悪役令嬢は溺愛を拒めない!~破滅回避のはずが、なぜか甘やかされています~

しおしお

文字の大きさ
3 / 16
第1章:絶望からの始まりと、転生者の決意

セクション3:初めての出会いと、想定外の展開

しおりを挟む
セクション3:初めての出会いと、想定外の展開

重厚な扉を開け、私はイザベラとして初めて、ヴェルサイユ侯爵家の廊下へと足を踏み出した。豪華なシャンデリアが、磨き上げられた大理石の床を照らし、壁には高価な絵画が飾られている。内装は、まさしく貴族の邸宅といった趣きで、ため息が出るほどの豪華さだ。

…これが、イザベラの日常なのか。

私は、緊張しながらも、周囲の景色を観察した。壁に飾られた絵画は、美術の知識がない私でも、その価値がわかるほど素晴らしいものばかりだ。メイドたちの着ている制服も、洗練されたデザインで、細部まで手入れが行き届いている。

…すごいな。

前世の私には、縁のない世界だ。

私は、メイドの一人に案内され、朝食をとるために食堂へと向かった。廊下を歩いている間にも、使用人たちが私に頭を下げ、挨拶をしてくる。その度に、私はぎこちなく会釈を返した。

…慣れないな。

自分の立場を意識すると、どうしても緊張してしまう。

食堂に入ると、すでに両親が席に着いていた。ヴェルサイユ侯爵である父は、威厳のある顔立ちで、少しの隙も見せない。母は、美しく気品があり、私に優しく微笑みかけてくれた。

…イザベラは、両親から溺愛されていた。それも、破滅フラグの一つかもしれない。過保護な両親は、イザベラの我儘を許し、彼女を甘やかしていたのだろう。

私は、両親に挨拶をし、席に着いた。食事は、見たこともないような豪華さで、様々な料理がテーブルに並んでいる。

「おはよう、イザベラ。今日はよく眠れたかい?」

母が、優しく私に話しかけてきた。

「はい、母様。おかげさまで。」

私は、できるだけ笑顔で答えた。

「顔色が優れないようだけど、何かあったのかしら?」

父が、心配そうに眉をひそめる。

…なるほど、イザベラは、少々わがままなところがあるようだ。少しでも機嫌が悪そうだと、すぐに心配される。

「…少し、夢見が悪かっただけです。」

私は、そう答えた。

…嘘をつくのは、心苦しい。しかし、この場では、仕方のないことだ。

朝食を終え、私は庭園を散歩することにした。ヴェルサイユ侯爵家の庭園は、広大で美しく、様々な種類の花が咲き乱れている。

…ゲームの世界みたい。

私は、その美しさに感動しつつも、警戒心を解かない。

…今日は、攻略対象の一人、第一王子であるルイス殿下との謁見がある。

…できるだけ、穏便に済ませたい。

私は、庭園を歩きながら、今後のことを考えた。ルイス殿下との関係をどう築くか。ヒロインであるリリアナとの出会い。様々な問題が、私の前に立ちはだかっている。

…難しいな。

その時だった。

「イザベラ様!」

聞き覚えのある声が、私を呼び止めた。私は、声のする方へ顔を向ける。

そこにいたのは、ゲームの登場人物、ルイス・フォン・アストリア、第一王子だった。

…本物だ。

彼は、私の姿を見ると、微笑んだ。

…思っていたより、ずっとイケメンだ。

ルイスは、私に近づき、軽く頭を下げた。

「おはようございます、イザベラ様。お目にかかれて光栄です。」

…なんて、爽やかな笑顔なんだ。

私は、驚きを隠せないまま、ぎこちなく会釈を返した。

「おはようございます、ルイス殿下。」

「今日は、お時間がありますか?少し、お話がしたいのですが。」

ルイスは、優しげな眼差しで、私を見つめた。

…話?

私は、少し戸惑った。ルイスは、ゲームの中では、イザベラに対して冷たい態度をとっていたはずだ。

なぜ、私に話しかけてくるのだろうか?

私は、警戒しながらも、答えた。

「…ええ、構いません。」

「ありがとうございます。では、あちらの東屋で、お話しましょうか。」

ルイスは、私を東屋へと案内した。東屋は、庭園の中心に位置し、美しい景色を望むことができる。

…想定外の展開だ。

私は、ルイスと二人きりで、東屋に座った。

一体、何の話をするのだろうか?

私は、緊張しながら、彼の言葉を待った。

「…イザベラ様は、最近、少しお元気がないように見受けられますが、何かご心痛なことでも?」

ルイスは、優しく私に問いかけた。

…え?なぜ、そんなことを?

