【悪役令嬢】転ぶ令嬢と暗躍メイドの完璧なる逆襲劇

しおしお

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第24話 エドモンドの醜態

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第24話 エドモンドの醜態

 大広間の空気が、完全に逆転した。  
 クラリッサ・フォン・ローゼンベルクの言葉が響き渡った瞬間、エドモンドの顔は血の気を失い、膝が震え始めた。  
 廷臣たちの視線は、もはや王子ではなく、冷徹な嘲笑に変わっていた。  
 ソフィアは静かに一歩前に進み、冷ややかな声で宣言した。

「殿下。  
 お嬢様は、最初から殿下を婚約者として見限っておられました。  
 ただ、王子というご立場を慮り、『殿下の方から婚約破棄した』ことにして差し上げただけ。  
 実際には――捨てられたのは殿下の方なのですわ」

 エドモンドは後ずさりし、声を荒げた。

「嘘だ!  
 貴様ら……全員、わたくしを陥れる気か!」

 しかし、その声はすでに弱々しく、威厳を失っていた。  
 クラリッサは扇を閉じ、ゆっくりとエドモンドに近づいた。

「殿下。  
 わたくしを悪女として断罪したのは、殿下自身ですわ。  
 そして、ソフィアに『愛人を連れ込んでも見逃せ』と条件を付け、  
 わたくしを陥れるよう命じたのも、殿下ですわね」

 ソフィアは懐から一枚の羊皮紙を取り出し、広間に差し出した。

「こちらが、その時の会話の記録ですわ。  
 殿下の言葉を、侍従がすべて書き留めておりました」

 廷臣たちがざわめき、羊皮紙が回される。  
 そこには、エドモンドの言葉が克明に記されていた。

『クラリッサを悪女として告発すれば、次の婚約者にしてやる。  
 愛人を連れ込んでも見逃せ。それが条件だ』

 エドモンドの顔が真っ青になる。

「そ、そんな……そんな紙切れなど、偽造だ!」

 レオンハルトがゆっくりと前に進み出た。  
 彼は冷徹な視線で兄を見据え、静かに言った。

「兄上……偽造ではない。  
 侍従の証言も、すべて揃っている。  
 さらに、愛人連れ込みの現場写真も、ここにある」

 レオンハルトは懐から写真を取り出し、広間に差し出した。  
 写真には、エドモンドが愛人を抱き寄せる姿が、鮮明に写っていた。  
 廷臣たちは息を呑み、互いに顔を見合わせる。

「これは……本物だ」

「殿下が、王宮で……」

 エドモンドは床に膝をつき、震える手で顔を覆った。

「やめろ……見るな……!」

 しかし、誰も耳を貸さない。  
 廷臣たちの視線は、冷たく、嘲るようにエドモンドに向けられていた。

 クラリッサは静かに微笑んだ。

「殿下。  
 あなたは、わたくしを捨てたつもりでしたわね。  
 しかし、捨てられたのは殿下の方ですわ。  
 公爵家の影響力を恐れ、わたくしを悪女として陥れ、  
 ソフィアを次の婚約者に据えようとした……  
 すべて、殿下の浅ましい欲のせいですわ」

 エドモンドは床に崩れ落ち、嗚咽を漏らした。

「違う……違うんだ……  
 わたくしは……ただ……」

 ソフィアは冷たく言い放った。

「ただ、欲に溺れただけですわ。  
 殿下は、王族としてふさわしくありません」

 レオンハルトが衛兵に視線を送った。

「衛兵。  
 兄上を連行せよ。  
 不正の証拠は、すべて揃っている」

 衛兵たちがゆっくりと近づき、エドモンドの両腕を掴んだ。  
 エドモンドは必死に抵抗するが、力なく引きずられる。

「離せ!  
 わたくしは王太子だぞ!  
 こんな……こんなことで……!」

 しかし、その必死さがむしろ哀れを誘うだけだった。  
 誰も味方する者はいない。  
 廷臣たちは静かに見守り、拍手さえ起き始めた。

 クラリッサはゆっくりと広間を見渡し、静かに宣言した。

「殿下の醜態は、ここに終わりですわ。  
 これからは、レオンハルト殿下がこの国を導く……  
 それが、正しい道です」

 レオンハルトはクラリッサに視線を向け、軽く頭を下げた。

「ありがとう、クラリッサ嬢。  
 君の勇気が、この国を救った」

 クラリッサは優雅に微笑み、扇を広げた。

「いえ……わたくしは、ただ真実を明かしただけですわ」

 エドモンドは衛兵に引きずられ、広間から連行された。  
 彼の叫び声が、遠くに消えていく。

「離せ……離せぇ……!」

 大広間は、静寂から歓声へと変わった。  
 廷臣たちが拍手を送り、クラリッサを称える。

「公爵令嬢……素晴らしい」

「やはり、クラリッサ様こそ、真の貴族ですわ」

 クラリッサは静かに微笑み、ソフィアに視線を移した。  
 二人は目で合図を交わし、互いに頷き合った。

 逆襲は、完璧に成功した。  
 エドモンドの醜態は、王宮中に広がり、彼の人生はここで終わった。

 舞踏会の夜は、まだ終わっていなかった。  
 クラリッサの瞳は、勝利の光で輝いていた。

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