傍若無人の悪役令嬢 ―幸せになりたいなら黙って私に従いなさい―

しおしお

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第18話 第二王子の本音 ——“優秀すぎて邪魔”と言われた男

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 前日の大口論から一夜明けた朝。

 しかし二人はまるで何事もなかったかのように、
 同じテーブルで並んで朝食を取っていた。

(……なぜこうなっているのかしら?)

 エマは紅茶を飲みながら震えていた。
 昨日あれだけ怒鳴り合っていた二人が、
 当たり前のように隣り合って座っているのだ。

 当人たちはといえば。

「パンが硬い。焼き直せ」

「なら自分で焼けばよろしいでしょう?」

「なっ……!」

「文句を言うなら行動で示しなさいませ」

「お前は教育係か!」

 この調子である。


---

◆◆セドリック、本音を漏らす◆◆

 ふと、ヴァイオレットが鋭く切り込んだ。

「昨日の話ですけれど……
 “扱いづらいから王位候補から外された”とは、どういう意味かしら?」

「……聞かれていたか」

「目の前で叫んでいましたもの。聞こえますわよ」

「ぐ……!」

 セドリックはしぶしぶ、フォークを置いた。

「あれは……本当に、そのままの意味だ」

「側近や政治家たちが言うには、
 俺は“理詰めすぎて可愛げがない”らしい。
 どんな案件でも正論で押し通し、妥協しない。
 だから“扱いづらい王になる”と判断された」

「つまり——」

「“有能すぎると都合が悪い”ってことだ」

 自嘲気味に笑った。

「国には、表向きの王が必要なのだと。
 俺のような“論破の塊”は、前に立つべきではないと」

 自分で言いながらも、少しだけ悔しさが滲んでいる。

「……わかっただろう?
 俺は王家から外されたんだよ。
 だから、王都の政治も……少し冷めて見ている」

(この男……プライドが高いくせに、傷つき方が不器用……)

 ヴァイオレットは静かに紅茶を置く。


---

◆◆ヴァイオレット、彼を否定しない◆◆

「……それで?あなたは、何が不満ですの?」

「は……?」

「王位に興味がありましたの?違うでしょう?」

「ぐ……!」

「あなたは王位に“立てなかった”のではなく、
 “向いていなかった側”が勝手に外しただけですわ」

 セドリックは目を見開いた。

「あなたの欠点はただ一つ——妥協しないこと。
 でも、それは欠点である以上に、美徳ですわよ」

「美……徳……?」

「当然でしょう。
 改革は妥協で進みませんわ。
 我が領地を見ていれば、理解できるはずですけど?」

「……っ!」

「それに」

 ヴァイオレットはふっと笑った。

「“扱いづらい”のは、あなたが正しい方向を知っているから。
 間違いをごまかさないから。
 そんな殿下のほうが、私はよほど信頼できますわ」

 セドリックの耳まで一気に赤く染まった。

「な、なにを堂々と言って……!!」

「褒めただけですわよ?
 褒められ慣れていないのかしら?」

「う、うるさい!!」

 しかし、彼が顔をそらしても、横顔はどこか嬉しそうだった。


---

◆◆周囲の反応◆◆

エマ
(ああ……終わったわ……この二人、完全に相性最悪で……完璧に相性最高……)

ミーナ
「殿下、褒められて照れてる……かわいい……」

アルフレッド
(ああ……ここから“恋の火種”になるのですね……胃薬……)


---

◆◆セドリックの逆襲◆◆

 しかし、照れながらも王子は黙らない。

「……だがな、ヴァイオレット」

「なんですの?」

「そんな俺を褒めるなら、覚悟しておけ」

「覚悟?」

「俺は一度興味を持った相手には……
 容赦なく踏み込むタイプだ」

「まあ」

「逃がす気はないからな?」

 一瞬、ヴァイオレットの呼吸が止まった。

(……この男……言うことがいちいち直球……!)

 そして——

「望むところですわ。
 私も、逃げるつもりはありませんもの」

 二人の間の空気が、微かに熱を帯びた。


---

◆◆最後の一言◆◆

セドリック
「……それともう一つ」

ヴァイオレット
「?」

セドリック
「昨日の“腰抜け”って言葉……二度と使うな」

ヴァイオレット
「ふふ。では、使われないよう努力なさって?」

「お前という女はッ!!!」




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