私は、ますます混乱した。ゲームの中のルイスは、こんなに優しくはなかったはずだ。

「…いえ、そのようなことは。」

私は、できるだけ冷静に答えた。

「そうですか。それはよかったです。」

ルイスは、安堵したように微笑んだ。

「…イザベラ様は、とても美しい方です。そして、気品があり、聡明でいらっしゃる。私は、イザベラ様のような女性に、とても惹かれます。」

…ええっ!?

私は、自分の耳を疑った。

ルイスは、私に好意を抱いていると?

…これは、一体どういうことだ?

私は、困惑し、そして、少しだけ、動揺した。

ゲームの展開と、全く違う。

…一体、どうすればいいんだ?

私の頭は、混乱の渦に巻き込まれていた。

そして、この出会いが、今後の私の運命を大きく変えることになることを、私はまだ知らなかった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

『推しの「貧乏騎士」を養うつもりでしたが、正体は「王弟殿下」だったようです。

とびぃ
ファンタジー
応援ありがとうございます。 本作は多くの方にお届けする準備のため、2月6日(金)で、一旦、非公開といたします。 今後の展開については、是非、各電子書籍ストアなどでチェックいただければ幸いです。 短い間でしたが、たくさんのハートとお気に入りを ありがとうございました。 〜「管理人のふり」をして別荘に連れ込まれましたが、過保護な溺愛が止まりません〜 【作品紹介】社畜根性が染み付いた悪役令嬢、推しの『モブ騎士』を養うつもりが、国の裏支配者に溺愛されていました!? ◆あらすじ 「貴方を、私が養います!」  前世はブラック企業の社畜、現世は借金のカタに「豚侯爵」へ売られそうになっていた伯爵令嬢エリーゼ。  絶望的な状況の中、彼女が起死回生の一手として選んだのは、夜会で誰の目にも留まらずに立っていた「推し」の『背景(モブ)騎士』への求婚だった!  実家を捨て、身分を捨て、愛する推しを支える慎ましいスローライフを夢見て駆け落ちしたエリーゼ。  しかし、彼女は知らなかった。  自分が拾ったその騎士の正体が、実は冷酷無比な『影の宰相』にして、国一番の権力者である王弟殿下レオンハルトその人であることを――! ◆見どころポイント ① 勘違いが止まらない!「福利厚生」という名の規格外な溺愛  逃避行の馬車は王族仕様の超高級車、新居は湖畔の豪華別荘、家事は精鋭部隊(暗殺者)が神速で完遂!  あまりの厚遇に「近衛騎士団の福利厚生ってすごいのね!」と斜め上の解釈で感動する元社畜のエリーゼと、そんな彼女を「俺の全権力を使って守り抜く」と誓うレオンハルト様の、噛み合っているようで全く噛み合っていない甘々な新婚(?)生活は必見です。 ② 伝説の魔獣も「わんこ」扱い!?  庭で拾った泥だらけの毛玉を「お洗濯(浄化魔法)」したら、出てきたのは伝説の終焉魔獣フェンリル!  「ポチ」と名付けられ、エリーゼの膝の上を巡ってレオンハルト様と大人気ないマウント合戦を繰り広げる最強のペット(?)との癒やしの日々も見逃せません。 ③ 迫りくる追手は、玄関先で「お掃除(物理)」  エリーゼを連れ戻そうと迫る実家の魔手や悪徳侯爵の刺客たち。  しかし、彼らがエリーゼの目に触れることはありません。なぜなら、最強の執事と「お掃除スタッフ」たちが、文字通り塵一つ残さず「処理」してしまうから!  本人が鼻歌交じりにお菓子を焼いている裏で、敵が完膚なきまでに叩き潰される爽快な「ざまぁ」展開をお楽しみください。 ◆こんな方におすすめ! すれ違い勘違いラブコメが好き! ハイスペックなヒーローによる重すぎる溺愛を浴びたい! 無自覚な主人公が、周りを巻き込んで幸せになる話が読みたい! 悪役たちがコテンパンにされるスカッとする展開が好き!

無能と追放された魔導鍛冶師、最強の騎士に拾われ溺愛される

ムラサメ
恋愛
​「君の打つ剣は輝きが足りない。もっと華やかに光る、騎士団の象徴となる剣を打てないのか」 ​実家の鍛冶屋からも、婚約者である騎士団長カイルからも「無能」と切り捨てられた鍛冶師・メル。不純物を削ぎ落とし、使い手の命を守るためだけに特化した彼女の「究極の業」は、美しさを求める凡夫たちには理解されなかった。 ​冷たい雨の中、行き場を失い魔物に襲われた彼女を救ったのは、隣国の至宝であり、その強すぎる魔力ゆえに触れる武器すべてを粉砕してしまう最強の騎士――アルベールだった。 ​圧倒的な武力で魔物を屠り、砕けた愛剣を悲しげに見つめるアルベール。周囲がその「化け物じみた力」を恐れて遠巻きにする中で、メルだけは違った。彼女は泥にまみれた鉄の破片を拾い上げ、おっとりと微笑む。 ​「……騎士様。この子は、あなたの力に応えようとして、精一杯頑張ったみたいですよ」 ​その場で振るわれたメルのハンマーが、世界で唯一、アルベールの全力を受け止める「不壊の剣」を産み落とした瞬間――最強ゆえに孤独だった英雄の運命が、狂おしく回り始める。

