に捨てられたのです。
わたくしは、その無念を晴らしたい」
レオンハルトは噴水の縁に腰を下ろし、ソフィアを見上げた。
「君は、本当にメイドか?
その目……ただの使用人には見えん」
ソフィアは微笑みを深めた。
「メイドですわ。
ただ、お嬢様のためなら、何でもします」
レオンハルトは立ち上がり、ソフィアに近づいた。
「わかった。
この情報を活かす。
だが、君も覚悟しておけ。
兄上を倒せば、王宮は大混乱だ」
ソフィアは深く頭を下げた。
「ありがとうございます、殿下」
レオンハルトは背を向け、庭園の奥へ消えていった。
ソフィアは一人残り、月を見上げた。
彼女の瞳には、冷たい確信が宿っていた。
(お嬢様……順調ですわ)
王都の夜は深く、静かに過ぎていった。
一方、辺境の館では、クラリッサが机に向かっていた。
ソフィアからの最新の手紙(またしても甘すぎるラブレターの山の後ろに隠された報告書)を読み終え、拳を握った。
「レオンハルト殿下との接触……成功したのね」
彼女は羊皮紙にメモを書き加えた。
「これで、第二王子派閥も味方につけたわ。
エドモンドは完全に孤立する」
クラリッサは眼鏡を外し、鏡に映る自分を見つめた。
「もう少し……もう少しで、舞踏会の準備が整うわ」
辺境の夜は静かだった。
しかし、その静けさの裏で、二人の計画は着実に進んでいた。
第二王子レオンハルトとの接触は、逆襲の大きな一歩だった。
失敗令嬢の物語は、ゆっくりと、しかし確実に、王都への帰還へと近づいていた。
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