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第28話 第二王子、ついに限界突破す――悪役令嬢を叱る日
しおりを挟む謁見の間から退出した直後。
重厚な扉が閉まった瞬間、
セドリックはヴァイオレットの腕を掴んで廊下へ引きずり出した。
「おい。」
「何かしら?
……手を離しなさいませ。田舎のチンピラみたいですわよ?」
「うるせぇ!!」
廊下に王族の怒声が響いた。
エマとミーナは(あ、始まった……)と距離を取る。
---
◆セドリックの怒りが爆発する
「国王直々の要請を、
“面倒くさい”の一言で断る奴がどこにいる!!」
「ここにおりますわ?」
「開き直るな!!」
ヴァイオレットはため息をつく。
「そもそも、私が国政に向いていると思っているのが間違いですわ。
私は合理性だけで動く人間。
国政は感情と派閥争いの塊。
最も非合理ですの。」
「わかってる!
俺だって政治のドロドロなんざ大嫌いだ!!」
「ならば黙っていればよろしいのに。」
「黙っていられるか!!」
セドリックは髪をかきむしった。
「お前のやってることは、国の未来そのものなんだよ!!
なのに……なんでそんなに投げやりなんだ!!」
ヴァイオレットはきょとんと目を瞬かせた。
「……私は、自分の領地だけで十分ですもの。」
「十分じゃねぇ!!」
セドリックの声が震えた。
「お前は……
“自分の価値”を理解してない。」
ヴァイオレット、固まる。
廊下の空気が変わった。
---
◆セドリック、本音を言う
「お前がやったことは前代未聞だ。
スラムを壊し、街を作り直し、
道路と上下水道を一斉に整備して、
治安も人口も物流も全部立て直した。」
「……だから何ですの?」
セドリックは一歩詰め寄る。
「それが“普通じゃない”って言ってんだよ!!!」
「っ——」
「どれだけすごいことをしたのか、
わかってねぇのはお前だけなんだよ……!」
ヴァイオレットは言葉を失った。
ミーナは胸を押さえて小声で呟く。
「セドリック殿下……
まさかの……“激励”……!」
---
◆セドリック、核心を突く
「国は、お前の力を必要としてる。
俺も……そう思ってる。」
ヴァイオレットの扇子が滑り落ちそうになる。
「ヴァイオレット。
お前が動けば世界が変わる。
それを“面倒くさい”で終わらせるな。」
その声音は荒々しいのに、
どこか真剣で、温かかった。
ヴァイオレットは初めて、
セドリックを正面から見つめる。
「……あなた……
私を叱りましたわね?」
「叱った。
何度でも叱ってやる。
誰かが言わなきゃお前は止まらねぇからな。」
沈黙。
それは怒りではなく、
奇妙な静けさに包まれた沈黙。
ヴァイオレットの胸の奥に
小さな熱が広がっていた。
「……ふふ。」
「何がおかしい。」
「私の“婚約者の理想像”をご存じかしら?」
「は?」
「“私が間違っていたら理論立てて叱ってくれる人”ですの。」
セドリック
「…………!!?」
ミーナ(爆笑を必死にこらえる)
エマ(無表情だが肩が震えている)
ヴァイオレットは扇子を拾い上げ、優雅に笑う。
「あなた、案外……理想に近いのかもしれませんわね?」
セドリック
「ばっ……!ふざけんな!!」
「ふざけてませんわ。
むしろ……
あなたがようやく“使える大人”に見えてきましたもの。」
「お前は本当に人をイラつかせる天才だな!!」
「光栄ですわ。」
二人の口論は止まらない。
だが――
その日を境に、周囲はこう噂し始めた。
「第二王子と悪役令嬢、意外とお似合い……?」
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