天然だと思ったギルド仲間が、実は策士で独占欲強めでした

星乃和花
恋愛
⭐︎完結済ー本編8話+後日談7話⭐︎ ギルドで働くおっとり回復役リィナは、 自分と似た雰囲気の“天然仲間”カイと出会い、ほっとする。 ……が、彼は実は 天然を演じる策士だった!? 「転ばないで」 「可愛いって言うのは僕の役目」 「固定回復役だから。僕の」 優しいのに過保護。 仲間のはずなのに距離が近い。 しかも噂はいつの間にか——「軍師(彼)が恋してる説」に。 鈍感で頑張り屋なリィナと、 策を捨てるほど恋に負けていくカイの、 コメディ強めの甘々ギルド恋愛、開幕! 「遅いままでいい――置いていかないから。」

異世界で王城生活~陛下の隣で~

恋愛
女子大生の友梨香はキャンピングカーで一人旅の途中にトラックと衝突して、谷底へ転落し死亡した。けれど、気が付けば異世界に車ごと飛ばされ王城に落ちていた。神様の計らいでキャンピングカーの内部は電気も食料も永久に賄えるられる事になった。  グランティア王国の人達は異世界人の友梨香を客人として迎え入れてくれて。なぜか保護者となった国陛下シリウスはやたらと構ってくる。一度死んだ命だもん、これからは楽しく生きさせて頂きます! ※キャンピングカー、魔石効果などなどご都合主義です。 ※のんびり更新。他サイトにも投稿しております。

「わざわざ始まるまでまたないで、今のうちに手を打ったってよくない?」

イチイ アキラ
恋愛
アスター公爵令嬢エステルは、夢をみる。それは先を映す夢。 ある日、夢をみた。 この国の未来を。 それをアルフレッド王太子に相談する。彼女を愛して止まない婚約者に。 彼は言う。 愛する君とぼくの国のためなら、未来を変えるのも仕方なくない?

国外追放されたくないので第二王子の胃袋を掴んだら溺愛されました!

和栗かのこ
恋愛
乙女ゲームが趣味の社畜・美咲は、階段から落ちて乙女ゲーム「クレセント・ナイト」の悪役令嬢に転生してしまう。 悪役令嬢セセリアに転生した美咲は、国外追放される展開を変えるため、婚約者である第二王子の胃袋を掴むことを思いつく。

冷徹宰相様の嫁探し

菱沼あゆ
ファンタジー
あまり裕福でない公爵家の次女、マレーヌは、ある日突然、第一王子エヴァンの正妃となるよう、申し渡される。 その知らせを持って来たのは、若き宰相アルベルトだったが。 マレーヌは思う。 いやいやいやっ。 私が好きなのは、王子様じゃなくてあなたの方なんですけど~っ!? 実家が無害そう、という理由で王子の妃に選ばれたマレーヌと、冷徹宰相の恋物語。 (「小説家になろう」でも公開しています)

エアコン魔法、全自動チョコレート製造魔法、魔法の無駄遣い? ――快適な生活のために、全部必要ですわ

鷹 綾
恋愛
「魔法の無駄遣いだ」 そう言われて婚約を破棄され、南方の辺境へ追放された元・聖女エオリア。 けれど本人は、まったく気にしていなかった。 暑いならエアコン魔法を使えばいい。 甘いものが食べたいなら、全自動チョコレート製造魔法を組めばいい。 一つをゆっくり味わっている間に、なぜか大量にできてしまうけれど―― 余った分は、捨てずに売ればいいだけの話。 働く気はない。 評価されても困る。 世界を変えるつもりもない。 彼女が望むのは、ただひとつ。 自分が快適に、美味しいものを食べて暮らすこと。 その結果―― 勝手に広まるスイーツブーム。 静かに進む元婚約者の没落。 評価だけが上がっていく謎の現象。 それでもエオリアは今日も通常運転。 「魔法の無駄遣い? ――快適な生活のために、全部必要ですわ」 頑張らない。 反省しない。 成長もしない。 それでも最後まで勝ち続ける、 アルファポリス女子読者向け“怠惰ざまぁ”スイーツファンタジー。

処理中です...